「ママはちょっと用事があっていないんだ。すぐに帰ってくるよ」隼翔は嘘をついておいた。「外でママが戻って来るのを待っていよう」陽はひとこと「そうなんだ」と返した。隼翔は陽を抱いて一階までおりてくると、再び陽に尋ねた。「陽君、食べたいお菓子があるかな?おじさんが買ってあげるよ」「ありがとう。でも、おばたんの家にたっくさんおかしあるから、いらないんだ」陽は今ほとんどの場合、唯花の家で夜を過ごしている。朝は七瀬が彼を稽古に送っていくので、稽古がない日だけは母親と一緒に寝ているのだ。唯花も理仁も陽のことを非常に可愛がっていて、たくさんのお菓子を買ってあげている。「おばさんが買ってるお菓子はおばさんのお家のものだろう。おじさんも陽君に買ってあげたいんだよ。陽君、おじさんもカッコイイところを見せたいなぁ」陽は隼翔を見つめた。隼翔の言った言葉の意味がよくわからないのだ。隼翔は詳しくどういうことか説明することはなく、陽に尋ねた。「陽君、おじさんがパパになったらいいなって思ったことはないかな?」「ぼく、パパはいるよ」それを聞いた隼翔は言葉を詰まらせて、また口を開いた。「もちろん陽君にはパパがいることは知っているよ。誰にだって生みの父親はいるんだ。だけど、人によっては例外もあって二人パパがいたりするんだ。君はパパが二人いらないか?俺にももう一人のパパにならせてくれないかな?」しかし陽は首を横に振った。「あずまおじたんはおじたんだよ。パパはパパなの。あずまおじたんがどうやってぼくのパパになれるの?」彼はまた続けた。「ぼくにはパパ一人でじゅうぶんだよ。二人もいらない。ママはいっつもよくばったらダメだって言うんだ。それは誰かにわけてあげないといけないんだって。おじたん、他の子のパパになったらいいんじゃないのかな」それを聞いた隼翔は言葉を失ってしまった。この子はかなり賢いのだが、幼すぎてどう説明してもわかってもらえない。「陽君、おじさんはね、君のママのことが好きだから結婚して家族になりたいんだ。そうなったらおじさんたちは一家三人になって、陽君はおじさんのことをパパと呼べるんだよ」「だけど、ぼくにはもうパパがいるよ。あずまおじたんはママとけっこんしたいの?」隼翔は笑った。「そうだよ。ママと一緒になってもいいかな?」
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