All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1871 - Chapter 1880

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第1871話

唯花の近くからどうして赤子の泣き声がするのだろうか。「理仁、それじゃ、電話切るわね。おうちで私が帰ってくるのを待っててくれればいいから」唯花は遥の子供の泣き声を聞き、夫のことはもうどうでもよくなり、すぐに電話を切ってしまった。彼女は今音濱岳邸にいる。遥の双子の赤ちゃんのことを唯花は自分の子供のように可愛がっていた。同じく自分にも双子が生まれるといいなと思いながら遥と一緒に過ごしていた。一度に男女の双子を授かれればもっと良い。さっきは赤ちゃんの声がしたことで、理仁に居場所がばれてしまうのではないかとヒヤヒヤし、彼女はそそくさと通話を終わらせたのだ。理仁は本当に居場所をあててしまった。彼はこの時、嫉妬心だだ洩れで、ぶつくさと独り言を言っていた。「音濱岳に子供を見に行くのに俺を呼んでくれないなんて。俺だって、あの子たちがすっごく好きで、会いたいって思っているのに」特に女の子のほうだ。遥の娘はとてもおとなしく、あまり泣くことはない。それと真逆で双子の兄のほうは一日中泣き続け、その煩さで頭がくらくらするほどだ。理仁はおばあさんがあれほどひ孫には女の子を希望している理由がわかった気がした。女の子のほうが絶対に静かでおとなしく聞き分けがよく、男の子ならいつも泣き喚いて、話を聞かないのだろうと彼は思った。蒼真も女尊男卑な考えの男で特に娘のほうを溺愛している。双子の一カ月のお宮参りの時には、理仁は唯花を連れてA市に祝いに行った。その時、蒼真のあのどケチ男は理仁には絶対娘のほうの芽衣(めい)を抱かせようとしなかった。息子の悠(ゆう)に関しては、理仁がいつまでも抱っこしていてもどうでも良さそうだった。そして最後になって理仁がやっと芽衣を抱くことができたのも、それは唯花が遥のところから芽衣を抱き上げたおかげでだ。芽衣はよく育てられており、真っ白な肌にモチモチ肌、それにぷくぷくとした可愛らしい様子には思わず噛みついてしまいたいくらいだった。もちろん、理仁は本気で噛みつくことはない。そんなことをすれば、蒼真が即刻彼を家から追い出すだろう。桐生家の他の坊ちゃんたちからも抗議の声があがるはずだ。「娘がいるからって偉いとでも思ってるのか」以前のことを思い出し、理仁はまた一人でぶつくさ呟いた。「俺と唯花が将来何人も娘を生んで、あいつらを嫉
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第1872話

「陽ちゃん、この子とっても可愛いわよね?」結城おばあさんは芽衣を見つめたまま、陽に尋ねた。「うん、とってもかわいいよ。おばあたん、ぼくにはいつになったら妹ができるの?」陽も小さな赤ちゃんに触りたかったが、おばあさんは陽がまだ幼く力加減を知らないと思い、軽く彼の手をぽんと叩いて言った。「あまり触らないほうがいいわ。あなたはまだどれくらい力を入れたらいいかわからないから、赤ちゃんを傷つけちゃったら困るでしょ。赤ちゃんの肌ってとっても薄くて傷がつきやすいからね」陽はそれに反論した。「……おばあたん、ぼくまだこの子に触ってないよ。なのにどうして傷つけるってわかるの?ぼくに触らせたくないだけでしょ」おばあさんのほうはこの世の宝物でも触るかのようにずっと赤ちゃんに触れているのに、陽には触らせようとしない。「そうそう、おばあちゃんは陽ちゃんに触らせたくないのよ。この子がとっても好きだから独り占めしたいの。もし、私のひ孫だったならいいのになぁ」そしておばあさんは今度は芽衣の小さな足を触り始めた。「おばあたん、この子の足、とってもちいさいね」おばあさんは陽のほうに目を向けることもなく言った。「生まれてすぐ陽ちゃんもそんなに大きな足だったと思う?あなたが二か月の時には、同じように小さな手に足をしてたのよ」芽衣はおばあさんと陽におとなしく見つめられていた。おばあさんが足を触ると、彼女は蹴りを入れた。「あらまあ、この小さな足でこんなに力があるなんて」ベビーシッターがミルクを入れて持って来たのを見て、おばあさんは立ち上がると腰をかがめてベッドから芽衣を抱き上げた。そしてまた腰をおろし、ベビーシッターに言った。「私がミルクをあげましょう」ベビーシッターは芽衣の哺乳瓶をおばあさんに渡した。おばあさんは芽衣にミルクをあげながら遥に尋ねた。「母乳が足りていないの?」遥はこの時息子のほうにミルクをあげながら答えた。「同時に二人いるものだから、足りないんです。それで粉ミルクも混ぜながら飲ませているんです。そうしないとお腹いっぱいになってくれないんですよ」娘のほうは何でも素直に飲んでくれるから助かる。しかし、息子のほうはそうはいかない。母乳を飲むとどんどん粉ミルクのほうは飲まなくなっていった。しかし、かなりお腹が空いた時には、白湯を三十ミ
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第1873話

理仁と唯花が結婚してからまだ一年経っていない。この時、もうすぐ九月に入るところだ。彼らが結婚手続きをしたのは十月で、本当の意味で夫婦になったのもまだ半年ほどだ。周りは唯花が不妊症だと言うのだが、それは彼女に嫉妬し、わざとそのように傷つけるような噂を流しているのだ。結城おばあさんは遥の言葉に付随した。「その通りよ、また誰かがそんな事を言ったら、唯花ちゃん、そいつの頬を一発叩いてやりなさい。罪を犯すようなことをしないかぎり、相手を怒らせても構わないのよ、私がちゃんと守ってあげるんだからね。それに私じゃどうしようもない時は理仁がいるでしょ。あの子がいる限り何が起きても怖いものなしよ」唯花が言った。「私も直接ああいう話を聞いたことはないの。全部知り合いが誰がまた裏で私の悪口を言っていたとか、そういうのを教えてくれたんだ。もちろん、直接聞いていれば、ぶってやってたわよ。私の事なんだから、他人に心配される必要なんてないのに」「まったく、他人のことに首を突っ込みすぎなのよね。私たち身内の年寄りもそんな心配してないってのに、他人が何様のつもりかしら?」おばあさんはあの占い師の言葉をかたく信じている。理仁夫妻には男の子も女の子も生まれるという結果をだ。占い師も、自分の運命に任せていれば自然とそうなるのだと言っていた。遥は自分の息子を抱きかかえている唯花を見つめ、微笑んだ。「もしかしたら、もう少し経てばおめでたの知らせが届くかもしれないわね」彼女たち二人はいつも一緒にベタベタといるような友人関係ではなく、あっさりとしながらも心は繋がっていて、しっかりと友情を築いている。遥は唯花が一日も早く妊娠して、あのような意地の悪い部外者に衝撃を与えてやりたいと望んでいた。唯花は笑って言った。「ありがとう、双子のお食い初めはいつ?理仁さんと事前に予定を空けておくから。その時には私たちも一緒に来てお祝いしたいの。数日ここに滞在しようと思って、双子ちゃんたちが可愛すぎるんだもの」「来月末よ。あと一カ月あるわね。もちろん、こんなにうちの子をお二人に可愛がってもらってるんだから、一緒にお祝いに来てね」音濱岳邸ではすでに双子のためにお食い初めの準備を始めていた。遥は感嘆の声をもらした。「この前までお腹の中にいたのに、生まれたと思ったら、もう百日のお祝いな
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第1874話

「おばあ様、唯花ちゃん、下に食事に行きましょうか」遥は二人にそう言うと、陽のほうへ手招きして優しく微笑んだ。「陽ちゃん、おいで、おばちゃんが抱っこしてあげる」陽は双子の赤ちゃんを見て、また綺麗な遥のほうへ視線を移し、最後に名残惜しそうに遥のほうへ歩いて行き言った。「はるかおばたん、ぼくはもう大きいから、だっこしなくていいんだよ」陽がそう言うと、遥は彼の小さな手を繋いだ。「じゃ、お手手繋いで一緒に行こ」そして彼女はまた唯花のほうに向かって言った。「陽ちゃんって本当にお利口さんね。うちの悠とは全然違うわ。あの子ったら毎日泣いてて、依茉の子と張れるくらいよ」酒見依茉の息子はまだ生まれたばかりで、彼女は産後の休養期間中だ。彼女が出産を終えたと聞き、辰巳は急いでお祝いとして栄養のある食べ物を贈った。これは彼にとって婚約者の目を治療できる最後の希望なのだ。依茉の夫である弘毅は辰巳からの祝いの贈り物を受け取り不機嫌そうにしていた。そしてそれを部屋の隅に追いやった。どのみち彼の妻は栄養がつく食べ物なら家に売るほどある。わざわざ辰巳から贈られたものを食べる必要などないだろう?辰巳には別の意図があって送ったわけではないと弘毅もわかってはいるものの、どうしても気に食わないのだ。自分と辰巳は別に仲の良い友人関係でもないのに、妻が子供を出産して、辰巳がわざわざ送って来る義理などないだろう?ベビー服を送られたなら、それは彼も受け入れられる。「そうだ、酒見先生のお子さんも後で会いに行ってみましょうよ」依茉はまだ入院している。しかし、彼女の息子は良く泣くことですでに有名になっている。弘毅が言うには、毎日お風呂をさせる時、彼の息子は最大の声で大泣きするらしい。それにかなり暴れるので、他の妊婦たちの家族もみんな弘毅の息子がお風呂をするところをのぞくそうだ。結城おばあさんも名残惜しそうに立ち上がった。芽衣を抱っこして一緒に食事に行きたくてたまらないようだ。この時、ベビーシッターがベビーベッドを押してきた。おばあさんは尋ねた。「ベッドごと一階に行くの?」ベビーシッターは答えた。「そうです。悠様は浅い眠りですので、すぐに目を覚まされます。起きるとすぐお泣きになるので、お二人だけ部屋に残していくわけにはいかないのです」それを聞いておば
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第1875話

結城家は何代にもわたって女の子が生まれていないということを、桐生家もよく知っていた。桐生おばあさんは娘がいて、ただ孫娘がいないだけだ。そして今では遥が芽衣を生んだことで、おばあさんにはひ孫の女の子ができた。それまでは孫に女の子がいないことが残念だった。結城おばあさんがひ孫に女の子が生まれてほしいと強く願っているその気持ちを桐生おばあさんはそこまで理解できていない。理仁と唯花は結婚してもうすぐ一年になるが、唯花にはまだおめでたの兆しがない。桐生おばあさんもあまり長く子供の話をしたくはなかった。結城おばあさんがさらにひ孫を切望して、唯花にプレッシャーをかけないか心配だからだ。唯花が今置かれた状況というのも、本人にとってかなり辛いものに違いない。それでも、彼女が嫁いだ結城家は家風が良く、年配者たちもみんな古臭い考えは持っていないから、子供を生めと催促はしてこない。それに唯花が一般家庭出身だということも嫌がっていない。それは当初、彼ら桐生家が遥のことを嫌わなかったのと同じだ。しかし、唯花と違って遥は田舎出身であるが、境遇は悪くなく、実家の雨宮家はまあまあ経済的に豊かな家だった。それに、本当の両親が遥を見つけ出すと、彼女の人生は大きく様変わりした。彼女は望鷹の篠崎家の娘であることが発覚し、その地位と身分は一気に上昇したのだ。今現在の篠崎家当主は、遥の母親の双子の兄だ。父親が退職した後は財産を遥と兄の二人に平等に分けた。今、遥は桐生家の若奥様というポジションを除いても、彼女個人の財産だけでかなり裕福な女性なのだ。相当な億万長者。その点が唯花とは全く異なっている。それ故、桐生おばあさんは結城家の家風は本当に素晴らしいものだと思っている。年配者でも開けた考え方を持っているし、結城おばあさんが孫の嫁を探す時にも相手の家柄などにはこだわらず、ただその相手の性格や人柄を重視するのだ。「そんなふうに言わないのよ、蒼真さんだってとても優秀な方じゃないの。うちの理仁に劣らないくらいじゃない。それに、理仁と比べると蒼真さんのほうがもっと良いわ。彼の性格は良いでしょ。うちの理仁は性格が悪いからね、唯花ちゃんだからこそあの子を受け入れられるのよ。もし、他の女性だったら、きっと三日に一回は喧嘩して、週に一度は大喧嘩よ。それに蒼真さんだけじゃなくて、善
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第1876話

結城おばあさんはただ、柏浜の黛家と神崎夫人である詩乃とを結び付けて考えたことはなかった。それはおそらく詩乃が神崎家に嫁いですでに数十年経っているせいだろう。みんなは彼女を神崎夫人と呼ぶのに慣れていて、彼女の旧姓のことなど思い出すことはなかった。詩乃は恐らく、柏浜の黛家と関係があるのかもしれない。詩乃は若かりし頃、かなりできる女だった。児童養護施設で育ち、何もかも自分の力に頼って生きてきた。そして結城家に次ぐ名家に嫁ぎ、神崎家の夫人となった。彼女のその優秀さはもしかすると、あの黛家の血を引いているからかもしれない。黛家の女性、特に長女はその能力が桁違いなのだ。結城おばあさんは若い頃にしていた仕事の癖で、黛一族に興味を持つと、ついでにすこし過去のことを調査した。例えば、現当主は昔、姉と妹を殺して、今の当主の座に就いた、などだ。黛家当主の姉は彼女よりもかなり年上で、二十歳も年が離れていた。彼女の母親が四十歳の時に彼女を生み、そして一年後にまた妹が生まれた。それで彼女と姉との年齢差はかなりある。黛家当主の姉はキャリアウーマンで、結婚するのも遅く子供が生まれるのも遅かった。現在の当主が成人した後、姉はようやく結婚して子供を生み、続けて二人の娘ができた。高齢出産のせいか、姉の体力は衰えていて、多くの事を妹である現当主に任せるようになった。そしてその時に、権力という甘い蜜を味わった彼女は野心を燃やし始め、姉に代わって自分が当主の座に就きたいと思い始めた。だから、彼女は裏で工作し、陰謀を企てて、姉一家を殺害し、見事自分が当主になったのだ。そして自分の罪を妹に着せてしまった。姉が亡くなる時、その二人の娘はまだ幼かった。その後、二人の娘は柏浜から姿を消してしまった。それから数十年経ち、前当主の二人の娘の生死など、誰も気にしなくなっていた。それに多くの人が黛家の現当主に関する話など、恐ろしくてできなかった。現当主はすでに七十歳になっている。彼女は当主の座を奪った後、姉と同じように遅く結婚し高齢出産していた。まずは長男を生んだが、黛家は男が当主になることは許されていないので、跡取りを作るために、当主は続けて四人の息子を生んだ後、四十二歳という年齢で、やっと娘を授かったのだ。そんな当主があまりにひどい事をやり過ぎたせいか、執事は心の底で彼女
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第1877話

結城おばあさんが黙ってしまったのを見て、桐生おばあさんはすぐにどういうことなのか悟った。すると桐生おばあさんは表情をこわばらせた。今、桐生家と神崎家は何も関係を持っていない。もし、桐生家の善が姫華と結婚することになれば、桐生家と神崎家は親戚関係になる。詩乃の旧姓は黛。この名字は極端に少ない。だから、詩乃と柏浜の黛家が親戚関係にあると考えるのが普通だ。数十年前の黛一族は血生臭い経歴を持っている。それぞれが別の都市に存在しているが、有名な名家両家はもちろん注目を集めるだろう。桐生おばあさんは詩乃がもし柏浜の前当主の娘だったのであれば、詩乃がその事実を知った時、家族の仇を取ろうと考えるかもしれないと思った。彼ら桐生家はそうなると手助けをしなければならなくなる。結城おばあさんと桐生おばあさんはお互いに目を合わせ、どちらもため息をついていた。結城おばあさんが言った。「もし、そんな日が来れば、我ら結城家も黙って見ているわけにはいかないわ」詩乃の実の妹は唯花の母親だ。詩乃が母親の恨みを晴らすために、黛家当主の座を奪還しようとするのであれば、結城家は必ずその手助けをする。理仁はきっと唯花の母親の仇をとるために、自ら主戦力として先頭に立つはずだ。屋敷の中にいるおばあさんたち二人が一体何を話しているのか、遥も唯花も知らない。ただ、二人が一緒になればきっと過去の昔話か、孫の話題か、そのどっちかになるだろうと予想はついていた。遥は陽の手を繋いだまま歩きながら唯花に尋ねた。「陽ちゃんは、もう幼稚園に通ってる?」「申請はしてて、九月一日から途中入学するんだよ。今はもうすぐ夏休みが終わるから、この子を連れて遊び回ってるの。幼稚園に通い始めたら、遊ぶ時間は少なくなるから」それに陽は武術の稽古もやっている。週末の二日は道場に通って練習している。夏休みの二か月、陽もこの半月がやっと落ち着いて休める期間だった。「陽ちゃんはとても賢いわね。あなたのお姉さんがしっかり育てていらっしゃるみたい。うちの養子の瀧(りょう)と年齢的にあまり変わらないわ。瀧は病院で依茉の先生と一緒に彼女の傍にいるの。あなたとおばあ様もここであと数日過ごして、よく遊び羽を伸ばしてね。瀧が帰ってきたら、陽ちゃんと一緒に遊ばせましょう。二人は年が近いから、きっと仲良く遊ぶと思
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第1878話

A市の女性はみんな桐生家に嫁ぎたいと考えるらしい。そして星城の女性はどうにかして結城家に嫁ぎたいと考えるのだ。結城家のあの莫大な財産と地位のためでなくとも、結城家の男たちから一途に愛されたいという欲求があるからだ。音濱岳をぐるりと半周散歩してから、二人は疲れたので、まるで示し合わせたかのように同時に来た道を戻り始めた。陽はまだ小さいので、長い道のりは歩けず、戻る時には叔母におんぶしてもらった。陽を背負っている唯花は遥に言った。「こういう時、すっごくうちの理仁さんがいたらいいなって思うのよ。代わりに陽ちゃんをおんぶしてくれるから」その言葉に遥は大きな声をあげて笑った。「結城さんが聞いたら傷つくわよ。きっとあなたが他の男のことを考えて、やっと自分を思い出してくれたって言うわ」唯花は少し顔を赤くして遥に聞き返した。「あなただって旦那さんからぐちぐち言われてるでしょ。さっき『他の男のことを』って言ったよね、その言い方、うちの旦那そっくりだわ」「まあね、うちの蒼真もよく恨み言を言ったり、ヤキモチ焼いたりしてるよ。私が息子に構いすぎるって、あの子は将来他所の家の男になるのに、自分こそが君だけの男なんだぞ、なんて言うのよ。私の中で彼を第一に置いておかないと気が済まないんだわ」唯花は言った。「二人が友人同士になれたのも理由があるのね、全く同じタイプじゃないの」「私がちょっとおんぶしてあげようか」遥は唯花の背中から陽を抱き上げようとした。しかし唯花が急いで彼女をとめて言った。「出産してそんなに時間が経ってないのに、疲れるようなことはダメよ。陽ちゃんもそんなに重たくないから、私がおんぶしてて平気よ」ただ陽はぐっすり寝てしまっているから、彼が落ちないように気をつけている。唯花は体を前かがみにして、陽が下に落ちないようにしているせいで、その姿勢で歩くのが少し大変だった。唯花がそう言うので、遥も無理を通そうとはしなかった。しかし、彼女は内線をかけて、執事に頼み、小型の車で迎えに来させた。するとすぐに、使用人が運転する車がやって来た。「若奥様、お待たせいたしました」使用人は車を停めると、丁寧に遥に声をかけた。「車の鍵をちょうだい」使用人が車の鍵を遥に手渡すと、彼女が運転席に座り、ぐっすりと眠っている陽を抱っこしている唯
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第1879話

唯花が誰なのか知ってから、依茉は唯花に言った。「結城副社長は親戚ですよね。星城に帰ったら、彼に出産から四十日過ぎたあたりに、婚約者さんの目の治療に行くと伝えてもらえませんか」唯花は微笑んで返事した。「酒見先生の言葉、きっと彼に伝えます。彼は前からずっと期待していたんですよ」隣で息子を抱きかかえている弘毅の表情が少し曇ったようだった。すると依茉が彼を横目で睨みつけた。彼は何事もなかったように、息子をあやしていた。その場にいた名医は瀧に小声で話した。「瀧、将来はしっかり依茉からその強さをしっかり学ぶんだよ。ここにいる奥さんを怖がっているおじさんから学んだら駄目だぞ」名医は弘毅のように礼儀のない人間には厳しい。名医は瀧にはしっかりと礼儀というものを叩きこんでいる。それで、弘毅は自分の妻は自分の味方ではなく、他の男の味方をすると文句をよくこぼしている。さすがはヤキモチ焼き家系から生まれた男だ。いつも嫉妬するのが好きらしい。弘毅は小声で弁解するように言った。「先生、俺は別に妻を怖がってなんてないですよ。俺は愛妻家です。俺のために子供を生んでくれた彼女には感謝ですよ」懐に抱かれている赤ちゃんは、またその小さな口を尖らせた。すると弘毅は急いであやし始めたが、息子は泣き始めてしまった。弘毅はよく泣く息子を抱っこしたまま病室の中を行ったり来たりして、最後はどうしようもなく名医に渡すと、コロッと泣き止んでしまう。名医は弘毅に愚痴をこぼした。「ほれ見ろ、赤子を抱っこすることもできない。この子はあんたの抱き方が下手だからいつも泣くんだぞ。それなのにいつも泣いてばかりだと思ってるんだろ。泣かないと逆にこの子がおかしいんじゃないかって疑い始める」「そんなことありませんよ。芽衣ちゃんは全く泣かない子でお利口さんじゃないですか」弘毅は素早くそう反応した。弘毅と依茉は芽衣のように聞き分けの良い子供を期待していた。彼らの子供が生まれてから、出産当日はそんなに泣くことはなかったが、お腹が満たされると寝て、ぐっすり寝て起きると泣き始めるようになった。弘毅は自分の息子は数人いる甥たちよりもお利口だと思っていたのだが。それがまさか、だんだんとよく泣く子供になってしまった。夫婦は今後の生活がどうなるのかまったく想像もしていなかった。二人はこれから間
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第1880話

一緒に遊べる子供が来ていると聞いて、瀧はとても喜んでいた。それに彼も早く家に帰りたいと思っていた。妹のことが心配だからだ。もし、自分が家にいないで、誰かに妹が取られたらどうしようと思っているのだ。しかし、名医は家に帰ろうとしなかった。病院に残ってあの生まれたばかりの男の子の傍にいると言っている。きっと先生もあの子が誰かに取られてしまうのを心配しているのだろうと瀧は思っていた。陽は叔母と一緒に音濱岳に来て、瀧という友達ができた。二人は年がそう変わらず、仲を深めていき、両名家の次の世代の橋渡しへと成長していくことになる。陽は結城家の人間ではないが、叔母が結城家の将来の女主人だ。彼は遥の養子である瀧と友人になり、多くの絆を繋いでいくだろう。……太陽が西に沈み、空を赤く染めていた。唯花は近くで遊んでいる二人の小さな子供を見つめ、優しい目つきで、微笑ましそうに笑っていた。いつになったら、自分にも子供ができるだろうか。おばあさんが最も信頼を寄せている占い師は、彼女たち夫婦には男の子も女の子も生まれると占った。しかし、今になってもその兆しは見えない。それで、占い師の占いは外れたのではないかと唯花は少し不安に思っていた。「りひとおじたん」突然陽が理仁を呼んだ。唯花はおかしくなって言った。「陽ちゃん、おじちゃんはここにはいないでしょ。理仁おじちゃんに会いたいなら、早めに帰らないと」彼女のその言葉は陽には聞こえていなかった。陽の瞳には本当に理仁おじさんが映っていたのだ。理仁は遠くのほうから彼らのほうへ向かって歩いていた。夕日が理仁を照らし、まるで彼から後光が出ているようだった。瀧も理仁の姿を捉え、駆けて行こうとする陽の手を引いて尋ねた。「ひなた君、あの人しりあいなの?ぼくも見覚えがある気がするんだ。ゆうきおじちゃんみたいだけど」「そうだよ、りひとおじたん、たしかにゆうきって名字だ。いつもだれかがゆうきしゃちょうって呼ぶのを聞いてたから」「じゃ、ゆうきおじちゃんに間違いないよ」瀧が陽の手を離すと、彼は陽よりも早く理仁のもとへと駆け寄っていった。遥の双子が一カ月の時に、理仁が唯花と一緒に祝いに来た。それで瀧も理仁に会ったことがあり、覚えていたのだ。陽は彼よりも少し遅れて反応した。彼はきっとあれは
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