この時、恭弥が陽に近づいて、あの花束を触ろうとした。その瞬間、俊介は慌てて言った。「恭弥君、勝手に触っちゃだめだ。これは陽がおじちゃんにくれた花なんだからね」「おじちゃん、お花きれいだから、ぼくもほしいよ。一本ちょうだい」俊介は一本すらも惜しく、花束を甥の手が届かないように、自分の隣に置いた。「恭弥君、もし花束から一本抜いたら見栄えが悪くなってしまうよ。姉ちゃん、りんご洗って唯月と、東社長と、それから陽にあげて」英子は頷き、自分の息子に言った。「恭弥、わがまま言わないのよ。あれは陽ちゃんがおじちゃんに買ってきた花束でしょ。おもちゃじゃないの。だから一本でも取ったらだめなんだよ。手を洗っておいて、りんごを食べようね」りんごを食べると聞き、恭弥はそれ以上花に執着することはなかった。彼は陽の服をじろじろと観察し、手で触って引っ張ると、陽に尋ねた。「陽君、これ、おかあさんから買ってもらった新しい服?カッコイイね。ぼくも新しいのがほしい」すると彼は後ろを振り返って、唯月に言った。「ぼくも陽君が着てるみたいな新しい服がほしい。買ってくれない?」以前であれば、唯月が買った物は陽も恭弥も持っていた。もし、唯月が買ってくれないと、英子が唯月に叱りつけていたのだ。佐々木母も英子と一緒になって、責めていた。それからは、唯月が陽に新しい服を買う時には、恭弥にも同じものを買うようになった。恭弥はまだ小さい。陽より一歳年上なだけだ。しかし、英子のような母親を持つ彼は、誰かから楽して美味しいところを横取りするような性格が形成されつつある。「恭弥君、新しい服が欲しいなら、自分の母親に買ってもらいなさい」すでに彼らとは親戚でもなんでもない。唯月は子供と言い争う必要もないが、彼に対して以前のような態度はもうなくしている。恭弥が欲しいなら、母親が買ってやればいいだけの話だ。唯月はもう二度と恭弥に物を買ってやることはない。英子は吸血鬼のように甘い血をすすろうとする人間だ。今はひたすら一心に、俊介と唯月を再婚させることしか考えていない。それは自分がまた苦労せずに、楽して唯月から利益を得たいがためなのだ。以前の唯月は、自分の稼ぎのない専業主婦だった。俊介がくれる生活費と、妹が毎月くれるお金で暮らしていた。そんな状況でも英子はうまい汁を吸ってい
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