昂司はようやく頭が冴え、自分にはまだ切り札があることを思い出した。あの部屋に監視カメラを仕掛けておいたはずなのだ。黒木お爺さんはその言葉を聞くや否や、すぐさま部下に映像の確認を命じた。だが隅々まで調べても、カメラらしきものはどこにも見当たらない。その報告を受けた瞬間、昂司の血の気がすっと引いた。「おかしい……この手で置いたんだぞ、確かに」言い終えるより早く、夢美が烈火のごとく飛びかかってきた。「昂司、あなたって人は!金を使って商売するとか言ってたけど、まさかこんな下劣なことをしてたなんて!」夫婦はそのまま取っ組み合いになり、周囲も止める暇がないほどだった。拓司も急ぎ駆けつけ、その光景を一瞥して黒木お爺さんに進言した。「おじいさん、今の昂司の評判は最悪です。一度、休ませるしかないかと」それは即ち、昂司の解任を示唆する言葉だった。本社に戻ってきたばかりの昂司が、それに応じるはずもない。「冗談じゃない!こんな些細なことで辞めろと言うのか!」拓司は冷ややかな視線で応じた。「では、どうやって収拾をつけるつもりですか。取引先はあなたの品性を問題視しており、あなたとはもう仕事をしたくないと言っています」昂司はぐうの音も出なかった。黒木お爺さんですら、もはや庇い立てはできない。「これほどの不始末を起こし、黒木家の面目を汚したのだ。当面は休むべきだろう」しかし夢美は納得がいかない。「おじい様、このまま許すおつもりですか?あんな気味の悪いことをしておいて、私が実家にどう説明すればいいんです?」数日前まで夫の良さを得意げに話していた夢美にとって、今はまるで顔に泥を塗られた思いだった。黒木お爺さんは一向に動じない。「夢美、男が浮気することなど珍しくない。広い心を持たねばならん。しかし今回は確かに昂司が悪い。昂司、早く夢美に謝れ」昂司は言われるままに謝った。「夢美、すまない。本当に濡れ衣なんだ。誓って何もしていない」「じゃあ、あのお金はどう説明するの?」夢美は引く気などさらさらなかった。金の話を持ち出されると、昂司の顔色はみるみる青ざめた。「あれは……投資に回したんだ」「じゃあ、その投資先はどこにあるの?」昂司は口をつぐむしかなかった。拳を固く握りしめ、紗枝という女から必ず
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