かおるは瀬名家に滞在していたある日、不注意で火傷を負い、すぐに病院で治療を受けることになった。処置を終えて診察室から出たその時、数人の看護師がストレッチャーを押して駆け込んでくるのが目に入った。その後ろを慌ただしく追っていたのは――裕之と幸美だった。どうして……?かおるの目が鋭く光った。咄嗟に柱の陰に身を隠し、二人の視線から外れた。とはいえ、かおるはすぐそばに立っており、少し注意を払えば見つかる位置にいた。しかし、裕之と幸美の目は完全にストレッチャーの方へ向けられており、かおるの存在にはまったく気づいていないようだった。かおるは唇を軽く噛み、恐る恐る視線をストレッチャーへ向け、次の瞬間、目を大きく見開いた。そこに横たわっていたのは舞子だった。舞子はうつ伏せの状態で運ばれており、背中一面が血に染まっていた。シャツは傷口にべったりと貼りつき、見るも無惨な姿だった。なにがあったの?舞子、どうしてこんな傷を?その時、ちょうど綾人が病院の廊下を歩いてきて、呆然と立ち尽くすかおるに気づいた。「どうしたの?」かおるは我に返り、「知ってる人を見かけたの」と答えた。「挨拶する?」綾人の問いに、かおるは複雑な表情を浮かべて首を横に振った。「いいえ、後でいい。まず、彼女がどうしてあんな状態になったのか、知りたいの」「任せて」綾人はすぐに頷いた。「うん……ありがとう」綾人はスマートフォンを取り出してどこかに電話をかけ、そのままかおるの肩を支えながら病院を後にした。その途中で、里香から電話がかかってきた。焦った様子で声を上げた。「かおる、大丈夫!?ひどい火傷だったの?」「大丈夫、そこまでじゃないよ。薬を塗れば二、三日で治るって」かおるが落ち着いた声で返すと、里香はほっとしたように息を吐いた。「それならよかった。でも本当にびっくりしたわ」かおるは笑みを浮かべながらも、ふと思い出して言った。「それより、さっき病院で舞子を見かけたの」「えっ?舞子さん?どうして病院に?」「それが……わからない。背中が血だらけで、すごくひどい状態だった」「会いに行ったの?」「行かなかった。あの人たちもいたから」あの人たちが誰なのか、里香にはすぐに察しがついた。少し沈黙があった後、里香が話題を変え
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