その後、ボディーガードが彼を車椅子のまま病室へ押して入る。扉をくぐった瞬間、彼の表情は一変した。「パパ」レラがピンクのカーネーションの花束を抱え、駆け寄ってくる。奏の胸に花を押し当て、満面の笑みを浮かべる。「お帰りなさい」奏は片腕で花束を抱え、もう一方の手で娘の頭を撫でる。「レラ、パパはずっと会いたかった」「じゃあ、もう家出しないでね。そんなことするのは子どもだけ。もういい年なんだから、幼稚なことはやめなきゃ」レラは大人ぶった口調で父を諭す。その時、三浦の腕から抜け出した蒼が、よろよろと走ってくる。奏はその姿を見た瞬間、胸が激しく高鳴った。息子も自分を歓迎してくれるのだと思ったのだ。「蒼」そう呼びかける間もなく、蒼はとわこの前に一直線に向かい、ぎゅっと抱きつく。「ママ」澄んだ大きな声が病室に響く。奏は少し気まずくなる。とわこは息子を抱き上げ、奏を指さして言う。「パパよ。ほら、パパって呼んで」蒼はすぐに小さな頭をとわこの首元にうずめ、目の前の見知らぬ男を見ようともしない。この年頃の子どもにとっては、ひと月二か月会わないだけで、ほとんど他人同然だ。「ずいぶん大きくなったな」奏は背も体も成長した蒼を見つめ、感慨深げに言う。「前に会った時は、もっと小さかった」「毎日見ていれば、そう感じませんよ」三浦が笑って言う。「安心して入院なさってください。毎日、蒼を連れてお見舞いに来ますから」奏はすぐに首を横に振る。「病院には連れて来ないでください。あと一週間もすれば退院します」病人も多く、感染の心配もある。子どもにうつるのが怖かった。「三浦さん、今日は二人を連れて先に帰って休んで。明日はレラも学校がある」とわこは蒼を抱き、三浦と一緒に病室を出る。「奏は大丈夫だから。心配しないで」「Y国のことは?」三浦はためらいがちに尋ねる。「もう片付いたのね」「ええ」「それならよかった」三浦は安堵の息をつく。「旦那様のそばに行ってあげてください。あ、荷物も持ってきました。ピンクのスーツケースがあなたの、青いのが旦那様のです」「ありがとう」エレベーターに乗る二人を見送ったあと、とわこは病室の前で足を止める。奏は看護師に支えられ、すでにベッドに腰かけていた。結菜が彼の前に立ち、瞬きもせずに見つめている
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