圭介は小さく「うん」と声をもらし、「そのまま寝てていいよ」と言った。「起こされちゃったから、もう眠れない。下ろして」香織は彼の肩に寄りかかりながらつぶやいた。圭介はうつむいたまま黙っていた。香織は恥ずかしそうに顔を彼の胸に埋めた。……国内。向こうが夜なら、こちらは昼間。由美は星を抱いて外で遊んでいた。おもちゃを使って気を引くと、星の視線はそのおもちゃを追いかけた。色が鮮やかであればあるほど、興味を引かれるようだった。星の視線はあちこちを見回し、時おり口を大きく開けて笑った。白くて小さな歯が数本生え始めていて、それが原因か、笑うたびによだれがたれていた。由美は星の口元を拭き、綿のよだれかけを首に着けてやった。濡れたらすぐに取り替え、顔がよだれで赤くなるのを防いだ。赤ちゃんの肌は繊細だ。顔は常に乾いた状態を保たなければ、すぐに湿疹が出てしまう。由美はそんな細やかな気遣いで星を守っていた。その甲斐あって、星は日に日にふっくらとしていく。小さな顔は白くてつややか、可愛らしさそのものだった。一方、ビビアンが目を覚ますと、台所はがらんどうで、食べるものは何ひとつなかった。彼女の表情は一瞬で曇った。少し間を置くと、彼女は由美を探し、わざとらしく平静を装って言った。「あら?もう食事したの?」「食べたよ」由美は言った。「私の分は?」彼女はすぐに問い詰めた。「松原さんに頼まれているのは星のお世話だけよ。料理係じゃない。だから、あなたにご飯があるかどうかなんて私には関係ないわ」ビビアンは言葉を詰まらせ、顔を赤くした。しばらく黙り込んだあと、ようやく口を開いた。「……でも作るなら、ついでに私の分も作ってくれればいいじゃない。別にあなたに作れって言ったわけじゃないんだから!」彼女はしばらく沈黙した後、ようやく言い訳を見つけて続けた。「ただ、ついでに少し多めに作れるでしょ、って思っただけなの」「私は余分に作る習慣はないの。これからは、掃除はあなたが担当してもらえる?」由美は淡々と返した。ビビアンは目を見開いた。「……今なんて言ったの?」「家事を手伝うために来たんじゃないの?」由美は冷ややかに言った。──最初は憲一が連れてきた人だからと、
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