All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1701 - Chapter 1710

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第1701話

美乃里は話し続けた。「唯月さん、隼翔が言った事は気にしないで。あの子は今……トゲトゲして突き放したような態度を取ってるから。誰にも会おうとしないし、お見舞いに来る人はみんな同情しているだけだって言うんだから」「夫人、私は社長を責めたりしません」唯月はゆっくりと美乃里から握られている手を引っ込めた。どうも美乃里に優しくされるのに慣れない。「唯月さん、今日私が来たのはあなたにお願いがあるからなの」美乃里は本題に入った。彼女は唯月を見つめ、懇願するように言った。「唯月さん、隼翔の今の様子を私たちはもう見ていられないのよ。だけど、私たちは彼をなだめることができなくて。彼はあなたのことが好きだけど、最近あなたに会おうとしないのは自信をなくしているからよ。障害が残ってあなたに迷惑をかけるのが怖くて、それで会おうとしないだけ」唯月は静かに美乃里の話を聞いていた。美乃里も少し黙ってから、また話し始めた。「唯月さん、あなたに隼翔のお世話をお願いしたいの。あの子にまた自信を取り戻させてくれないかしら。退院してからリハビリを頑張るようにさせてもらいたいと思っているのよ」美乃里は唯月だけが隼翔を支えられると思っていた。彼女の存在があれば、彼がまた自信を取り戻し、足が元通り回復できると信じていた。もしそうでなければ、隼翔はこのように沈んだまま一生車椅子生活を送ることになってしまう。「あなたがとても忙しいことはわかっているの。商売が軌道に乗って、毎日かなり稼いでいることでしょう。だけど安心して、あなたが損を被るようなことにはならないから。毎日二十万お給料を出すから、昼間だけあの子の世話をしてもらって、夜は休んでもらっていいのよ。どうかしら?」唯月の店はかなり儲かってはいるものの、毎日二十万以上稼げるほどではない。美乃里は一日に二十万の給料を渡して唯月に息子の世話をしてもらい、彼が自信を取り戻せるように励ましてもらいたいと思って、高い給料を提示した。「あなたが隼翔のことをどう思っても、私はもう気にしない。それはあなたと隼翔の問題だから、私たちはもう口を挟まないから。さっき言ったのは本心からよ。私は本当にもう悟ったの。息子が楽しく生きていてくれるだけで満足。彼が誰を好きで、誰と結婚するかはどうでもいい。私はただ子供たちが健康に楽しく生きていっ
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第1702話

「唯月さん、一日に二十万は多いとか思わないで。隼翔は今かなり気性が荒くて何をしてもすぐ怒っては物を投げるから。私たちは親だし、今回の事故は私のせいだから、そんな彼の態度になんとか耐えられるだけ。それが他の人になれば、そんな彼に誰が耐えられる?いくら大金をはたいて彼の世話をするヘルパーさんを雇っても、きっとその大金もいらないと思うくらい今の彼は本当に手に負えないのよ」美乃里は一カ月に六百万使って唯月に隼翔の世話をしてもらうのは安いものだと思っていた。息子の状態が良くなるのであれば、いくら費用がかかろうとも問題ない。六百万も彼女にとってはカバン一つの値段でしかない。それに彼女が持っているカバンもそれ以上の値段がするものだ。美乃里は一日に二十万払うのは全く痛くもかゆくもないが、唯月にとっては多すぎる。彼女の店の売り上げが良い日でも、一日に十万超えれば良いほうで、二十万にはほど遠い。「あなたには生活もあるし、陽ちゃんを育てていかなくてはいけないでしょう。陽ちゃんが星城セントラル幼稚園に通うなら、そこの学費もかなりかかるわ。あなたが無償で隼翔の世話をすると言っても、私たちはそんなことできない。どうしても良心が痛んで落ち着けないから。唯月さん、一カ月に六百万払うのは本当に少ないほうよ。考える必要もないし、給料のことで私と話し合う必要だってないから。もしお給料の件で気になるというなら、毎日三十万に引き上げるからね。多すぎるって言うならもっと上げて四十万にしちゃうから」唯月は言った。「……夫人、少し考えさせてもらえませんか?」彼女はこの件を妹に相談したいと思った。「明日またご連絡します」美乃里は頷いた。「わかったわ、唯月さん、よく考えてちょうだい。無理にしてもらうつもりはないから。隼翔もまだしばらくは退院できない。今のあの子の状態でも私と夫はまだ耐えられるから。でも、退院した後のリハビリがかなり厄介ね」唯月は美乃里の真っ白になってしまった頭を見つめた。目の前にいるこの貴婦人は以前のようなプライドの高さは微塵も見せなかった。ただ息子の心配をし、早く良くなってほしいと祈る母親の顔になっていた。「夫人、考えがまとまったらまたご連絡します。あまり心配なさらないでください。社長はただ、今だけ気持ちが落ち込んでしまっているだけです。彼はそう簡
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第1703話

唯月が隼翔のことを好きではないから、彼女に会って何を言っても意味がない。そもそも問題は隼翔にあるのだから。美乃里も息子に対してかなり行き過ぎた行動を取ってしまった。それで……今は後悔しかない。唯月は大らかに言った。「夫人、以前あなたから言われた内容なんてもう覚えていませんよ。私も夫人の気持ちがよく理解できます。結婚はやっぱり家柄を重視して当然のことです。私だって母親で、将来息子がもし自分と差のある女性を好きになったら、私もきっと受け入れられないことでしょう」実際自分がその状況にならない限り、自分のことを進んだ考えを持つ母親だと思い込んでいるはずだ。そしてそれが現実となった時、恐らく多くの母親が寛大な心で子供を自由にさせることはできないだろう。多くの親ができないからこそ、結城家の年配者層の考え方が非常に際立って見えるのだ。唯月は常に妹には、今ある全てを大切にするようにと注意していた。理仁がどうであるかではなく、結城家の年配世代が全員開放的な考え方の持ち主だからだ。そのような一族が一体この世にどれだけあるだろうか。だから、隼翔が唯月を追いかけるのを阻止しようとした美乃里に対して、唯月は全く怒りは覚えず逆にその考えを理解していた。「唯月さん、どうもありがとう。私のことを恨まないでいてくれて」美乃里は唯月はやはりよくできた人間だと思い、感謝した。唯月の家柄は東家には遠く及ばないものだが、彼女は自分の力で努力して成功しようとしている。向上心があり、努力しようとする人間である唯月は、実際素晴らしい女性なのだ。美乃里はずっと唯月という人間を高く評価してはいたものの、当初はどうしても家柄にこだわりすぎていた。そして今後は、もう二度と子供たちの恋愛には口を挟まないと決めた。子供たちには子供たちの人生があるのだから、彼らの自由にさせるのが正しい。「夫人、そんな感謝されるような事はしていませんよ、だからやめてください」唯月はどうも居心地が悪くなってそう言った。唯月はまた美乃里を落ち着かせようと思い、言った。「夫人、社長を信じましょう。彼はこんなことくらいで折れてしまうような人ではありませんよ」美乃里は黙って頷いていた。カフェに暫くいてから、美乃里は病院にいる息子のことを思い、すぐに店を出て引き続き態度の悪さが日々
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第1704話

唯月は携帯を息子に手渡した。店の状況を確認し、二人の店員がもう片付けを終わらせていたので、彼女たちを先に帰らせ、それから七瀬にお礼を言った。「七瀬さん、陽を送ってくれてありがとうございました」「内海さん、そんなお礼なんて必要ありませんよ。これは若旦那様と若奥様から任されたことだから、やって当然のことなんです」七瀬は純粋な笑顔を見せた。「内海さんのお手伝いができて、私も嬉しいです。陽君はとても可愛いし、一日彼に会わないだけで、寂しく思ってしまうくらいですよ」陽は七瀬の言葉を聞いて、顔を上げ自信たっぷりに言った。「ななせおじたん、ぼくってみんなから好かれる、かわいい子なんでしょ」七瀬は笑って言った。「うん、そうだよ。陽君はとっても可愛くて会う人みんなが好きになるんだ。七瀬おじさんが今まで会った中で一番可愛い子だよ」唯月は陽の手を繋いで外に向かいながら、笑って言った。「七瀬さん、もうそんなに息子を褒めるのはやめてください。これ以上褒められたら、この子ったら天狗になってしまいます」「だって本当の事じゃないですか。陽君は本当に今まで会った子供の中で一番可愛いんですよ」七瀬は本心からそう言っていた。もちろん、数年後これと同じセリフを彼はまた別の子供に話すことになるのだが。唯月は唯花の店に行くので、七瀬が付き添う必要はない。それで七瀬は理仁のところに戻ることにした。三十分後。「おばたん、あかりおばたん」陽は車から降りるとすぐに店の外から大声で唯花と明凛を呼んだ。明凛はこの時、レジの奥で小説を読んでいた。暇なので小説で時間を潰していたのだ。唯花のほうは本棚の前で本の整理をしていた。陽に呼ばれ店から出ると、陽が走って向かってきた。彼女は笑顔で甥を抱き上げた。「今日の陽ちゃんはなんだかいつもよりも嬉しそうにしてるね。何か嬉しい事でもあったの?おばちゃんに何があったのか話してみて」唯花は叔母とボイスメッセージで連絡を取り合った時、陽も我慢できずに嬉しさを漏らしていたのだが、一体どうしてそんなに嬉しいのかは聞いていなかった。陽は叔母に直接会って話したいと思っていた。目の前で叔母に褒められるのと、携帯越しとでは全く感覚が異なるからだ。明凛もやって来た。「あかりおばたんも、こんにちは」陽はお利口に再び明凛に挨拶
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第1705話

唯花は心配そうに尋ねた。「お姉ちゃん、何があったの?」「別に大したことじゃないの。ただお姉ちゃん、お給料が高い仕事を見つけたのよ」唯月は米を研いだ後、水を入れて炊飯器のプラグをコンセントに挿すと、スイッチを押して妹のほうへ振り返った。「お姉ちゃん、お店は軌道に乗ってるっていうのに、どうしてまた仕事を探すのよ?陽ちゃんがあの幼稚園に通うのに金銭的にプレッシャーを感じてるの?それなら大丈夫よ、私だって学費の一部を出すことはできるんだから。理仁さんが毎月私にくれてる生活費も使いきれないもの。結城家ではみんな毎月お小遣いのようなものをもらっているのよ。今は私もお金には困ってないから」唯花は姉が経済的なプレッシャーを感じ、また仕事を探したのだと思った。「そうじゃないの。陽の学費のことなら問題ないから。佐々木さんからもらったお金もあるし、あれだけで陽が通うには十分な金額だもの。それに私は毎日稼いでるんだから、お金は問題ないのよ」唯月はキッチンの外を見た。明凛が陽と遊んでいるのを見て、話を続けた。「東夫人がさっき私のところに来たわ」それを聞いて唯花は眉間にしわを寄せた。「彼女が何をしに来たの?まさか、陽ちゃんを連れて星城から出て行けってまた言われたの?」隼翔が今唯月と唯花に会いたくないと言っていて、美乃里も少し前まで唯月を追い出そうとしていた。それで唯花は隼翔が唯月に会いたくないと喚くのを見た美乃里が、また言いに来たのだと思ったのだ。「彼女から病院に行って社長の傍にいてくれないかって言われて。そして退院してリハビリできるようになってからは、彼のそのリハビリに付き添ってもらいたいって言ってきたの。私に一カ月六百万のお給料を出すって。私はそんなに多くのお金はもらえないって返したのよ。東社長は私のことをいろいろ手伝ってくれたし、私も彼のことを友人だと思ってる。それにリハビリして一日も早く元通りに元気になってもらいたいし。それでも夫人は私にお金を渡すって言い張ってきてね、一カ月に六百万を受け取ってくれないなら、それ以上に渡すとも言われたわ。お金は別にどうだっていいのよ、だから、あなたの意見を聞きに来たの。唯花、東社長の傍にいてリハビリを手伝ってあげるべきかしら?夫人の頼みを聞いたからって、別に彼を好きなわけじゃないし、結婚するなんて考えてもいな
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第1706話

「お昼ご飯を食べたら、後で何かお見舞いを持って病院に行くわ」唯花は後ろを振りかえって、店に置いてある果物を取って綺麗に洗ってから袋に入れた。「夫人に返事しておくわ」唯月は美乃里に返事をすることを思い出し、料理をする手を止めて携帯を取り出すと美乃里に隼翔の世話をすることを決めたと電話で話した。それを聞いた美乃里は何度も何度も唯月にお礼をし、何が何でも彼女にお金を出すと言って聞かなかった。唯月はその時お金を受け取らなければ、美乃里もどうしようもないだろうと考えた。どうするか決めてから、唯月は昼食の支度に取りかかった。暫くして昼食を作り終えた。「唯花、私は社長のところへ行ってくるから、陽を見ていてね」唯月は果物の入った袋を持ってキッチンから出てきた。「もうできてるから、鍋に入ってるよ。あなたと明凛ちゃんの仕事がひと段落ついたら、食べてね」「お姉ちゃんはもう食べたの?」唯花は心配して尋ねた。本屋は最近忙しくない。夏休みが近づくと、休み期間にやる問題集や参考書などを買いに来る生徒が多くなるので、忙しくなるくらいだ。「少し食べたわ」唯月は外に向かいながら返事した。「ママ、ぼくも行きたい」陽は母親が出かけるのを見て、呼びながら彼女の後ろについていった。「陽ちゃん、まだご飯食べてないんだから、戻っておいで。ご飯を食べたらおばちゃんが送ってあげるからね」唯花は彼の後に続いて出てくると、陽を抱き上げて姉について行かないようにした。陽はこの時不満そうだったが、叔母になだめられて、すぐに機嫌を取り戻した。病院では隼翔は依然として何も食べようとしなかった。長男の嫁がお見舞いに来ていたが、機嫌を悪くしたのか病院食を床にぶちまけていた。彼女は義弟の乱暴な行いに驚き、数歩下がっていたので、それが当たって服が汚れるようなことはなかった。「隼翔君」彼女は低い声で話しかけた。「食べたくないなら食べなければいいわ。なんで床に叩き落とすようなことをするの。お義父さんとお義母さんも、まだご飯を食べてないらしいじゃないの」義弟である隼翔は最近どんどん心がすさんでいっている。彼女も彼の状況を理解し、可哀想だとは思っていた。しかし、彼は食欲がないと言って、食事を全て床に叩きつけてしまい義父母でさえも何も口にしない
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第1707話

「冬子(とうこ)さん、隼翔を責めないでちょうだい。隼翔はわざとこんなことしてるんじゃないの」美乃里は急いで冬子の手を掴み、外に連れていった。「隼翔にそんな厳しい言葉を使わないで、あの子はもうどん底まで突き落とされているんだから」冬子は言った。「お義母さん、隼翔君が辛いのはよくわかっています。だけど、私たちはどうなるんですか?私たちだって彼のことを心配して、早く元気になってほしいって思ってるでしょう。先生も彼の人生はこれで終わりだなんて言ってないんです。それなのに彼自身が自分で自分を苦しめているだけですよ。お義母さん、彼の顔色を伺いながら縮こまっていないで、彼にやる気を出させないと」隼翔が事故を起こした後、美乃里が自分を責めて彼の傍からひと時も離れようとしないことはよく理解できた。彼らはただ毎日隼翔の様子を見に来ることしかできなかった。家族が来ても、隼翔は会おうとしない時もある。冬子の夫は東家の家族ビジネスの後継者である。毎日の仕事はとても忙しいが、それでも弟の怪我のことを気にかけている。しかし、隼翔はただ絶望のどん底で悲観的になるだけで、家族がどんな思いでいるのか全く気にしようとしなかった。美乃里は目を真っ赤にさせた。そして嗚咽交じりの声で話し始めた。「私だってあの子にはやる気を出してもらいたいのよ。だけど、私たちの言葉を全然聞く気がないわ。毎日ベッドの上で横になってるだけで、少しでも動いたら両足に激痛が走るみたい。だから苛立つのも当然のことだから、あの子を責めないで、あの子のせいじゃないんだから……」「お義母さん」冬子はティッシュを取って美乃里に渡すと、ため息をついた。「別に彼を責めてなんていませんよ。ただちょっとカツを入れてしっかりさせたいだけで」美乃里は涙を拭いてから言った。「隼翔にやる気を出してもらうためにも、唯月さんに会いにいったの。彼女に隼翔のことを頼みたいってお願いしたのよ。隼翔は彼女のことがとても好きだから、そんな彼女が来てくれてたら、きっとまた彼女のためにもしっかりしてくれると思って」「隼翔君は唯月さんに会いたくないんじゃなかったんですか?」隼翔が事故に遭ってから、唯月は毎日病院に来ていた。しかし、毎日病室に入ることを拒否されていた。彼女に会わないようにするために、普段使わないボディガードまで
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第1708話

隼翔が寝ている部屋の隣にある小さなリビングのようになっている部屋から美乃里がノックに応えた。ドアが開くとそこにはボディガードがいた。「奥様、内海さんがまたいらっしゃったようで」ボディガードは美乃里に伝えた。美乃里がそれに返事する間もなく、病室の中にいた隼翔は耳を研ぎ澄ませていて、さっきまでの呆然としていた様子から打って変わり、唯月が来たことに素早く反応し大声で叫んだ。「帰ってもらえ、彼女には会いたくないと言っただろう。今後二度と病院には来るなと伝えろ、俺から遠ければ遠いほどいい!」ボディガードは隼翔の咆哮を聞き、心の中でため息をついていた。毎回唯月が来ると、彼はいつもこうだ。特に唯月が来た時にだけ、これほどまでに激しい反応を見せる。それを見れば誰でも隼翔がまだ唯月のことを好きなことがわかる。「唯月さんをお通しして」隼翔の主張とは逆に、美乃里は唯月を通すように伝えた。ボディガードはその瞬間困ってしまった。母親の言葉を聞いた隼翔は、急いでベッドからおりようとした。しかし、彼の両足の怪我はまだ回復していないので、歩くことなどできず、下におりようと体を翻した瞬間、ベッドの上から大きな音を立てて落ちてしまった。ちょうどお茶を飲もうとしていた健一郎はその瞬間にコップを落としてしまい、すぐに息子の体を助け起こそうと駆け寄った。美乃里と冬子もすぐにやって来て、隼翔が床に落ちてしまったのを見ると、二人は急いで近寄り、健一郎と一緒に隼翔の体を支え起こして、ベッドに戻した。「内海さんには帰ってもらえ。早く、俺は彼女に会いたくないと言ってるだろう!」隼翔は落ちた時に両足にまた激痛が走り、冷や汗をかいて顔を真っ青にさせていた。それでも唯月に帰れと声をあげて叫んでいた。彼は唯月に今のように情けなく、頼りない様子を見せたくなかった。唯月から同情の目で見られたくない。誰からの同情も必要ない。もう二度と歩けないというなら、もうそれでいい。残りの人生は車椅子生活を送ってやる。「わかった、わかったから。会いたくないなら、彼女を入れないから。さ、唯月さんに入らないように伝えてちょうだい」美乃里は慌ててそう言うと、息子の気持ちをなだめた。そして後ろを向いて、涙を流した。ボディガードは唯月を中に入れることは
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第1709話

「隼翔」美乃里が彼に声をかけた。今回息子の世話を唯月に頼んだので、彼女がずっと外で立っているのはどうも申し訳なく思った。隼翔はただ目を閉じ、ひとことも話そうとしない。美乃里はどうしようもなかった。息子が額に冷や汗をかいているのを見て、美乃里は居ても立っても居られなくなり、ティッシュを取ってそれを優しく拭いてあげた。「隼翔、あなたがまだ唯月さんのことを好きだって私は知っているのよ。それなのに、どうしてそんなに自分を苦しめるようなことをするのよ」隼翔は依然として目をつむったまま、何も答えようとしなかった。このような態度を唯月に取るのは、他の誰よりも彼は苦しいに決まっている。彼は心臓をナイフで刺されるような痛みを感じていた。しかし、彼は今このような姿になってしまったから、唯月になさけない姿をどうしても見られたくないのだ。彼が健康そのものの時だって、唯月は彼のことをなんとも思っていなかった。そして今両足が動かせない状態だというのに、彼女が好きになってくれるはずなどない。それに同情されてしまうだろう。息子が何も言おうとしないので、美乃里ももう何も話さなかった。暫くしんと静まり返っていて、美乃里は立ち上がり外に出ていった。彼女がそっと病室の扉を開けると、外には唯月が立っていた。「夫人、社長は大丈夫ですか?」病室の中で何が起きているか、唯月は外にいても全部聞こえていた。美乃里は扉を閉めると、唯月の手を引いて椅子に座らせ、ため息をついた。「唯月さん、あの子のことを責めないでね、彼は今……あの子は大丈夫、ベッドから落ちちゃって、またベッドに戻したから」まったく。隼翔はただでさえ両足に大きな怪我を負っているのに、ベッドから落ちてしまってはさらに痛みが増したはずだ。唯月はその様子を想像しただけで、心が痛んだ。「夫人、入って彼に会おうと思います」美乃里は唯月の手を引いて止めた。「あの子は会いたくないって言っているの。あなたが入ったら、きっとまた怒って、ベッドから落ちてしまうかも」唯月は確固たる眼差しで言った。「もしまたベッドから落ちそうなら、私が支えますから」美乃里は唯月を掴む手を離した。唯月は果物の入った袋を提げて病室の前まで行った。すると二人のボディガードがすぐに彼女の前に立ちはだかり、
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第1710話

隼翔は冷たい態度で腹を立て、唯月に会わないと言い張っていたが、実際に彼女に会うとその瞳には欲望の炎が燃え上がった。彼はじいっと彼女の顔を凝視し、その姿をしっかりと心の奥に焼きつけてしまいたいと思った。口を開き、何か言いたそうにしていたが、何かが喉の奥に詰まったようにひとことも発することができなくなってしまった。きっとこれは夢だろう。唯月に会いたくないと言ったのだから、両親が彼女を病室に入れるはずなどない。だからこれは絶対に夢だ。隼翔は再び目を閉じた。すると柔らかなティッシュが肌に触れ、彼はまた目を開けた。夢なんかじゃない。目の前には本当に唯月がいる。彼女は部屋に入ってきたのだ。一体誰がこんなことをしたのか。すると隼翔は冷ややかな表情に変え、勢いよく手を上げて唯月の手を激しく払い除けた。そして冷たく詰問するように言った。「誰が入れたんだ?俺はお前に会いたくないと言っただろう、さっさと出て行け!俺をこんな姿にさせておいて、それでも満足できないっていうのか?さっさと出て行けと言ってるだろう。二度と顔も見たくない!」唯月は焦る様子もなく彼の汗を拭く手を戻し、落ち着いて言った。「あなたのお母様から一カ月六百万でお世話をするよう雇われました。お金をもらって今の状況を変えるためです。もらった以上、きちんと仕事はしますよ。東社長が私に会いたくないと言ってもどうしようもありません。だったら、目を閉じていてください。そうすれば私の顔を見らずに済むでしょう」唯月はティッシュを捨てて言った。「お昼はまだなんですよね?お腹が空いていませんか?看護師さんに頼んでまた食事を持ってきてもらいました。まだ熱いうちに食べたほうがいいですよ。自分で食べますか?私が食べさせましょうか。一日二十万のお給料をもらっていますから、きちんとお世話させてもらいますよ」隼翔は彼女をギロリと睨みつけた。「それから、これは私のせいではないですから。あなたがスピードを出し過ぎたせいで事故を起こしたんです。自分のしたことは自分で責任を取ってください。これくらい陽だってわかっていますよ。今後は、車を運転する時には、自分が飛行機のパイロットにでもなったかのような錯覚を起こさないでもらいたいですね」唯月はそう言いながら立ち上がって、ベッドサイドテーブルの引き出
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