交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています의 모든 챕터: 챕터 2221 - 챕터 2230

2456 챕터

第2221話

「そうね、元気に生まれてきてくれれば十分だから、性別にはこだわらなくていいよね。結城家はもともと女の子が生まれにくい家系だし、唯花たちの子供が娘じゃなくても、あなたのせいじゃないし。そもそも性別が決まるのは男のほうによるじゃない?」「唯花ちゃん」聞き慣れた声がした。結城おばあさんだ。姫華と唯花が同時にオフィスの外に目をやると、おばあさんが清水と一緒に来ていた。清水は手に四つほど弁当箱を提げていた。「おばあちゃん、どうしてここに?」「おばあ様」二人は立ち上がった。唯花は清水が弁当箱を持っているのを見て、おばあさんが自分にご飯を持ってきてくれたのだとわかった。結城おばあさんは笑って言った。「ちょうどお昼でしょ、外で食べるには太陽が照ってるし、暑いし、あなたを連れて外食するのはちょっとね。それで清水さんと一緒にご飯を届けに来たのよ。会社で食べてそのまま休憩できるでしょ」そう言い終わると、おばあさんは笑顔で姫華に話しかけた。「姫華ちゃん、お久しぶりね」姫華はその呼び方は納得いかないといった様子だ。「おばあ様、私はもう大人だし、唯花よりも年上なんですよ。そんな『ちゃん』付けして呼ばないでくださいよ。子供じゃないんですから」おばあさんは笑って言った。「私からしてみれば、あなた達はみんなまだまだ子供よ。家族や親戚の前ではこうやって呼んだっていいじゃない?外ではね、他の人がいるからあれだけど。それなら『さん』で呼ばせてもらいましょうか」姫華が鞄を腕に提げているのを見て、おばあさんはまた言った。「姫華さん、多めにお弁当を持ってきたから、あなた達二人が食べる分は足りるわよ。外食する必要はないから」姫華は笑って言った。「おばあ様、唯花と一緒に清水さんの料理を堪能したいのはやまやまですが、昼には顧客との約束があるんです。あちらはタバコを吸うから、唯花も妊娠しているし、彼女を連れて行きたくないんですよ。それで、ちょうど唯花に来るなって説得していたところなんです。おばあ様がちょうどいいところに来てくれましたから、ここで唯花とお食事してくださいね。私は仕事に行ってきます」唯花「……」旦那の家族たちは唯花の行動に制限をかけないというのに、従姉がこれでもかと管理しようとしてくる。唯花が水を飲もうとしても、姫華は彼女を少しでも
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第2222話

清水は持ってきた梅干しの袋を横に置いて笑った。「若奥様、これは若旦那様には内緒ですよ。知られたらきっとボーナスを減らされてしまいますから。それから食後のデザートも二つ用意しました。小さいし少しだけですから、若奥様がちょっと口にされて満足できればいいかなと思います」唯花は清水が持ってきた弁当箱の蓋を開けて、どんな料理があるのか一つ一つ確認した。デスクに四つとも並べると、さっき清水が言った食後のデザートに目を向けた。一口で食べてしまえるほど小さいものだった。唯花は言った。「……清水さん、こんなに小さなお菓子と梅干し一つじゃ、満足できません。逆に食べてしまったら余計に欲しくなる量ですよ」おばあさんがその話に続いた。「理仁があなたが吐くんじゃないか心配して、わざわざ清水さんにお願いしていたのよ。それに私にもあなたを甘やかせて酸っぱいものや甘いものを好きなだけ食べさせたらダメってきつく言われちゃったわ。朝、胃液まで吐いてしまったらしいじゃない。清水さんがそれでも梅干し一つだけど持ってきてくれたのだし、それで納得してちょうだい」唯花は言った。「はーい、わかりました。一つも食べられないよりずっといいし。おばあちゃんと清水さんはもう食べたの?一緒に食べましょ。こんなにたくさんあるから一人じゃ食べられないよ」「まだ食べてないのよ。だからあなたと一緒に食べようと思ってたくさん持ってきたんだからね。一緒に食べる人がいれば、もっと美味しく感じるわよ」おばあさんは清水に食事を始めようと声をかけた。理仁はここにいないので、清水はとてもリラックスできるため、おばあさんの誘いをもちろん受け入れた。そして三人は唯花のオフィスで楽しく食事をした。唯花はつわりがあり、食べると吐いてしまうが、食欲は衰えていない。それにこのオフィスには理仁が彼女のために用意したお菓子でいっぱいだった。理仁は悟から、妊婦はよく何か食べたくなると聞いていた。唯花はもともと明凛と同じく食いしん坊で、妊娠してからさらに食べることが好きになった。理仁はそんな彼女のために、妊婦が食べても安心なお菓子を大量に買ってきていた。「唯花」唯月がこの時、オフィスのドアをノックして、妹の名前を呼んだ。オフィスのドアは閉めていなかった。外の仕切りになっているオフィスフロアは昼休
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第2223話

唯花は姉がわざわざ味見させようと持ってきてくれた新作料理を食べると、キラキラと瞳を輝かせた。それはおばあさんも同じだった。彼女は食べると唯月に尋ねた。「唯月さん、私、新店舗の会員カードを作って、毎日お店を応援しに行くわ。この腕前、またすごく上達しているじゃないの!」唯花はもぐもぐと食べながら同意し頷いていた。「唯花、ゆっくり食べなさいよ、詰まらせないようにね」妹がかなり気に入っているのを見て、唯月は笑って言った。「料理教室に通ってるの。それから家では自分でもいろいろと工夫を加えて、東社長が味をみてくれたのよ。美味しいって言ってたから、みんなにも試してもらおうと思って。おばあ様からそう言っていただけて、安心しました」「お姉ちゃんの料理の腕は世界一よ!」唯花は姉に向かって親指を立てた。姉はどんどん才能を伸ばし、できる女になっていく。もともと姉はとても能力の高い人だった。昔は恋心のせいですっかり物事の判断ができなくなってしまい、あのようにすんなりと仕事を辞めて専業主婦になってしまった。毎日家事や育児に追われて、社会との関りをなくしてしまっていたのだ。今は社会復帰した。しかも姉は今責任者となり、ビジネス界に果敢に挑戦しているところだ。もともと優秀な人物だったから、あとはその感覚を取り戻すための時間の問題だ。昔も今も変わらずに優れた人である。唯月は顔を少し赤くさせた。「まだまだ努力しなくっちゃ、明日は新店オープンで私も作るわ。二人シェフとして雇っていて、どちらが作った料理も美味しいの。私を含めた三人の腕で、きっとお客様にご満足いただけるわ」彼女の目標は大きなレストランを経営することだ。チェーン店をまずは星城に展開し、それから全国まで広げていきたい。彼女ならいつかきっと自分の夢を叶えられるだろう。「プルプルプル……」唯月の携帯が鳴った。彼女は携帯を取り出して着信表示を見た。隼翔からの電話だ。「東社長からだわ」唯月は隠すこともなく、みんなに電話をかけてきたのは隼翔だと教えた。あの日、結城おばあさんと彼のことについて話してから、唯月も隼翔との将来を考え始めていた。隼翔を受け入れるべきか、今はまだ迷っているところだが、唯月が隼翔に関心を寄せていることは紛れもない事実だった。隼翔が唯月のことも、
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第2224話

隼翔は唯月がまた元夫の見舞いに病院まで行ったのかと思ってしまった。「そうだったんだね。妹さんの調子は?」「とても良いですよ。結城さんが妹は酸っぱいものと甘いものを食べるとすごく吐くと言っていましたけど」隼翔は微笑んで言った。「そういうこともあるんだね。理仁はそれなら絶対に彼女に食べさせないだろう。もし彼女が吐きでもしたら、あいつのことだ、心配でたまらず仕事に集中できないよ。会社にいたとしても、心は彼女のところに飛んでいってるのさ」それは隼翔も同じだ。今、彼は仕事に復帰しているが、退勤時刻になると、心はもう唯月のほうへと飛んでいっている。隼翔はたまに会社に戻り、会社で少し処理をすると、昼は必ず唯月の新店舗に赴いて新作の料理を味見していた。唯月は隼翔の昼食と夕食をまかなっているのだった。「社長、店を出る時にはスタッフにお願いしておきました。昼食があるのでゆっくり食べてください。もう少ししたら私も店に戻りますので」隼翔は笑った。「うん、わかったよ」「じゃあ、他に何もなければ、お昼ごはんに戻りますね」「うん」通話を終わると、隼翔は安心してボディーガードに言った。「押して中に入ってくれ。唯月さんが昼食を用意してくれているらしい」するとボディーガードは急いで彼の車椅子を押して、唯月のレストランに入った。新店舗の名前は「ビストロピエナ」に決めた。唯月は他にも多くの飲食店をオープンしてから、ピエナグループという会社を立ち上げようと考えていた。そして飲食業界で高級レストランとしての地位を築かせたいと思っている。これと同時刻の病院。病室で食事をし、お腹いっぱいになった俊介は両親に体を支えれながらベッドからおりて、少し食後の軽い散歩をしていた。彼の回復はなかなか早い。しかし、生と死の堺を彷徨った彼だから、ここ数日でようやくベッドからおりて歩けるくらいだった。傷口が開くとまた激痛が走るので、彼は足の速度を上げることはできなかった。「俊介、歩けるようになったんだね」英子がりんごの入った袋を提げて来て、弟が病室から出てゆっくり歩いているのを見ると、彼女は歓喜の声をあげた。母親は緊張した面持ちで息子を見ていた。動くことで傷口が開いて痛みに転んでしまうのではないかと心配だったのだ。「ここ数日の話だ。先生もゆ
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第2225話

「まだそんなこと言って何になるってんだ!」この時、俊介が姉に怒鳴った。英子は口を尖らせた。これには父親も娘にしっかり注意するしかなかった。「英子、もうバカな事を考えるんじゃないぞ。もし、また何かおかしな真似でもしてみろ、今度は絶対に許さんからな!」この娘は自分を変えることができないタイプの人間だ。動物園で唯花に助けてもらって感動した気持ちをこの時にはすっかり忘れ、貪欲な本性がまたあらわれてきた。父親はそんな娘がまた余計な事をして物事を複雑にさせるのではないか心配だった。英子は急いで言った。「お父さん、おかしな真似なんてするわけないでしょ。それは自分から火に飛び込むようなものじゃないの。今の唯月さんはもう一般人の私たちとは違うもの。そんな彼女に手を出したら、うちの店まで潰されちゃうわ。私にだって余計な事に気力を割くような時間はないよ。ただちょっと嫉妬しただけよ。唯月さんの成功は、少なからず私たちのおかげでもあるでしょ。私たちの存在がなかったら彼女がキレて強い女になってさ、今みたいに事業を興すなんてできてなかったはずでしょ?」英子は恥知らず中の恥知らずだ。彼女の言葉には父親も母親も、はたまた弟ですらも彼女のことを恥ずかしいと思ってしまった。他人の成功をあたかも自分の功労のように話している。「俊介、さっさとあのクソ女なんかと離婚してさ、それから唯月さんと……」「だまれ!」父親は娘に一喝した。「今後は帰ってきても、弟の事には関わるんじゃない。お前が大黒柱にでもなったつもりか?」「お父さん、別に私は何も言ってないでしょ。全部俊介のためなんだからね。唯月さんとあの東社長がもっと距離を縮めたら、うちの陽ちゃんは『東』って名字になっちゃうわよ。その時、孫がよその子になったとしても泣きついてこないでよね」英子はまたそのような理屈をこねて、自分が利益を得るために弟と唯月をどうにかして復縁させようと諦めない。「陽君の名字が何であれ、私のことを『おじいちゃん』と呼ぶのは変わらん。俊介が父親なんだから、血縁関係は名字が変わったくらいで消えるものでない」俊介は淡々とした口調で冷たく言った。「俺は莉奈と離婚する気はないぞ。あちらの両親が俺に減刑嘆願書を書いてほしいって言ってきたから書いたよ。いくらでも構わないから彼女の刑期が減るといい。何年
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第2226話

「先生、お茶をどうぞ」 依茉は薫子から出された温かいお茶を受け取った。「ありがとうございます」「こちらこそ先生にお礼を言わなければいけません。先生は出産してからそう時間が経っていないというのに、うちの息子に連れて来られてしまって、私も本当に申し訳ないと思っているんです。うちの子にはきつく言っておきましたので」依茉は喉が乾いていたらしくお茶を半分飲んだ。「大丈夫ですよ。産後一カ月ほど何もできずに家にいて、もう嫌になっていたところです。早く外に出かけたいと思っていましたが、うちの旦那が許してくれなくって。どうしても家でできるだけ休むようにって言うんです。でも、私は医者ですから、産後どうやって自分の体のケアをすればいいのかは、彼よりも詳しいんです。息子さんは婚約者さんにとても優しく、心から気遣ってあげているみたいですね。婚約者のために目を治療しようと、うちの旦那に嫌われようとも、何回も私に頼みに来ました。それには私もすごく心が動かされましたよ。だから、よろこんで柴尾さんを診ようと今日は来たんです。目が見えるようになって、自分の婚約者である将来の旦那さんが、どんな方なのか見られるといいですね」咲は辰巳と婚約したが、彼がどんな顔をしているかすら知らない。それには依茉もとても可哀想に感じていた。そして結城家と桐生家にはビジネス上の付き合いがあるし、依茉は辰巳の面子も考慮して、喜んで咲の目を治療するためにやって来たのだ。「本当にありがとうございます、先生!」薫子は心から感謝していた。薫子も息子の嫁の目が回復することを期待している。薫子は外では将来嫁となる咲のことを強気で守っていた。しかし、自分も人の親として、心を痛めていないわけがない。薫子の息子、辰巳はとても優秀だし、その婚約者も同じように素晴らしい女性だ。ただ目が見えないことだけが残念だった。彼女は心の中では息子のことを気遣っていて、咲の目を治療する機会が巡ってきたことに、彼女自身とても喜んでいた。「奥様、結城おばあ様と唯花様がいらっしゃいました」使用人が入ってきて、薫子にそう告げた。そしてすぐに結城おばあさんと唯花が入ってきた。「おばあ様、ご無沙汰しております」結城おばあさんが入ってきたのを見ると、依茉はすぐにコップを置き、立ち上がって笑顔で迎えた
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第2227話

「おばあ様は本当にお元気そうですね」依茉は結城おばあさんを褒めるようにそう言った。おばあさんが音濱岳にいた時、依茉はおばあさんを軽く診察していた。年を取っているが体はまだまだ健康で、きっとあと十年以上はずっと元気で過ごせるはずだ。それは依茉の先生であるあの名医と同じだ。彼は漢方薬の中でも貴重な薬草を使い、自分の体の状態を保っているので、とても健康だ。そして彼はもっとこの世に残っていたいと強く思うようになったらしい。百歳過ぎても生きて、依茉の息子の泰晟が結婚するのを見届けると言っていた。泰晟はまだ赤ん坊なのに、だ。おばあさんは笑いながら依茉の手をとった。「依茉さん、もしあなたの先生のところに長寿の薬でもあるのなら、二つほど私にプレゼントしてくれないかしら?もっともっと健康で、百歳まで、できれば百二十歳まで生きられるようにね。現代では百歳近くまで生きるのもそう珍しいことではなくなっているし。だって今はまだいつになったら次の世代に女の子が生まれるかわからないから。私はなにがなんでも女の子のひ孫に会いたいのよ。じゃないと、あの人のところに行っても未練タラタラだわ。可愛らしくて優しい女の子の赤ちゃんを抱っこしたいわ。芽衣ちゃんみたいなあんなに可愛らしいひ孫なら、何人増えても全然構わないわ」依茉は笑って言った。「先生なら今は私にかわって子供の世話をしてくれています。帰ったらおばあ様に何か良い薬を贈るよう聞いてみましょう。彼と同じく、百二十歳まで生きられるように。おばあ様が女の子のひ孫さんに会いたいなら、確かにまだ待っていないといけないですよね。でも、おばあ様にはお孫さんが九人もいらっしゃるでしょ?たくさんいるから、お孫さんたちが結婚すれば、きっと一人は女の子が生まれるのでは?」でも、依茉もそれは保証がなかった。結城家では女の子が生まれないという噂を依茉も聞いたことがある。ネットでたまに「産み分け」というものを見るが、その生まれてくる子供の性別をコントロールするための方法を試してみても、結果はやはり息子しか生まれてこなかった。もちろん現代の医療技術は発展しており、本気で人工的に女の子を産みたいと思えば体外受精をすることもできる。しかし、そんなことをしなくても妊娠ができる体であれば、依茉は医者としてそれを推奨していない。男
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第2228話

咲はもう長い間目が見えず、裕子と一緒にいたるところに医者を訪ねに行っていた。しかし、毎回期待していた結果は得られず、落ち込む回数が増えていくほどに、希望を抱くことができなくなるほどだった。そして、依茉がみんなの最後の希望になっている。もし、結果が以前と同じであっても、咲はもう慣れてしまっているから一人で落ち込むのは怖くない。でも、今は大勢が一緒にいるからみんなまで失望させてしまうことになる。「大丈夫だから」辰巳はそう言うと両手を広げて力強く咲を抱きしめた。そしてその手を離すと、また彼女の額にそっとキスをした。「俺がいるんだから、何も不安に感じなくていいんだよ」咲は顔をあげて辰巳のほうを向き、懸命に彼の顔を見ようとしてみたが、やはり視界はぼやけるだけで、はっきりと見ることはできなかった。彼のその言葉と抱擁、キスが暖かい風になって彼女の心をなでていった。彼女の心はその瞬間、ふっと軽くなった。そして咲は小さく頷いた。そして辰巳は彼女の手を繋いで、実家のほうへ歩いていった。「プルプルプル……」この時、辰巳の携帯が鳴り出した。家族からの催促の電話かと思い、辰巳はこう言った。「きっと、母さんが今どこにいるのか知りたくてかけてきたんだ」彼が携帯を取り出して見てみると、それは母親からではなく、流星からだった。咲の弟だ。辰巳はかなり意外だった。流星は大学に入学する前、咲と大喧嘩をしてしまった。結局流星はあの性悪なおば二人の側につくことはなかったが、姉と弟の仲は以前のようには戻っていない。咲が流星の両親と鈴を警察送りにしたことが根っこにあって引っかかっている。流星は姉の婚約者である辰巳に対する態度はまあまあだが、連絡先を教えてほしいと言ってきたことはない。辰巳は流星の携帯番号を知っているが、流星は辰巳の番号を知らないはずだ。それがどうして電話がかかってきたのか、辰巳はわからなかった。その理由は今はどうでもいい。流星が辰巳と連絡したいと思えば、浩司に聞けばすぐわかる話だ。流星が大学に通い始めて時間が経ったが、家族に連絡することは一度もなかった。咲は口には出さなかったが、心の中では弟のことを考えていた。辰巳は流星からの電話に出た。「もしもし、流星君」辰巳が流星の名前を呼んだので、咲は急いで尋
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第2229話

「まだ先生に診ていただいてないのよ。彼女がこっちに来た時に私はちょうど出張中だったの。さっき辰巳さんが迎えに来てくれて今ちょうど家に着いたところ。すぐに先生にお会いできるわ」弟はやはり咲のことが気になっていたのだ。弟が自分のことを考えていてくれたことに、咲はとても嬉しく感じた。「姉さん、結果がどうなっても、気落ちしたりしないで。もし先生でも無理だったら、また他の先生を探せばいいじゃないか」流星は姉を気遣ってそう言葉をかけた。実際、依茉ですら咲の目が治療できないようであれば、彼女は二度とその瞳に光を取り戻すことはできないと、誰もがわかっていた。依茉は名医から医術を叩きこまれた人物だ。名医が治せない病気はないほどの腕の持ち主だからこそ、噂になり伝説の人物のように世間では言われている。咲は少し黙ってから、逆に弟を慰めるような言葉をかけた。「流星、お姉ちゃんはね、悲しまないよ。どんな結果だって受け入れてみせるから。暗闇の中でもうこんなに長い間生きてきたんだもの、もう慣れちゃってるからね。ただ、辰巳さんのように優秀な人に目の見えない私と結婚させちゃうのが、申し訳ないだけ」「咲」辰巳は声を抑えて言った。「そんなふうに言わないでくれ。君のことを好きになった瞬間から、決意したんだ。咲の目が治ろうが治るまいが、絶対に君と結婚して一生一緒にいるんだって。もし、目が治るならそれに越したことはないよ。だけど、もし治らないなら俺が君の目になるから」流星は電話越しに言った。「姉さん、辰巳さんは責任感の強い方だって信じてるよ。姉さんもそんなふうにネガティブに考えないで。結城家がどんな家風なのかはよく知ってるじゃないか。自分のことも、彼のことも信じて」咲はその言葉に感動して唇を噛みしめ、涙がこぼれないように耐えていた。少しの間沈黙してから、小声でまた話し始めた。「わかった。流星、あなた大学生活は順調?お金は足りているの?学校の食堂のご飯は口に合う?お金がかかってもいいから、外のレストランとかで食べてもいいのよ、お金が足りなくなったら私に言って」「姉さん、お金には困ってないよ。毎月カードに振り込んでくれてるじゃないか。俺だって自分のお金はあるから、十分足りてるよ。それにバイトもしてるから、全然困ってなんかないんだ。自分の力で生活して、仕事の経験を積みた
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第2230話

そもそも依茉の有名っぷりは誰もが知っている。彼女本人に会ったことがなくても、その噂を聞いたことがあり、医術も毒の知識も豊富なすごい人物だから、勝手に中年くらいだとみんな思い込んでいる。「先生、こちらが婚約者の柴尾咲です」辰巳は婚約者の咲を依茉に紹介した。依茉は辰巳に支えられながら部屋に入ってきた女性を見て、それが患者だとすぐにわかった。「柴尾さん、はじめまして」咲が音で相手のいる位置を判断しているのを知っていて、彼女はまず先に声をかけた。咲が入ってきた時は、顔を階段のほうへ向けていた。そして依茉が口を開いて声をかけると、咲はやっと位置がわかり、その綺麗な顔をあげて依茉に向かって微笑んだ。「先生、はじめまして」「柴尾さん、こちらに座ってください。ちょっと診させてもらいます」依茉は遠慮なく、すぐに辰巳に彼が支えている咲を自分の隣に座らせようとした。辰巳は急いで咲を支えながら依茉のほうへ近寄った。依茉の隣に座っていた結城おばあさんが席を先に譲って座らせた。依茉は咲の目を確認した。「柴尾さんは、毒によって失明なさったんですよね。以前、治療を受けたことがあるでしょう?その症状に合わせた薬を使うような治療ですよね。今、目は光が見えていますか?」咲は頷いて言った。「失明してから、おばがあちこち病院に連れていってくれて、眼科の先生にたくさん診てもらいました。何度も何度も治療を受けたんですが、それでもあまり効果はなくて。一度だけ確かにすごい先生に診てもらったことがあって、彼が治療してくださった時は効果があったんですけど。でも、残念なことに、治療の途中でその先生は亡くなられてしまって。その後も何人かの先生に診てもらったんですが、何も変わりませんでした。だから目が見えるようになるのを期待するのは諦めたんです。失明してからの十年、ずっと暗闇の中で生きてきて、もう慣れてしまいましたから」そして最後に、彼女は希望を抱くことはなくなった。裕子が新しく医者を見つけてきても、咲はもう診てもらう気力もなかった。どうせ結果は同じだと思ったからだ。彼女の失明は毒によるものだ。体に蓄積された毒が消えない限り、彼女の目が光を取り戻すことはできない。「効果のあった治療を受けて、光は感じられるようになったんです。でも常にではなくて、た
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