All Chapters of 億万長者が狂気の果てまで妻を追い求める: Chapter 971 - Chapter 972

972 Chapters

第971話

夢美の部門に所属する営業担当者たちは、全員が一時的に紗枝の指揮下に入ることになった。その引き渡しを前に、夢美は営業チームのリーダーたちを集め、会議室で冷ややかに告げた。「いい?あなたたちは彼女に『貸し出される』だけ。彼女を上司だなんて思う必要はないわ。ただの秘書にすぎないのだから、勘違いしないこと」営業五課のチームリーダーたちは、当然のように夢美の言葉に頷いた。「はい、夢美さん。我々は決して彼女の指示など聞きません」「全く聞かないのもダメよ。適度にサボるってこと、分かるわよね?」夢美は唇に笑みを浮かべながら釘を刺した。紗枝が自分の立場を奪おうだなんて、身の程知らずにも程がある。「承知しました」つまり、表向きは従うふりをして、実際にはベテランぶって仕事をせずにやり過ごせということだ。リーダーたちは遊んでいられるならそれに越したことはないと喜んだが、それでも不安はあった。「夢美さん、いつまで彼女の茶番に付き合えばよろしいのでしょう。我々にも家族がいますし、成果を出さなければ月給だけではとても足りません」その言葉で、夢美は紗枝に期限を設けていなかったことに気づいた。すぐにスマホを取り出し、紗枝に電話をかける。「紗枝、うちの部下たちからも意見が出ているんだけど、あなたの計画、どれくらいの期間を見込んでいるの?みんな、ただ付き合ってるだけじゃ不満なのよ。営業は実績がすべてなんだから、結果出さなきゃ誰もついてこないわよ」ちょうどその頃、紗枝は土地の所有者や周辺施設について資料を集め、調査を進めていた。彼女の中ではすでに計画が固まりつつあった。「半月ください」半月?そんな短期間で可能だというのか。夢美の脳裏に、紗枝がIMグループのサプライヤーと繋がっているのでは、という疑念が浮かぶ。「だめよ。半月なんて長すぎるわ。せいぜい十日」「十日ですか?」紗枝は、十日ではあまりに急すぎると感じた。「サプライヤー一つを奪うだけじゃない。営業五課の大人数がついているのに、十日で足りないとでも?」夢美は挑むように問い返した。紗枝は短く考え、静かに答えた。「……分かりました」速度を上げれば、きっと間に合う。夢美は満足げに通話を切り、部下たちにきつく念を押した。「紗枝が何をしようと、逐一
Read more

第972話

「じゃあ、あなたたちはこれからもダラダラ過ごすつもり?サボり続ける気なの?」紗枝は先ほど彼らが見せた怠惰な態度を指摘するように言い放った。先ほど強気に反論していた男たちでさえ、今は言葉を濁している。「お金を稼ぐのは、自分自身のためです。約束しましょう。十日以内に、私は必ず営業五課の課長になります。もし今月から本当に収入が欲しいなら、しっかり働くことです。私はあなたたちに何かを手伝ってほしいわけではありません。それぞれ自分の仕事をきちんと果たし、私に迷惑をかけなければ、それで十分です」そう告げると、紗枝は迷いなく部屋を後にした。残された一群の人々は呆然とし、しばし言葉を失った。紗枝は本当に、もう自分たちを放っておくつもりなのか?助力すら不要だと?それに、十日以内に課長になるだなんて、戯言ではないのか?またコネで出世を狙っているのか?営業五課の者たちは、それぞれ胸中で疑念を巡らせていた。だが、当の紗枝は彼らの心中など意に介さず、会社で三時間ほど資料整理などをすると、さっさと退社してしまった。「お義姉さん、もう帰るの?」と鈴が怪訝そうに尋ねる。「ええ、今日は早めに帰るわ。逸之と夕食の約束をしているから」「でも、まだ四時ですよ」「四時だから何?逸之に手料理を作ってあげたいの」紗枝は冷ややかに鈴を見やった。鈴は即座に言葉を失い、返す言葉も見つからなかった。彼女は内心で、紗枝が仕入れ先に行くのではないかと疑い、結局一緒に退社した。驚くべきことに、啓司が車で迎えに来ており、三人は本当に家へと帰ったのだった。その後二日間、紗枝は毎日のように早々に退社し、家で曲を作ったり、逸之に料理を振る舞ったりして、少しも焦る様子を見せなかった。週末、出勤の必要はない。鈴は屋敷で、三人がまるで小さな家族のように過ごす姿を見つめながら、羨望と嫉妬に胸を灼かれる思いだった。「ママ、この前キャンプに行ってから、あんまり遊びに行ってないね」逸之が無邪気に言う。「お兄ちゃんと一緒に公園に行かない?」「いいわね。じゃあ、唯に聞いてみようか」紗枝は唯に電話をかけた。唯も以前から会いたがっていたので、すぐに承諾してくれた。支度を整えると、紗枝はふと思いついたように啓司へ向き直った。「唯と久しぶりに会
Read more
PREV
1
...
939495969798
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status