医師は厳しい表情で説明した。「患者さんの傷は深刻で、手術が必要です。ただし、まずは詳細な検査を行い、その結果をもとに手術プランを立てる必要があります」香織は頷いた。「お願いします」「引き受けた以上、最善を尽くします。私は完璧主義者ですから」医師は続けた。「彼女の元の顔を知らない以上、完全に元通りにはできないかもしれません。ですが、きっと美しい顔にすることは約束します」元の顔に戻らなくても構わない。整容手術が成功さえすれば、それでいい。由美は病院に入院した。数日間は検査と手術プランの策定が続いた。香織はこの分野の専門家ではなかったが、すべての会議に同席し、自身の医学知識を駆使して手術の可否を判断した。数日間の議論を経て、手術プランが決定した。すべての修復を完了するには、大小合わせて十数回の手術が必要だという。途中で変更が生じる可能性もある。香織はこれらの条件をすべて理解した上で、手術プランを由美に伝えた。由美は黙ったまま、何も言わなかった。同意なのか、拒否なのか判断できなかったため、香織は説得を試みた。「元の顔じゃなくても、ちゃんと綺麗になるわ。……新しい顔で、新しい人生を始めるっていうのも、悪くないじゃない?」由美は彼女の意図を理解していた。反対しているわけではない。ただ――「……もう、いいよ。ここまで来たんだし……子どものために、生きてみるよ」その声に、香織は胸が締めつけられた。「一人きりにして、怖がらせたりしない。私がずっと付き添うから」「あなたが言ってたように……手術は十数回かかるんでしょ? それには長い時間が必要になる。私は医療のことがまったく分からないわけじゃない。分かってるよ、心の準備だってしてる。でも……あなたには旦那さんも、子どももいる。ずっと私のそばにいるなんて……家族はどうするの?」「圭介は、きっと理解してくれるわ」香織は由美の手をそっと握りしめた。「私のことは心配しないで。子どもたちには母さんがついているし、私がいなくてもちゃんと面倒を見てくれる。でもあなたには、いま、私しかいない。だから、私はあなたのそばにいるよ」「……あなたの気持ちはわかった。でも、一度家に帰ってほしい。家族の顔を見てあげて。私のことは、あとでまた来てくれればいい」由美は静かにそう言った
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