つまり、黛家当主は馬鹿ではないということだ。彼女は黛一族が不利になるような事などしない。「玲の言うとおりですよ。黛さんがこれから来たい時にいつでも来てください。私たち家族みんな喜んでお迎えしますからね」弥和は凪がいつ来ても大歓迎のようだ。彼女は娘が凪から女性とはどのようなものか学ぶのに良い機会だと捉えているのだった。さほど期待はできないが、弥和は少しでも希望を持ちたいと思っている。それにしても、本当に彼女は後悔していた。過去、娘を息子として育てるべきじゃなかった。まだ玲が小さい頃は、単純にこれも面白いと思っていたのだ。双子を連れて出かける時、二人とも男の子の格好をしていたので、みんな彼女は双子の兄弟を生んだのだと思っていた。そして子供たちが幼稚園に上がった時も、娘は相変わらず男の子の格好をしたいと主張した。弥和はまだ子供は小さいから、別に問題ないだろうと、玲の好きなようにさせてしまった。それから時間が経って、娘が男装するのに慣れてしまい、そろそろ元の性別で生きてもらいたいと思った時にはもう手遅れだった。娘は世間では「御曹司」や「坊ちゃん」と呼ばれるようになり、みんな玲のことを男だと思い込んでいる。玲は大人になると自分の意思を強く持ち、自立心が強くなった。母親である弥和も娘の制御は不可能になり、仕方なく、好きなようにさせるしかなかった。もし、娘が本気で好きになれる男性に出会えれば、きっと女性の姿に戻ってくれるだろうと弥和は思っていた。そんな中、流星の如く颯爽と現れた奏汰が、弥和の一縷の望みとなったのだ。しかし、まだ玲に革命を起こすことに成功していない。奏汰はまだまだ努力が必要だ。「奏汰君、一緒に釣りに行くかい?」茂が奏汰に尋ねた。彼はまた凪に言った。「黛さんもせっかく来たんだし、うちで夕食を食べて行ったらいい。私と奏汰君が釣りに行ってくるから、それを調理しよう。黛さんにもぜひ、奏汰君の作る魚料理を味わってもらうぞ。すごく美味しいんだ」凪は笑ってはいたが、それを聞いてそこまでするのは申し訳ない様子で言った。「そ、それはちょっと都合が悪いかと」「何が都合の悪いことがある?ほら、夕食も食べていったらいいよ」玲も凪を引き留める言葉を口にした。そしてまた、弟のほうを意味深にちらりと見た。碧は姉に
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