「わかった。この話が事実だと確認できたら、考えるわ」そう言って、望愛は背を向けた。だが翔平はすぐには帰ろうとせず、もう一度洗面所のほうへ目をやった。「使えるか?」「……ネズミがいるって言ったでしょ。あなたはそういうの気にする人なんだから、やめておいたほうがいいわ」「ネズミがいること自体は問題じゃない。問題なのは、早めに駆除しておくことだ」翔平は言うべきことだけ言い終えると、それ以上は何も言わず、踵を返して出ていった。やがて車の音が遠ざかっていく。それを聞きながら、望愛はようやく大きく息を吐いた。冷や汗が肌に張りついていて、ひどく気持ちが悪い。「……出てきて」相見が洗面所から出てくる。彼もまた汗だくで、出てくるなり再びその場にひざまずいた。「赤穂さん、どうか俺を助けてください……!」その姿を見た途端、望愛は足を振り上げ、容赦なく彼を蹴り倒した。「聞こえなかったの!?翔平にまであんたのろくでもない話が伝わってるのよ!私だって隠せるものなら隠したいわ。でも、いざ帳簿を開いて金がなくなってたら、もう隠しようがないでしょ!」「まだ間に合います、間に合います!」相見は慌てて叫んだ。「言ったじゃないですか、方法があるって!」望愛は疑いの目を向ける。「……どんな方法?」相見はごくりと唾を飲み込み、望愛に身をかがめるよう目で促した。望愛が訝しみながら顔を寄せると、相見は彼女の耳元で二、三言、低くささやいた。それを聞き終えた瞬間、望愛の表情が激変する。「あんた、正気なの?」「もうそれしかないんです……前にも何度か、こうやって切り抜けたことがあります。今まで問題になったことはありません。それに今の不動産業界なんて……実際、みんな似たようなことをやってます」「……」月初め、雨宮家の御曹司の誕生日当日。雨宮家の邸宅は足の踏み場もないほどの賑わいで、表通りの端から端まで高級車が並んでいた。祝いに訪れた名家の人間たちであふれていたのだ。外では誰もが知っている。雨宮奥さんがこの子を正式に引き取るということは、将来の望みをこの子に託すということでもある。だからこそ、この日のもてなしに手は抜けない。鈴もあらかじめ重めの贈り物を用意して足を運んでいたが、本人の装いはそれほど目立つものではなかった。
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