All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2331 - Chapter 2340

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第2331話

理仁は拓真に尋ねた。「で、ばあちゃんはなんて?」「えっと、自分でその夢がどういうことか確かめろってさ、どのみち、ばあちゃんはノータッチだ」拓真はぶつくさと言った。「俺って本当にばあちゃんの実の孫なのかな。俺を結城家で離婚した初めての人間にさせたいのか。絶対あのステッキを長い間有効活用できてないから、あれを使って思いっきり誰かを殴りたい気分なんだよ。だって俺たち聞き分けが良くて、すっごい孝行者ばかりじゃん?ばあちゃんが罰を与えたいと思っても、何も口実が見つからないに決まってる。それでわざとこの俺をクズ男ルートに持っていかせる気なんだ。そして離婚を理由にこっぴどく俺を懲らしめるんだ」それを聞いて理仁は大笑いした。「もしこの話をばあちゃんに聞かれでもしてみろ、今すぐにでもお前を懲らしめてくれるぞ」「絶対そうだろ?」理仁は言った。「ばあちゃんが決めた女性と、その夢の中で出会った女性は実際には同一人物なんじゃないか?」「そんなのどうやって?二人とも全くの別人なのに。簡単に顔を変えられるスパイ映画じゃあるまいし」拓真はぶつくさと文句を続けた。理仁は言った。「それは不可能とは言えないだろ。A市の桐生家、二番目の御曹司である旭さんの奥さんのスキルだな。参考にするといい。ドラマや映画で見たことあるだろ、変装マスクってものもあるんだぞ」理仁はおばあさんが拓真に選んだ女性が一体どのような人物かはわからないが、おばあさんの人を見る目は信じている。絶対に拓真にお似合いの女性に決まっている。なにかしらの能力を持っていない女性がおばあさんの目にかなうはずがない。きっと理仁の妻である唯花が最も一般人に近いだろう。おばあさんが彼に選んだ唯花は彼と一緒に成長していくタイプだ。この時、理仁はおばあさんがあの占い師をとても信頼していることを思い出していた。もしかしたら、おばあさんは理仁を妻と一緒に成長させようと期待したのではなく、ただ彼が一生結婚できないと心配で、その結婚できる相手がいればいいと、占い師に頼んで唯花のことを選んでもらっただけかもしれない。それは、まさに寛哉が息子の弦が一生独身で過ごすことなく結婚できるように占ってもらったことと同じだ。占い師は理仁と唯花は夫婦になる巡り合わせなのだと言った。それでおばあさんはなりふり構わずに、彼
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第2332話

理仁は二階にあがっていった。彼が部屋に入った瞬間、トイレのほうから唯花が吐いているのが聞こえてきた。一日たりとも例外なく、彼女は朝目覚めるとすぐにトイレに駆け込んで吐いている。「唯花」理仁は急ぎ足でトイレに駆け込み、唯花の後ろまで来ると、辛そうな表情で彼女の背中を軽く叩いてあげた。「毎日同じように起きたら吐いてしまうね。まったく、お腹の子はママを苦しめてくれるな」きっとやんちゃな子供なのだろう。「つわりは人によって全然違うわ。吐くからといって、子供がママを苦しめているわけじゃないのよ」唯花は吐き終わると、口元を水で洗って、理仁に差し出されたタオルで拭き、さっきの理仁の言葉に反論した。「俺が代わってあげられたらいいのに」「あなたがつわりを代われるのなら、お腹が大きくなって子供まで産めちゃうわね。女性たちの苦しみを解決してくれる救世主じゃないの」理仁は言葉を詰まらせた。彼は唯花の体を支えながら外に出た。そして部屋にあるソファに座らせてから、彼女のために温かい水を持ってきて言った。「拓真が来てるんだよ」「おばあちゃんに会いに来たんでしょ」今結城おばあさんは理仁たちと一緒に暮らしているので、理仁の兄弟や従兄弟たちがよくおばあさんに会いにやって来る。唯花は毎日のように義弟たちを見かけるのが当たり前のように感じていた。「主な目的は、結婚相手候補の女性を口説きにいけというばあちゃんのあの任務から逃れるためだよ」唯花は笑って言った。「おばあちゃんから逃げられるなんて、そんなことできっこないわよ」「俺もそう言ったんだ」理仁は愛する妻の顔にキスをした。「唯花、やっぱり俺たちは夫婦だな。考えてることは一緒だ」それから彼は拓真が最近見るという夢について唯花に話した。すると唯花は興味津々に目を輝かせた。「まさか、拓真さんって転生してきたとか?それか、将来の奥さんのほうが転生したとかかも。今運命が動きだしたのね。だから、彼はその夢を毎日見ているんじゃない?こんなストーリー、転生系の小説でしか見たことないわよ」理仁は言った。「……唯花、いったい、いつ小説なんか読んだの?」「私は本屋を経営していて、明凛ほど小説を読むのが好きじゃないけど、たまにちょっと暇つぶしに見ていたの。それに明凛が小説を読み終わるたびに、私
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第2333話

十数分後。唯花は服を着替え、夫と手を繋ぎ部屋から出て、下におりていった。この時、拓真は結城おばあさんと一緒にダイニングルームで朝食をとっていた。夫婦二人が入ってきたのを見ると、拓真はすぐに朝食を食べるのを一旦止めて、立ち上がった。「唯花さん、おはようございます」「おはようございます」唯花は拓真たちがみんな自分を尊重してくれるのに慣れてしまっていた。それも理仁の存在があるからだ。彼女は拓真に腰をおろすよう伝えた。「おばあちゃん、おはよう」そして唯花はおばあさんに挨拶した。おばあさんは温かな眼差しで尋ねた。「今日は調子はどう?」「いつもと同じ。一カ月後には良くなっているといいけど」「きっとそうなるわ」この時、おばあさんは理仁をちらりと見た。唯花がこのように毎日吐き続けていたら、理仁が心配して狂ってしまう。「唯花ちゃん、理仁が早起きしてあなたのために朝食を作ってくれたのよ」おばあさんは微笑んでそう言った。「私もついでに孫の手料理が食べられてラッキーね」「ばあちゃん、それじゃ、俺がまるでばあちゃんに作らないケチ野郎みたいじゃないか。食べたいならいつだって作ってあげるのに」理仁はおばあさんに反論した。すると拓真が唯花に訴えた。「唯花さん、理仁兄さんは本当にケチなんですよ。俺には作ってくれなかったんです。俺は客人でしょ、それなのに自分で作って食べろなんて言うんですからね。唯花さんからも、それはケチすぎるって言ってやってください」唯花は笑って、夫を見つめた。「理仁、そんなケチなこと言わないのよ。拓真さんも頻繁には来られないでしょ。せっかく来たんだからおもてなししてあげればいいのに、自分で作らせるなんて」「家族だっていうのに、何が客人だ、よそよそしい」唯花は確かにその通りか、と思い、拓真に言った。「拓真さん、理仁が私たちは家族なんだから、そんなよそよそしく客だなんて言うなって言ってますよ。これからは、ここに来て何か食べたいものがあれば、自分で遠慮なく作ってくださいね」拓真は「……」朝食を済ませて、少しの間休憩してから、理仁は唯花を連れてドレスの試着をしに行った。拓真のほうはまだ家に残り、おばあさんを少しの間説得しようと試みたが、彼女は考えを変える気はまったくなく、彼もしぶしぶ帰るしかなかった
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第2334話

吉田はハッと我に返ると、すぐに結城おばあさんの言葉に応えた。「おばあ様、今すぐにご用意いたします」「早く、早くね。今日はここには帰ってこないから。明日また来るわ。理仁が戻って来たら伝えておいて」おばあさんはそのように吉田に言いつけた。「かしこまりました、必ずお伝えしておきます」おばあさんはあちらこちらと走り回るのが趣味なのかというくらい忙しい。吉田は完全にそんな彼女に慣れてしまっている。おばあさんは自分の家である琴ヶ丘に戻るだけだから、荷物の整理などする必要もなく、携帯を手に取るとすぐに外に出ていった。吉田はすでに車の準備をしていた。おばあさんは自分で運転して帰ると言ったが、吉田はそれに断固として同意しなかった。おばあさんがいくら健康だといっても、年を取っていることには変わりない。もし、途中で何か事故でもあったら、吉田はその責任を負うことなどできない。それに、おばあさんはスピードを出すのが好きなタイプだ。理仁にしろ、栄達や麗華にしろ、みんな吉田たちには、いつ如何なる時も彼女に運転させてはいけないときつく注意してある。「わかった、わかったわよ。急いで帰らないといけないから、あなたと言い合ってる暇はないわ。早く車を出してちょうだい」おばあさんは吉田を説得することができず、おとなしくなった。彼女の安全問題に関して、彼ら使用人たちは特に厳しい姿勢を貫いている。理仁の命令のせいで、彼女はハンドルすら握らせてもらえない。吉田は最も安全運転をする人をおばあさん専用の運転手にあて、彼女を琴ヶ丘まで送らせた。弦は結城おばあさんが小夏に会いたい一心で、琴ヶ丘に急遽戻っていることなど知らなかった。弦もこの日はかなり朝早くに起きて、二人の部下に車を運転させ、弦と一緒にスカイロイヤルに来させた。小夏と十二人の子供たちは今日琴ヶ丘に行く日だから、興奮で夜はあまり良く寝られなかった。そして太陽が顔を出すと同時に起きた。いや、小夏が興奮しているのだ。子供たちは琴ヶ丘が一体どのような場所なのか知らない。先生が今日はみんなを遊びに連れて行ってくれると言うから、一緒についていくだけだ。「みんな、到着したらおとなしくね。あちこちむやみに走り回ってはダメよ」小夏は弦が彼女に恩返しするために、理仁に琴ヶ丘を見学させてく
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第2335話

弦は微笑みながら子供たちに挨拶をした。そして、一階にあるビュッフェで朝食をとろうと呼びかけた。子供たちはスカイロイヤルに数日滞在し、すでに勝手が良くわかっていて、朝食をとると言われると、まとまって一緒に歩きだした。弦と小夏は自然と子供たちの後ろからついていった。そんな彼らの嬉しそうな様子を見て、小夏が笑って言った。「本当にあの子たちが羨ましいです。私が小さい頃よりずっと幸せですよ。私、あの子たちの年齢の時に、同じようによく大会に参加していたんです。でも、父があまり遊びに連れていってくれなくて。試合が終わったら、よくて私たちを連れて無料の公園で遊ぶくらいで、スティックアイスを買ってくれたあと、すぐに家に帰っていました」父親は彼女のように、自腹をきって、子供たちに美味しい物を食べさせたりすることはなかった。もちろん、そこまでするのは彼女自身が楽しみたいからでもある。せっかく星城まで来たのだから、自分だって楽しみたいのだ。「花京院さんはとても良い先生ですね。生徒さんたちはみんなあなたを尊敬していますよ」弦は彼女を絶賛した。「なにか犠牲を払えば必ず自分にも良いことが返ってきます。将来、あなたの生徒さんたちはこの事をずっと覚えていますよ」小夏が言ったように、自腹で子供たちを五つ星ホテルに泊まらせるような先生は、ほぼいないだろう。大会が終わると、子供たちをあちこち遊びに連れていってあげ、星城の美しい風景やグルメを堪能させてあげるような先生はいない。今回の旅行で、彼女が子供たちを連れて美味しい物を食べさせ、楽しい場所に連れていき、また良いホテルに泊まらせる。そんな経験を子供たちが大人になっていく過程で、美しい思い出として深く胸に刻まれることだろう。きっと、彼らは人生で星城旅行のことをずっと覚えているはずだ。この旅行を忘れない限り、花京院小夏という武術の先生のことも忘れない。小夏は自分の生徒たちに本当に良くしてあげている。厳しい時にはもちろん厳しくし、楽しむ時には思いっきり楽しませてあげる。弦は特に小夏のこのような人生における考え方を気に入っていた。さすが、自分の運命の女性、完璧すぎる!すでに小夏を未来の妻として見ている弦は、一日に何百回と彼女を褒めずにはいられない。小夏は笑って言った。「別に何かお返しがほしい
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第2336話

「安心してください。花京院道場で武術を学んでからは、道場の名を広めはしますが、法に触れるようなことは絶対にしませんので」すでにかなりの武術の腕を持つ弦は、自分は全くできないふりをして、花京院道場で学びたいと申し出た。そうなれば、彼は毎日小夏と一緒にいられる。交流する時間が長くなれば、彼女はきっと弦を好きになるはずだ。この世で、たった一人、小夏だけが弦の心を動かすことができる。だから、彼が小夏を逃すわけはない。それに、他の男には誰も彼女に興味を持たせたりしない。小夏は弦のほうへ顔を傾けてちらりと見ると、歩きながら笑って言った。「九条さんの年齢から始めると少し遅いかもしれません。もし、ただ体を鍛えることを目的にして、強くなりたいとか他の要求がないようなら、父か兄に相談してみます。彼らが受け入れると言うなら、ぜひうちの道場にお越しくださいね」弦は尋ねた。「花京院さんが教えてくれるんじゃないんですか?」「えっと、私はふつう子供たちだけに教えていて、大人は父が受け持つんです。さっきも言ったとおり、成人してから習い始めるのは少し遅いので、トレーニングをするくらいの感覚になります。父はきっと基本的な技くらいしか教えないはずです。もちろん、基本ができるようになれば、良いところはあるんですよ。九条さんたちのように、毎日オフィスでエアコンの効いた部屋にいてずっと座りっぱなしの方たちは運動不足になりがちでしょう?健康のために、毎日少し時間を見つけて父と鍛えれば、体の調子がもっと良くなるはずです。少なくとも太ることはないですよね」すると彼女はまたちらりと弦のスタイルを見て笑って言った。「九条さんは他の社長さんたちとはちょっと違って、お腹が出たりしてないですよね。それに太ってなくても、あなたほどスタイルが良い人なんて見たことないです。きっと普段から少し鍛えていらっしゃるんでしょう?」弦は正直に答えた。「ええ、よく鍛えています。じゃ、花京院さんたちがあちらに戻る時に、私も飛行機チケットを買って一緒に行きます。花京院道場の館長にお会いして、この年でも学べるか伺ってみましょう」小夏はあまり多くを考えずに、スカッと返事をした。「いいですよ、でも、九条さんは仕事のほうは大丈夫なんですか?」「私が事前に手配したらいいんです。うちは古くから続く会社ですから、
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第2337話

子供たちはすでにそれぞれ自分たちが好きな食べ物を皿に盛って、二つのテーブルに分かれ、一緒に食べ始めていた。小夏は食いしん坊で、特にスカイロイヤルホテルに入っているレストランのグルメに目がない。彼女は二つの皿いっぱいにおかずをのせて持ってきた。子供たちが座っているテーブルにはもう席がなかったので、隣のテーブルに座った。バラエティーに富んだグルメがのった皿をテーブルに置くと、次はフルーツやお菓子を取りに行って、ホットコーヒーも入れてきた。弦も自分でたくさんの料理を選んだ。小夏はよく食べる。彼がもし小食のようなら彼女はきっと気まずくなって、次一緒に食事をする時には、おしとやかなふりをしてお腹いっぱいに食べなくなるかもしれない。弦の未来の奥様は、この時あくまで「予定」ではあるが、彼は結婚する前から彼女のことを大事にし、可愛がってあげなければならない。だから、弦が小夏がお腹を空かせてしまうような状況を作るわけはない。小夏は自分が食べたいものを持ってきた後、座って皿を見てみると、どうも取って来すぎだと気づいた。しかし、向かい側に座る弦も複数の皿に食べ物を取って置いていたので、彼女の恥ずかしさは、それを見た瞬間に消え去った。小夏がよく食べるだけでなく、彼女の教え子たちも一般的な子供たちよりも多く食べるようだ。きっと毎日武術の練習に励んでいるからだろう、体力をかなり消耗する分食べる量も増えるのだ。逆に、弦はちょっと食べ過ぎてお腹が苦しくなっていた。小夏と子供たちがみんな大盛の皿をきれいに平らげているのを見て、弦も無理に盛ってきたものを食べた。小夏に食べ物を無駄にする男だという悪い印象を植え付けるわけにはいかない。相手を大事にするなら、常に最善を尽くしたいものだ。本当に彼はそう思っていた。今まで一度も恋愛したことのない弦は、だんだん自分がこの初めての感情のトラップに、はまっていくのに気づいていた。お腹が満たされた後、弦は子供たちの人気者になり囲まれながら、小夏と一緒にレストランを出た。ホテルの入り口で弦は従弟の悟に出くわした。悟は顧客との商談でホテルに来ていた。悟は弦に気づくと挨拶をしようと思ったが、口を開く前に弦が顔を背け、小夏と何か楽しそうに笑っているのが見えた。つまり弦が話しかけるなと言っているのだと察した。悟
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第2338話

悟は結城グループ社長の特別補佐をしている。星城ではかなりの有名人だ。彼の普段の出現率は弦よりも高い。誰かがネットで調べたら、悟の写真と彼のその身分など情報を得ることができる。しかし、弦は違う。彼は昔から神出鬼没で神秘的な人物だ。普段、理仁が弦に会いたいと思ったら、事前に悟に連絡して約束を取りついでもらっている。そして会う日時をしっかり決めてからしか会うことはできない。ネットでも弦の写真を見つけることは不可能だ。弦の顔を見たことがない人は、たとえ街中で彼とすれ違っていたとしても、それが九条家の跡取りだと気づくことは絶対にない。悟は弦が自分の正体を小夏に隠しておきたいのだと予想し、さっき自分に挨拶するとばれてしまうと恐れて、さっさと逃げるように退散したのだと思った。「さっきロビーですれ違ったスーツ姿の方達の先頭を歩いていた男性は、なんだか見覚えがあります」やはり、ホテルを出た小夏は後ろを振り返り、ロビーのほうへ視線を向けて弦にそう言った。弦はそれに答えた。「あの人なら結城グループ本社の管理職の方達です。きっとここへは顧客との商談に来たのでしょう」小夏は言った。「それで、あの人たちの雰囲気がちょっと違うというか、オーラがあるように感じたんですね。きっと常務とかかなり上の人たちだったんでしょうね。九条さんは、結城社長とは付き合いがあるとおっしゃっていましたよね。さっきのような管理職の方たちとも皆さんとお知り合いなんですか?」弦は顔色を変えずに言った。「そういうわけでもありません。さっきも私とすれ違った時に挨拶もしなかったでしょう?彼らの礼儀がなってないわけではなくて、お互いに知らないからです。きっとあちらも私が誰なのかは知らないはずです。私は結城社長とだけ付き合いがあるので。先頭にいた方は、結城社長の右腕とも言えるほど、かなりの信頼を得ている人ですね」小夏は瞳を輝かせて、後ろを振り返りホテルに戻ろうとした。弦はとっさに手を伸ばして小夏の手を引き、不思議そうに尋ねた。「花京院さん、どうされたのですか?何か落とし物でもされました?」「いえ、あの先頭の方が結城社長の右腕のような人だって聞いて、きっと社長付きの特別補佐をしている、あの九条さんかなって思って。あのお二人は同じくらい有名ですから、私も星城に来る前に少し調べたんです
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第2339話

「九条さん」弦がホテルに来るときに、運転手代わりをしていたボディーガード二人が、弦が出てくるのを見て迎えに来た。事前に指示されたとおり、彼らは弦のことを「九条さん」と呼び、将来の奥方に彼の正体がばれないように気をつけた。彼らボディーガードの目には、主人は考えすぎているように見える。将来の奥方はかなり豪快なタイプのようだから、きっとこの世の終わりが訪れようとも恐れはしないだろう。それなのに、主人が九条家の跡取りだというくらいで驚いたりしないはずだ。「うん」弦は穏やかな声でひとこと返事し、頷いて小夏に話しかけた。「私の車にはそんなにたくさん乗れませんから、二人運転手を頼みました。三台で行けば、座席にも余裕がありますので」小夏は彼にお礼の言葉を言った。「なにからなにまですみません。本当にいろいろお世話になって、ご迷惑をおかけします」弦は笑った。「そんなに改まらないでください。そもそもあの夜、花京院さんは私と知り合いではないにも関わらず、面倒事になるのを厭わずに、命を救ってくださったのです。車を用意するくらいなんてことないですよ。だから、そんなに迷惑をかけるだなんて言わないでください」小夏は笑った。「はい、そうですね。もう友達になったと思っていますから、いつもいつも気を使ってお礼を言い合ったりするのは、私もちょっとそわそわします」彼女は小さい事にこだわらないおおらかな人が好きだ。二人は子供たちが半分に分かれて二台の車に乗り込んだのを見届けてから、小夏は弦と一緒に彼の車に向かった。弦は小夏に車のドアを開けてあげて、紳士的に振舞った。小夏はとっさにお礼の言葉を言おうとしたが、さっき自分があんなふうに言ったばかりなのを思い出し、弦ににっこり微笑んだだけだった。小夏がシートベルトをつけ終わってから、弦は運転席に座り、すぐにエンジンをかけて目的地に向かった。その途中、弦は親切に小夏に星城の楽しめる観光スポットを紹介していった。小夏はそれを聞いて心が踊ったが、また残念そうに言った。「星城にはたったの数日しかいられなくて、また帰らないといけないから悔しいです。子供たちも親も心配しているでしょうし」弦は言った。「これから時間があれば、お一人でぜひ、いらっしゃってください。十日でも半月でも、事前に連絡をくれたら、泊まる所は手配しておきま
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第2340話

弦は小夏に尋ねた。「私が知っているのは、薔薇園、百合園、それから向日葵畑です。でも、今は十月なので、そこまで花は多くないでしょうね。もし、春だったらとても綺麗なんですが」小夏も車の窓を開けて、遠くまで眺めてみた。そして驚嘆の声を出して尋ねた。「今目の前に広がっているこの全てが結城家のものなんですか?あそこにいる人たちも、結城家の方ですか?」「そうですね、見えている場所は全部結城家の敷地です。そしてあの人たちのほとんどは雇われている人たちですね。花や果樹の世話をするには、多くの人手が必要ですから。そして一部の方は結城家の一族の方たちです。おそらく遠い親戚に当たる方だとは思いますが、親戚には間違いなく、同じ結城の名字です。あの辺りにある家も同じです。結城家の一族の方が住んでいたり、雇われている方が住んでいる寮だったりです。結城家は雇っているスタッフへの福利厚生がしっかりしているんです。単身であれば、一部屋に小さいタイプですがキッチンもあるから料理ができるし、バストイレもセパレートのタイプです。家族と一緒なら、部屋数が多い部屋を割り当てられます。全体的にそこまで大きくはないですが、設計がきちんとされているので住み心地は良いらしいです」小夏はそれを聞いて驚いたように目を大きく見開いていた。「では、ここで働いているスタッフの方は、待遇が大企業で働いている人たちと同じなんですね?」弦は笑って言った。「うーん、普通の会社で働いている人たち並みでしょうね。もし彼らの子供が頭が良く重点大学に入れれば、将来社会に出た時には結城グループで働けるんです。結城家もそうなった場合は特別ボーナスをくれるんですよ。結城家のスタッフが会社に入れば、ほぼ転職などしません。会社から離れられないですよ。結城家で長く働いているから慣れているというのもあるし、結城家からの待遇が本当に良いからです。特におばあ様は名家出身でも偉そうな態度はなく、すごく親しみやすい方ですよ」「最高の待遇に、最高の雇い主、私が結城家のスタッフだとしても離れたくなくなりますよ。結城家が星城でトップ富豪の座から一度も降格していないのは納得の理由があるからなんですね」巨大な一族でありながら、一族内は仲睦まじく、それに加えて子供や孫たちの世代全員が有能な人間ばかり。こんなことはそう滅多にあるものではな
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