唯月は病院を出ると、自分の店に行った。「店長、おはようございます」店員二人は唯月が来たのを見ると、まず挨拶をして、それから何か言おうとしたが、言葉をぐっと呑んだ。この時唯月は心ここにあらずで、二人のそんな様子には気づいていなかった。店も忙しく、二人はまず先に仕事に戻った。そして店が少し落ち着いてから店長に話そうと思っていた。しかし、店長の上の空な様子を見て、きっとネットで話題になっているニュースのことは知っているのだろうと思った。店長の妹は星城一の富豪家である結城家の若奥様だ。だから情報なら彼女たちよりも早く受け取っているに違いない。唯月はレジの奥にある椅子に腰掛けた。脳裏にはさっきの隼翔の言葉がこだましていた。彼が交通事故を起こしたと聞き、唯月もとても心配していた。しかし、その事故を自分のせいにされてしまったのだ。自分は彼に会いに来てと言っただろうか?別にそんなことを頼んだ覚えはないのに。「お姉ちゃん」するとそこに聞き慣れた声が聞こえてきた。唯月が顔を上げると、唯花が自分の目の前に座っていた。唯月は今呆然としていて、妹が来たことにも気づいていなかった。「唯花、お店のほうはいいの?」「明凛がいるからね。後で姫華と一緒に会社に行くつもりなの。明凛は妊娠中だから、あちこち走り回るのはよくないから、本屋で店番してもらうのよ」悟は明凛に仕事させるのは反対だったが、明凛が彼に本屋にも行かせてくれないというなら、唯花と一緒に農場のほうへ行くと言い張った。それで悟は明凛が毎日本屋に行くことに同意するしかなかった。本屋の店番ならそんなに疲れることもない。何か重たい物を運ぶ必要があれば、ボディガードがいるから安心だ。「姫華ちゃんはまだ来てないのね」唯月は妹の後ろを見てみたが、従妹の姿はなかったので尋ねた。「さっき電話した時、あの子はまだ起きてなかったのよ。だからお姉ちゃんのところで待ってるって伝えたの」唯花は姉の目の周りにクマができているのを見て、心配して尋ねた。「お姉ちゃん、昨日はよく眠れなかったの?今朝はあんなに早く出かけちゃって」唯花と理仁が起きた時、姉はすでに出かけた後だった。執事に尋ねてみると、姉は朝早くに出かけたと告げられた。それで唯花は、姉は隼翔のお見舞いに行ったのだと予想した。
Read more