「今回はお一人でのスピーチではありませんので、事前にお伝えしなかったんです」担任は笑顔で説明する。「司会者からは、普段どのようにお子さんを育てているか、そして本校についてのご感想を少し伺うだけです。気楽にお話しください」とわこは軽くうなずく。こうした形式ばったやり取りには慣れている。三十分後、レラのダンスが終わる。会場は割れんばかりの拍手に包まれ、その中で司会者がとわこを壇上に招いた。誇らしく、胸がいっぱいになる。さきほど、彼女はスマホで最初から最後まで撮影していた。こんなに上手だと分かっていたなら、一眼レフを持ってくればよかったと少し後悔する。壇上に上がり、司会者からマイクを受け取る。「レラさんのお母さま、本日はお忙しい中ありがとうございます」司会者はにこやかに続ける。「ところで、今日はレラさんのお父さまはいらっしゃっていますか」この質問が出た瞬間、客席からどっと笑いが起こる。奏が車椅子で退院したというニュースは、ここ数日のトップ記事だ。小学生ですら知っている話なのに、司会者が知らないはずがない。とわこは笑顔で動揺を隠す。「夫は体調を崩していて、今日は一緒に来られませんでした」「それは残念ですね。実は現場で確認したかったんです。レラさんのお父さまの足が、本当に奥さまに折られたのかどうか」司会者はそう言って笑い、続ける。「でも違いますよね。レラさんがこんなに優秀なんですから、きっと仲の良い、幸せなご家庭だと思います」「夫との関係は確かに悪くありません」とわこは穏やかに答える。「でも、たとえ家庭が完璧でなくても、優秀な子は育つと思います」「なるほど」司会者はうなずく。「では、普段レラさんには厳しく接していますか」「求めているのは、できる限り、どんなことも最善を尽くすことです」とわこは落ち着いて話し始める。「それは、こちらの学校の校訓とも同じですね」話し終えると、再び大きな拍手が湧き起こる。彼女はレラの手を取って壇を降りた。「ママ、すごく上手だった」レラは目を輝かせ、心から尊敬するように見つめる。「ありがとう」とわこは笑う。「パパの足が治ったら、今度はパパにも来てもらおう。きっとママより上手に話すよ」「やだ。パパなんて来なくていい」レラは頬をふくらませる。「先生たち、パパに外にもう一人奥
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