美希は悪夢にうなされた。夢の中で彰彦は決して彼女を許さず、周囲の人々も次々と離れていき、最後に残されたのは自分ひとりだけだった。目を覚ましたとき、美希は体を丸め、虚ろな目をしていた。これは夢ではない。まさに現実そのものだった。今の彼女は、自立した孤高の存在であり、寄り添ってくれる者は誰一人いなかったのだから。ゴロゴロ――!ひときわ大きな雷鳴が轟き、美希は窓の外の暗い夜空を見上げた。理由は分からない。ただその瞬間、なぜか少しだけ気力が戻った。無理やり体を起こし、徹夜で編みかけていたマフラーを仕上げ、あらかじめ準備しておいた品々を一つずつ大きな箱に詰めていく。最後に手紙を書き添え、ようやく全てを整え終えると、静かにベッドへ戻った。だが横たわった途端、腹部に鋭い痛みが走った。無数の刃が内側でかき乱すかのような激痛。声すら出ず、医者を呼びたくても助けを求める力はもう残っていなかった。今夜が自分の限界だと、美希には分かっていた。寝返りを打つことさえ叶わない。それでも孤独に死んでいくのだけは嫌だった。無力な恐怖が全身を飲み込み、誰かがそばにいてくれることを切に願った。「……痛い……」かすかな声を絞り出したが、深い眠りに落ちている介護士には届かない。ベッド脇のナースコールにも手は届かず、美希はただ、死へと近づく痛みに身を委ねるしかなかった。これも報いなのだろうか。胸を満たすのは悔恨ばかり。だが、後悔してもすでに遅かった。夜明け前、空がわずかに白み始めた頃、美希の命の火は尽き、完全に息を引き取った。彼女にとって、それはある種の解放だったのかもしれない。介護士が異変に気づいたのは二時間後だった。美希の鼻先に手をかざし、体温を確かめると、顔色を変えて叫んだ。「美希さん……」ベッドの上の人は、もう二度と反応を示さなかった。「どうしてこんなに深く眠ってしまったの……!」自責の念に駆られた介護士の頬を、涙が伝った。長く美希を見守ってきた彼女は、日ごとに衰弱していく姿を知っていたからこそ、胸が張り裂けそうだった。それでも現実を受け入れ、介護士は真っ先に紗枝へと電話をかけた。夏目家の本宅では、平凡な朝が始まっていた。洗面を終えた紗枝のもとへ、介護士からの着信が届く。受話器からはすぐにすすり泣く声が漏れた。「美希さんが
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