All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1981 - Chapter 1990

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第1981話

「白山社長、おはようございます。結城社長がいらっしゃっていて、中にお入りになりたいようですが」「結城社長には、今日もてなす暇がないから帰ってもらうよう伝えてくれ。今後二度と来るなってな」警備員のリーダーはこうなると予想していた。「わかりました」玲の車はボディーガードの車に挟まれる形で、白山グループへと入っていった。奏汰は自分の車の中から玲の車の列が会社に入っていくのを見て、口角をニヤリと上げて独り言を呟いた。「まったく、この大袈裟っぷりは理仁兄さんと同じだな」普段、玲はマイバッハに乗っていたが、この日はロールスロイスに変えたので、本当に理仁そっくりだった。車を変えたのは、恐らく奏汰の車も同じマイバッハだったからだろう。玲の車の列が会社に入ると、ゲートは固く閉ざされた。警備リーダーが奏汰の車の傍に近寄り、窓に寄って奏汰に申し訳なさそうに言った。「結城社長、うちの社長からですが、おもてなしする時間がないから、帰ってくれとのことです。それに、今後はここへは来ないようにと」そう言い終わると、彼は自分で奏汰に説得するかのように付け加えた。「結城社長、うちの白山社長は男で女性のほうが好みなので、あなたのことは受け入れられないと思います」玲を慕う女性なら星の数ほどいるし、しつこくつきまとってくるタイプも非常に多い。しかし、玲が男にここまでつきまとわれるのは、これが初めてのことだ。奏汰は答えた。「俺はそちらの白山社長が好きなんです。俺は忍耐強い人間ですからね、彼が俺のことをどう思おうが、どう接しようが、諦めずに努力するのみです」そう言うと、奏汰は車を出した。もちろん、そこから去るわけではない。そうではなく、車を会社のゲートの端に移動しただけだった。そうしておけば、誰かの邪魔をすることはない。それから、奏汰は玲に電話をかけた。玲は出なかった。するとまた奏汰は玲にメッセージを送った。【玲さん、中に入れてください。今日は愛のこもった朝食を持ってきました。一緒に食べましょうよ。中に入れずに後で後悔しても知りませんよ】玲はそのメッセージを受け取って、暫くの間眺めていたが、結局は返事をすることにした。【結城社長、これはお願いです。お願いだから俺のことは諦めてください。もう二度と俺の前に現れないでください。あなた
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第1982話

奏汰が何を叫んでいたかというと「玲さーん、俺は本気ですよ。真面目にあなたのことが好きなんです。あなたにどんな態度を取られても、俺は永遠に好きで、追いかけ続けますからね」だ。白山グループのオフィスビルは最上階から地面までかなりの距離がある。奏汰がいくら大きな声で叫んだとしても、その高さでは最上階までは聞こえてこないはずだ。それなのに、玲には聞こえた。彼女だけでなく、管理職たちにも聞こえていて、みんな窓の外を眺め、また玲のほうへ視線を向けた。この時の玲の顔といったら、完全に不愉快マックスだった。彼女は一旦会議を中断し、立ち上がり窓の前まで行った。距離は遠く、彼女にははっきりとは見えなかったが、よく耳を澄ましてみると、奏汰がメガホンを使って叫んでいるのが聞こえた。それを使うことによって、彼女の耳まで聞こえてきたのだ。それに、付近の人たちにも彼が大声で叫んでいるのが丸聞こえだ。玲は低い声で悪態をついた。彼女はすぐに携帯を取り出して、奏汰が騒音被害を出していると、警察に通報しようと思ったが、少し考えてやはり警察に電話をするのはやめておいた。そして元の位置に戻ると、秘書に言いつけた。「警備部門に連絡をし、彼を中に入れろと外に出て伝えるよう言ってくれ」外で大声で騒がれると、周りに騒音被害が出るし、また彼女が世間の話題になってしまう。警察に通報したら、騒音は消え、奏汰もしっかりとお叱りを受けることになるだろうが、そうしたとしても根本的な解決にはならない。あの男は普通では考えられない行動を起こす傾向にある。次またどんな手を考えて邪魔してくるかわかったものではない。結城奏汰という人物は玲の人生で初めて手に負えない男だった。「はい、白山社長」すると秘書はすぐに警備リーダーに通達し、彼に奏汰を中へ入れるように伝えた。これ以上奏汰がメガホンを使って大声で玲に告白したら、たまったものではない。警備リーダーもまさに頭を痛めているところだった。秘書から内線を受け、リーダーはフルスピードで奏汰の前まで飛んでいった。「社長、結城社長」リーダーは両手で奏汰の手を引っ張ると同時に、これ以上メガホンで叫ばれるのを阻止した。奏汰は一旦叫ぶのをやめ、リーダーのほうへ顔を傾け、にやにやと笑いながら尋ねた。「なんですか?白山社長は私
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第1983話

奏汰が自分の車に戻ると、警備リーダーが手を振り、会社のゲートが開けられた。奏汰はあのマイバッハを運転し、堂々と白山グループに入っていった。数分後。背の高く顔の整った結城家の坊ちゃんが、片手にいくつかの袋と、もう片方の手に大きな花束を抱えて、ゆらゆらと大きく体を揺らしながら白山グループオフィスビルへと入ってきた。「結城社長、ようこそお越しくださいました」「結城社長、おはようございます」彼を見かけると、社員たちはそれぞれ礼儀正しく挨拶をしていった。奏汰は性格が良い。誰から挨拶をされても、きちんと相手に返すから、あの結城家の御曹司という偉そうなタイプではなく、白山グループの社員には近づきやすい人として映っていた。実際、結城家にいる九人の坊ちゃんたちは、理仁だけがあのように偉そうな登場の仕方をするが、他の八人はみんな人当たりが良い。しかし、理仁も別にあそこまで派手な登場がしたいわけではなく、ただボディーガードを引き連れることによって、自分に近寄る女たちを避ける目的なだけだ。奏汰は初めて白山グループに来たわけではないので、慣れた足取りで最上階へとあがっていった。「結城社長、おはようございます」玲の秘書はすでにエレベーターの前で奏汰を待っていて、奏汰が出てくると丁寧に挨拶をした。奏汰は微笑みを返し、秘書に尋ねた。「お宅の白山社長はオフィスにいらっしゃいますか?」秘書は自ら、そのまま完全に奏汰の持つあの大きな花束をスルーして、それに答えた。「白山でしたら、今は会議中です。社長は応接室で暫くお待ちください。会議が終わり次第、伺うと言付っております」「毎回来た時は会議中ですね。それは忙しい。弟さんは?」白山グループを将来玲が継ぐのであれば、彼女がここまで忙しくても価値がある。もし、白山家の財産を碧に全て残すのであれば、奏汰は自分の婚約者がここまで忙しく働いても、全て義弟となる碧にただで美味い物を与えてやるようなものだと思った。「彼でしたら、外で商談に出ていますので、本日の会議には参加しておりません」奏汰はこれ以上は何も聞けなかった。玲は今会議中だから、奏汰は秘書に続いて応接室に入り、おとなしくそこで玲を待つしかなかった。彼は花束と持っていたいくつかの袋を置くと、持って来た朝食を秘書に渡して言った。「これは
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第1984話

白山グループの古株たちは白山会長と同世代だ。彼らは玲が小さい頃から成長を見てきたと言える。玲の人柄や能力に関してはよく把握している。玲の名家出身という身分を除いても、彼らはこの若者を高く評価していた。だから、彼らは自分の娘が玲の嫁になれればいいと期待を持っているのだ。しかしそこへ結城奏汰というしつこい男が急に現れた。彼はあの結城家の御曹司の一人で、その身分が盾となる。彼に何か仕掛けようと思っても、後ろ盾として結城家と九条家が存在していることを忘れてならない。以前、結城グループと敵対関係にあった神崎グループですらも結城家の味方になってしまった。だから、誰も容易く奏汰に手を出すことなどできない。それで裏で結城奏汰は恥知らずな野郎だと悪態をつくしかない。奏汰が男を好きなのは別にどうでもいいが、古株たちが自分の娘の婿にと期待している玲まで巻き込もうとしているのだから、彼らの怒りを買って当然のことなのだ。奏汰が持ってきた朝食を捨てると、玲は元の席に戻り、何事もなかったかのように会議を続けた。奏汰のほうは自分の朝食を堪能していた。玲が会議中なので、少なくとも一時間は待たされることになる。そうなれば朝食は昼食になってしまう。それに、朝早くに出たので、彼もお腹が空いていた。朝食を済ませると、奏汰はソファに座り携帯を取り出して、余裕で動画を見たり、ゲームをしたりしていた。そして一時間後。秘書がノックして入り、彼に伝えた。「結城社長、白山はオフィスに戻りましたので、どうぞお越しください」奏汰はゲームをする手を止め、携帯をポケットに戻して言った。「ゲームに夢中になって、会議が終わったのに気づきませんでしたね。それでは彼に会いに行きます」奏汰は花束を抱きかかえ、いくつかのあの袋も提げて、出ていきながら秘書に尋ねた。「白山社長は俺が持って来た朝食を食べていましたか」秘書は答えた。「結城社長から白山にお尋ねいただければ、わかることです」彼は答えなかった。それは玲のプライベートな事なので、秘書は余計な事はしたくないのだ。秘書にそう言われて、奏汰は玲が絶対食べていないと悟った。きっと彼が持って来た朝食はそのままゴミ箱行きになったのだろう。それでも構わない。どうせすぐに昼食の時間になるからだ。彼は自分の力をフルで
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第1985話

「白山社長、結城社長がいらっしゃいました」秘書は丁寧にそう伝えた。玲は振り返ることはなく、ただ手を振って秘書に出ていくよう合図した。秘書は奏汰をソファに座らせると、彼にお茶を淹れて持って来て、黙って社長室から出るとすぐにドアを閉めた。秘書が出て行くと、奏汰は立ち上がり、玲の傍に近づいて彼女のほうへ手を伸ばした。玲は横目で彼を見て、奏汰のその行動を理解できていなかった。「白山社長、俺にもタバコ一本ください。ずっと吸ってなかったんで、あなたが吸っているのを見ると、吸いたくなってきました」玲は少し黙ってから、タバコの箱から一本取り出して奏汰に渡した。「ライターを貸してもらえますか」奏汰は玲にライターを借りようとした。奏汰は実際、普段タバコを吸うことは滅多にない。唯花と明凛がタバコの匂いを嫌うので、理仁と悟は今ほとんどタバコに手をつけることがない。それで結城家の他の坊ちゃんたちは、きっと自分の将来妻となる女性もタバコの匂いが嫌いだろうと思うようになった。それで、彼らもタバコを吸う回数が減っていた。悟は言うまでもない。明凛が妊娠してから、彼はタバコと酒には一切手をつけなくなった。理仁夫妻は子供を作る予定だから、同じくタバコも酒も避けている。「ライターならデスクの上にあるので、自分でとってください」玲はそう言った。すると、奏汰はデスクのほうに体の向きを変え、デスクの上にある車のような形をしたライターを見つけた。彼はタバコに火を付けながら言った。「玲さん、あなたのライターは変わってますね。知らない人が見たら、これは車のおもちゃだと思いますよ」玲は返事をしなかった。奏汰は火をつけると、彼女の傍にまた戻り、タバコをふかしながら彼女を見た。「そんなふうに俺を見て、なんですか」「玲さん、あなたは見れば見るほど綺麗な方ですね。ワンピースでも着て、ウィッグでもつけて、ヒールを履いてメイクをすれば、絶対に絶世の美女になりますよ」玲は冷ややかな顔で冷たく言い放った。「結城社長がウィッグをつけて、ワンピースにヒール姿で街中を闊歩することができる時に、また俺にそういうことを言ってください」自分は男だと言っているのに、奏汰は全く信じようとしない。そのうえ女性として扱ってくるようになった。今度はスカートを
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第1986話

別に女性はタバコを吸わないものだと言っているわけではなく、タバコを吸う女性の数が比較的少ないだけだ。「それは、結城社長が来たからタバコを吸ってるだけですけど。普段気分が良い時はタバコなんて吸いませんから」奏汰は笑った。「つまり俺があなたの気分を害していると?白山社長、どうして不機嫌になるのか教えてくれませんか?俺がブサイクだから?そんなことはないですよね、俺を見ればきっと気分は良くなるはずです」玲は彼を睨みつけた。奏汰は彼女に睨まれても別に怖くない。逆にこうやって見つめられると、奏汰はある種の衝動に駆られて、彼女のその綺麗で大きな目に触れてみたいと思ってしまう。もちろん、ただそのように思うことしかできない。実際に彼女の目に触れてしまったら、殴り合いの喧嘩になり、自分のイメージまで悪くするだけだ。「もし、白山社長が俺の前で本当に男だと証明してくれるのであれば、今後は二度とあなたの前に現れないとお約束します」奏汰も、玲が自分からしつこく追いかけ回されて不愉快になっていることくらいは知っている。玲は少しイラつき、冷たく彼に警告した。「結城社長、あなたはおばあ様から将来の奥さんを選定されているでしょう?あなたが俺にずっとつきまとっていると、彼女が気づき、同性愛者であると周りから言われていることを知れば、きっとおばあ様はお怒りになりますよ。確か、結城社長もおばあ様の言うことをきちんと聞く方ですよね。怒らせるのが怖くないのですか?」玲は理仁に訴えたが、理仁からは従弟自身が幸せならそれでいい、彼の選択を尊重すると言われた。結城家で奏汰を制することができるのは、理仁を除いて、あとは結城おばあさんだけだ。ただ、今結城おばあさんは星城にはいない。玲は、以前から人を使って、おばあさんと唯花が星城にいないことを調査済みだった。玲も、おばあさんの連絡先がなく、彼女に訴えることができないわけではない。奏汰はそのタバコを吸い終わると、デスクの前に近づき灰皿にタバコを捨てた。そしてソファの前にあるロ―テーブルから花束を抱きかかえ、玲のもとへ戻ってきた。「祖母が俺の結婚相手を選んで、一年以内にその人と結婚するように言われていますが、結婚は人生で最も重要な事でしょう。結婚相手となる人と両想いになってやっと結婚できると思うんです。相手を
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第1987話

「白山社長のオフィスには花瓶がありませんね。午後、いくつか買って持ってきます。今度、俺が花を贈ったら、その花瓶に挿してください。オフィスは一気に華やかになりますよ」玲は奏汰から花束を受け取りたくはない。しかし、奏汰のほうは玲が好きかどうかは完全に無視し、直接その花束をデスクの上に置いた。そして玲の傍に戻ると、彼女の手を繋ごうとして避けられてしまった。「お前な、自重しろ、手を出してくるな」「あなたはずっと自分が男だと主張しているでしょう。男が男と手を繋いだって、別に減るもんじゃあるまいし、何を怖がっているんですか?」そう言うと、奏汰は無理やり玲の手を掴み、ソファの前までやって来た。「あなたに洋服と靴も買ってきましたよ」奏汰はワンピースの入った袋を玲に押しつけ、ヒールの靴が入った袋からそれを取り出して床に置くと、玲に向かって言った。「座ってこの靴のサイズが合うか試してみてください。見た感じでサイズを予想したんで、だいたいこれくらいのサイズかなと思うものを買ってきました」玲はそのヒールの靴を見て、また不機嫌そうに顔を歪めた。彼女はワンピースを出すことはなかった。しかし、チラリとその袋に入っている服を見てみると、色からして婦人服だということがわかった。このクソ野郎、女性ものの服と靴まで用意してやがった!この男はこれほどまでに自分が女性だと断定しているのか?玲はワンピースの入った袋を奏汰のほうへ投げ捨て、冷たく言い放った。「結城社長、これはおばあ様が選んだ結婚相手に贈るべきですよ」そう言い、玲は体の向きを変えてデスクの前まで来て座ると、仕事を始めた。もうこの男に構いたくないのだ。奏汰はその袋の中からワンピースを取り出して開くと、自分の体にあてて言った。「このワンピースおしゃれじゃないですか?俺はすごく素敵だと思ってるんですけど。生まれて初めてこんな服を買ったんですよ」彼は片手に服を、もう片手にはヒールを持ち上げて、彼女のほうへ向かおうとした。しかし、ちょうどこのタイミングで秘書がドアをノックして入ってきた。秘書は玲のサインが必要な書類を持って中に入ってきた。入ると、奏汰が女性の服とヒールを持っているのが目に飛び込んできた。ヒールはキラキラとしたスワロフスキーがはめられていて、とても綺麗だった。もちろん安い
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第1988話

「もうすぐ昼休憩の時間ですから、ご馳走しますよ。昼ご飯を食べたら、会社まで送ります。そしたら俺も帰りますんで」「結構です。あんたが帰ってくれさえすれば、俺は感謝感激ですよ。頼むから、俺のことは放っておいてください」この時、玲はもうおかしくなってしまいそうだった。奏汰からつきまとわれるようになってまだ二日しか経っていないというのに、玲はすでに我慢の限界だった。この男の作戦は本当に湧き水のようにひたすら出てくる。その手段は尽きることなく、さまざまな手で玲を怒らせ、また無力感を与えてしまう。きっと前世は結城奏汰の仇か何かだったのだろう。だから今世ではしつこく仇討ちしようとつきまとってくるのだ。奏汰は真面目な様子で言った。「玲さん、俺は本気であなたのことが好きなんです。俺は真剣ですよ。真面目にあなたを口説いているんです。確かに俺はちょっと恥知らずで図々しいところがあるかもしれませんが、好きな人を追い求めるんですから、少しは面の皮が厚くないとやっていけませんよ。もし、そうじゃなかったら、あなたに怒鳴られて拒絶されれば簡単に諦めてしまいます。じゃ、俺は一生独身のまま終わるでしょう。俺のような優秀な男が一生独身だなんて、もったいないじゃないですか。だから、俺はただ恥を捨てて、厚かましくなるしかないんです」玲「……」玲は奏汰の前で、堂々と自分は男だと言えなくなった。奏汰はズボンを脱いで男だと証明してみせろと要求してくる。もちろんそんなことができるわけもない。そして、彼に自分は男ではないと疑う理由を与えてしまった。奏汰はソファのほうへ戻り、ワンピースとヒールの靴をそれぞれ袋に入れ直した。奏汰は玲に贈った服を受け取れとは言わなかった。玲は二十年以上も男装していて、男の姿に慣れてしまっている。そんな彼女にスカートをはけと言っても、それは彼女を困らせるだけだ。彼がワンピースを買ってきたのは、実は彼女がどこまでなら我慢できるかその限界を探るためだったのだ。「そうだ、今日は他の件で白山社長にお聞きしたいことがあるんです」奏汰は凪と唯月が似ていることを思い出し、玲の前に戻って対面に腰かけた。少し喉が渇いたので、また立ち上がってお茶を入れてから座り直した。奏汰が自分のオフィスでまるで自分の家にいるかのように過ごしているのを見て
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第1989話

玲は瞳を光らせて尋ねた。「それはどういう意味ですか?唯花さん姉妹が凪さんとそっくりだって?唯花さんには生き別れた姉妹がいるということですか?」「いえ、彼女には唯月さんという姉一人しかいないと言い切れます。実の妹もいない。いとこならいますが、その人は唯月さんとは似ていませんね」奏汰は言った。「ただちょっと家族でもないのにどうしてあそこまで似ているのか不思議に思ったんです。だから、白山社長にお尋ねしたかったんです。黛家にはもしかして、行方がわからない子供でもいるのでは?今ではなく、数十年前の昔の話です。唯花さん姉妹は、黛家から出た行方のわからない子供のはずはないです。内海家の事は俺はしっかり把握しているので。だけど、唯花さんの亡くなった母親は孤児だったそうです。まだ幼い頃に児童養護施設に送られて、その後は養子になった。ただ、彼女は運が悪く、養父母は自分の子供ができた後、彼女を別の家に養子に出したらしいです。そしてその家もまた他の家に彼女を養子に出してしまい、何度も家庭が変わったとか。神崎夫人が実の妹を探すのにここまで苦労し、数十年という時間がかかったのはこのせいですね。唯月さんの息子である陽君に会って、ようやくうちの唯花さんと唯月さんを見つけ出すことができた。陽君は唯花さんの甥で、唯月さんとはとてもよく似ています」玲は彼に尋ねた。「つまり、唯花さんの母親が黛家の出身だと疑っていると……黛家の前任の当主、つまり現当主の姉には二人娘がいて、数十年前に失踪したそうです」奏汰はその話を聞き、急いでまた玲に尋ねた。玲も何も隠すことはなく、彼女が知っている黛家の歴史を奏汰に教えた。奏汰はそれを聞き終わると、すぐに携帯を取り出して母親に電話をかけた。母親が電話に出ると、尋ねた。「母さん、神崎夫人の旧姓はなんていうの?」「神崎夫人の旧姓?突然そんな事聞いてなんなの?あなたには関係ないことでしょ。あなたは柏浜でしっかりと将来のお嫁さんを口説きなさいよ。意味のないことに時間を無駄にしないでしょうだい」「母さん、俺は絶賛結婚相手を口説き中だよ。ただ、母さんの未来の嫁はなかなか手強い相手なんだ」玲は彼の目の前でその言葉を聞いていて、完全にあきれてしまった。奏汰の母親は、彼が柏浜で何をしているのか知っているのだ。それなのに、黙認し、さらには
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第1990話

「社長、あなたが羨ましいですよ。ご両親は結婚に焦っていないから、催促されたりしないんでしょう」その言葉に玲は唇をキュッと閉じた。両親は催促しないのではなく、できないだけだ。彼女は男装をしているだけだから、両親はもちろん男とのお見合いをさせたい。しかし、もしお見合いなどすれば、相手の男性が驚いてしまうはずだ。玲を追いかけているのはみんな女性である。玲と結婚したいと思っても、それは無理な話だ。両親はどうしようもない。だから、弟のほうに催促するしかないのだが、碧は両親から結婚の催促をされても平気な様子でいる。毎回結婚の話になると、碧は聞く耳など一切持たず、一旦実家を出てしまえば、両親の話などすっかり忘れ去ってしまう。だから両親は弟に対してもどうしようもない。「神崎夫人の旧姓は黛。理仁兄さんの義母は神崎夫人の妹だから、もちろん黛ということになる。凪さんと唯月さんがあんなに似ているのだから、思うに、神崎夫人が黛当主の姪にあたる可能性は高いぞ。だけど、年齢的にずれてしまうか」玲は尋ねた。「神崎夫人は今年おいくつなんですか?黛家当主は今年七十歳です。彼女が十八の時に、一人目の姪が生まれたと聞きました。それなら、その姪御さんは今年きっと五十二歳のはず」奏汰は答えた。「神崎夫人が今年何歳なのか、俺もよく知らないんです。彼女とうちの両親は同世代でしょう。夫人の長男は今年三十過ぎだから、きっと彼女は六十に近いでしょうね。彼女は神崎グループで働き始めてから、旦那さんとその父親に気に入られて、神崎家の嫁になったんですから。だけど、黛という名字は本当に少ない。神崎夫人姉妹はちょうど旧姓が黛で、両親は二人とも亡くなり、親戚もいないから養護施設に預けられた。だけど、神崎夫人はかなり能力が高い方ですね。妹さんよりもずっと。妹さんはすでに十数年前に亡くなっていますが、唯花さんから聞いた話を分析すると、お母様はとても善良な方だったようです。神崎夫人ほど強気な方ではなかったはず。神崎夫人は若かりし頃、旦那さんと一緒にビジネス界で活躍していた。神崎グループでは重要な地位に就き安定していた。今ではもう現役を退いて会社の全てを長男に任せていますが、彼女の威厳はまだ残っている。会社の古株たちは彼女に会うと、相変わらず恭しい態度で接するそうです。俺もよ
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