All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1731 - Chapter 1740

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第1731話

瑞雲山邸にて。唯花は姉に電話をかけた後、陽がサンドイッチを食べ終えるのを待ち、それからまた体温を測って理仁に言った。「今の体温は37度7分。また何か別の物理的な方法を試そうか?」理仁は陽に温かいお湯を入れたコップを持ってきて、少し飲むように促しながら言った。「陽君は今食べたばかりだし、少し休ませてからまた試そう。熱が下がるには時間がかかるんだ。焦らなくていいし、心配しなくても大丈夫。田沼先生が薬を処方してくれているし、家にも用意してあるから」「プルプルプル……」理仁の携帯が鳴った。唯花が言った。「陽ちゃんの熱は下がりかけているし、あなたは会社で忙しいでしょう?先に仕事に行って。私が家で陽ちゃんの面倒を見るから」理仁は返事をせず、まず電話に出た。相手は辻社長だった。「辻社長からだ」理仁は夕菜を嫌っていたが、辻社長に対しては相変わらず礼儀正しかった。結局のところ、二つの会社は提携を模索しているところだからだ。しかし、もし夕菜があまりにひどく纏わりついてくるのなら、理仁は目前にある利益を放棄しても、辻グループとは提携したくなかった。電話の向こうで、辻社長は朗らかに笑いながら言った。「結城社長、昼食を一緒にいかがですか?私がご馳走します」理仁が返事をする前に、彼は続けた。「俺たち二人だけです。御社のスカイロイヤルホテルで、個室を予約しておきました。昨夜話し合ったプロジェクトについて、食事の時にまた話しましょう。問題がなければ、契約を結べればと思っています」夕菜は昨夜、大胆にも理仁の手の平を撫でた。辻社長は一晩中娘を叱り、説教したが、それでも理仁には申し訳ないと感じていた。もともと彼が娘を連れて理仁と商談すること自体、理仁のルールを破っていたのだ。理仁は寛大でそんなことを気にしなかった。結婚後の理仁は以前よりずっと度量が大きくなったことに、辻社長はかなり感心していた。愛が理仁を変えたのだ。しかし、娘があんなことをしてしまったことで、辻社長は自分を責めずにはいられなかった。彼は娘をとても可愛がっていたが、それにも限度があった。何かあっても、娘に他人の結婚生活に割り込むことなど許さない。そこで辻社長は、他の会社を考慮せず、結城グループと提携することを決めた。この提携関係をもって、理仁に謝罪の意を示そうと思ったのだ。
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第1732話

「陽ちゃんが病気なのに、家に置き去りにするのは心配だし、あなたも同じでしょ?私が一緒について行ったら、あなたは陽ちゃんを安心して使用人に任せられるの?」理仁は黙り込んだ。彼も確かに心配だった。「次、今度こそ絶対について行くから、そんなに冷たい顔をしないで。二階に行って服を着替えて、早く出かけたら?辻社長を待たせちゃだめよ」「君も一緒に来て、服を選んでくれよ」理仁はそう頼んだ。唯花は陽を抱き上げて立ち上がり、そのまま歩き出しながら言った。「あなたの服、全部私が買ったものじゃない?好きな黒ばかりで、どれも似たようなものよ。適当に一着選べば、全部似合うわ。あなたのスタイルはモデル並みのようなものだし、どれを着ても格好いいんだから。今あなたが毎日しているネクタイも、私が買ったものばかりだし、わざわざ私が買ったのを選ばなくても、適当に一本選ぶだけで、あなたのスマートさに花を添えるわよ」理仁は小声でつぶやいた。「着るのを手伝ってほしいんだよ」唯花は振り返って彼をちらりと見て、笑いながら言った。「じゃ、早くついてきなさい」理仁は笑って、早足で追いつき、唯花の腕から陽を受け取った。「陽君は俺が抱いて行くよ。君が疲れちゃうだろう。陽君、初めて会った時よりずっと重くなったな」「あの時はまだ二歳だったけど、今はもう三歳だもの。一年経って体重が増えてなかったら、私もお姉ちゃんも今頃心配してるわよ」理仁はくすくすと笑った。時間の経つのは本当に早い。陽ももう三歳か。数分後、夫婦二人は陽を抱いて部屋に入った。唯花は入ると、理仁のためにスーツとネクタイを取りに行った。そして気を利かせて、理仁にスーツジャケットを着せてあげた。傍らに座っていた陽はそれを見て、理仁に向かってこう言った。「おじたん、恥ずかしいよ。まだおばたんに服をきせてもらってるの」理仁「……」別に全裸で唯花に頼んだわけじゃない。ただジャケットを着せてもらっただけなのに、この子にからかわれるとは!唯花は笑って言った。「ほら、陽ちゃんまであなたのことを見て恥ずかしがってるわ。こんな大人なのに、服を着るのを手伝ってもらうなんて」理仁は陽に言い返した。「陽君こそ恥ずかしいよ。こんなに大きいのに、まだおばさんに抱っこしてもらって」「ぼくはまだ子供だもん」
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第1733話

「あなたを気にかけてないなら、一体誰を気にかけるっていうの?陽ちゃんの調子が悪いからでしょ。そうでなければ絶対に一緒に行くのに」唯花はおかしそうに彼をからかった。理仁は車に乗る前に、もう一度陽を抱きしめて言った。「陽君、おじさんは本当に君が羨ましいよ。毎日おばさんにベタベタできるんだから。おじさんみたいに、毎日山ほどやらなきゃいけないことがあるわけじゃなくてね」「おじたん、ぼくが大きくなって、できるようになったら、おじたんの仕事をてつだうよ。そうしたらおじたんも休めるね」陽の幼い言葉に、理仁は笑みを浮かべた。「陽君は本当にいい子だ。おじさんは陽君のこと大好きだよ」理仁は嬉しくなって、陽の小さな頬にチュッとキスをし、笑いながら言った。「おじさんの仕事はすごく大変なんだ。陽君が手伝ってくれるっていうなら、学校が始まったらしっかり勉強しないと。しっかり勉強しないと、そんなことできないよ」陽は力強くうなずいた。「おじたん、ぼく、まじめに勉強するよ。ママが、ちしきは……かえられる……なにかをかえられるって。とにかく、まじめに勉強しなさいって言ってた」母親の言ったことは、陽にはすぐには思い出せなかったが、大体のことは言えた。「そうだね、お母さんやおばさんの言うことをよく聞かないとね」理仁は陽を下ろし、妻のほうを見た。唯花をぎゅっと抱きしめて、二、三回キスしてやりたい気持ちだったが、小さなお邪魔虫がいるのを考えて、やむなく断念した。「唯花、辻社長に会ってくるよ」「行ってらっしゃい」唯花はそう言ってから、少し考え、言葉を付け加えた。「私はきっと寂しくなるわ。陽ちゃんの熱が完全に下がったら、午後、気分転換にどこかへ連れ出して、それから会社にあなたを迎えに行くね」理仁はこれで満足そうに出かけて行った。唯花は陽を連れて屋敷の玄関に立ち、理仁のロールスロイスが何台かのボディガードの車に囲まれて、遠ざかっていくのを見送った。それから、陽の手を取って中へ戻ろうとした。「おばたん、遊びに行きたい」陽は歩きながらお願いした。「陽ちゃん、まだ熱が完全には下がってないから、良くなってから遊びに行こうね?」陽は小さな口をとがらせ、不満そうな表情を浮かべた。彼は他の子供たちのように、大人が自分の要求を聞き入れてくれないと、泣き
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第1734話

「吉田さん、この花、誰からですか?理仁さんが持って帰るようにって?」その花束を見て、唯花は理仁が届けさせたものだと思った。「理仁さんったらまた何か贈り物を?洋服?私にはもう一生分ほどあるのに」唯花は、洋服が入っているその袋も理仁が彼女に買ったものだと思っていた。彼の洋服はすべて彼女が買うか、オーダーメイドで仕立てるものばかりだ。そして、彼女のものはすべて彼が買ってきたものだ。理仁は唯花の身につけるものがすべて自分が買ったものであることを好んだ。吉田は何か言いたげに口ごもった。まず花束を唯花に手渡した。唯花がそれを受け取ると、中に小さなカードが入っているのが見えた。彼女はカードを取り出して読んだ。そこにはこう書かれていた。「結城様へ、この花束を贈ります。毎日が幸せで楽しい日々でありますように。愛しています」送り主はなかった。理仁に贈る花束なのか?唯花は読み終えて少し呆然とした。これはバラの花束だ。誰かが理仁にバラの花束を贈り、カードには理仁への愛の言葉が書かれている。聞くまでもなく、女性が贈ったものに違いない。一体誰が、夫に花を贈ったというのか?吉田はさらに、そのいくつかの袋を唯花の前に差し出して言った。「若奥様、それとこの数着の洋服とネクタイもです。袋の中にはそれぞれカードが入っており、やはりこのような言葉が書かれております」唯花がこの家に来る前にも、理仁のところにこのようなものが届くこともあった。その時の送り主は姫華だった。姫華が贈り物をする時は、いつも堂々としていて、この人のように送り主を書くのを避けたり、宅配便の配達員を使って届けさせたりはしなかった。配達員の話では、ある男性が多額の報酬を払って依頼しただけで、その男性は「誰かの代わりに届けた」と言ったそうだ。一体誰なのか、その男性は言わず、配達員はさらに知らないという。あまりにも謎すぎて、吉田にも見当がつかなかった。唯花は花束を抱え、くるりと振り返ってソファの前に歩み寄り、花束をテーブルの上に置いた。それから吉田に合図して、数個の袋を渡してもらい、彼女は袋の中から洋服やネクタイを取り出して見てみた。どれもブランド物で、スーツも黒だった。理仁はいつも黒か紺色のスーツを着ている。この人物は理仁の好みをよく把握しているらしく、他の色のスーツは贈
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第1735話

甥の体調に問題がないのを確認してから、唯花は携帯を取り出し、花と洋服の写真を撮って理仁に送った。理仁はすぐに電話をかけてきた。「唯花、誰が君に花束を送ったんだ?」理仁の口調は厳しかった。どこの図太い野郎が、この結城理仁の妻に花を贈るとは、命が惜しくないのか?「洋服がスーツだって、見て分からないの?ネクタイもあるし、これ全部あなたへの贈り物よ。あの花束もあなた宛てなの」理仁は驚いた。「……俺への?」彼の凄まじい勢いは一瞬で萎んでしまった。なんと、自分宛てだったのか!どこの性根の腐った女だ!自分に花や洋服を送り、わざと唯花と自分に喧嘩をさせようとしているのか?彼は慌てて弁解した。「唯花、俺は絶対に外で誰かと交流を持ったりしてないよ。君に申し訳ないことをした覚えも一切ない。カードには誰からか書いてあったか?その相手を問い詰めてやる!」「送り主は書いてなかったよ。誰が送ったのかわからないわ」唯花はおそらく辻家のお嬢様だろうと推測していた。昨夜、理仁が彼女に話したばかりだ。辻家の令嬢が彼に気があり、彼の手の平をくすぐったと。そして今日、誰かが理仁に花と洋服を送ってきた。辻家の令嬢以外、唯花には思い当たる人物はいなかった。星城で、理仁が既婚者だということを知らない者がいるだろうか?理仁が妻を溺愛していることは誰もが知っている。たとえ理仁に未練を残す者や密かに彼に思いを寄せる者がまだいたとしても、公に理仁を追いかける者などいない。そんなのは身の程知らずもいいところだ。星城で、名家の令嬢たちに、姫華に身分や地位で勝る者が果たして何人いるだろう?姫華が理仁を追いかけていた時、理仁は彼女をどのように扱ったか、それも誰もが知っていることだろう?だからこそ星城では、唯花と理仁を奪い合おうとするような愚か者は誰もいない。そもそも勝ち目がないからである。「一体どこのどいつが、俺を挑発しているんだ?唯花、絶対に誤解しないでくれ。俺は本当に外で女遊びなんてしてないから」理仁は何より唯花に誤解されることを恐れ、繰り返し弁解した。「あなたが浮気してないって信じてるわ。ただあなたに見せて、どうするか意見を聞きたかったの。これらのプレゼント、あなたに代わって受け取っておくべき?」「全部ゴミ箱に捨ててくれ!君がくれた洋服以外
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第1736話

絶対にあの辻夕菜という女だ!理仁の顔色は曇った。夕菜は確かに同行していなかったが、それでも諦めきれず、なんと花や洋服を彼の自宅に送りつけてきたのだ。辻社長が今日、彼を食事に招待し、提携関係を結ぶということは、夕菜が知らないはずがない。夕菜が、彼が出かけた後に花や洋服を届けさせるよう手配したのは、わざとだ。わざと唯花に誤解させ、彼と喧嘩させようという魂胆だ。あの女は腹黒すぎる。「辻社長との話はかなり順調だ。元々このプロジェクトの提携もほぼ決まっていた。でも今思うに、唯花、この案件は断ろう」辻社長には夕菜ひとり娘しかいない。聞くところによると、辻社長の体に問題があり、長い間体調を整えてようやく授かった娘で、夫婦揃って娘を非常に溺愛しているという。辻社長が道理をわきまえている人間だとはいえ、今日は夕菜を連れてこなかったし、彼女が理仁を追いかけることも支持しないだろうが、理仁は賭けたくなかった。子供を溺愛する親は、いくら道理をわきまえていても、結局は負けてしまい、妥協し、子供の側に立ってしまうものだ。もし彼が辻グループと提携すれば、夕菜が結城グループに出入りする機会を増やすだけになる。「理仁、これは大きなビジネスよ。話がまとまっているのに、なぜ提携するのを恐れるの?相手だけにその意思があっても、何もならないのよ。あなたが彼女に気がない限り、彼女が何をしても無駄よ」唯花は相変わらず理仁を信じていた。もちろん、自分の夫を狙う女がいるのは、内心非常に不愉快だった。しかし、個人的な感情で二つのグループの提携に影響を与えたくはなかった。ビジネスはビジネス、私事は私事だ。「理仁、もし将来辻社長が娘の味方をするのが心配なら、契約書に条項を追加すればいいわ。個人的な感情が原因で提携関係が破棄された場合、すべての損害は辻グループが賠償する、とはっきり書いておくのよ。私もあなたを信じてるわ。百パー信じてるから。あの女がどんなことをしても、私の夫を奪い取ることなんてできないって。まずは提携して、利益を得てから考えましょう。長期契約じゃないんだし」辻グループとのこの提携案件は、理仁自らが交渉に出向くほどのものであり、結城グループにもたらす利益は非常に大きいはずだ。結城家の一員として、唯花も当然、結城グループが利益を上げることを
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第1737話

理仁はまだ彼女が怒っているのではと心配し、恐る恐る尋ねた。「唯花、本当に怒ってないのか?無理して平気なふりをしているんじゃないだろうな?神様に誓うから。君以外の女に心を動かしたりはしないし、絶対に他の女に俺に近づくチャンスも与えたりしない。俺の心は狭いんだ、君一人でいっぱいで、他の誰かを押し込む隙なんてどこにもない」「理仁、怒ってないわ。本当に少しも怒ってない。あなたってすっごく素敵だから、もし誰もあなたを好きじゃなかったら、そっちのほうが不思議よ。それに、あなたを好きな人が多ければ多いほど、私の幸運を物語ってくれるでしょ。前世でどれほどたくさんのいいことをしてきたのかわからないけど、今生であなたの妻になれたんだから」唯花は本当に怒ってはいなかった。これほど優れた夫と結婚したのだから、恋敵が時折現れる可能性があることは、心の準備ができていた。すべての女性が姫華のように理性的で、物事を潔く受け入れ、また手放せるわけではないからだ。唯花が何度も怒っていないと保証した後、理仁はやっと安心した。夫婦二人が通話を終え、理仁はすぐに悟に電話をかけ、調べてくれるよう頼んだ。悟は口では文句を言った。「理仁、ゆっくり妻に付き添う時間もくれないのか?妻が妊娠したばかりなのに、俺の休暇もまだ終わってないんだぞ」文句を言い終えると、彼はあっさりと言った。「すぐに調べてやるよ。それから妻にもこのことをシェアするぞ。彼女はいつも噂話に興味津々だから」理仁「……」彼の返事は、電話を切ることだけだった。このような些細なことは、悟にとっては朝飯前のことだった。唯花が陽を連れて出かけ、スカイロイヤルホテルへ向かう途中、理仁は悟からの返事をもらった。それに、夕菜が花束や洋服を送ったことを証明するいくつかの証拠もメッセージで受け取った。理仁はすぐには辻社長に告げず、唯花がホテルに到着するのを待っていた。彼女が到着すると、辻社長にこう言った。「辻社長、妻が来たので、下まで迎えに行ってまいります」さらに奏汰に向かって言った。「奏汰、辻社長に付き合ってくれ」辻社長は笑って言った。「結城社長、ごゆっくり」理仁が立ち去った後、辻社長は奏汰に言った。「結城社長は本当に奥様を愛していらっしゃいますね」奏汰は笑って答えた。「彼は今、星城で最も妻を溺愛
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第1738話

夕菜はプライドが高く、簡単には男を好きにならない性格だと知っていたし、理仁にはすでに妻がいる。だから辻社長は特に深く考えず、娘を連れて理仁に会いに行ったのだった。以前の理仁は、取引先が若い女性を伴ってビジネスすることを好まなかった。今は少しそこまで厳しくなくなったが、それはおそらく自分に妻がいることを意識しているからだろう。結局……辻社長は思わずため息をついた。奏汰は、社長の娘が理仁に思いを寄せていることを知らなかった。彼は辻社長の言葉を聞き、笑って言った。「結城家の男はみんなこんなものだと思いますよ。本当の恋に落ちたら、一生心変わりしないっていうのは血筋みたいなもんですね。この広い世界で本当の愛を見つけるには、大きな幸運が必要ですし、前世からの縁も必要だと思います。ですから誰もがそれを大切にしようと思っています。理仁兄さんは本当に唯花さんを愛しています。二人はいくつもの困難を乗り越えて、今に至っています。絆はより固く、互いを大切にしています。彼らは我々年下の従兄弟にとっても良き手本ですよ」奏汰は自分の恋愛を期待してはいなかったが、理仁夫妻の仲睦まじさは羨ましかった。一方、自分と玲の関係は、全く進展していない。正直に言えば、彼と玲が会ったのは数回だけで、それはおばあさんが後押しした結果だった。彼は玲が優秀な人であり、二人も話が合うことも認める。実際、彼は誰とでもよく話すのだ。しかし、玲が男性のような振る舞いをしているのを見るたびに、奏汰は彼女を女性として見ることができず、ましてや恋に落ちるなど考えられなかった。玲と一緒にいると、まるで男二人で恋愛しているような気分になるのだ。とはいえ、玲が女性であることを暴き出したい気持ちもある。おばあさんから与えられた一年の期限は、すでに半分が過ぎた。奏汰と玲の関係に進展はなく、彼は玲に積極的にアプローチする気になれなかった。ゲイだと言われるのが怖かったのだ。それに、玲を追いかける人は大体女性だった。奏汰は、自分の恋敵の半分が女性だと思うと、行動しようとする足を引っ込めてしまった。とりあえず先延ばしにしよう。最悪、残った半年に少し頑張ってみればいい。もし一年以内に玲を落とせなければ、おばあさんが家に帰らせてくれないだけのことだ。どうせ自分の名義の家はたくさんあるし、どれかに住めば、そ
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第1739話

結城社長が抱いている子供は、たぶん奥様の甥だろう。見るからに、彼はその子を心から可愛がっている。これは妻を愛しているからこそ、彼女の甥も可愛いと思えるのだ。理仁が唯花を連れて入ってきたこの一瞬の間に、辻社長の頭の中では様々な考えが巡っていた。「唯花、こちらは辻社長だ。辻社長、こちらが俺の妻の唯花です」理仁は唯花を連れてテーブル前に歩み寄り、お互いに紹介した。辻社長は遥か遠くへ飛んでいた思考を引き戻し、立ち上がって笑顔で唯花と握手を交わした。その後、彼は二人のボディーガードが持っている花と袋を見た。距離が近くなり、辻社長はそれらの袋の外側にあるロゴマークをはっきり見た。あるメンズ服のブランドの専用袋だ。きっと奥様が結城社長に買った新しい服に違いないと辻社長は思った。結城社長は見せびらかしに来たのだな。「唯花さん」唯花と辻社長の握手が終わると、奏汰が唯花に挨拶しながら、立ち上がり、手を伸ばして理仁から陽を抱っこした。笑いながら言った。「陽君に会うのは久しぶりだな。陽君、俺に会いたかったかい?」「ない」陽はありのままを言った。彼と奏汰が接した回数はごくわずかで、それほどの感情はなかった。確かに、赤の他人と同じようなおじさんのことを考えることはない。たとえ、その人が理仁の従弟だとしてもだ。奏汰はショックを受けた。「……陽君はおじさんに会いたくなかったのかい?俺は陽君に会いたかったよ。すごく傷ついたなぁ」陽は自分を抱く奏汰を見つめ、真剣に言った。「かなたおじたんもぼくのこと、恋しくおもってないでしょ」「思ったよ」「じゃ、どうして一度も会いに来なかったの? どうしてぼくを連れて遊びに行かなかったの?」奏汰は陽の質問に言葉を詰まらせた。すると、その場にいる全員が笑い出した。辻社長が褒めた。「奥様、甥っ子さんは本当にお利口さんですね」唯花は控えめに言った。「辻社長、そんなことないですよ。陽は単に素直で、考えたことすぐに口にするだけです」全員がまた笑った。笑いが収まった後、理仁はようやく二人のボディガードに合図し、花束と服の袋をすべて、辻社長の隣の空いている椅子の上に置かせた。辻社長はわけがわからず理仁を見つめたが、心の中には良くない予感がしていた。「辻社長」理仁は低く重々
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第1740話

辻社長は慌てて理仁の言葉を遮り、真剣な口調で言った。「プロジェクトの件は、我々はすでに契約を結ぶところまで来ました。私は貴社との提携を大変喜んでいますし、私も信用を重んじる人間です。協力の件に関して、取り消す気は今もありませんし、結城社長にもそのまま契約を進めることを願います。娘の行いは、私が戻って必ず厳しく説教すると保証します。両社の提携中に、娘が再び結城社長の前に現れることはないように、彼女を厳しく監視します。できる限り結城社長の迷惑になったり、付きまとったりしないようにさせますので」彼は娘を百パーセント止められるとは保証できなかったが、自分が知っている限りはすべて阻止するつもりだった。彼が愛を注ぎ、大切に育て上げ、十分に優秀に育てた娘は、夫婦の誇りだった。辻社長は、娘が既婚者に恋をすることで人生を台無しにすることを望まなかった。理仁は沈んだ声で言った。「私は辻社長を信じております。プロジェクトの件は、他の者に引き継がせます。辻社長がお約束を果たし、お嬢さんに私に迷惑なことや付きまとわれるようなことがないようにしていただきたい。お嬢さんも大変素晴らしい女性ですから、もっと良い男性に出会えるはずです」既婚者である自分に執着する必要はない。辻グループとの提携も、このプロジェクトだけに限られる。今後、おそらく再び提携することはないだろう。理仁も、唯花に説得されてようやく渋々提携関係を維持することにした。しかし、このプロジェクトにはもう自らは関わらず、他の者に任せると決めた。今後、彼は辻社長と接する機会も大きく減るだろう。「わかりました。ちゃんと約束を守ります」辻社長は急いでそう答えた。こんなことが起きてしまい、辻社長はもう座っていられなかった。彼は申し訳なさそうに理仁に言った。「結城社長、本当に申し訳ございません。ご迷惑をおかけしました」そして唯花にも言った。「奥様、本当に申し訳ございません。誤解を招いてしまいました。私の娘と結城社長が会ったのは本当に一度きりで、社長は最初から最後まで娘に注意を払ったことはなく、礼儀として握手をしただけです。申し訳ありません。ご夫妻にご迷惑をおかけしました。結城社長、私はまだ用事がありますので、先に失礼させていただきます」辻社長は立ち上がって別れを告げ、その花束と数個の袋を抱
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