まるで大スクープじゃないか!このことが社内に広まれば、大騒ぎになるに決まっている。きっとゴシップ好きの社員たちが湧き立つだろう。秘書は高鳴る胸を押さえつつ、スマートフォンを手に取って舞子の情報収集を始めた。十分も経たないうちに、険しい表情を浮かべながらオフィスのドアをノックした。「社長。桜井さんは現在ご自宅におられます。そして……明日の朝八時の便でF国に出発し、1年間の留学を予定しているようです」書類を読んでいた賢司は、その言葉に顔を上げ、眉をひそめた。「留学?」「はい、そのようです」秘書はうなずいた。「まだ正式に退院はしていませんが、ご家族がすでに航空券を手配しているのを確認しました」どうしてこんなにも急に、国外に……?秘書は、感情の読めない賢司の表情を恐る恐る見つめながら尋ねた。「社長、引き続き詳しく調査を……?」「必要ない」賢司は冷ややかにそう言い放ち、再び書類に目を戻した。秘書は軽く頭を下げ、部屋を後にした。だが胸の内では、ゴシップ魂がメラメラと燃え上がっていた。社長、本当に気にならないんですか?いや、自分は気になって仕方ない!だが、命令がなければ勝手な行動はできない。それがこの仕事だ。夜が更け、街に灯りがともる頃、高級住宅街は深い静けさに包まれていた。舞子はバルコニーに立ち、夜空を仰いでいた。煌めく星々を見つめながら、その胸には言いようのない重苦しさが広がっていた。そのとき、控えめなノックの音が聞こえた。「入って」扉がそっと開き、ひとりの使用人が果物の乗ったトレイを手に入ってきた。「お嬢様」彼女は舞子の前まで来ると、そっとスマートフォンを差し出した。舞子はじっと彼女を見つめながら訊いた。「お父さんたちに見つかっても、怖くないの?」使用人は小さくうなずいた。「怖いです。でも、お嬢様の力になりたいんです。クビになったとしても、それで済むなら構いません。お嬢様が、どんな状況にあるか分かってますから……これは、あのときの恩返しなんです。もしあのとき、お嬢様が助けてくださらなかったら、おばあちゃんは今も行方不明のままだったはずです」彼女の祖母は認知症を患っており、迷子になっていたところを、舞子が偶然見かけて連絡を取ったのだった。舞子にとっては、ちょっとした
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