All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2141 - Chapter 2150

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第2141話

「そこにつっ立って何をしているんだ?さっさとこっちに来なさい!」豊は厳しい声で一喝した。夕菜はこの状況は避けられないと悟り、笑顔を作って父親のほうへ歩きながら尋ねた。「お父さん、いつ帰ってきたの?なんで帰ってくるってひとこと教えてくれなかったのよ」豊はこの日帰ってきたのではなかった。彼は理仁からの訴えを受けて帰ってくると、家には戻らず、裏で娘の観察をしていた。そして、娘が確かに理仁に雰囲気が似ている男と一緒にいるのをその目で確認した。確実になってから、彼はこの日家に帰ってきたのだ。豊は黙っていた。夕菜は横で何か言いたげにしている母親のほうを見た。沙織は娘に目配せをし、夫のほうをちらりと見て彼がすごく怒っていると目で伝えた。夕菜は自分が理仁似の男にここまで送らせたのを思い出した。まさか両親に見られていたのだろうか?彼女が車から降りて家に入る時、両親が玄関先にいるのは見ていない。それなら、父親がどうして腹を立てているのか彼女には理解できない。「お父さん」夕菜が両親の前までやって来ると、沙織が横にずれて娘が座る場所を作った。「お父さん、どうしたの?なんだか怖い顔しちゃって。誰のせいでそんなに怒ってるのか教えてよ、私がそいつにぎゃふんと言わせてやるから」夕菜は父親の隣に座ると、持っていたカバンを置く前に、まずは父親の腕を組んで甘えた声を出した。「お父さん、出張長すぎよ、私もお母さんも寂しかったんだからね。出張疲れたでしょ?早く休んで、明日の朝は私が二人に朝ごはんを用意するから」豊は横目で娘を見て、厳しい口調で尋ねた。「今日は一日、一体どこへ行っていた?」「仕事が忙しかったの。お父さんが出張でいなかったから、毎日牛馬のように働いてすっごく疲れちゃったわ」「ゴホン、ゴホンッ」沙織はわざと咳をして娘にこの日は週末であることを気づかせようとした。だから、娘はこの日、仕事になど行っていないのだ。豊は妻のほうへ目を向けた。すると沙織は慌てて、さっき夫に淹れてきたお茶が入ったコップを手にとり、それを一口飲んで言った。「私ちょっと風邪を引いたのかもしれないわ、咳が出てきた」「お前が飲んだお茶は私のコップだぞ」沙織は「あら」とひとこともらし、すぐに気まずそうに笑った。「夫婦なんだから、たまにあなた
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第2142話

豊は本当に娘のせいで腸が煮えくり返りそうになっていた。豊は二十年以上も努力して、ようやく子供を授かった。そして彼女には辻グループの跡取りとなってもらいたいと思っていて、彼女も今までずっと自分を満足させてくれてきた。それなのに、彼女は理仁に出会ってから、彼の期待を裏切り始め、がっかりさせてくれる。「あなた、この子が何をしたっていうの?不倫して他人の家庭を壊そうとしているって?」沙織はこの件をずっと知らなかった。夕菜がある男を見つけて理仁の真似をさせていることも、沙織は知らない。夕菜はずっと母親に隠していた。どのみち夕菜の傍にいるあの男はただの代役であって、彼女が本当に求めているのは結城理仁だからだ。理仁の妻にあの写真を送りつけても、まったく何も反応が返ってこない。夕菜は送った写真の刺激が足りなかったのだと思い、次はもっと過激な内容の写真に加工し、唯花に送ろうと企んでいる。もし、唯花が理仁のことを信じ、何も反応をしてこなかったら、あの写真を「うっかり」芸能記者たちにでも流してしまおうと思っていた。その写真が一度でも記者たちの手に渡れば、絶対に星城の芸能ニュースで騒がれるはずだ。「お母さん、私は別に、ただ……お父さん、どうしてそれを知っているの?」父親は傍に置いている男はただの身代わりであり、唯花に写真を送ったことまで知っている。一体誰が、父親にそんなことを教えたのだろうか?父親は海外出張に行っていて、本来であれば年末にやっと帰ってくる予定だった。今はまだ十月にもなっていないのに、すでに帰ってきてしまった。つまり自分のこの件でわざわざ帰ってきたと?「もしかして、響がお父さんに教えたの?お父さん、彼はね、私とお父さんの親子関係を壊して、会社から私を追い出し、自分が有利な立場に立ちたいだけなの。絶対に彼に騙されちゃダメなんだからね。彼が言うことは全部信じちゃダメよ」夕菜も馬鹿ではないので、すぐに響を疑った。「響君のせいにするんじゃない。彼はお父さんの前でお前の悪口なんて一度も言ったことはないんだぞ。お前がやってくれた事がな、今どういう状況か説明してやろうか。前が奥様に送った写真をほかでもなく結城社長自ら写真に撮って私に送ってきたんだ。お前のことをしっかり管理するようにと訴えられたんだぞ」豊は娘を罵った。「お前
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第2143話

夕菜は父親に叩かれた頬を手で覆い、信じられない様子で父親を見つめた。父親にぶたれた!夕菜は両親にとって唯一の子供だ。小さい頃から二人に大切に育てられてきた。彼女の才能を伸ばすために父親が彼女に厳しく当たることはあったが、今まで手をあげたことはなかった。それなのに、父親は娘に好きな男ができたぐらいで、平手打ちを喰らわせたのだ。夕菜は悲しくなり、涙を流した。この時、沙織がハッとして、娘が可哀想になり立ち上がると、娘が頬を覆う手を引いて夫に言った。「言葉で言い聞かせればいいでしょう。どうして夕菜に手をあげるの」「今私がお前を殴って、目を覚まさせることができないなら、今後は二度と会社に出入りするなよ。会社に大きなトラブルをもたらすような人間に、任せるわけにはいかない。たとえ私の唯一人の子供であってもだ!夕菜、もう一度言うぞ、彼のことは諦めなさい。社長はお前のことをまともに見たことすらないんだぞ。それなのにお前ときたら、恥も捨てて自ら下賤な不倫相手になろうとするとは。またそんなことをしようとするなら私はお前とは親子関係を切る。お前のような娘など生まなかったことにして生きていくからな!私の娘は品行方正で、きちんとした価値観を持ち、モラルのある人間でなければならない。お前のように真実の愛だとかいう旗を掲げながら、実は他人の家庭を壊そうとしているような、歪んだ考えを持つ人間など、私の娘ではない!うちのビジネスは幅広い。もし、娘が頼れない人間なら、辻一族の誰かに譲ろう。私には姪や甥はたくさんいるからな。必ず一人は辻グループを継ぐ力がある奴がいるさ。私も別に会社の後継者はお前でなければならないわけじゃない。お前のあの身代わり野郎だが、さっさと縁を切ってしまえ。もし、お前がまだあの男と一緒に、親しげな写真などを撮って社長夫人に送ろうとするなら、お前のカードは凍結させる。明日会社でクビにしてやる!」豊は冷ややかに言った。「私は言ったことは必ず実行するぞ!信じられないというなら、好きなようにやればいい。私がお前を会社から追い出さないか試してみろ。響君に会社を任せるかどうか、じっくり見ておくことだな!」そう言い終わると、豊は二階ではなく、外のほうへ歩いていった。「あなた、どこに行くの?」沙織は夫の様子にとても驚いていた。彼女は夫がまさ
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第2144話

沙織は夫を追いかけて家から出てきた。豊は車に乗る前に、妻にひとこと残していった。「しっかりお前の娘を説得してくれよ。あいつがまだ不倫しようという考えを捨てず汚名を背負って生きていくか、今のままでいるか、どっちかだ。しっかり考え抜いて答えが出たら私に教えろ。もし、まだ悩むようで決められないなら絶対に連絡してくるな。私は娘などいないことにして生きていくからな」沙織は黙っていた。豊は運転手に言って車を出させた。すると、あっという間に彼は家から遠ざかっていった。沙織はどうしようもなく、家に戻ると、娘がソファでしくしくと泣いているのを見て、心が締め付けられた。沙織は夕菜に近づいて、彼女の頭をコツンとつつき、怒りの混じった声で言った。「夕菜、小さい頃から、私たちがしっかり教育してきたでしょ。どうしてこんな馬鹿な事をしたの?星城の結城家の理仁さんね。確かに彼はとっても優秀な方だわ。いくらそうだったとしても、彼にはもう奥さんがいるのよ。それなのにあなたは彼を追いかけ回して、奥さんにふざけた写真を送りつけた。つまり、お二人の家庭を壊そうとした。それに自分は彼の不倫相手になっていいと思ってるのね。夕菜、あなたはとっても素敵な子よ。辻家で育ち、こんなに良い条件に恵まれているあなたと比べられる人なんてそうそういないの。お母さんもあなたがとってもプライドが高いから、普通の男では満足できないって知ってる。もし、結城社長が独身なら、思う存分口説きにいけばいいわ、私たちだって応援するもの。だけどね、彼は既婚者なの。だからもう彼への気持ちに蓋をして忘れてしまいなさい。お母さんとお父さんはずっと仲が良いのよ。一番ああいう不倫をするような人間が大っ嫌いなの。だからあなたにそうなってほしくないわ。もし、あなたが誰かの奥さんだったとしたら、夫の不倫相手をどう思う?殺してやりたいほど憎くない?そんな人間にあなた自らなろうとしているのよ」夕菜は泣きながら言った。「お母さん、だって、私理仁さんのことが好きなんだもん、どうすればいいの?初めて会った瞬間に、夢中になったの」「もう彼のことを考えるのをやめてしまいなさい。思い出さなければ、時間が経って忘れられるから。夕菜、私たちの言うことを聞いて。私たち辻家の人間は正々堂々と正しい道を歩む一族よ。あんな世間に顔向けできない
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第2145話

「私たちの教育がダメだったの。あなたに正しい考えを植え付けるのに失敗して、歪んだ考えを持つようにさせてしまった。お母さんにも責任があるわ」「お母さん、ごめんなさい、本当に、悪かったわ。私が間違ってた」夕菜も決して馬鹿ではない。父親がここまで冷たくどうするか選べと言ったのなら、絶対に理仁のほうを選ぶことなどできない。自分の全てを失うわけにはいかない。結城理仁という人物は、彼女の一生でただ通り過ぎるだけの存在だ。彼にちょっと寄り道させたくても、留めておくことは不可能だ。沙織はため息をついた。「お父さんもお母さんも、ただ口先だけで間違いを認めるのなんて聞きたくないわ。実際にあなたの行動で証明してもらわないとね。夕菜、これ以上私たちをがっかりさせないでちょうだい。お母さんは二階に行くから、あなたは一人で静かに反省なさい」そう言い終わると、沙織は上にあがっていった。残された夕菜はソファに座り、傷ついて涙を流したり、怒りと恨みに憤慨したりしていた。沙織は娘のことをよく理解していて、すぐには娘が気持ちを切り替えられないとわかっていた。娘には考える時間を少し与える必要がある。もし、結局理仁を諦められないなら、もう救いようがない。辻家のこの騒動など、唯花は知る由もなかった。唯花は理仁に任せておけば、満足のいく答えを彼がくれると信じている。琴ヶ丘で週末を過ごした。そして月曜日。また新たな一週間の始まりだ。市内に戻ると、それぞれ仕事に、幼稚園に行った。唯月は伯母の詩乃に言われ、琴ヶ丘から戻ってきてから、二軒の店を人に任せて、陽は妹に任せてしまった。そして、詩乃と一緒に柏浜に向かった。今月末、理仁と唯花は音濱岳に悠と芽衣の双子の百日祝いに行く予定がある。だから、唯月も一週間しかいられなかった。一週間が過ぎ、唯月と詩乃は柏浜から戻ってきた。唯月は詩乃と一緒に神崎家に行くことはなく、息子が妹の本屋にいると聞いて直接店に向かった。夕日が西の空に傾き、空がまるで炎のように真っ赤に染まった。この時間帯、本屋はとても忙しかった。唯月が中に入ると、妹と明凛がいつもと同じく、一人が客の本を探し、もう一人がレジを担当していた。陽はこの時、子供用の絵本を見ていた。隅の方に座って静かに自分の本をめくっていた。カバンも近くに置
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第2146話

「まだよ」「後で一緒に食べようよ、私がご馳走するから」唯月は笑った。「いいわよ」明凛が近寄ってきて微笑んで言った。「唯月さん、やっと帰ってきたんですね。陽ちゃんったら毎日ずっとぶつぶつうるさかったんですよ。私も唯花も耳にタコができそうでした」陽は当然の如くこう言った。「だって、おかあさんに会いたかったんだもん」母親に会いたくて、まだかまだかとつぶやき続けてはいけないものか?明凛は笑って彼の顔をつねった。店はこの時まだ忙しかったので、三人はそれ以上おしゃべりをしなかった。高校生たちの帰宅時間が過ぎ、だんだん静かになっていった。唯花は姉に温かいお茶を淹れて持って来ると尋ねた。「伯母様はおうちに帰った?」「ええ、伯母様からご飯に誘われたんだけど、陽のことがあるから、行かなかったの」唯花は何か言いたそうにしていたが、我慢できずにあくびをした。陽は叔母があくびをするのを見て、母親に言った。「おばちゃんはね、毎日ぼくが寝ても寝てないから、いつもあくびをするんだよ」唯月は心配そうに言った。「唯花、体に注意しなさいよ。体が一番大切なんだからね」「お姉ちゃん、心配しないで。最近は睡眠の質がどうも悪くて、昼間はいつもあくびが出るの。昼もあまり寝たくなくて、一度横になったら一生起きなくなりそうだもの」明凛が話を続けた。「お店は私が見るから、こっちにまで気を使わなくていいって言ったでしょ。私が疲れるんじゃないかって心配するけど、私はか弱いお姫様ですか?家では悟からすっごく大事にされて、何もさせてもらえないしさ。自分でお茶を淹れるのだって、火傷したらダメだからってさせてくれないのよ。本屋に来た時だけ、やっと一息つけるの。それに、悟も手伝いに人を手配してくれているし」「私だってたまに様子を見に来る程度よ。あなたは妊娠しているんだから、私も心配なの」唯花は心配されながらも、同じように親友のことを心配していた。唯月は明凛のお腹を見て微笑んで言った。「今はもう妊婦さんなのがわかるわね」明凛も下を向いて自分のお腹を見た。「わかりますか?自分ではまだそんな感じしないんですけど。ただちょっとぷっくりしてきたかなって感じで」「経験者だし、一目で妊婦だってわかるのよ。あと二か月もしたらお腹が出てくるわ。それから暫くしたら、まるでスイカ
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第2147話

唯花が目を覚ました時にはすでに翌日の朝になっていた。彼女は目を開けて、自分がベッドに横になっているのを見て、ぼんやりとしていた。車の中にいたのではないかと考えていた。一体どれだけ寝ていたのだろう?横を向くと、隣に見慣れた人の姿があった。彼女は横向きに姿勢を変えて、静かに理仁を見つめていた。見ているうちに、思わず手を伸ばして彼の顔を触った。こんなに素敵な男性が自分の夫なのだ。その考えが唯花の心を甘く満たした。近寄って彼の顔にキスをしようとした時、理仁が目を開けた。目の前に彼女が迫っているのに気づき、何をされるのか予想して、すぐにまた目を閉じた。唯花は小さな声で笑った。「起きてるでしょ」「いいや、まだ夢を見ている。夢の中で妻が俺にキスをしようとしているんだ。キスをもらってから起きるとしよう」その言葉に唯花はぶはっと笑った。「話しているのに、まだ寝てるって言い張る気?」「これは寝言だ」仲良い夫婦である今は、キスをするのが彼らにとって一番好きな日常のスキンシップだった。唯花も恥ずかしがることはなく、彼の体に覆いかぶさり、彼の唇に口づけをした。理仁は唯花の頭を押さえてもっと深いキスをしようとしたが、彼女のほうが唇の位置をずらして、理仁の顔に細かくキスの雨を降らせた。「そろそろ起きていいわよ」理仁は目を開けて、少し不満そうにしていた。彼は唯花の赤い唇をツンツンと突っつき、言った。「キスをされるとわかっていれば、もっと寝ていたのにな。君に服をはぎ取られてから起きればよかった」唯花は彼の体から離れ、手を伸ばして優しく彼の顔をつねった。「寝ている時に、服を脱がしたりしないわよ。あなたみたいに、私が寝ているのに……」理仁は唯花を懐に抱きしめ、小さな声で笑った。「俺だってたまにしかしないよ」「今何時?私何時間寝てたの?」理仁は携帯を手にとり、時間を確認して言った。「まだ早いよ、七時にもなってない」「外はもう明るいわね」「今の時期は、朝六時過ぎでももう明るくなってるよ。あと一、二か月したら、日が短くなるね。ここ暫くの間、あまりいろいろ走り回ったらダメだぞ。しっかり休まないと。あんなに小さな陽君だって、君がいつも眠そうだって言っていたぞ。つまりちゃんと休んでいないからだ。睡眠時間が減ってるんだ。昨日の
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第2148話

理仁は自分にとても優しく、一生でも使いきれないお金を稼いでいたとしても、唯花はやはり、自分で稼いだお金を使うと譲らない。自分で稼いだお金を使うのはとても気分がよく、心理的な負担がないと言うのだ。理仁は自分の財産全てを彼女に差し出したが、唯花がそれを使うことはほとんどなかった。「私は大丈夫、まだ若いんだからとっても健康で元気満々よ。昨日の夜とても早く寝たから、今はすっごく調子がいいの」そう言いながら、唯花は座って笑った。「そういえば暫くあなたに愛のこもった朝食を作っていなかったわね。今日は早く起きたことだし、あなたに作るわ」理仁も笑った。「俺たちがまだ結婚したばかりの頃の普通の夫婦生活が懐かしく突然思ったよ。君は毎日朝起きると、家で朝食を作ったり、外で何か買ってきてくれたりしたよね。俺は初めて外で買ったのを朝食として食べたぞ」「私も懐かしいな。ねえ、だったら、今日はフラワーガーデンのほうに帰って暫くあっちで過ごさない?」「君が決めていいよ」理仁は見事な溺愛っぷりでそう返事をした。二人の家庭では全て唯花に決定権がある。「先にお風呂に入って、ちょっとしたら下に行って朝食を作るわね」理仁は言った。「もうキッチンのほうが朝食を用意しているから、週末にしようか。週末はどちらも休みだから、愛のこもった朝食を作ってくれ」「週末は過ぎたなかりで、また数日しないと週末は来ないでしょ。いえ、二日後にはA市に行かなくちゃ。二日早めに行ってその分長く滞在しよう、芽衣ちゃんに会いたいわ」理仁は少し考えて言った。「それもいいよ」そして唯花はお風呂に行った。彼女が浴室から出てきた時には、理仁はすでに着替えを済ませ、ドレッサーの椅子に座って唯花を待っていた。唯花が髪も洗ったのを見て、彼はすぐにドライヤーを持ってきて注意した。「朝から髪を洗うなんて」「さっきうっかり髪が濡れちゃったから、いっそ洗っちゃおうと思ったの」理仁は唯花に近づいて引っ張り、ドレッサーの前に座らせて髪を乾かしてあげた。唯花は鏡越しに理仁を見つめた。「理仁」「うん」「あなた自ら私の髪を乾かしてくれるってみんなが知ったら、驚くかしら?あなたって世間の目では偉そうに上に君臨する結城家の御曹司よ」理仁は笑って言った。「誰にどう思われても構わないさ。俺は
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第2149話

二日後。A市の音濱岳邸。あるプライベートジェットが、音濱岳にある個人所有の飛行場に降りた。遥と蒼真夫妻はそこで待っていた。理仁と唯花が降りてきたのを見て、二人は笑顔で迎えた。彼らと一緒に善も戻ってきた。本来、善はもっと早く帰ってくる予定だったが、どうしても姫華と離れたくなかったのだ。彼女はここ二日また出張するので、百日祝いの当日にしか来られないと言っていた。そして、理仁夫妻がお祝いの数日前に行く予定であることを知り、理仁のプライベートジェットに便乗させてもらって、一緒に来たのだ。「唯花ちゃん」遥は笑顔で唯花を呼んだ。そしてまた理仁の方へ会釈した。「結城社長、ご無沙汰しております」理仁は微笑んで返事した。「ええ、お久しぶりですね」理仁は蒼真と握手を交わした。最後に降りてきた善はその様子を見て、わざと愚痴をこぼした。「兄さん、お義姉さん、結城社長と奥さんのことしか目に入っていないの?僕も帰ってきてるんだけど」蒼真は笑顔で善のところへ行き、軽く弟の腕を小突いて、プライベートジェットのほうをちらりと見た。姫華の姿がなかったので、彼は弟に尋ねた。「神崎さんは?一緒に来るって言ってなかったか?」善はどうしようもなさそうに言った。「姫華さんなら急に出張が入って、できるだけお祝いの当日には間に合うようにするって言ってたよ。もし、間に合わなったら、彼女の分まで祝っておいてくれって。姫華さんが双子ちゃんにプレゼントを持ってきたよ。僕が一緒に持ってきたから」毎回彼が姫華と音濱岳の邸宅に帰ろうと約束すると、姫華はいつも急用が入る。現在の姫華は、できるキャリアウーマンといった感じで、事業のほうに重点を置いている。それで善はどうすることもできなかった。仕事で何かトラブルが発生すれば、唯花がそれを処理すると言っても、姫華も一緒に行ってしまう。唯花に時間がないならなおさらだ。明凛も出張したがってはいるが、それは無理な話だ。彼女のお腹には悟の子供がいて、悟から出張禁止令が出されている。姫華と唯花も彼女が出張で動き回るのには反対だった。唯花は申し訳なさそうに言った。「姫華は私の代わりに出張に行ってくれたので、私が先にこっちに来てしまって」姫華は唯花が遥の双子をとても気に入っているのを知っているので、どうしても理
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第2150話

善は唯花の話に続いた。「唯花さんが出張に行くとしても、姫華さんも一緒について行ったことでしょう。彼女は今仕事を一番にしているんですから」「従姉妹同士、同じですね。俺が無理にでも前もって唯花を連れてこなければ、きっと彼女も双子の百日祝い当日にしか来なかったでしょう」理仁が善の後に続いた。遥は笑って言った。「まずは音濱岳邸にまいりましょう。ここは風が強いですから神崎さんはいずれ桐生家と親戚になるんですから、いつでも会えるようになりますしね」善は少し顔を赤くしていたが、とても満足げな様子だった。善と姫華はあと少しでゴール地点が見えるといったところだ。あとは詩乃がもうA市が遠いということにこだわらず、善に恋敵を仕向けてこなくなるのを待つだけだから、そう時間がかからず、ゴールインできるはずだ。この時、そのようにお気楽に考えていた善だったが、まさか近い未来に、両親や兄、そして遥に助けを求め、星城に来てもらってやっと姫華との結婚に光が見えるようになることなど、思ってもいなかった。遥は唯花の腕を組んで、妻同士仲良く前方に歩いていった。「酒見先生は、もう産後の休みを終わった?」唯花は遥に尋ねた。「咲さんが少し前にちょっとトラブルに巻き込まれそうになって、辰巳君がその件を処理したらしいんだけど、彼、やっぱりすごく焦ってるみたい。早く咲さんの目の治療ができればいいと期待してるの」咲がいくら聡明で、できる女性だったとしても、目が見えないことが弱点となってしまい、良からぬことを考える連中のターゲットとなり、少しでも気を抜いていると被害を受けてしまう。前回、咲を誘拐しようとした人物はやはりあの二人のおばが仕組んだことだったのだ。今、尾崎家と黒川家はおそらく悲痛に叫んでいるはずだ。辰巳は証拠を探し出し、咲に代わって尾崎家と黒川家に一切の情けをかけず、容赦ない復讐をしたのだ。咲に手を出す者は辰巳を、結城家を敵に回すことになる!尾崎家と黒川家は咲にとっては親戚関係だが、そんなものなど考慮せず、辰巳は手ひどく相手を打ちのめした。咲が手加減するように言わない限り、辰巳は情けをかけはしない。そして尾崎家も黒川家も、咲はどうであれ、おばと姪という関係があるから、ひどい真似はしてこないだろうと高を括っていたのだ。そして何度か様子をうかがいなが
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