All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1631 - Chapter 1640

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第1631話

「妊娠して三か月の間は気をつけないといけないんだ。君が旅行したいなら、子供が生まれてからまた行こう。もう遊びたくないって言うまで思いっきり遊ばせてあげるからさ」悟は明凛にそう約束した。今はお腹の中にいる子供を大事にしなければならない。明凛は健康そのもので、妊娠したばかりだから、少し気をつけておけば何も問題はない。しかし、悟は安心することができず、明凛の妊娠が発覚すると、すぐに旅行を中断して、彼女を連れてすぐに帰ってきたのだ。しかも弦に頼んで、九条家のプライベートジェットを借りるまでしてだ。弦は従弟の妻が妊娠したと聞き、それはとても大ごとだと思い、悟が電話して頼んでくるとすぐ夫婦二人にプライベートジェットを用意し帰らせた。悟は九条家の若者世代の中で最初に結婚した人間だ。明凛のお腹の中には九条家にとって、孫世代にあたる初めての子供がいるのだから、一族がこの知らせを知るとみんなが盛り上がった。二人がまだ帰って来る前に、親戚一同これでもかと妊婦に良いものをたくさん送ってきた。年配者の中には、子供が生まれた後のベビー用品まで大量に送りつけてきたのだった。一族みんなからここまで明凛のお腹にいる子供が重要視されて、悟も気が気じゃなかった。「出産したら、子供が大事すぎて旅行になんか行けないでしょ?さっさと唯花と姫華を入れてあげてよ」明凛が起き上がろうとしたので、悟は慌てて彼女をベッドに押し付けて言った。「ちゃんと横になっているんだ。すぐドアを開けるから」悟は明凛がベッドからおりてこないように、すぐにドアを開けに行った。「九条さん、こんにちは」悟の姿を見ると、唯花と姫華はそれぞれ彼に挨拶した。「二人ともいらっしゃい。明凛は部屋で休んでますよ」悟は微笑んで道を開け、二人を部屋の中に通した。唯花が通り過ぎる時に、彼は小声で話しかけた。唯花は立ち止まり彼のほうを見た。「明凛が勝手にベッドからおりてあちこち歩き回らないようにしっかり見ててください。数時間もかけて帰ってきたから、絶対疲れてるはずです。でも、じっとしていられない子だから、俺が居なくなるとサルみたいにおとなしくしてくれなくて」唯花は笑って言った。「わかりました。代わりに彼女が歩き回らないようにしっかり見張っておきます」それを聞いて悟はようやく安心し、部屋を
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第1632話

姫華は笑って言った。「あなた達夫婦は本当に幸せね。新婚旅行に行って妊娠するなんて。明凛、おめでとう。妊娠したって知ってたら、妊婦さん用にいろいろ買って来たのに。唯花ったら、結城さんからあなた達が予定より早めに帰ってきたって言われて、心配していたのよ。私を連れて急いで駆けつけたもんだから、何も買って来なかったわ」明凛は急いで言った。「そんなもの買ってくる必要ないって。私がまだ帰ってきてもいないのに、悟の親族たちがめっちゃ買ってきてて、すごく驚いたんだから」結束した巨大一族が贈り物をしてくると、本当に驚かされる。「妊娠したばかりだし、別にこれといって栄養あるものを取らなくたって、三食きっちり食べてればいいのよ。あなた達も買ってこなくていいから、勘弁してちょうだい」明凛が二人の親友に手を合わせてお願いしたものだから、みんな一緒に笑い出した。すると使用人が果物やお菓子を持って入ってきた。明凛は二人にお菓子を勧めた。唯花たちも遠慮することなくいただいた。二人は唯花の故郷から戻ってきたばかりで、お腹が空いていたのだ。二人はいくつもお菓子を食べてお腹を満たした。「明凛、つわりはどうなの?」姫華はお茶を入れてそれを一口飲むと、気になって尋ねた。「うちの義姉さんはまだ吐いているのよ。たぶん出産するまでこのまま続きそうだわ」姫華は毎回義姉がつわりで吐いているのを見ると、母親になるというのも大変だと思った。彼女も裏で兄に理紗に良くしてあげて、決してがっかりさせるんじゃないと何度も注意していた。彼女は子供を生むだけで大変なのだから。もし兄が理紗を悲しませるようなことをすれば、姫華はすぐに兄にガツンと言ってやるつもりだ。妹にそんな話をされて、玲凰は軽く姫華を小突いた。玲凰は今でも十分妻を溺愛している男だと自負していた。妹にそのような脅しをかけられて、彼はなんとも言えない気持ちになってしまい、思わずちょっと妹を小突いたのだ。「妊娠したばかりでつわりは何もないのよ。ひどくなければいいんだけど」明凛も神崎家の若奥様のつわりがかなりひどいことを知っていた。玲凰は妻をかなり大事にしていて、一時期どうしても子供を堕ろすと言って聞かなかったのだ。唯花夫婦までも彼を説得しに行った。「人によってそれぞれだからね。普通はつわりは三か月く
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第1633話

「うん、あなた達で決めてもらっていいからね。何か私に手伝えることがあったら何だって言ってよ」明凛は自分は特に何もできることはないと思った。ただ資金提供しかできない。どうにも二人には申し訳なく思っていた。唯花と姫華はそれぞれ口を開き笑って言った。「あなたは今、体が優先なんだから」明凛は言った。「妊娠中だって活動できるよ。多くの女性が妊娠した後も働いてて、もうすぐ出産って時に産休をもらってるじゃない」「それは他の人のことでしょ、あなたは違うんだから。あなたはね、家で国宝級の扱いをされていればいいのよ」唯花は笑って言った。「九条さんのあの慌てようときたら、本屋での店番だって、させてもらえないかもよ」明凛「……」女性三人がおしゃべりしていると、悟がドアをノックした。彼はドアを開けて入って来ると、その手には葉酸の豊富ないちごヨーグルトがのったトレイがあった。聞くまでもなく妊娠したばかりの明凛に食べさせるつもりだ。「理仁が迎えに来て、下で待っていますよ」悟はベッドのほうへ歩きながら唯花に伝えた。彼はトレイをベッドサイドテーブルに置くと、姫華に言った。「神崎さん、桐生君もあなたのお迎えに来ていますよ。どうも夕食の誘いのようですね」この時、三人はやっと外は太陽が西に沈んでしまったことに気がついた。「明凛、ちゃんと休んでね。私たちはこれで失礼するわ。また会いに来るわね」唯花と姫華は自分の大切な人が迎えに来たと聞くと長居することはなかった。二人が帰ってから、悟は明凛に言った。「明凛、母さんがデパートに行って買ってきたいちごで作ったんだ。葉酸がなんたらとか言ってたけど、これ食べて。三十分経ったら夕食にしよう」明凛は言った。「まだお腹空いてないけど」「君もお菓子を食べたの?」「ううん、なんだか甘い物は食べたくなくて」明凛は口ではお腹が空いていないと言っているが、いちごヨーグルトを手に取って食べた。義母がわざわざデパートに行って買って来たのだから、食べないと義母に失礼になると思い全部食べてしまった。「何か食べたい物があったら言って、買ってくるから」悟は女性が妊娠すると好みが変わるというのを聞いていたのだ。「一口サイズに切ったマンゴーが食べたいわ」悟は言った。「人に頼んで買って来てもらうよ」妊娠中でも食
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第1634話

「浮かれてなんかないぞ。さっき義父さんと義母さんに報告したら、すごく喜んでたよ」悟は帰ってきてから、義理の両親にまだ報告していなかったことを思い出した。明凛が友人たちとおしゃべりしている間に彼らにこのおめでたい知らせを伝えていたのだ。牧野家は娘の妊娠を知って、それはもちろん大喜びしていた。「お父さんとお母さんに言うだけでいいわ。今は周りに妊娠したって知らせて回る必要ないからね。妊娠初期はまだ不安定な時期だから状況が変わりやすいし、みんなに伝えるにはあまり良くないわ。三か月経って安定期に入ってから言っても遅くないんだし」悟はコクコクと頷いていた。彼自身も妊娠して三か月経つまでは、普通あまり周りには伝えないというのを聞いたことがある。妊娠初期は流産になりやすく、あまり早く周りに妊娠報告をして万が一があった時に、誰もが辛い気持ちになるからだ。二人が部屋で赤ちゃんの話をしている頃、唯花と姫華は一階におりていた。そこには本当に理仁と善の姿があった。小百合がこの時二人の社長に挨拶をしていた。唯花がおりてきたのを見て、理仁は立ち上がり小百合に言った。「おば様、妻と一緒にこれで失礼しようと思います。お邪魔してすみません」「お邪魔だなんて、そんなわけないでしょう。唯花さんと神崎さんに来てもらって嬉しかったわ。お二人とも、これから時間があったらよくうちへいらしてくださいね」小百合は笑顔で言った。明凛が妊娠したので、悟はきっと彼女をあまり外へ出さないだろうと思ってそう言ったのだ。しかし、毎日家の中にいてもストレスが溜まるだろう。もし唯花と姫華が頻繁に来てくれれば、明凛も誰かとおしゃべりして気晴らしができる。「おば様、もちろんです」四人は小百合に別れの挨拶を済ませると、彼女に見送られながら九条家を後にした。理仁はボディーガードを連れて来ていた。唯花は理仁の車に乗り込み、自分の車はボディーガードに家まで運転してもらうことにした。唯花は車に乗ると、笑顔が消えた。自分の平らなお腹をさすって理仁に言った。「私たちが結婚してから明凛たちより長いのに、まだ妊娠しないね。明凛は新婚旅行中に妊娠したのに」理仁は彼女の手を握って慰めの言葉をかけた。「焦らないで自然の成り行きに任せよう。それに占い師の方も言ってたじゃないか、俺たちは秋に入るくらいにお
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第1635話

「故郷に会社の拠点を作るって話はどうなってる?オフィスを借りた?」この時、理仁が話題を変えた。「ええ、社員も雇ったのよ。彼らは来週月曜日から正式に働き始めるの」理仁は彼女を絶賛した。「君と神崎さんはまだ素人だっていうのに、仕事の効率がすごく高いな」唯花は笑って言った。「主に姫華のおかげよ。彼女は何をやるのもサッとやってしまうんだから。だけど、出だしが良いのを見て彼女ったら、後は私に任せて、構おうとしないんだからね」「言ったろう、神崎さんは忍耐力に欠けるって。彼女の性格はああなんだよ。彼女が君と牧野さんのようにしっかり地に足をつけて地道にやるタイプと出会わなかったら、早い段階で人に騙されていたかもね」おばあさんが人を見る目はやはり間違いない。姫華が理仁に思いを寄せ始めた頃にはおばあさんがすでに理仁に、彼女は結城家の若奥様としては相応しくないと言っていた。しかし、おばあさんのその言葉がなくても、理仁が姫華を好きになることはなかった。そもそも、理仁と玲凰は互いを目の敵にしていた。それなのに彼の妹を好きになることなどあるはずないだろう?もし唯花が理仁と結婚する前に詩乃とは伯母と姪であることがわかっていたら、おばあさんからいくら叩かれようとも、理仁は絶対に唯花と結婚することはなかっただろう。結婚してから唯花は詩乃の姪であることがわかったので、彼は仕方がなかった。唯花のためにも、ただゆっくり玲凰との関係を和らげるしかない。それでも神崎家が唯花と唯月の二人をとても大切に思っているのでよかった。彼らが結城グループとまた対立するようなことになっても、唯花のことを考慮して下手に動けないはずだ。少なくともそのような事態を回避しようとするに決まっている。今、二つの巨大グループは提携関係を結んではいないが、以前ほどピリピリした雰囲気ではなくなっている。「だけど、姫華には良い所がたくさんあるわよ。彼女の人脈は広いし、いろいろ手回ししてくれるのよ。ただちょっと飽きっぽいかもね。あまり人付き合いも好きじゃないみたいだし」唯花は姫華には及ばないと思っている。どうあがいても姫華のほうが最初から条件的に揃った環境にあるからだ。彼女がいくら多くを学び、上流社会に溶け込もうと努力し、駆け引きばかりのビジネス界に頑張って馴染もうとしても、まだまだ
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第1636話

もう結婚して長いので、唯花は理仁が自分を見つめるその意味を理解した。彼女はサッと運転手と助手席に座るボディーガードに視線を向け、彼らが振り向いていないのを確認した。運転手は運転することに集中しているし、ボディーガードは携帯をいじっている。それこそボディーガードが自分を守るための唯一の方法だからだ。彼は携帯をいじって動画を見るか、小説を読むかして、その意識を他所へ向けるのだ。そうすれば主人夫婦がどんな甘い言葉を囁いているか気にならなくなる。すると唯花は素早く理仁にキスをした。それでようやく理仁の機嫌が直り、彼は低く落ち着いた声で強調して言った。「明日の朝出勤前に必ずラブレターを受け取りたいな」「ええ、約束するわ」唯花はニコニコ笑って応えた。「桐生さんもここまで姫華を迎えに来るなんて、実際あの二人なかなかイイ感じじゃないの」理仁は頷いた。「桐生さんのほうはきっと暫く星城を離れるんだろう」「どうして?出張かなにか?」善は姫華のことが好きだから、唯花は思わず尋ねずにはいられなかった。「蒼真さんの奥さんがもうすぐ出産だって忘れた?遥さんに子供が生まれたら、叔父さんになる善君はもちろんその子に会いに戻るよ。出産後病院で会うことができるからね。遥さんが退院して家で静養する間は、善君もあまり会いにはいけないだろうし。だから、彼は出産前に帰るんだよ。退院して家で子育てを始めるまでは数日は病院に行くんじゃないかな。その後やっと星城に帰ってくるよ。それからまた満一カ月になったらA市に戻るだろうね」唯花は笑って言った。「そうだったわね、そのことを忘れていたわ」遥は男の子の双子を生むのか、それとも両方女の子なのか。はたまた男の子と女の子の双子だろうか。遥が出産を終えて、一カ月経ったら、理仁と唯花もお祝いに会いにいくつもりだ。そこで唯花も子供が授かれる幸運をおすそ分けしてもらいたいと思っている。唯花と理仁二人はおしゃべりに花を咲かせていたが、善と姫華のほうはそれぞれ車で来ていたので、交流ができなかった。そして神崎グループが経営するホテルに到着し、善が予約しておいた個室に入ると、善は姫華に言った。「姫華さん、僕は明日一度A市に帰ります」姫華はそれを聞いて少し驚き、すぐに尋ねた。「おうちの用事?」姫華はまだ桐生家に
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第1637話

恋敵がいる今、善はさらに星城から離れたくなかった。自分がいない間に、帰ってきてみれば姫華が一颯の彼女になっているかもしれない。「やっぱり帰ってご両親やご家族と一緒に過ごす時間は大切ね」姫華はそれを理解して言った。「姫華さん、一緒にA市に行ってくれませんか?」善は尋ねた。彼は姫華を連れて帰り、両親たちに会わせたかった。彼らは善には星城に好きな人がいて、姫華の写真も見たことはあるが、実際に会ったことはまだない。姫華は細かい事は気にしない豪快な人間だが、善のそのひとことで顔を真っ赤にさせた。「まだ正式に付き合ってもいないのに、ご両親にお会いするのは早くないかしら。お母さんが……あなたがお母さんに認められたら、いつでもご家族に会いに行くから」善はがっかりした後、すぐに闘志を燃やして穏やかに微笑んだ。「そう時間をかけずにお母様に認めてもらえるはずです」彼が努力しても母親の壁を越えられないのであれば、最終手段として自分の両親と兄夫婦に出てきてもらうしかない。この時、店員がドアをノックし、花束を持って入ってきた。善はそれを見ると、立ち上がり店員からその花束を受け取った。そして、それを姫華の前に差し出し、熱い眼差しで見つめ、また春の日差しのように温かな微笑みを見せた。「姫華さん、これはあらかじめ注文していたんですが、さっき九条家にあなたを迎えに行ったので、持って来るのはタイミングがよくないと思って」姫華は笑顔でその花束を受け取った。「毎日あなたからたくさん花束をもらえるわね」善のこの花束攻撃はかなりの頻度である。毎日何度も姫華に贈っている。それに花だけでなく、様々なプレゼントも持って来る。彼は思いつく限りのことをして彼女にアプローチしているのだ。姫華に誰かから追い求められ、チヤホヤされる醍醐味をたっぷり味ってもらっている。甘く幸せな雰囲気で人を酔わせる作戦だ。「姫華さんが気に入って喜んでくれるだけでいいんです」「気に入ったし、とっても嬉しいわ。毎日カッコイイお兄さんから花がもらえて、毎日気分がいいもの」善は姫華の手をとり、ぎゅっと握った。「姫華さん、僕の願いは、毎日あなたの傍にいることです。毎日あなたを楽しませてあげて、可愛くキラキラ輝く笑顔で太陽みたいに僕の心を照らしてください。姫華さ
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第1638話

詩乃は嬉しそうに言った。「それはとっても良いお知らせね。結婚してすぐに赤ちゃんを授かるなんて幸せなことだわ」「九条家のみなさんもすっごく喜んでたわよ。悟さんなんて緊張して慌ててしまって、明凛を国宝かなにかみたいに壊さないように扱ってるって感じで」詩乃は笑った。「それは当然よ。彼は若い世代では結婚した一人目ですもの。明凛さんのお腹にいる赤ちゃんは初孫になるのね、だから一族のみんなが注目しているのよ」次の世代の一人目の子供はいつでも家族中から期待され、大切に見られるものだ。「唯花ちゃんの様子は?」詩乃は姪っ子がまだ妊娠しておらず、明凛のほうがハネムーンに行って妊娠したものだから、唯花の気持ちを察して尋ねたのだ。姫華は唯花の反応を思い返して言った。「特にいつもと変わりなかったけど。お母さん、そんなに唯花の心配しなくて大丈夫よ。今はもう妊娠は急がず自然に任せるってふっきれてるんだから。それに、私たちとっても忙しいから、唯花も子供のことを考えるような余裕はないわ」以前は唯花はただ明凛と開いた本屋の仕事しかしていなかったので、時間に余裕があったから、いつも子供のことを考えていた。暇で家にいると余計なことを考えてしまうから、何かしら見つけて動き、気持ちを稼ぐことに向けたほうがいいのだ。女性は結婚しても稼ぐことができるし、そのほうが夫側の家族に対しても堂々としていられる。唯月の結婚生活を見て、姫華もそのように考えるようになった。夫がどれだけ稼げるかに関わらず、女性は経済的に自立していたほうがいい。男が言う養ってあげるという戯言など信じないほうがいい。暫く養ってはくれるが、すぐに妻を煩わしく思うようになるのだ。夫に生活費をもらう時、彼らは初めは喜んで出してくる。それがだんだんぶつくさと文句を言うようになり、呆れた顔をされて、その後は怒鳴り散らすようになる。最終的には生活費を出そうともしなくなるのだ……もちろん、全ての男があの佐々木俊介と同じだというわけではない。この世には、良い人はやはりたくさん存在している。「あなた、ほぼ毎日唯花ちゃんと一緒にいるでしょ。もし、何か悩んでいる様子があったら、気晴らしさせてあげてよ」「お母さん、わかってるから、安心して。唯花は私の従妹よ、他の誰よりもあの子が幸せに楽しく生きてほしいって思っ
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第1639話

「お母さん、私今ホテルにいるよ。竹の間よ」姫華は仕方なく、自分はすでにホテルにいることを教えた。詩乃は少し黙っていてから尋ねた。「あなた、桐生さんと食事しに来たの?」「そうよ」姫華は正直に認めた。神崎家は姫華が善と一緒になるのは許していないが、姫華のほうはそんな家族の言葉になど耳を貸さなかった。彼女は善と一緒にいると、とても楽しいと思っているのだ。楽しいかどうかが一番重要だ。善と一緒にいて楽しいのだから一緒にいて当然だろう?「さっき到着したから、まだ注文してないわ。だったら、善君と一緒にそっちに行って一緒に食べよっか?」詩乃は唇を噛みしめ言った。「今から私がそっちに行くわ」そう言うとすぐに電話を切った。姫華は携帯を手に持ったまま善を見つめて言った。「お母さんが白鳥さんにご馳走したくて私たちも一緒にって。少ししたらお母さんが来るから注文は後にしよっか」自家のホテルにある料理であれば姫華は熟知している。善は笑った。「わかりました」神崎夫人は自分を気まずくさせるつもりだと善はわかった。白鳥一颯は詩乃が善の恋のライバルとして見つけてきた男だ。白鳥家はあまり目立つ一族ではないが、麗華の実家である。一颯と理仁は従兄弟同士で、白鳥家と神崎家では家柄が釣り合うのだ。詩乃がふるいにかけて見つけだし、自ら一颯と姫華が知り合うように企むくらいだから、白鳥一颯がハイスぺ男子であることは間違いない。姫華は善が快くそれを受けたので、何か言おうとしていた言葉を呑み込んだ。「姫華さん、何か言いたいなら遠慮しないでください」善は彼女を気遣って言った。「お母さんがこうするのは、きっと私と白鳥さんをくっつけるためだと思うの。最初は気づかなかったけどね。それでお母さんったら、私の前で白鳥さんがいかに素晴らしいかを熱く語ってきたわけだわ。で、さっきお母さんの企みに気づいたのよ」善は変わらず穏やかに言った。「わかっています。初めて白鳥さんをお見かけして、おば様が彼をかなり褒めていると聞いて、そんな予感がしていたんです」それで彼はわざわざ理仁に電話までして一颯の恋愛事情について尋ねたのだ。確かに一颯は彼女はなくフリーだ。理仁はそれを聞いて、まだ何も起きていないのにビクビクしすぎだと言っていた。善は自分が余計に構えすぎてい
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第1640話

姫華は善のことを好きになっている。彼女は焦って彼の告白を受け入れるまえに、誰かに追い求められて、チヤホヤされるのを味わってみたいのだ。姫華は笑って言った。「白鳥さんも私のことを気に入るとは限らないもの。ただお母さんが焦って一人でもがいてるだけ。私が好きじゃないなら、お母さんがいくらあがいたって意味はないでしょ。私が誰を好きになるかは、私自身が決めることだもの」姫華は以前、一颯とは全く知り合いでなかったが、彼は理仁の従弟だから、姫華が理仁に熱を上げていたことくらい知っているはずだ。今彼女は理仁への気持ちは諦めて冷めてしまっているが、一颯が気にしないとでも思うのか?母親がこのようにあがいたところで意味はない。姫華にその気がなければ、一颯も渦中に飛び込んでくることなどない。姫華のその言葉が魔法のように善を安心させてくれた。そして心の中で早い段階で姫華が気になり彼女に近づいておいてよかったと思っていた。先に彼女に自分を認識してもらい、有利な立場になって姫華と仲を深めることができた。そうでなければ、今から行動を開始したとして、白鳥一颯に勝てるとは限らない。すると詩乃はすぐにやって来た。「おば様、こんばんは」善は詩乃が入って来るとすぐに立ち上がりその整った顔をニコニコさせて出迎えた。詩乃は以前からこの男は穏やかで礼儀正しく、毎回会うと微笑んでいると思っていた。しかし、この時の彼の笑顔はまるで狡賢いキツネのように感じた。その表情もまるでキツネそっくりだ。しかし、彼女は一度たりとも桐生善が心が清く善良な男だと思ったことなどない。あの蒼真に重責を任され、一人で星城にあるアバンダントグループの子会社を率いている人間だ。それにビジネスはどんどん拡大し、親会社からは絶えず巨額の投資をされているのだから、善はかなりのやり手だということだ。もちろん、善が悪い人間だとは言えない。ただ、周りが思っているほど彼が慈愛に満ち、寛大な男ではないはずだ。ビジネス界で多くの人間の中に揉まれ、成功を収める人間は、情け容赦なく強行手段に走ることもあるのだ。「どうも」詩乃は善に会いたくないので、一応礼儀はあるが、善に挨拶されて淡々とひとことだけ返した。詩乃が腰掛けると、その後座ろうとした娘に言った。「姫華、白鳥さんがもうすぐ到着されるから
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