All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1861 - Chapter 1870

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第1861話

祐一はそれ以上流星を引きとめることはなく、カフェから去っていく流星の後ろ姿を見ていた。流星が去ってから、祐一は母親に電話をかけた。母親が電話に出るとすぐに話し始めた。「母さん、流星のやつ、やっぱり聞く耳を持たないよ。だけど、咲とは言い争いになったんだと思う。きっと咲から頬を打たれたんだ。顔の片方腫れてたから」朱美はそれを聞くと、少し得意げな顔になり言った。「つまり私たちのこの方法は効いてるってことよ。あなた達、もっと流星のことを気にかけてやりなさい。そして彼の前であの女の悪口を言って姉と弟の仲を引き裂くの。流星は絶対に気にするはずよ」朱美は妹の樹里と一緒に咲に何度も交渉したが、どれも効果がなかった。それは彼女たち二人は昔から姪である咲に全く関心を寄せていなかったからだ。兄と仲良くすることで、より多くの利益を得られると考えていたのだ。だから、昔から咲に冷たくあたって当然だ。咲は柴尾グループを継ぐとすぐに尾崎家と黒川家に鋭い牙を向けてきたので、朱美は咲のことを非常に憎んでいるのだった。朱美は咲は目が見えないくせに結城辰巳に気に入られるなど、どうしてこうも強運の持ち主なのだろうかと思っていた。もし以前であればそんなことは信じられなかったが、今はあの二人は婚約しているから信じざるを得ない。婚約パーティーもかなり盛大に行われ、星城の有力者たちも多く参加していた。ただ、尾崎家と黒川家は呼ばれなかった。つまり咲はこの両家のことを憎んでいるのだ。これによって、尾崎家と黒川家は星城のお笑い者になってしまった。「母さん、わかってるよ。だけど、流星も俺たちがいつもああいう話をするからもう鬱陶しくなってるみたいだ。あいつ、さっき俺とも口喧嘩してさっさと帰っていったんだ」朱美は言った。「あの子はまだ子供よ。まだ社会人にもなってないんだから、何もわからないの。彼が私たちの話を鬱陶しく思っているのなら、今は悪口を言うのは控えておきましょ。もうすぐ大学が始まるでしょ、あの子に何か足りない物があれば買い物に付き合ってあげるのよ。大学が始まったら、大学まで送ってあげて、そうすれば怒りも収まるから。子供のご機嫌取りくらい、あなたには簡単なことのはずよ。それから、あの目の見えない女のことも引き続き観察しておくように。どうにかしてあの女と結城さんに誤解を生じさ
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第1862話

辰巳はまた咲の手を繋ぎ、歩きながら話した。「流星君は実際君のことをとても気にかけているんだ。彼はまだ若いからわからないことがたくさんある。だから、寛大な気持ちで接してあげたらいいよ」「怒ってないし、辛くないって言ったら、それは嘘になるの」咲は小さな声で続けた。「あの家で私が一番気にかけているのは流星だよ。態度では彼を嫌ってるみたいに冷たく接していたけど、内心ではとっても弟のことが大好きだったの。彼は他の家族とは全然違ってた。あの子は本気で姉である私のことを好きでいてくれた。心の底から私を姉だと見てくれてた。そして彼が物心つくと、ずっと私を庇って、助けてくれたわ。お母さんが私を叩いたり、怒鳴ったりする時、彼はいつもやって来てお母さんを押しのけ、助けてくれた。お母さんは私が弟をそそのかしたから、彼が私を庇うようになったと思ったの。それからは私と彼が接触しないようにするために、あらゆる手を考えて私が流星と一緒にいるのを邪魔しようとした。だけど、一緒に家にいれば、流星はいつだって私に代わって言い返してくれたし、両親の前でずっと私を守ってくれたわ。それで彼の父親がわざとらしく気を使ってお母さんにちょっと言ったから少しは私に対する態度が良くなったんだけどね。そして流星が学校に通うようになってから、鈴がいつも弟は私のことを守るから、それに嫉妬してどうしてもあの子を全寮制の学校に通わせてって言い出したの。あの子の自立心を育てるためだとかなんとか言ってさ。実際は、あの人たちが私と流星の仲がどんどん深まるのを恐れて小さい頃から彼に寮生活させてただけ。週末家に流星が帰ってきた時にだけ、あの人たちは私への態度を、まあ普通にしてたわね。そして流星が学校に戻ると、私はまたあの家では透明人間になるの。よく鈴からは嫌がらせをされて、私が反抗的な態度をとると、いつだってお母さんから叩かれた……あの家庭は私に大きなトラウマを生みつけたんだよ。希望のない暗闇の中に、流星はたった一筋の光だったの」咲はそこまで話して、少し声を詰まらせ、引き続き話した。「あの二人のおばは小さい頃からおじととても仲が良かったって聞いてるわ。彼女たちと私のお父さんの年齢差は結構あって、お父さんと一緒に遊ぶのはつまらなかったみたい。それに、祖父母がお父さんのほうをとても可愛がっていたせいで、彼女たちが嫉
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第1863話

辰巳は優しい声で言った。「流星君がさっき言ってたことは、彼もとても後悔しているようだった。咲、流星君に少し時間をあげたらいいよ。彼が大人になっていけば、きっと君を理解する日がくるから」流星の両親と次女の鈴はみんな刑務所に入っている。それは咲には全く無関係なわけではない。彼がなかなか現実を受け入れられないのは当然のことだろう。なんと言っても彼はまだ十七歳なのだ。まだ社会の荒波に揉まれていないから、受け入れられる能力もそこまでない。咲は何も言わなかった。辰巳は気晴らしのために彼女に付き添って公園を散歩した。木陰の道を歩きながら、涼しい風に吹かれ、通り過ぎる人たちの話し声に耳を傾けた。そうしていくうちに咲の心はかなり落ち着いてきた。彼女はただ弟からあの言葉を聞いて傷ついてはいたが、別に彼を恨んでいるわけではない。弟からの誤解や、恨みに彼女はどういうわけなのか説明するのも嫌だった。誰かに疑われて信じてもらえない時に、いくら説明したとしても信じてはもらえない。相手のためにどれだけのことをするか、実際の行動で示さなければわかってはもらえないのだ。流星が大学を卒業してから、彼女は彼を柴尾グループに入れて、流星に実力や才能があるか見ようと思っていた。もし彼に能力があり、頭角を現せば咲も喜んで彼に会社を譲るつもりだ。咲は目が不自由だから、会社の管理をするのはいつだってそう簡単なことではなかった。彼女が求めているのは、公平さと父親の恨みを晴らすこと、そして父親が得るべきだった財産を自分が相続することだ。柴尾家のあの邸宅は祖父母が咲の父親に譲ったものだ。彼女の父親が亡くなる前、彼名義のすべての財産を一人娘に相続させるという遺言を残している。だから、あの家は確かに咲のものなのだ。しかし、あの家が占拠されてからは、彼女はひたすら屈辱に耐え続けた。なにがあろうとあの家を奪い返し、自分名義に戻して今後はあの家の主人となるのだ。おじ名義の他の邸宅に関しては彼女も別に奪おうとも手を出そうともしなかった。あれは流星と鈴が相続すべきものであるからだ。……柏浜では、一台のスポーツカーが白山グループに到着していた。オフィスビルの前にあるちょっとした広場をぐるりと回り、ビルの右側に停まった。するとすぐに碧が車から降りてきて、書類の入ったファイルを手に
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第1864話

碧は最上階直通のエレベーターに乗った。エレベーターを出て玲の秘書の姿が視界に入った時、碧は口笛を吹いていた。そして秘書が碧のほうを向くと、彼は笑顔で挨拶をした。「兄さんはオフィスにいるかな?」碧は秘書に尋ねた。秘書は穏やかに返事した。「白山社長でしたら中にいらっしゃいます。事前に社長にはご連絡されていますか?」そう尋ねながら、秘書はすでに立ち上がって自分のデスクから離れ、碧の傍にやって来た。碧が事前に連絡していないと言うと、秘書はオフィスの前に立ちはだかり、社長の仕事を邪魔させないように勝手に入れないようにした。「俺は兄さんの実の弟だよ。いつでも来ていいだろう?兄さんに会うのに事前に電話しないといけないの?」そう言うと、秘書が手をつかんで碧を止めた。「申し訳ございません、もし事前にアポを取られていないのであれば、社長にこの事をまず伝えなければなりません。今はまだ入るのはご遠慮ください。社長の仕事の邪魔になってしまいます。社長がお怒りになれば、碧様のほうが大変な目に遭いますよ」それには碧は言葉を失った。すると碧は手に持っていたファイルをゆらゆらと揺らして秘書に言った。「これは兄さんに頼まれて調査した報告書だよ。その結果を兄さんに持って来たのに、アポを取る必要があるって?」秘書は穏やかに笑って言った。「それでもやはりここで社長に電話をして、会う時間があるかお尋ねになったほうがいいでしょう」碧は呆れてしまった。姉は忙しすぎてその一分一秒でも惜しいくらいだ。彼は実の弟だというのに、会うには事前に予約が必要で、秘書から中に入るのを止められてしまう始末だ。以前であれば、彼はよく姉と一緒に会社に出入りしていた。その時秘書に止められたことはない。今日が初めてのことだった。碧は秘書をキッと睨みつけてから、やはりおとなしく携帯を取り出して姉に電話した。姉が電話に出ると、彼は尋ねた。「兄さん、今オフィスの外にいるんだ。今会える?兄さんに聞かれたこと、調査し終わったから、ファイルを持って来たんだよ」玲はひとこと彼に返事をした。「入れ」するとすぐ電話を切った。「兄さんが入っていいってさ」秘書は微笑んで「どうぞ中へ」と手を差し出した。そして彼自らオフィスのドアをノックして開けた。碧は中に入ると、姉のほうへ近づきなが
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第1865話

玲は顔をあげて弟を一瞥し、笑顔を戻し弟のほうへ手を伸ばした。「持って来てくれ」碧は急いでそのファイルを姉に渡した。「姉さん」碧は小さくそう呼びかけた。すると玲からまたギロッと睨まれて、碧は舌をちらりと出し、急いで言い直した。「兄さん」会社で碧は玲のことを姉として呼ぶことは禁じられている。姉は男装二十年以上の経歴を持つ。今後実は女性だということがばれたとしても、それは碧がばらしてはいけない。もしそんなことになれば、彼は姉からボコボコにされることだろう。姉も弟も武道の心得がある。碧のほうは姉ほどの腕ではない。ただ碧よりも十分早く玲は生まれただけなのに、十年の年の差があるように感じられる。「奏汰さんは兄さんを騙してなんかいないみたいだ。確かに家族から結婚の催促されて、それがエスカレートしたから出張を口実にここに避難しに来たらしいんだ」碧のその言い方は、まるで他人の不幸を楽しんでいるかのようだった。玲はファイルの中から弟がまとめた資料を取り出して、真剣に目を通してから、それらを破った。「兄さん、なんで破っちゃうんだよ。俺が結構時間かけて聞きまわってやっとまとめあげたものなのにさ。俺の努力の結晶なんだぞ」碧は姉の動作を止めようとしたが、すでに遅かった。なんだか自分の努力の成果が姉によって踏みにじられるような感覚だった。「破って燃やし、その灰を下水に流してやっと彼に知られることはないと保証できる。俺たちが彼を調査していたことを知られるわけにはいかないだろ。そんなことになれば誤解されてしまう」玲はそう言いながら、本当にライターを取り出して半分になったその紙に火をつけ灰にしてしまった。そしてティッシュ二枚取って立ち上がり、しゃがんで下に落ちた灰を取り除いた。それを見て、碧はすぐに手伝った。姉と弟の二人が床の灰をすべてティッシュで包むと、碧のほうが口を開いた。「俺がトイレに行って流してくるよ」玲は何も言わず、弟に任せた。数分後、碧はまた姉の対面に座り、姉がまた書類の処理をし始めたのを見つめて言った。「兄さん、奏汰さんの噂、まだあるんだけど、興味ないの?」「俺は誰のゴシップにも興味ない」玲は淡々と冷たい口調で言った。「お前が言いたいなら勝手に話せばいい。ただ聞くだけだ」「この情報は会社に来る途中
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第1866話

碧も白山グループと結城グループが敵対関係になることはないとわかっている。あったとしても、それは飲食業で少し争う程度だろう。それで、理仁達の結婚式には、彼らも参加する。「結城家のおばあ様は奏汰さんにも嫁候補を選んでるらしいけど、どうやら彼はその相手が好きじゃなくてずっと拒否し続けてるんだってさ。今年に入ってすぐに彼にはその相手を伝えたけど、その女性に近づこうとしなかったって。辰巳さんが柴尾家のご令嬢と婚約すると、奏汰さんの親たちが早く結婚しろって口を出してきた。彼はそんな家族の煩わしさに耐えかねて、ここに逃げてきたってこと。星城からは遠いからね、ご家族はまさかここまで結婚の催促に追いかけて来ないでしょ」碧はそう言い終わると、さらに付け加えた。「これこそ、彼が柏浜に家を買った正直な理由だろう。ここに長期滞在して催促から逃げるためにね」玲は顔を上げて弟をちらりと見て尋ねた。「それで、結城家のおばあ様が彼に選んだ候補というのは一体どこのご令嬢なんだ?彼がそこまで拒否してるんだろ」聞いたところによると、理仁も当初唯花との結婚には反発していたらしい。しかしそんな彼でも今では妻ととても仲が良い。愛というものは育てていくものなのだろう。もちろん、その愛を育てることができなければ、別れる選択をしたほうがいい。結婚を無理やり続けていればそこには不幸しか訪れない。「それは俺もわからなかった。おばあ様はお孫さんたちの嫁候補を選ぶと相手の写真を渡すんだって。その写真の裏側に女性の基本情報が書かれているらしい。だけど、それは極秘なんだ。兄さんもおばあ様が若い頃は何をしていたか知ってるだろ。彼女が秘密にしようと思ったことは、誰も調べることなんてできないんだ」玲は頷いた。玲は自分の仕事に集中していて、奏汰の結婚相手の候補が一体誰なのかなど全く興味のない様子だった。どのみち、自分でないことは確かなのだ。彼女と結城おばあさんは数回しか会ったことがないし、交流する回数は非常に少ない。おばあさんも玲が実は女だということも知らない。それに、彼女は柏浜出身で、星城からは少し遠い。理仁と辰巳の相手を見れば、おばあさんはきっと孫たちには星城出身者を選ぶはずだ。「他にまだ何か話したいことが?」玲は突然顔を上げて、弟にそう尋ねた。「ないよ」「
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第1867話

玲は少し考えてから言った。「俺は黛凪(まゆずみ なぎ)さんなんか良いと思うけどね」黛家と白山家は家柄が釣り合っていると言える。その黛凪という女性は黛家の正真正銘のお嬢様だ。彼女が生まれたばかりの時に、悪意を持った執事がわざと自分の子と彼女を入れ替えた。そして凪は執事の家で育ったのだ。しかし、彼女に流れる血はやはり黛家の血だ。黛一族の数は少ないものの、それでも由緒正しい名家であり、高貴なオーラを持っている。凪がいくら劣悪な環境で育っても、天性の高貴さというものは隠せるものではなかった。そして一年前、凪は本当の両親が見つけ出し、正真正銘の令嬢として戻ってきたのだ。しかし、偽物の令嬢のほうは小さい頃から黛家で育ち、両親と兄からとても大切にされてきた。そんな彼女が実の娘ではないと知っても、偽物の令嬢の父親、つまりその執事のこのような悪行が公になって黛家から追い出されても、偽物の令嬢は相変わらず、黛家の人間として暮らしている。凪の話題になり、碧は眉間にしわを寄せて言った。「凪さんは品があって素敵な女性だし本当の両親が見つけ出して黛家に戻ってきたけどさ、まだ黛家では落ち着けないみたいだろ。彼女の家族は黛若葉(まゆずみ わかば)さんのほうを可愛がってるみたいだし」「本物が偽物に、偽物が本物になれない状態だ。若葉さんが可愛がられてるからってなんだ?黛家のご先祖が黛家の血をひかない者は後継者になれないって決めたんだ。黛家は将来どのみち凪さんが跡取りとなる」黛家は他の家とは違って、当主は女性だ。当主は他の家に嫁に行くのではなく、黛家は婿養子を迎え入れる。そして結婚したら妻側の姓を名乗るため、娘も母親と同じく黛と言う。娘が将来的に黛家の統率者となり、その勢いはすさまじいのだ。それゆえ、黛家の女性たちはみんな優れた者ばかりだ。もちろん、彼らのように大きな一族なら、さまざまな噂や争いが起きるのは当然だ。例えば、現当主は、姉と幼い妹を殺害し、姉の旦那家族も全て殺してしまったという噂だ。それに二人の姪、つまり姉の娘たちまでも全て捨ててしまい、今頃どこにいるのかも行方がわかっていないとか。そして皆は黛家の姉の二人娘は今頃白骨化しているだろうと噂している。その可哀想な姉妹は両親を失った時、まだ年端もいかぬ小さな子供だったらしい。もし運が良ければ、良くて
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第1868話

凪が黛家の跡取りになるなら、彼女の夫は婿養子でなければならない。碧はそれは絶対に嫌だった。玲は黙ってしまった。そうだ、そのことをすっかり忘れていた。黛家は昔から婿養子は迎えるが、娘を他所の家に嫁に出すことはないのだ。……辻家。豪華な造りのリビングで、響が足を組んでソファに座り新聞を読んでいた。この時、ある黒服の男が入ってきた。その男は響の近くまで来ると、低い声で言った。「響様、夕菜お嬢様がこっそりと星城に行った目的がわかりました」響は新聞をめくる手は止めずに、淡々とした口調で尋ねた。「なんだ?」男は声の大きさをさらに抑え、小声で言った。「彼女は結城理仁に一目惚れし、彼と妻の仲を裂いて、自分が妻の座につこうと考えているのです。響様が夕菜お嬢様を連れ戻すために星城に行ったあの日、彼女は結城さんの家を見つけ出し、その妻に会っていたのです。そして面と向かって挑戦状を叩きつけたようですね」それを聞いた響はすぐに新聞を折りたたみ、信じられない様子で男のほうへ顔を向けた。暫くして、彼は低い声で尋ねた。「それは本当か?」「響様、百パーセント間違いございません。結城家の若奥様に関することでしたら、彼女はやはり星城でも有名な方ですから、容易にいろいろな噂を聞くことができます」すると響は冷たく笑った。「夕菜はプライドが高い。それにおじさんの一人娘でかなり大事にされている。彼女を会社の後継者にしようと、常に自分の近くにおいて学ばせているんだ。彼女の存在は確かに俺にとってはかなりの脅威でしかない」もし、夕菜がいなければ、辻グループは必ず響のものになる。夕菜の父親は響のことをかなり重宝しているからだ。しかし、彼は今現在では夕菜が社長の座に就けなかった場合の補欠のような存在だ。夕菜が大きな過ちを犯し、もし父親の怒りを買えば、その座は響に回って来る。そうでなければ、彼は永遠に夕菜の補欠でしかない。夕菜も彼にはかなりの意見があった。この二人は会社の中でも互いに敵対視し、何かと争っているのだ。「結城さんは大人で落ち着いている。イケメンの御曹司でクール系だ。多くの女性が彼に会うと、彼の特別な人間になりたいと、どうにかして彼を落として手に入れる妄想をしている。夕菜が彼に一目惚れするのは当然のことと言えるな。ただ、結城さんには妻がい
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第1869話

響は何か深く考えているような瞳で暫く黙ってから、突然低い声で命令した。「お前たち、結城理仁にそっくりな男を全国で探してこい。見つかったら彼に似るようトレーニングを受けさせるんだ。そして彼を夕菜のところに送りこめ。あいつは頭がきれる女だからな、彼を見ればすぐにどうすればいいかわかるぞ。もし顔が似ている男が見つからなかったら、背格好が似ている奴でいい。それでも十分使える」理仁を崩すことができないなら、妻である唯花のほうに仕掛けるしかない。もし、唯花が理仁が不倫していると誤解すれば、彼女の性格からしてすぐに離婚を申し立てるだろう。理仁は妻を自分の命のように大事に愛している。離婚しようとするわけがない。それに無実の罪を着せられて彼が黙っているはずなどない。どういうことかきっちり調査するだろう。その時、夕菜はもう終わりだ。夕菜がトラブルを起こしたことで、父親の怒りを買い、彼女を辻グループから追い出せば、響が晴れて後継者となれる。「かしこまりました」「今からさっそく取り掛かってくれ。しかし、用心に用心を重ねるんだぞ。絶対に何か形跡を残してはならない。誰にもこの件に俺が関わっていると悟られてはいけないぞ。結城家と九条家は深い繋がりを持っている。あの九条家は手を焼く存在だ」響はそのように自分の手下に手配させた。手下は彼に忠実にしっかりと頷いた。響が手を振ると、手下は黙って去っていった。「夕菜、やっと俺に隙を与えてくれたな」この時の響はかなり悪そうな目つきになっていた。「この俺が絶対に今度こそお前を会社から追い出してやるよ」夕菜を辻グループから追い出すだけでなく、彼女の父親を完全に失望させて二度と目の前に現れないように遠くに嫁に行かせてやる、と響は企んでいた。あの結城理仁を怒らせた輩には、悲惨な結末しか待っていない。……「ハクション、ハックション!」遠く離れた星城にいる理仁はこの時何度もくしゃみしていた。それを隼翔と唯月が見ていた。唯月が心配そうに尋ねた。「結城さん、風邪ですか?」隼翔は自分のズボンのポケットからティッシュを取り出すと、理仁に手渡した。彼は足が不自由になってからというもの、常にティッシュを持ち歩く癖がついていた。転んでしまった時に、汚れたらそれで拭くためだ。「そりゃ、唯花さんが俺の
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第1870話

隼翔は唯月のことを諦めるのはやめた。理仁は親友の後押しをするために、彼らが二人っきりになる機会を作ったのだ。唯月は少し考えてから言った。「すぐには終わらないかもしれません。東社長がここで暫く待っていて少し遅くなっても構わないのでしたら、送っていきますよ」隼翔はすぐに答えた。「いいよ、待てる。唯月さんの用が終わってから、送ってくれても全然問題ないから。帰っても暇なだけだし、ここにいれば内装工事に抜かりがないか代わりに観察しておけるから」それに唯月にいろんなアドバイスができる。「理仁、何かやらなければならないことがあるなら、早く対処してこいよ。俺のせいで時間をとらせるのは申し訳ないから」隼翔は理仁に早く行くよう促した。理仁から隼翔のことを任されれば、唯月はいくら忙しくても、時間を作って隼翔を送ってくれるはずだ。そうすれば唯月と交流する時間がもっと増える。今車椅子生活を余儀なくされているが、好きな人を口説くのは問題なくできそうだ。彼は諦めずにリハビリを続け、一日でも早く立てるように努力するつもりだ。「義姉さん、隼翔、じゃあ、俺はこれで失礼するよ」理仁は唯月が気づいていないところで親友にウインクを送るとこっそりガッツポーズを彼にしてみせた。そして真面目な口調で話し、唯月には彼が本当に急用があって帰るのだと思わせた。「早く行ってきてください」唯月もそう言った。理仁は二人に去り際にまた挨拶して、店の外に向かって歩き出した。こうやって親友を義姉にあずけることに成功したのだった。彼が親友のためにできることはこれくらいだ。唯月の新店舗から出ると、理仁は車に乗りゆっくりと運転した。この時、彼の携帯が鳴り出したのだ。ある知らない番号からだった。彼は待ちきれずにその電話にすぐに出た。今、新しい知らない番号からかかってきた電話は、すべてあの夫を放置して去っていった愛妻からの電話なのだ。「もしもし、理仁」やはり唯花からだ。唯花は夫が電話に出るとすぐに優しい声で彼の名前を呼んだ。家に置き去りにされてしまった理仁は、妻の優しいひとことで、すべての恨みがサッと消え去ってしまった。「唯花、君が恋しくて本気で死にそうなくらいだよ。一体いつになったら帰ってくるんだ?今後は二度と君に不満を抱いたりしないって、約束する
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