直人は賢太郎を見つめ、仕方なさそうにため息をついた。たしかに、賢太郎はその容姿、雰囲気、能力、家柄、どれを取っても申し分ない。たとえ私生児がいたとしても、彼を好む女性はいくらでもいる。それでも、今まで独身だったのは、結婚したくなかったからだ。そして、今さら息子が一人増えたことで、ますますその気がなくなっている。直人が一番心配しているのは、賢太郎が由佳への未練を断ち切れておらず、また何か問題を起こすのではないかということだった。「この件、俺は許す。ただし、俺の言うことを聞いて、お見合いに行きなさい。もし相手の女性がメイソンのことを気にしないなら、真剣に付き合ってみろ」「......わかった」賢太郎は応じた。夕食前、雪乃が2階から降りてくると、ソファのそばに座る賢太郎の姿が目に入ったが、彼は無表情で感情が一つも読み取れなかった。やがて全員が食卓につき、食事を始めようとしたそのとき、直人に電話がかかってきた。友達に誘われたとのことで、断りきれず席を立った。「俺のことは気にせず、先に食べてくれ」賢太郎は黙って視線を落とした。早紀が声をかけた。「あまりお酒を飲みすぎないでね」「うん」直人が去ると、食卓は一気に静かになり、それぞれ黙々と食事を進めた。そのなかで加奈子だけが早紀と結婚の話をしていた。「......陽翔はもう会社で働き始めたの。彼の父親が先生までつけてくれて」「彼が真面目なら安心ね。結婚したら、しっかり夫婦で支え合って暮らすのよ」と早紀は念を押した。この姪は、小さい頃から何かと心配の種だった。でも、両親を事故で亡くし、自分のもとで育った彼女は、実の娘同然。だからこそ、結婚を控えた今、嬉しさと寂しさが入り混じっていた。幸い、相手の家とも付き合いがあり、家も近い。行き来もしやすいだろう。早紀は心から、加奈子と陽翔が幸せになることを願っていた。「もちろんよ」加奈子は雪乃を一瞥してから続けた。「陽翔は若くてハンサム、それに優しいし。私はちゃんと大切にするわ。どっかの誰かと違って、年取ったオヤジにしか嫁げなくて、お父さんみたいな人にしか相手にされないなんて、かわいそう」加奈子がこう言うのは、直人が聞いても、姪が叔母のために憤っているだけで済む話だった。だが早紀は立場上、何も言えなかった。しかも
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