さくらたちは部屋の外で待つよう言われ、中では将軍たちが利害を天秤にかけ、他に手立てはないものかと密議を交わしていた。饅頭は廊下にうずくまり、棒太郎を見上げた。「お前、今じゃ一応、士官なんだろ。俺たちが行くとしたら、勝算はどれくらいあると思う」棒太郎はさくらに視線を向けた。「さくらはどう思う」さくらは答えた。「困難なのは間違いないわ。でも、兵を一隊派遣するよりよっぽど勝算は高いし、危険も最小限。仮に任務をやり遂げられなくたって、私たちなら全員、無事に離脱できる」あかりも口を挟んだ。「そうよ、逃げることにかけては私たちが一番なんだから」紫乃が彼女を白けた目で見やった。「逃げるですって?軽身功よ、軽身功。私たちの軽身功が天下一品なの」あかりは笑った。「うん、そうそう。私たちの軽身功は天下一品なんだから。この役目、私たち以外に誰ができるって言うの」そう話していると、一人の近衛兵が近づき、戸口の外から北條守と葉月琴音が面会を求めていると告げた。さくらは、はっと身を正し、その瞳に鋭い警戒の色を宿した。あの二人を鹿背田城へ向かわせ、二の舞を踏ませるわけにはいかない。書斎の中から、佐藤大将の声が響いた。「二人とも、まずは表で待たせておけ」命を受けた近衛兵は下がり、その二人をも書斎の外で待たせるのだった。守と琴音は、さくらたちがいることに気づくと、複雑な表情を浮かべた。琴音は肘で守の脇腹をつつき、フンと鼻で笑った。「昔馴染みがいるじゃない。挨拶くらいしたらどう」守は気まずげに、何とも言えない視線を彼女に向けると、すっと脇へ下がり、立ったまま待つ姿勢をとった。琴音は「ふふっ」と声を漏らし、彼の隣へ歩み寄るとその背中を軽く叩いた。「まあ、照れちゃって。何を恥ずかしがることがあるのよ。どうせ一度は知り合った仲じゃない。堂々と挨拶すればいいだけでしょうに」あかりは彼女をまじまじと見つめ、不思議そうに首を傾げた。「おばさん、その人、息子さん?それとも弟さん?うちのさくらとそんなに親しかったかしら。昔馴染みなんて言えるほど?」「おばさん」の一言に、琴音の顔色は見る見るうちに土気色となり、鋭く言い放った。「誰をおばさんですって」あかりは彼女を改めてまじまじと見たが、その瞳には戸惑いの色が浮かぶばかりだった。琴音をおとしめる意図
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