弦は笑って言った。「花京院さん、言ったでしょう。そんな改まったお礼なんてする必要はないって。私たちはもう十分友達と言えるでしょう?それに、あなたは私の命の恩人なんですからね」小夏も笑った。「ええ、そうですね。お互いにそんなに他人行儀に振舞う必要はないですね。私もいつもこんなに気を使っていては、なんだかスッキリしませんし、私ってかなりガサツな人間なんですよ。あまりに改まった態度をとるのはどうも変に緊張しちゃうというか。それから、九条さんもいつもいつも私が命の恩人だとかそういう話はもうなしにしてください。本当に、あの夜は食後の散歩がてら、悪党を倒してやっただけなんですから」二人は笑い合った。小夏は車を降りて花を観賞するつもりはないらしく、弦はそのまま車を山の上へと走らせていった。彼は小夏が別にそこまで花には興味がないのだろうと思った。車が中腹まで来ると、一旦停車した。小夏は中腹に警備員の小屋があるのに気づいた。そこにはゲートがある。警備員は弦が来たのを見て、すぐにゲートを開けて車を通した。小夏は興味津々に尋ねた。「ゲートまであるんですか?」「ええ、琴ヶ丘の結城家には部外者が自由に出入りはできません。以前、屋敷の前にだけあのような警備員つきのゲートを設けていただけでしたが、結城社長がスピード結婚してから、多くの人が彼らの私生活を覗こうと、こそこそとここに来るようになったんです。そして結城社長はこのままではここが安全ではないと判断し、山の中腹にもあのようなゲートを設けたんです。一日三班に分けて交代で二十四時間監視しています。許可がない者が来ても、中腹から下の麓しか自由に行動できなくなりました」小夏はひとこと「そうなんですね」と返事し、ふいに財閥家というものは自分の想像のつかないほど奥が深いものだと感じた。出入りの自由ですら、このように影響を受けてしまうのだ。ただ、彼女は今回名家の周りを自由にぐるりと見させてもらうだけだから、不自由をすることはなくて良かった。そう思うと、小夏はまた自嘲して笑った。まさか誰でもそう簡単に名家に嫁げるとでも?名家に嫁ぐことで不自由になるという機会すら自分には巡ってこないだろう。何をバカなことを考えているのだろうか。それに、彼女自身も名家に嫁に行ったりしたくなかった。一般家庭で十分
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