そばに女性がいてくれるのは、きっと悪いことじゃない。彼の気も紛れるし、自分のことまで気が回らなくなるのだろう。「香織、そろそろ行くぞ」圭介が突然口を挟んだ。香織は立ち上がった。「由美、それじゃあ、私たち行くね」由美も腰を上げた。「来てくれたのに、お水の一杯も出していないわ……」「あなたはまず娘さんをしっかり抱いてなさいよ」香織は笑った。「うちら、親同士で縁談を考える?」香織が冗談めかして言った。由美はじろりと彼女を見て言った。「あなたの息子、まだちっちゃいでしょ?もうお嫁さん探してるの?そんなに早く老けたいの?」香織はため息をついた。「今は仕事もしてないし、こういうくだらないことばっかり考えちゃうのよね」由美にはわかった──仕事を辞めた香織の姿からは、以前のような活力が少しなくなっていた。女性が家庭のために尽くすことは、多くの場合、目に見えない。現代は昔と違う。女性には自分のキャリアが必要だ。その方が人生はもっと輝ける。とはいえ、今の私たちにとっては、すべてが子どものためだ。かつての自分は、もうどこかに置いてきた。……時間は午後四時になり、由美は携帯を確認した。──憲一からはまだ電話がない。きっとまだ忙しいのだろう。そこで由美は星をゆりかごに寝かせた。──たとえただそばに立っているだけでも、星がいれば孤独を感じない。粉ミルクを調乳し、由美は哺乳瓶を星に飲ませた。星は自然と口を開け、哺乳瓶を受け入れた。その様子が微笑ましくて、由美は思わず星の頭をそっと撫でた。──最近の星は食欲が旺盛で、一日に二回の授乳で十分だろう。それ以外の時間は他の食べ物で補えば、早く卒乳できるかもしれない。そんなふうに子どもの食事のことを考えていたとき、携帯の着信音が彼女を現実に引き戻した。憲一からだった。「松原さん」由美はすぐに携帯を手に取り、カメラを星に向けた。「文絵、俺には一時間しか時間がない」「今日、誰か家に来たか?」それを聞いて、由美は一瞬、心臓がドキッとした。──まさかこの短い時間に監視カメラを確認するとは。「……あ、昔の友人です。近くまで来たので、寄ってくれました」「星!パパに会いたかった?」一心不乱にミルクを飲む星を見て、憲一は自分も空腹を感
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