夢美の部門に所属する営業担当者たちは、全員が一時的に紗枝の指揮下に入ることになった。その引き渡しを前に、夢美は営業チームのリーダーたちを集め、会議室で冷ややかに告げた。「いい?あなたたちは彼女に『貸し出される』だけ。彼女を上司だなんて思う必要はないわ。ただの秘書にすぎないのだから、勘違いしないこと」営業五課のチームリーダーたちは、当然のように夢美の言葉に頷いた。「はい、夢美さん。我々は決して彼女の指示など聞きません」「全く聞かないのもダメよ。適度にサボるってこと、分かるわよね?」夢美は唇に笑みを浮かべながら釘を刺した。紗枝が自分の立場を奪おうだなんて、身の程知らずにも程がある。「承知しました」つまり、表向きは従うふりをして、実際にはベテランぶって仕事をせずにやり過ごせということだ。リーダーたちは遊んでいられるならそれに越したことはないと喜んだが、それでも不安はあった。「夢美さん、いつまで彼女の茶番に付き合えばよろしいのでしょう。我々にも家族がいますし、成果を出さなければ月給だけではとても足りません」その言葉で、夢美は紗枝に期限を設けていなかったことに気づいた。すぐにスマホを取り出し、紗枝に電話をかける。「紗枝、うちの部下たちからも意見が出ているんだけど、あなたの計画、どれくらいの期間を見込んでいるの?みんな、ただ付き合ってるだけじゃ不満なのよ。営業は実績がすべてなんだから、結果出さなきゃ誰もついてこないわよ」ちょうどその頃、紗枝は土地の所有者や周辺施設について資料を集め、調査を進めていた。彼女の中ではすでに計画が固まりつつあった。「半月ください」半月?そんな短期間で可能だというのか。夢美の脳裏に、紗枝がIMグループのサプライヤーと繋がっているのでは、という疑念が浮かぶ。「だめよ。半月なんて長すぎるわ。せいぜい十日」「十日ですか?」紗枝は、十日ではあまりに急すぎると感じた。「サプライヤー一つを奪うだけじゃない。営業五課の大人数がついているのに、十日で足りないとでも?」夢美は挑むように問い返した。紗枝は短く考え、静かに答えた。「……分かりました」速度を上げれば、きっと間に合う。夢美は満足げに通話を切り、部下たちにきつく念を押した。「紗枝が何をしようと、逐一
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