香織は病室のベッドサイドで、佐藤が目覚めるのを静かに待ち続けていた。一時間経って、ようやく佐藤はゆっくりと目を覚ました。軽症だったとはいえ唐突な発病で、受けた手術の影響は思ったより大きかった。香織はそっと毛布をかけ直しながら声をかけた。「どこか具合が悪いところは?」佐藤は体の感覚を確かめ、力が入らない以外は特に不調もないようだった。「大丈夫です」「それならよかった」香織は言った。「家にはお母さん一人じゃ回らないでしょう」佐藤は言いながら起き上がろうとした。香織は布団を押さえた。「ちゃんと休まなきゃだめ。家のことは私がやるし、必要ならもう一人家政婦さんを雇う。とにかく、今は何も気にしないで、まずは病気を治すこと」佐藤はため息をついた。「病院でじっとしているなんてできませんよ」「安静が第一よ」香織はきっぱりと言った。「元気になってこそ、家のことを手伝ってもらえるでしょう?」佐藤は仕方なく横になった。「年を取ると、すぐ病気にやられるものですね」「CTの結果を見たけど、大したことないわ。薬を飲めば治るから、心配しないで」「心配なんてしていませんよ」佐藤は笑った。「さあ、お帰りなさい!家には誰もいないでしょう?私は一人で大丈夫ですから」だが香織には安心できなかった。それに、時間が遅くなってしまっていた。この時間帯ではまともな介護人も見つからない。思い悩んだ末、香織は峰也に電話をかけることにした。すぐに電話が繋がった。どうやら峰也は何かしらの情報を得ていたようで、電話を取るなり開口一番に言った。「警察が新日薬業を調査しているそうですね?大丈夫ですか?」「峰也……ちょっとお願いしたいことがあるの」香織は短く返事をした。「どうしました?何ですか?」峰也が聞いた。「プライベートなことなんだけど……迷惑じゃなければ」「言ってみてください」香織は少し申し訳なさそうに口を開いた。「身内が病気で、今病院にいるの。小さな手術をしたばかりで、一人にできない状態なの。朝まで見ていてくれない?朝になったら私が行くから」「わかりました」峰也は迷わず承諾した。「ありがとう!助かる……」峰也が到着すると、香織は帰宅した。恵子は香織の姿を見るなり、「佐藤さんは大丈夫?」と尋ねた。
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