All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2111 - Chapter 2120

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第2111話

美乃里が隼翔に答えた。「佐々木さんが目を覚ましたのもそれはそれで良かったじゃない。陽ちゃんは父親をなくさずに済んだんだから。まだあんなに小さいのに、父親を失うのはやっぱり可哀想だわ」隼翔は言った。「陽君は父親とあまり仲を深めてはない。あの男は以前子供を唯月さん姉妹に押し付けていた。彼は何もしないで人任せにし、気が向いたら子供と遊んで、よく泣かせていたそうだ。あいつの両親も同じだ。陽君には外面だけ良くしていて、心から大切にしていたわけじゃない。子どもは誰が自分を面倒見てくれて心から接してくれるか本能的に感じ取る。陽君は叔母さんである唯花さんにもまるで実の親子のような感情を持っているぞ。それなのに血の繋がる祖父母や伯母たちとは全く家族のような仲ではない。それに唯月さんが陽君の親権を取ることができてよかった。陽君は彼女といたほうがいいに決まっている」美乃里は頷いた。「今、佐々木家の奴らは懸命に陽君と関係を良くしようとしている。確かにまだ間に合うとはいえ、見ているほうはあいつらに皮肉を言いたくなるぞ」隼翔は佐々木家に対して、実際かなり不満を抱いている。彼は本気であの一家を嫌っている。特にあの佐々木英子とかいう女だ。道徳よりも損得勘定にしか関心がいかないし、厚かましい。以前、彼女は唯月にひどい態度をとっていたというのに、今唯月の商売が繁盛すると、がらりと態度を変えて近寄り、利益を吸い取ろうとしている。「陽君の伯母の佐々木英子とかいう女は、俺が今まで見てきた中で一番恥を知らない人間だ」隼翔は思わず母親に英子の悪口をもらした。そして、彼が俊介が入院している病室で見たもの、聞いたこと、全て母親に話した。「本当に恥知らずね。あの一家は本当に最低だわ。唯月さんはあの人たちから離れて正解ね。このレベルのクズとはできるだけ遠ざかったほうがいいわ。それに唯月さんが優しい人だから、陽ちゃんと父親側の家族をまだ会わせてあげてるのよ。他の人だったら、離婚してさっさと子どもを連れて二度と会わないように遠ざかるわ」隼翔は少し黙ってから言った。「あの二人は離婚する時に、佐々木家は陽君に会いたい時にはいつでも会えると取り決めている。佐々木俊介も養育費を出したし、子供にはなんの罪もない。唯月さんがこのようにするのも全て陽君のためだな」俊介と陽は親子とし
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第2112話

姉がもうすぐ到着するという連絡を受けて、唯花は琴ヶ丘邸の門の前で待っていた。もちろん理仁も彼女と一緒だ。しかし、この時の唯花は頻繁にあくびをしていた。理仁は彼女に文句をもらした。「市内からここまで遠いから、昼寝しろって言ったんだ。起きたらちょうど義姉さんが到着する頃だろう。それなのに言うことを聞かないんだから。今になってあくびしまくってるだろ」すると唯花はまた一度あくびをしてから言った。「だって横になったらもう起き上がれなくなるって思ったんだもん。こんな天気でエアコンをつけた部屋にいると、寝れば寝るほどだるくなってきて、だるくなると寝たくなって起きたくなくなるわ」彼女を起こしてあげなければ、午後ずっと寝ているはずだ。「季節も変わり目だからだろ。この時期はみんなそうなるんだよ」理仁は唯花の手を握りしめ高く上げ、手の甲にキスをして彼女を見つめた。愛情のこもった甘い雰囲気で唯花を見つめ言った。「唯花、もうすぐ結婚記念日だろう。俺にどんな贈り物をしてくれるのかな?」唯花は手を引っ込め、わざと彼の顔をつねって言った。「まだ思いついてないの。あと半月はあるでしょ。今は遥さんの双子の赤ちゃんへのプレゼントを考えているところよ。もうすぐ百日祝いだからね」理仁は自分は可哀想だという顔つきで言った。「あの子たちは蒼真さんのお子さんたちだぞ。なのに俺よりも上位に来ているのか?唯花、俺が悲しむのを見ても傷つかないのか?」結婚記念日に妻から心のこもったプレゼントをもらえないと、理仁は一年ずっと沈んでいるだろう。その言葉に唯花は笑った。「私は本当にまだ思いついてないの。だったら何が欲しいか言ってよ。それをあなたにあげるから」彼女が今思っているのは記念日は休んで一日中彼と一緒に過ごすことだった。彼への贈り物は服、ネクタイ、時計以外なら、男性用のネックレスや、結婚一周年を記念した指輪など思いつくのはそれくらいだった。その日は彼女自ら三食手料理をふるまうつもりでいる。特に夕食はロマンチックなキャンドルディナーにしようと思っている。理仁は彼女の肩を抱き寄せた。「君からもらう物はなんだって好きだよ。俺から何がほしいかは言わずにおくよ。だって、それじゃなんだか味気ないじゃないか。双子ちゃんたちの百日祝いなら、おもちゃや服を買うことにしよう」ま
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第2113話

唯月は琴ヶ丘邸の門の前で停車した。「陽、起きて、おばちゃんの家についたわよ」唯月は後ろを振り向いて息子に声をかけた。陽は車の中で到着するまでずっと寝ていた。熟睡していて、母親に呼ばれてもまだ目を覚まさなかった。それで唯月も先に車を降りるしかなかった。「お姉ちゃん」唯月はキラキラと輝く太陽のような笑みを浮かべた。理仁も歩いていきながら唯月に挨拶をした。「こんなに暑いのに、二人ともここで私を待っていたの?暑かったでしょう、早く入ってください。私車を中に移動させますから」理仁は微笑んで言った。「妹さんが義姉さんが来ると聞いて、到着する時間を計算してもうすぐ到着すると思い、ここで待つって言ってきかなかったんですよ」唯月は軽く妹に注意した。「外で待つなら日傘くらい持ってきなさい」「大丈夫、さっき警備員の方の小屋でちょっと待ってたの。あそこにはエアコンがあるから。そろそろ来るかなって思って理仁さんと一緒に出てきて見てたら、お姉ちゃんの車が見えたから」唯花は尋ねた。「陽ちゃんは?」「車で寝ちゃって、起こしても起きないのよ」「寝かせておいて、お姉ちゃん、車を敷地内に停めてね」そう言うと、唯花は助手席のドアを開けて車に乗った。理仁は後部座席に乗り込んだ。陽が椅子にもたれかかってぐっすり寝ているのを見て、陽を抱っこして懐で寝かせようと思い、触った瞬間、彼はすぐに目を覚ました。目を開けると理仁の顔がそこにあり、陽はにっこりと微笑むと、可愛らしい声で理仁を呼んだ。「りひとおじちゃん」「ああ、陽君、目が覚めたんだね。まだ眠い?もうちょっと寝てていいよ。おじさんが抱っこしていてあげるから」陽は頭を理仁の胸元にあてると、目を閉じた。その可愛らしい様子に、理仁は心がやわらいだ。彼は思わず顔を陽の小さな顔に近づけてキスをした。こんなに可愛いのだから、両親らが理仁たちが週末帰ってきても陽の姿がないので、みんな揃って不満をぶつけてくるわけだ。唯花は裏でこっそり夫に言った。「これから陽ちゃんを連れて一緒に帰ってこないと、お義父さんとお義母さんは私たちをここへ入れてくれないかもしれないわよ。陽ちゃんは通行証みたいなものだわ。陽ちゃんがいないと私たちだけ帰っても温かく迎えてくれないわね」理仁自身も苦笑いするしかなかった
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第2114話

唯月は頷いた。彼女は直接中心にある広場まで車を移動させた。そしてすぐに理仁の実家の屋敷に到着した。車を駐車したところに麗華が中から出迎えに出てきた。麗華は段差をおりて、車の前まで来ると唯月に尋ねた。「お久しぶりですね。陽ちゃんも一緒にいらっしゃったの?」唯月は笑って言った。「おば様、何度もお電話をもらったのに、陽を連れてこないわけにはいきませんよ。後ろにいます。今はまだ寝ているんです」「寝ていても問題ないですよ。今はお昼寝の時間だし、私も少し前までゆったりしていましたから」陽が後部座席にいると聞き、麗華が後ろのドアを開けようとしたら、息子の理仁が中から開けて陽を抱き上げ降りようとした。それを見た麗華は急いで両手を伸ばして言った。「私が抱っこするわ。ちょっと気をつけてよ、陽ちゃんの頭をぶつけないようにね」理仁は低い声で言った。「母さんは俺が頭をぶつけないか心配じゃないのか」「あんたは皮が分厚いでしょ。ぶつけたって問題ないわ。ちょっと擦りむく程度でしょうが」麗華は息子の手から優しく陽を抱き上げた。陽を抱き上げると、彼女は残りの三人は放っておいて、そのまま家の中に入っていった。唯花はおかしくなって言った。「お義母さんったら、私たちはどうでもいいんですね」「あなた達には足というものがあって、自分で歩けるじゃないの。ここはあなた達にとって実家と同じようなものよ。勝手は知っているでしょ。私が客人を案内するように接しないといけないわけ?」唯花は笑って姉に言った。「お姉ちゃん、昨日の夜ね、理仁さんと帰ってきた時に、お義父さんとお義母さんが私たちの車の周りでちらちら見てきたの。陽ちゃんがいないか確認してきたのよ。車にまで乗って探したけど陽ちゃんが見当たらないから、尋ねてきたの。陽ちゃんは一緒に来てないって教えたら、陽ちゃんを連れてきてないのにあんた達だけ帰って来て何してるの?みたいな目つきで見られたんだからね」唯月も笑った。「陽は本当に幸せ者ね。こんなにたくさんの人から可愛がってもらって」どこに行っても、陽はみんなから好かれる。姉妹は一緒に家に入った。唯月は理仁に買って来た手土産が車に置いてあるから、それを持ってきてほしいと頼んだ。理仁は言われる前に気づいていた。「お姉ちゃん、こんなにいろいろと買ってくる必要なん
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第2115話

陽が来ると、家の中は賑やかになった。叔母である唯花ですらも陽に近づくことができないくらい陽はみんなに囲まれてしまった。それで唯花は姉を連れて琴ヶ丘の山を散策し美しい景色を楽しんだ。琴ヶ丘は一年四季がはっきりしていて、季節によって違う顔を見せる。春になると、全体が鮮やかな春色に変わり非常に見ごたえがある。夏には蓮の花が咲き、それも違う美しさを見せてくれる。秋には紅葉狩りを楽しめる。冬は雪の季節だが、星城では滅多に雪は降らない。それで雪景色は楽しめないが、雪がなくてもここの景色が綺麗であることに変わりはない。「あの男の様子は?」唯花は姉に俊介の状況について尋ねた。「回復に向かってるみたいよ。今日行った時は目を覚ましたばかりの時よりもだいぶ元気が出てたわ。だけど、ベッドからおりて歩いたりはできない。成瀬莉奈は彼を殺す気で致命傷になるところを狙って刺していたからね。それでも生きているのだから、お医者さんは運がいいって言ってたわ」唯花は少しだけ黙っていてから口を開いた。「あいつが生きているってことは、陽ちゃんは父親を失わずに済んだってことね。どのみちあいつもお姉ちゃんの邪魔になることは今後ないだろうし。たまに陽ちゃんを父親に会わせてあげるくらいでいいと思う」唯月は頷いた。「私があの人と大喧嘩して離婚することになったけど、結局は陽の父親であることに変わりないからね。別に死ねばいいのにとまでは思ってなかったの。あの人たち、週末は陽を病院で過ごさせてくれないかって言ってたけど、陽が嫌がったのよ」唯花は皮肉そうに笑った。「あいつら、以前は陽ちゃんのことをおもちゃみたいに扱ってたくせに。気が向いたら遊んであげて、気分が乗らないと陽ちゃんを見ることもしなかった。陽ちゃんの祖父母だって佐々木英子の子供ばかり可愛がってさ。だから陽ちゃんはあっちの家族とは親しみを持ってないのよ。お姉ちゃんがいないなら、陽ちゃんも病院に残って父親と一緒にいるわけないわ」家族や親戚であっても、親しみの心は育てていく必要がある。祖父母であっても、孫と交流していなかったり、世話をすることがなければ、孫も祖父母に懐くことはない。それは当たり前の事だ。「東社長も一緒に来たの」唯月が言った。唯花は納得した。「それで陽ちゃんを病院にって言ったのね、陽
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第2116話

「落ち着いた日はそう続かず、また自分の出生に関する件が浮き上がってきたわ。そしてまた長い時間をかけて調べないといけないの。唯花ちゃん、私たちって神様に弄ばれているのかしらね?どうしていつもいつも傷つけられないといけないの」唯花はそれを聞いて詩乃を慰めた。「伯母様、そんなふうに言わないでください。誰だって生まれてから死ぬまで順風満帆な人はいません。必ず挫折を味わうものです。理仁さんに一緒に調査してほしいって頼みました。人が多ければ少しは証拠が見つかるかもしれません」「ええ」詩乃はただ一時的にもやもやして、姪に辛気臭い言葉を吐いてしまったのだ。「お姉さんは来てる?」「さっき到着したところです。お姉ちゃんはここにいますよ。何か伝えたいことがありますか?」詩乃は言った。「電話をかわってもらえるかしら、ちょっと話したいことがあるの」唯花は携帯を姉に渡した。「もしもし、伯母様、お電話かわりました」詩乃は返事をした後、唯月に言った。「唯月さん、最近ちょっと時間をつくれない?」「ええ、大丈夫ですよ。何か話したいことがあるなら、気兼ねなくなんでも言ってください」「じゃ、一週間時間をつくれるかしら?私と一緒にちょっと柏浜まで行って、黛家の当主に会ってもらいたいのよ」詩乃は唯花を連れて行くつもりはない。唯月も忙しくはあるが妹と比べるとそこまでではないと思ったからだ。それに、姫華が言っていた話を考慮し、詩乃はよく考えてみると、娘の話も一理あると思った。前任の黛家当主が次女である妹に殺され、詩乃と彼女の亡くなった妹が前任の実の娘だと証明されたら、詩乃は黛家当主の座を奪還するつもりだ。しかし、詩乃はもう年だから当主になる気はない。自分も娘にはその重責が担える力がないことは、詩乃もよくわかっていた。唯花は現在結城家の長男である理仁の妻だ。処世術に長けていてその責任を負うのに適しているが、今はすでに大きなプレッシャーを負っているのだ。だから、唯月が一番適している。唯月は詩乃の妹の長女である。詩乃はもし、彼女の両親が生きていればきっと唯月を後継者に選んだだろうと思った。それで詩乃は唯月と一緒に柏浜に赴いて、黛一族に会わせようと考えた。「わかりました」唯月は妹から亡くなった母親の出身を聞いていた。母親は十数年前に若
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第2117話

唯花は少し考えて、姉の話も一理あると思った。唯花は今とても忙しい。自分の事業に加えて理仁に代わって家の私産の管理に、麗華が今やっている結城家の細かな事業を継ぎ、その管理の仕方を学んでいる。結城家の長男の嫁として認められるように、努力しなければならない。それは主に彼女が一般家庭出身だから余計に努力が必要というところもある。もし、内海家が結城家に釣り合うほどの家柄であれば、彼女もここまで苦労し、プレッシャーを感じることはなかったはずだ。そして唯花も伯母が姉を黛家の当主にさせようと考えていることなど知らない。琴ヶ丘のほうは非常に賑やかだった。遠く柏浜の白山邸は賑やかとはいえないが、普段の静かさと比べると今日は賑やかなほうだった。玲と碧の二人は両親に言われて週末の休みに実家に帰ってきた。碧は早くに帰ってきて、奏汰と一緒にグラン・エデンまで玲を迎えに行った。午後四時になると真昼間ほど太陽が強くなく、幾分か光の強さは和らいでいるが、暑いことには変わりない。太陽光は昼間ほど強くなくても、みんなエアコンを手放せない。玲は午後ゆっくりと寝ていようと考えていた。憎き奏汰が彼女の眠りを妨げた。まだ三時だというのに、彼が玲のドアをノックしてきた。玲はそれを無視して相手にしなかった。そして十分ほどあけて、彼はまたドアをノックした。それか電話をかけてきた。どうしても、彼女の邪魔をして起こしたいらしい。そのようなことが一時間続き、玲は眠気が消え失せ、怒りがどんどんつのっていった。玲は昼休みを終わらせ、険しい表情でドアを開けた。そこには奏汰が花束を持って立っていたが、その花は白山邸の庭に咲いている花をそのまま摘んできたらしく、ラッピングはされていなかった。玲がドアを開けたのを見て、奏汰はニコニコと笑った。一方奏汰を見た瞬間玲は彼を蹴り倒して一階まで転げ落としたくなった。自分が寝ないからといって、彼女を起こす必要はないだろう。昨夜、二人はどちらもかなり遅い時間に寝たというのに、彼のほうは元気満々で、彼女のほうは眠くて死にそうだ。「結城社長、礼儀というものを知らないのですか?あなたはうちの客人でしょう。あなたはゲストで、私はホスト側ですけど。ゲストのくせに私の部屋のドアをよくもまぁ、うるさくノックできますよね。おかげでゆっ
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第2118話

家に帰って、そこに奏汰がいるたびに、親が二人で結託して彼女を丸ごと奏汰に押し付けようとするような感覚を拭いきれない。「行きましょう」奏汰は玲の手を掴んで彼女の手を引き歩いていこうとした。玲は条件反射で彼に触らせないように彼の手を振りほどくと、冷ややかな目で警告した。「結城社長、本当に自重してくれませんか。手を出してこないでくださいよ。両親が味方をしているから、俺が殴りかからないと思わないでくださいよ」奏汰は笑って弁明した。「俺は別に何かしようとしたんじゃなくて、ただ下に連れて行きたかっただけですよ」「俺には足があるし自分で歩けますんで、手を繋がなくていいです」玲はあの花束を奏汰につき返して、冷たい声で言った。「俺は花は好きじゃないと言ったはずです。女が喜ぶようなものは好きじゃありませんので」そう言うと、彼女は奏汰の横を通り過ぎて下におりていった。奏汰は花束を抱きかかえたまま彼女の後に続き、歩きながら話した。「ではどうすれば?俺の任務は本当に大きくて厄介ですよ。玲さん、白山社長、俺たちももうこんなに仲良くなったんですから、ちょっとは助けてくださいよ。俺もあなたの両親の前でできないことをできるって約束してしまったんですから。お二人から任された任務が完遂できないと、俺に対する評価はガタ落ちです。もともと俺には満点をくれていたのに、あなたが助けてくれなければ五十点になってしまって、不合格って言われるじゃないですか」玲は急に足を止め、警戒した様子で尋ねた。「俺の両親が何を言ったんですか?」「茂さんと弥和さんからあなたを女性の道に戻してほしいと言われて、それから周りの女性と同じように結婚して子供を産むように、どうにかしてほしいと。玲さん、ほら、この任務はとても大きくて厄介でしょう?俺もうっかりそんなことは簡単だと子供みたいに思ってしまって、胸を張って任務を引き受けたのです」玲「……」彼女は暫くの間奏汰を睨みつけていてから、尋ねた。「それで、うちの親からその任務とやらを達成できなければ、どうすると言われたんですか?」「茂さんは、俺があなたを女性の道に戻すことができないのであれば、このまま男装させておくと。だから、俺とあなたの結婚式は星城と柏浜に大きな衝撃を与えることになりますよ。前代未聞の二人の大の男がどちらもイケイケの
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第2119話

玲がやって来ると、凪は立ち上がって挨拶した。「お邪魔しています、白山社長」玲は珍しく笑顔を見せ、凪に座るよう促し、微笑みながら尋ねた。「黛さんはいつこちらに?来るなら連絡してくれればよかったのに、門までお迎えに行きましたよ」凪は少し申し訳なさそうな様子で少し顔を赤くさせて言った。「週末は仕事が休みで家にいてもつまらないし、他に友人はいなくて、白山社長は私に気さくに接してくださったから、それで勇気を出して社長とお話ししようとお邪魔したんです」凪は玲に恋心を抱くつもりはない。しかし、玲は確かに凪に対して優しくしてくれた人だった。玲は他の若い女性には氷のように冷たく当たるのに、ただ凪に対してだけは少し優しい態度をとるのだ。今も凪に対して微笑みかけてくれている。凪は玲が笑うと特に素敵だと思った。玲は普段からあまり笑みを他人に見せることはない。きっと彼を追いかける女性たちが多いせいだろう。玲はいつも冷たく、他人を寄せつけない態度を見せている。多くの玲を慕う女性たちはみんなそんな玲の心を溶かし、唯一無二の存在になりたいと思っている。もし、玲がいつも春風のように優しく微笑んでいたら、もっとファンを増やすことになる。きっと玲の服まではぎ取ろうとするような狂った女まで現れてしまうだろう。凪が黛家の令嬢であると発覚して戻って来てから一年。玲に対してそこまで知っていることはないが、ある点についてはよく理解している。玲は今まで多くの女性たちを虜にしてきて、いくら自分を恋い慕う女性が多くいても、彼女たちを受け入れることもないし、みんなを拒絶している。誰に対しても希望を与えることはない。凪はたまに、ここまでハイスぺな男性が結婚相手を選ぶ基準はなんだろうと考えることがある。そして奏汰が玲に告白して、世間の目も気にせず口説き始めてから、目立つような求愛の行動を見せている。それに対して玲は受け入れてはいないが、人を使って奏汰を遠ざけることもしていない。そう、この点が不可解なのだ。まさか玲は本当に男のほうが好みなのだろうか?凪は心の中でとても残念だと思っていた。「今後、黛さんが暇な時にはいつでも連絡してくれて構いませんよ。週末は普通家にいて、外出はあまりしませんので」凪が奏汰のほうへ目を向けると、奏汰は何も気にする様子はなく、
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第2120話

玲は優秀で、二枚目だ。奏汰はそんな玲にはまってしまい、世間の目など気にせずに堂々と玲にアタックし始めた。奏汰はかなり度胸があると言えるし、それも玲の魅力が半端ない証拠だ。最初はよく理解できていなかった凪も、後で自分の伯母の二人の娘は星城にいて、伯母の次女の娘が結城理仁の妻である唯花だと知って、ようやくどういうことなのか腑に落ちたのだ。凪は自分がきっと誰かに似ていたのだろうと思った。奏汰の自分に対する様子から見て、凪は自分と唯花がとても似ているのだと察した。唯花は奏汰の従兄の妻だ。結城家の若者世代はみんな理仁のことを特に敬っているという。そんな理仁の周りにいる人のことを、彼らは自然と尊重するわけで、唯花のことも大事に思っているのだろう。凪も一度星城に行って、詩乃と唯花、唯月に会ってみたいと思っていた。凪は詩乃とは従姉妹関係にある。そして、唯花と唯月の姉妹も自分の親戚にあたるのだ。しかし、そうするのはまだ時期早々だろう。黛家当主の情報収集能力は高い。一族の中で星城に赴き、神崎夫人に会おうとしていた人間がいると素早く情報をキャッチした。すると彼女はすぐに人を手配して星城に行かせ、一族の人間が神崎夫人に会うのを阻止するだけでなく、柏浜に連れ帰り、厳しくしつけと警告をしているところだ。そんな緊張状態にあるタイミングで、凪が星城に行けるはずがない。母親のこの反応から凪はさらに疑いを深めていった。当時、母親が当主の座に就くために、汚い手を使ったのだろう。母親の姉と妹の死は、きっと母親の仕業だろうと凪は思っている。しかし、それを証明する証拠がない。彼女は裏でこそこそと聞きまわり、一族の中から証拠を見つけ出そうとしたが、今のところ何の手がかりも掴めていない。若者世代はこの事を知っている人はいない。当時の事を知っているであろう年代の人に尋ねても、口を割ろうとしない。彼らが星城に行って神崎夫人に会いたいと思っても、凪に母親の姉一家の死について語ろうとしない。「黛さん、こいつに構う必要はありません。私たちがいつ会おうと自由ですから。来たい時にはいつでも来てくれていいですよ」玲は凪にそう答えた。そして玲は弟を一瞥した。碧はこの時、姉はなんでそんなふうに見てくるのかと思っていた。姉は自分と黛凪をくっつけたいとまだ思って
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