「社長、聞きたいことがあるんでしょう。早く聞かないと」ボディーガードは、とわこが呆然としているのを見て、すぐに促す。とわこは衝撃から我に返る。「静かにして。今、目を覚ましたばかりで、まだ意識がはっきりしてない」とわこはボディーガードを外へ押し出す。「外で待って。私の指示がない限り、入らないで」彼を外に出したあと、彼女は急いで病床のそばへ戻る。奏の目が閉じている。とわこは目をこすり、さっきの光景が幻だったのではないかと疑う。だが、ボディーガードも確かに見ていた。幻ではない。奏は、確かに一瞬目を覚ました。名前を呼ぶべきか迷っていると、彼は再び目を開く。「奏」彼女はすぐに声をかける。「奏」奏の視線が、はっきりと彼女に向かう。「私よ。とわこ」彼女は声を詰まらせる。「剛は亡くなった。退院したら、一緒に帰ろう」彼は、いつもより倍の時間をかけて、その言葉を受け止める。「奏、今はどこも痛いはず。返事はしなくていい」とわこは彼の大きな手を握り、静かに語りかける。「いい……」彼は喉の奥から、かすれた声を絞り出す。退院したら、彼女と一緒に帰る。とわこの目に、涙がにじむ。彼がどの言葉に答えたのかは分からない。それでも、十分だった。夕方、真帆が保温容器を手に病室へ来る。奏が目を覚ましたと聞き、すぐに家政婦にスープとお粥を作らせた。「奏」真帆は容器を棚に置き、病床へ近づく。彼が目を開けているのを見ると、優しく、そして焦るように声をかける。「調子はどう。スープと……」副院長が遮る。「真帆さん、今はスープは飲めません。お粥か、あっさりした麺だけです」「お粥は持ってきました」真帆はすぐに容器を開ける。濃い香りが病室いっぱいに広がる。洗面所から戻ってきたとわこは、その匂いを感じ、足早に近づく。「とわこ、医師が奏はスープを飲めないって。これはあなたが飲んで」真帆の態度は一変する。「よかった。奏にはお粥を用意してある」とわこはお粥を受け取り、病床へ行って尋ねる。「お粥、食べる?」「ちょっと、とわこ。どういうつもり」真帆は大股で近づき、彼女の手から碗を奪う。「それは私が奏のために持ってきたもの。私が食べさせるから、あなたは下がって」とわこは奏に問いかける。「誰に食べさせてほしい?」真帆は碗を強
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