由佳はその言葉を聞いたまま、静かに黙り込んだ。風早なら、きっと自分を幸せにしてくれるだろう。それでも、心の奥底ではどうしても景司のことを考えてしまうのだった。舞子に助けられたあの日のあと、彼女は亜夢の言う通りにはしなかった。三日が過ぎ、亜夢から電話がかかってきても、由佳は無言で通話を切り、その番号を着信拒否に設定した。そして今――親父という大きな問題がようやく解決した今になって、彼女の心にふと芽生える思いがあった。自分と景司のあいだに……まだ、何か可能性は残っているのだろうか、と。由佳は庭の椅子に腰を下ろし、夜風に揺れる木々の音を聞きながら、満天の星空を仰いだ。無意識に口元がほころぶ。空は澄み渡り、星の光はどこまでも優しかった。彼女はスマートフォンを取り出し、そっとシャッターを切る。言葉も添えず、ただ一枚の星空の写真だけをSNSに投稿した。最初に「いいね」を押したのは舞子だった。そのあとすぐに、他の友人たちからも反応が続いた。由佳は舞子とのチャット画面を開き、メッセージを打ち込んだ。【今回のことは、本当にあなたのおかげだわ。いつ時間が空いてる?ご飯奢るから】【私、最近すごく忙しいの。ねえ、代わりにあなたが手伝ってくれない?】その返信を見た瞬間、由佳の胸に小さな戸惑いが走る。思わず直接電話をかけた。「何をそんなに忙しくしてるの?」電話口から、舞子の明るい声が返ってきた。「活動の方向性を変えたの。風景写真じゃなくて、これからは人物写真を撮るつもりなの。今、スタジオを準備しているところ。カメラマンとアシスタントが足りなくてね。由佳は何をやってみたい?」由佳は少し考えてから、遠慮がちに答えた。「でも私、特別なことは何もできないわ。たぶんアシスタントくらいしか……」「それでいいのよ」舞子は優しく頷いた。「アシスタントからマネージャーの方向に進むこともできるわ。将来性もあるし、悪くない選択よ」「……じゃあ、ちょっと考えてみるね」「もちろん、もしまたライブ配信に戻りたいならそれでもいいけど」舞子の声は穏やかで、どこか姉のような温かさがあった。「でもね、ライブ配信者って若いうちだけの仕事でしょ?もう若くなくなったら、どうするの?」由佳は苦笑した。確かに、その通りだった。ライブ配信を始
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