土田はテラスに立ち、足立が車に乗って去っていくのを見送ってから、個室へ戻った。鈴はまだ電話をしていた。その声音は、先ほどよりずいぶん軽い。「仁さん、さっきの足立の反応、後ろめたいことがあるように聞こえなかった?」スマホの画面には、通話時間三十分と表示されている。電話の向こうで、仁が低く笑った。「君には、彼が実際にやったかどうかまでは分からないだろう」「分からないよ。だから揺さぶってみただけ。まさか本当に何か出てくるとは思わなかったけど」「やましいことがなければ、あそこまで動揺しない。あの反応なら、明らかに何かある」仁は続けた。「しばらく様子を見て。もしこのあと足立が城東との取引を止めるようなら、以前から彼らとつながっていたと見ていい」鈴は目を細めて笑った。「私もそう思ってた」仮に何もなかったとしても、足立という人脈を一つ作れたことになる。この茶席は、決して無駄ではない。「でも、本当にそうだとしたら、望愛はどうしてそんなことを?」「資金が絡んでいるのかもしれない」鈴は少し考えた。「この案件、かなりの額が投じられていたはずだよね。佐々木取締役の分も合わせれば、数百億にはなる。横領が目的だとしても、結局は自分たちの金でしょう?」「横領ではなく、損失の穴埋めだとしたら?」仁の声は落ち着いていた。「前にも言っただろ。この案件の工事を請け負っている側に、ギャンブルにのめり込んでいる人間がいる」そうだ。鈴ははっとした。「……実はずっと気になってたの。望愛はデザイナーをしていた頃にかなり赤字を出していたはずなのに、この案件に投じる資金をどこから用意したんだろうって」そう考えた瞬間、鈴の頭に一つの大胆な推測が浮かんだ。「もしかして、翔平が出した可能性はある?」その名前を聞いても、仁の声は平然としていた。「どんな関係なら、数億もの資金を出すと思う?」「……」それもそうだ。鈴が黙り込むと、仁は彼女のいる場所の気配に気づいたらしい。「茶を淹れられるの?」「もちろん。あなたはどんなお茶が好き?帰ってきたら、私が淹れてあげる」「君が淹れてくれるなら、何でもいい」鈴は思わず唇をゆるめた。その笑みはやわらかく、甘かった。その様子を見た土田は、そっと身を
اقرأ المزيد