貨物船が岸壁に着くと、十一郎は冴子と双月を伴って船を降りた。道中、冴子が尋ねた。「伯父様、今回はいらっしゃるのは伯父様お一人だけですか?勇兄さんと進兄さんは来ていませんか?」十一郎は楽しそうに言った。「彼らは来ていないが、玉葉が来ているぞ。我々がここに着いてからもう半月になる。福住屋に滞在しているんだ。今回はお前の父上の命令で、一つには光州の賊や海賊の状況を探るため、もう一つはお前が光州に到着しているかを確認するため。そして、玉葉を連れてきて、少し羽を伸ばしてもらおうと思ってな。せっかくの正月休みで書院も休みだし、あと一、二ヶ月くらい休んでも問題ないだろうと思ってな」冴子は驚きと喜びの声を上げた。「玉葉先生がここに?わぁ、それは素晴らしい!急いで会いに行きましょう!」冴子の教養の師といえば、相良玉葉である。彼女は書院で学んだが、その天賦の才は確かに聡明なものの、どうにも落ち着きがなく、学ぶことよりも体を動かすことを好んだ。書院にいた頃、しばしば梅月山に送られたが、その度に「手に負えない」と送り返されてしまうことが何度かあった。結局、七歳になるまで書院で学び、それから再び梅月山へと修行に戻ったのだ。文武を問わず、道を学ぶ者は師を敬い、その教えを尊ぶものだ。成人の儀の際にも、玉葉は祝いの品を贈ってくれたが、その時は来客が多く、ゆっくりと話をする暇もなかった。まさかこんな光州で玉葉先生に会えるとは、本当に嬉しいことだった。福住屋は、やや人里離れた場所に位置していた。決して格式の高い宿ではない。泊まっているのは、おおかた旅の商人たちで、彼らは福住屋の宿泊費の安さを当て込んで、長期滞在している者がほとんどだった。光州の役人がいかに憶測を巡らせようとも、まさか天方将軍が光州に滞在していること、しかも福住屋のような場所に身を置いていることなど、夢にも思わなかっただろう。玉葉は宿屋の小さな中庭で一巻の書物を読みふけっていた。穏やかな陽射しが降り注ぎ、肌を撫でるそよ風は春の到来を告げている。全身を通り抜ける心地よいあたたかさに、彼女の心は満たされていた。その中庭には、一本の背の高い木綿の木が植えられていた。今はちょうど花が咲き始めたばかりの季節。燃えるような赤い花はまだ数えるほどだが、枝先にちらほらと点在するその色は、見る者の目を奪うほど鮮やか
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