孝浩はさすがにもう姿を見せなくなったが、代わりに望月が、私の前に度々現れるようになった。彼は何度か供の者を連れて、工房が営む店に顔を出した。この店は刺繍師たちの作品を専門に扱っていて、ここ数年で名家や高官の奥方たちが贔屓にしてくれるようになり、私も時折お付き合いで顔を出すようにしていた。実のところ、刺繍品そのものは引く手あまたなのだ。何しろ、都広しといえど、清原澄代という刺繍師の腕前に敵う者はそうそういない。ただ、より身分のあるお客様に買っていただくことで、品物の値も高くつけられるからだ。今では朝廷も女性が戸主となることを認めている。彼女たちは皆、十分なお金を稼いで、自分の小さな家を手に入れ、穏やかに暮らすことを夢見ているのだ。私は姫君であり、摂政王妃の従妹でもある。身分の高い奥方たちが、私と親しくなりたがってくれるのも当然のことだった。望月は最初、供の者を連れて店の前を通り過ぎるだけだった。何気ないふりをして、ちらりと店の中を覗いては、そのまま去っていく。それが何度も続いた後、ついに彼は店の中へ入ってきて、物を買うようになった。店には、衣や袍の他に、扇子や手巾、小さな屏風といった刺繍の小物も置いてあるが、そのほとんどは女性向けの品だ。彼は着物を仕立てるでもなく、ひたすら折扇ばかりを買っていった。実のところ、折扇の種類は少なく、団扇の方がずっと多い。上等な布地に様々な花鳥魚獣の図案を施した団扇は、両面に刺繍することもでき、その図案はまるで生きているかのようだ。折扇が少ないのは、錦の布地で作るのが骨の折れる作業だからだ。錦は柔らかく、紙張りのもののように簡単には折り畳めない。それでも、開いたときの見事な様を楽しむために、時折作られることもあった。彼はそれをたいそう気に入ったようで、来るたびに一本買って帰るのだった。ある日、私は店にはいたが、表には出ず、奥の部屋で帳簿を付けていた。すると、彼がやって来て、丁稚に尋ねる声が聞こえてきた。「今日は、姫君様がお作りになった刺繍品はあるかね」丁稚が彼に答える。「団扇が一つございます。ただ、出来はそこそこということで、お安くしておりますが」彼の声が、喜びに弾んだ。「本当か!すぐにそれを見せてくれ」少し間があってから、彼の感嘆する声が聞こえる。「どこがそこそこなもの
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