All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2341 - Chapter 2350

2448 Chapters

第2341話

弦は笑って言った。「花京院さん、言ったでしょう。そんな改まったお礼なんてする必要はないって。私たちはもう十分友達と言えるでしょう?それに、あなたは私の命の恩人なんですからね」小夏も笑った。「ええ、そうですね。お互いにそんなに他人行儀に振舞う必要はないですね。私もいつもこんなに気を使っていては、なんだかスッキリしませんし、私ってかなりガサツな人間なんですよ。あまりに改まった態度をとるのはどうも変に緊張しちゃうというか。それから、九条さんもいつもいつも私が命の恩人だとかそういう話はもうなしにしてください。本当に、あの夜は食後の散歩がてら、悪党を倒してやっただけなんですから」二人は笑い合った。小夏は車を降りて花を観賞するつもりはないらしく、弦はそのまま車を山の上へと走らせていった。彼は小夏が別にそこまで花には興味がないのだろうと思った。車が中腹まで来ると、一旦停車した。小夏は中腹に警備員の小屋があるのに気づいた。そこにはゲートがある。警備員は弦が来たのを見て、すぐにゲートを開けて車を通した。小夏は興味津々に尋ねた。「ゲートまであるんですか?」「ええ、琴ヶ丘の結城家には部外者が自由に出入りはできません。以前、屋敷の前にだけあのような警備員つきのゲートを設けていただけでしたが、結城社長がスピード結婚してから、多くの人が彼らの私生活を覗こうと、こそこそとここに来るようになったんです。そして結城社長はこのままではここが安全ではないと判断し、山の中腹にもあのようなゲートを設けたんです。一日三班に分けて交代で二十四時間監視しています。許可がない者が来ても、中腹から下の麓しか自由に行動できなくなりました」小夏はひとこと「そうなんですね」と返事し、ふいに財閥家というものは自分の想像のつかないほど奥が深いものだと感じた。出入りの自由ですら、このように影響を受けてしまうのだ。ただ、彼女は今回名家の周りを自由にぐるりと見させてもらうだけだから、不自由をすることはなくて良かった。そう思うと、小夏はまた自嘲して笑った。まさか誰でもそう簡単に名家に嫁げるとでも?名家に嫁ぐことで不自由になるという機会すら自分には巡ってこないだろう。何をバカなことを考えているのだろうか。それに、彼女自身も名家に嫁に行ったりしたくなかった。一般家庭で十分
Read more

第2342話

弦も微笑み返し、お互いに挨拶を済ませると、小夏に執事を紹介した。「花京院さん、こちらは琴ヶ丘邸全体を取り仕切る執事の古谷さんです。古谷さん、こちらは花京院小夏さんと言って、蔵峯市で道場を開いているお家のお嬢さんです。ちなみに私の命の恩人です」古谷は心の中で、九条様、私をからかっておいでですか、あなたの命を救ったと?とつぶやいた。九条家の後継者という身分を持つ彼の髪の毛一本にでも触れようとできる輩がいるのか?弦に手を出す前に、彼を怒らせることすら憚られるというのに。しかし、理仁から直々に頼まれたのだ。弦が来たら、彼が言う言葉に合わせておけばいい。彼の意思に従って対処するまで。「花京院さんですね、はじめまして、古谷と申します」古谷は礼儀正しく挨拶をした。小夏は慌ててそれに返事をした。彼女は少し申し訳なさそうにこう言った。「私たちがお邪魔してしまって、本当に古谷さんにはご迷惑をおかけします」古谷は笑った。「そんなことはございません。九条社長とうちの坊ちゃまはお知り合いです。坊ちゃまから仰せつかっておりますので、今日一日この琴ヶ丘を楽しんでいただくべく、私がガイドを務めさせていただきます」「古谷さん、お世話になります」そこへ弦は言った。「古谷さん、私はここに来るのは二回目です。確かにそこまで詳しいわけじゃありませんが、迷子になることはありません。私でもなんとか花京院さんたちのガイドになれると思います。古谷さんはお忙しいでしょうし、そこまでご迷惑をかけるわけにはいきませんよ。全部で十人以上いますので、古谷さんには昼食だけ手配していただけると助かります。午後には市内に戻る予定です」古谷は笑った。「それもよろしいでしょう。では、昼食時には事前に皆様方、何を召し上がりたいか一時間前にはご連絡くださいませ。食事の時間になりましたら、場所を教えていただければ、その場に昼食をお持ちいたします。わざわざ戻って来られる必要はありませんよ」弦はお礼を言った。「わかりました。そうさせていただきます。では、お世話になります」古谷は笑って言った。「九条社長、みなさんとぜひ楽しまれてくださいね。子供用の遊園地のほうもすでに手配しております。どの乗り物にもスタッフが待機しておりますので、お子様たちの安全に気をつけていただければと」弦は再びお
Read more

第2343話

「おばあ様」避けられないのであれば、立ち向かうしかない。弦は即座にニコニコと笑顔を作り出して、おばあさんに挨拶した。小夏は今やって来た、まるでマリア様みたいな慈悲深い笑顔をしているおばあさんはきっと結城家のあのおばあ様なのだろうとわかった。おばあさんの格好は本当に街中にいるご老人たちとほぼ変わらない。見た感じ素朴だが、彼女自身から発せられる高貴なオーラをその普通の服では抑えきれていない。おばあさんの足腰はしっかりしていて、まるで羽根が生えているかのように颯爽と歩いてくる。それに肌のお手入れもされ、見た目的には五、六十代のおば様のようだった。実年齢が一体いくつなのか全く想像できないくらいだ。「九条さん、こちらのお嬢さんは?」この時、おばあさんは小夏に視線を向け、全く何も知らないふりをして弦に尋ねた。このご年配の夫人を目の前にして、弦は小賢しい真似などできるわけもなく、おとなしく正直に小夏を紹介した。「はじめまして、おばあ様。花京院小夏と申します」弦が二人を紹介した後、小夏は急いでおばあさんに挨拶した。おばあさんは慈悲深い笑みを見せた。「花京院さん、ようこそお越しくださいました」するとおばあさんは小夏を頭から足の先まで観察した。若く、美しい。まさに英雄豪傑で物おじしない堂々としたさまに、おばあさんの小夏の第一印象はとても良かった。小夏はかなり強いと聞いている。弦が小夏に救われる演出を計画するために、手配した部下たちはほとんど彼女の手でねじ伏せられ、今もまだ入院しているそうだ。ここまでの武術の使い手なら、確かに九条弦に相応しい。小さい事にこだわらず、爽やかな性格の小夏は、おばあさんの好みのタイプだ。小夏は孫たちに選び抜いた妻候補の女性たち同様に優れている。やはり、神様は弦をかなり贔屓しているらしい。もし、弦に、強いが外見が良くない女を神様が手配していたら……その時は、もはや笑うしかない。ただそれを想像しただけで、おばあさんは大笑いしたくなった。そう、このおばあさんは少し悪ふざけがしすぎる。頑なに結婚しようとしない男たちは神から天罰を下されればいいと思っている。弦は異性に対して関心を持てず、占い師によると、人生でたった一人の女性にしか興味を示せない運命。もし、その運命の相手がブサイクな女
Read more

第2344話

今度はおばあさんは小夏に言った。「花京院さん、うちはね、あまり細かい事にはこだわらないの。だからリラックスしてちょうだい。それに邪魔になるんじゃないかなんて気にしなくていいのよ。琴ヶ丘で食べて飲んでたくさん遊んで、楽しかったらまた遊びにいらっしゃい」小夏は笑って言った。「今後、生徒たちを連れて星城に試合に来た時には、ぜひ厚かましくもおばあ様に会いに来ます」やはり百聞は一見に如かず、だ。結城おばあさんは小夏の想像よりはるかに親しみやすい人だった。本当に偉そうな態度一つない。小夏は自分の祖母と同じで、結城おばあさんはとても親切で、世話好きだと思った。「試合がなくたって遊びにいらっしゃいよ。九条さんに迎えに行かせるから。そして、うちに遊びに来て泊まっていっても構わないわ。琴ヶ丘には余っている部屋がたくさんあるからね。ここに半月ぐらい泊っても、退屈することは絶対にないわよ」小夏は笑顔で、遠慮気味に受け答えしていた。しかし、本気でそんなに気兼ねなく来られるはずがない。来てみて、すでに自分が弦にはかなり大きな借りを作ったように感じていた。弦は事あるごとに、命の恩人に恩返しと銘打って、親切にも小夏や子供たちを遊びに連れていってくれた。しかも、あの星城一の富豪、結城家の邸宅にまで連れてきてくれ、食事までご馳走になった。彼は本当にただ彼女が恩人だからといって、とめどなく沸き続ける泉のように永遠に恩返ししようとしてくる。誰かにきちんと恩返しする気持ちを持っている人だ。このような感謝の気持ちを感じられる男性はいい人に決まっている。小夏はここ二日ほど、弦と短い間だが接してみて、彼への評価はどんどん上がっていた。おばあさんに誘われ、一行はまず母屋へと向かった。豪華ながらも控えめなリビングでお茶をし、お菓子や果物をお腹いっぱい食べると、おばあさんがガイドを買ってでて、みんなを山に案内した。子供たちが大勢いるので、おばあさんはまず彼らを連れて子供用の遊園地に行った。それは昔、孫たちのために造った遊園地だ。一番下の孫である蓮も高校生になり、そこで遊ばなくなった。だから常に停止した状態で、陽が来た時にくらいしか稼働させていない。それでこの日は久しぶりに賑やかな遊園地になった。子供たちは最初遠慮していたが、遊園地の楽しさには抗えず、すぐに
Read more

第2345話

「おばあ様、結城社長と奥様の結婚式を目前に控えて、きっとお忙しいことでしょう。あなたの大切な一番上の孫の結婚式ですよ。それなのに、あなたの貴重なお時間をいただくわけにはいきません。小夏さんには私がいれば十分ですから」つまり、おばあさんにはもう彼の出番を奪わないでくれと頼んでいるわけだ。せっかくなのだから、小夏の前で格好つける機会を与えてあげればいいものを。おばあさんはニヤニヤ笑って言った。「確かに理仁の結婚式はもうすぐだけど、私が何かする必要なんてないもの。私はもうこんな年よ。歯も少なくなったし、歩くときにはステッキがないとね。そんな私にあの子たちが何かさせると思う?私は横にいて、ああだこうだ口を挟むくらいでいいのよ。あの子たちは私の言う通りにやるから。琴ヶ丘にいて暫くこんなに賑やかだったことはないわ。それにこんなにたくさんの子供たちがここで楽しそうに遊ぶ姿も久しぶり。こんな老いぼれの私にすら勝てないのなら、今後いきなり強力なライバルが現れた時に一体どうするつもり?あっさり降参して、運命の相手をおとなしく渡してしまうつもり?」弦は言った。「……この九条弦、降参なんて言葉は辞書に書いてありませんので」それに誰が小夏を私から奪おうとできる?できるものなら、やってみるがいい!おばあさんはまたニヤニヤ笑った。「弦さん、今すぐ降参でもしなさい。そうしたら私はさっさと部屋に戻って、あなたが小夏さんに良い格好を見せる邪魔はしないから。私だってうちの理仁の結婚式の監督をしないといけないし、確かに忙しいのよねぇ」理仁の結婚式を最も重視しているのは、もちろん彼自身だ。別におばあさんがやきもきする必要はないが、彼女はやはり心配だった。どうであれ、一番目の孫の結婚式なのだから、それはもう盛大に執り行われなければ。理仁は将来、結城家の当主となる。唯花はもちろん女主人となるのだから、二人の結婚式は前代未聞の厳かで盛大なものであるべきだ。そうすれば、理仁以下の孫たちの結婚式はそれを超えられなくなるはず。特に、おばあさんは、将来の結城家の女主人となる唯花を支えるために、あえてそうしているのだ。「降参しないというのなら、このままあなた達にくっついていくからね。どうせ私はもうこんな年だし、このお顔の皮はとっても分厚くなってるのよ。お邪魔虫にな
Read more

第2346話

小夏は弦よりも自分の生徒のことを理解している。弦がそう提案したので、小夏は特に意見はなく、彼が指差した大きな木のほうへ歩いていった。その木の下には、ハンモックチェアが設置してあった。「さっき至る所に、こういうブランコがあるのを見ました」そこに座ると、小夏が口を開いた。「そうですね、たくさんありますよ。特に山の裏手のほうにたくさん設置されています。結城社長の奥様がとてもお好きなようです。社長は奥様を溺愛していますからね、お二人が暮らす家には、たくさん作っていると聞いています。そうすれば、奥様がどの屋敷に行っても、こうやって座って遊ぶことができますからね」小夏は羨ましそうに言った。「奥様は幸せですね。本当に羨ましいです」本当にどこへ行っても結城社長の妻を溺愛する物語ばかりだ。「ところで、おばあ様は?」結城おばあさんの姿が見当たらないことに気づき、小夏は気になって尋ねた。さっきまで一緒にいたはずだ。「おばあ様は結城家の要ですからね。結城家の一大イベントでは彼女がどっしりと構えて指揮を執るんです。結城社長の結婚式が間近に迫っているので、おばあ様はその事でお忙しいんですよ。花京院さんは、あと数日長くこちらに滞在できませんか?」弦が突然そう尋ねた。小夏は言った。「これ以上長くは難しいかと……子供たちも帰って学校に行かないといけないですしね。うちの道場で武術の稽古をしていますが、学校の授業のほうが大事です。だから子供たちの学業に影響を出してはいけないんです」そう言い終わると、彼女は弦に尋ねた。「何かご用でしたか?」弦は頷いた。「さっき結城社長の結婚式の話をして思い出したんです。私も彼の結婚式に招待されているんでした。参列するだけでなく、新郎の介添えも頼まれていまして、本来花京院さんと一緒に蔵峯にある道場にお訪ねするつもりだったのに。まずはその結婚式に参加して、その後じゃないと蔵峯のほうには行けません。だから、花京院さんに、あと数日いてもらって、一緒に結婚式に参加してから、そちらに行ければいいなと思って」それを聞き、小夏は心が動いた。しかし、彼女はこう言った。「でも、やっぱり難しいですね。それに、私は結城家の方とはまったくお知り合いでもないから、結城社長も赤の他人の私を結婚式に招いてくれるはずもないです
Read more

第2347話

弦は笑って言った。「仕事の事なら心配していません。会社には仕事を任せられる管理チームがありますからね。でも、結城社長の結婚式で新郎のサポートをするのは、やっぱり今更断われませんから」「それはもちろんですよ、一体どれだけの人が結城社長の結婚式をこの目で見たいと思っていると思いますか?九条さんは、しかもそのサポートができるんですから、これはもう本当に幸運としか言いようがありません」実際、小夏も理仁と唯花の結婚式を直に見てみたかった。でも、彼女はあのラブラブ夫婦とは全く接点がないので、会いたいと思っても会うことすらできない。弦が構わず彼女を連れて行くと言ってくれても、行くことはできない。彼女はこのような上流社会の人たちとは知り合いの一人もいないのだから。それに、彼女は本当に子供たちの学校があるから、連れて帰らなけらばならない。弦は笑うだけで、小夏の言葉に反論はしなかった。結城お「邪魔虫」さんがいなくなってから、弦は小夏と一日一緒に仲を深めることに成功した。二人の間にあったよそよそしさは完全に消えてしまった。それから二日、弦は相変わらず小夏たち一行の無料ガイドを務め、彼女たちを連れてあちこち遊びまわり、星城グルメを楽しんだ。そして、小夏は子供たちを連れて星城を去っていった。楽しい日々はあっという間に過ぎてしまった。そしてまた同じくあっという間に理仁と唯花の挙式の日が近づいていった。二人が入籍して一年、結婚記念日も過ぎ、理仁は愛する妻から心のこもったプレゼントを受け取った。彼も彼女にたくさんのプレゼントを贈った。それに、毎年結婚記念日には盛大にお祝いしようと理仁は唯花に約束した。結婚式まであと三日になり、唯花は姉の家で過ごした。姉の家こそ、彼女にとって実家と同じだからだ。この時、唯月は南山住宅地のマンションから引っ越し、理仁たちがプレゼントしてくれていた久之宮の家に、陽と一緒に引っ越してしまった。結婚式当日姉の家から式場に行きたいという唯花の願いを叶えるためと、あの南山のマンションで目をつけられてしまった酔っ払いを避けるためだ。しかし、唯月は家をもらうのではなく、理仁から買い取るという約束をしたのだ。価格は秘密だ。唯花はもちろん喜んで姉のプライドを尊重した。しかし、姉にあまり生活上の経済的プレッシャーをか
Read more

第2348話

「神崎様、いらっしゃったのですね」姫華が来たのを見て、清水が笑顔で挨拶をした。「清水さん、どうしてあなたがここに?」知り合いの清水が出てきたので、姫華も笑みを浮かべた。「若奥様がお姉様のお宅に戻られたので、若旦那様から私ども数名で彼女のお世話をするようにと言われて来たのです。私だけでなく、七瀬もいますよ」彼らは唯花と唯月がよく知る二人だから、理仁が来るように手配したのだ。清水と七瀬には唯月の家で働いてもらい、給料は今まで通り理仁が持ち、さらに増やすと約束していた。理仁の周りにいるボディーガードと使用人の中で、唯月と陽が馴染み深いのは清水と七瀬だ。だから理仁はこのように手配した。唯月と陽の親子が穏やかな日々を送っていれば、理仁の妻である唯花も安心できる。姫華は笑って言った。「結城社長らしいですね。彼は唯花に関わることなら本当に、細かいところまで気を配りますよね」以前、姫華は理仁のことをとても冷たく無情な人間だと感じていた。彼女が長年片思いしても、その恋は実らなかった。堂々と告白して追いかけ始めても、理仁が振り向いてくれることはなかった。だから、姫華は理仁は生まれつき優しさなど知らず、このように冷たい人間で、誰かの世話をすることはないのだと思い込んでいた。それが後になって、彼は優しさを知らないわけでも、誰かの世話をしないわけでもなく、ただその優しさを自分に与えようとしなかっただけだと姫華は知ったのだ。理仁が深く愛した女性が姫華の従妹だったから、彼女はまだ許せた。こんな優秀な男性を他の知りもしない女にとられるのは、どうも納得いかない。清水は微笑んだ。「若奥様は、若旦那様が目に入れても痛くないほどに可愛がっておいでですからね」清水は門を開き、姫華に言った。「さあ、お車をこちらに」「ええ、中に駐車してしまいます。すぐには帰らないから。後で唯花と一緒に昼食をとろうと思ってて。あ、そうだ、結城社長もお昼に来る予定ですか?私、お邪魔になってしまうかも」清水は答えた。「若旦那様は最近とてもお忙しくて、夜になんとか時間を作って若奥様に会いに来られるくらいですよ」結婚式の準備で、理仁はかなり忙しい。しかし、いくら忙しくても、毎日必ず時間を作って、唯花のいる義姉の家までやって来る。「私はてっきり、彼
Read more

第2349話

「子供はみんなそんなものですよ」清水は笑って言った。「もう少し大きくなれば良くなります。陽ちゃんは幼稚園に行きたくないと言いますが、泣き喚くことはありません。せいぜい朝の支度をわざとゆっくりして、グズグズする程度ですね。唯月さんのように穏やかな性格の方でも、このようにされては我慢できないみたいで。陽ちゃんに、ダラダラ支度するくせに、遅刻するのは恥ずかしいから気にするくせにと唯月さんはおっしゃるんです。たまに、彼女も頭に来て、わざと陽ちゃんを残して、彼の鞄だけ持って出かけようとするんです。その時の彼の慌てようといったら、もう、泣き出してしまうくらいで」姫華はそれを聞いて言った。「……やっぱり、子供は見ているだけのほうが良さそうですね」姫華は陽のことをとても聞き分けの良いお利口さんだと思っている。それは実は表面的なもので、本気で自分が毎日面倒を見ることになれば、きっと発狂してしまうに違いない。清水は大きな声で笑った。「まったくその通りですね。よその子供がとても可愛くて、自分もあんな可愛い子がたくさん欲しいなんて思うものですが、実際、自分の子供が生まれて世話をすることになると、またお腹に戻ってほしくなりますよ」姫華は将来善と結婚して子供が生まれたら、子供を善に預けて専業主夫になってもらい、自分は子育てしている様子を温かく見守ろうと思った。子供と一緒に遊ぶが、世話や教育には口を挟まず、善に任せてしまおう。でも、それではちょっと無責任か。「若奥様、神崎様がいらっしゃいましたよ」清水は家に入ると、唯花を呼んだ。リビングで暇そうにテレビを見ていた唯花は、清水の声がしたほうを見てみると、本当に姫華の姿があったので、瞬時に微笑み立ち上がって迎えに出てきた。そして口では姫華に文句をもらした。「ぜんぜん会いに来てくれないんだから、暇で暇で死にそうだったのよ。この薄情者」結婚式の準備は唯花が心配する必要はなかった。彼女が手伝いたいと思っても、できなかった。それに、会社で働くこともできないし、本屋に行けば明凛から早く帰って結婚式までゆっくり休めと、家に帰されてしまったのだ。忙しい日々に慣れていた彼女が突然ピタリと何もすることがなくなってしまい、どうもそわそわして落ち着かなくなっていた。「ぜんぜんってことはないでしょ?ここ二日また
Read more

第2350話

唯花は笑った。「あれは、九条さんがちょっと特殊な状況だからね。誰も耐えられないわ」「九条さんには運命の人が見つかったって」姫華が言った。「知ってるわよ。数日前、九条さんからうちの旦那に電話がかかってきて、琴ヶ丘に花京院さんを連れて遊びに行きたいんだって言ってきたの。理仁がオッケー出してたわ。おばあちゃんが、花京院さんは文武両道のまさにお手本みたいだって言ってたよ。九条さんとはとてもお似合いだって。それに、花京院さんのような女性こそ、九条家の女主人の座に相応しいとか。おばあちゃんがね、花京院さんの武術の腕はかなりのものだって言ってた。理仁でも敵わないんじゃないかだって。彼女は小さい頃からずっと訓練を続けているし、そもそも実家が道場を開いている本物の武道一家だもの。途中から始めた人が、そんな彼女に敵うわけなんてないわ。私だって小さい頃から空手をやってたわけじゃないし」姫華は笑った。「結城社長があなたがこんなふうに彼のことを言ってるなんて知ったら、きっと不機嫌になるわよ。彼って昔から自信家で、プライドも高いでしょ。この世で最も優れた男は自分だって思ってるような人よ。それをそんなふうに言ったら、彼はきっと納得しないわ」「納得できないなら、花京院さんに挑戦してみればいいのよ。彼女は絶対にこてんぱんに理仁を懲らしめちゃうわよ」姫華は言った。「……唯花、なんだか、結城社長と花京院さんを闘わせてみたいみたいな言い方ね?あなた、妊娠中じゃなかったら、彼女に挑戦してみたい、だなんて考えてるんじゃないでしょうね?」「そんなことないわ」唯花は心の中ではそう思っているが、口では認めなかった。「私は自分の能力をよく理解しているもの、私みたいにちょっと空手をかじっただけの人間は、まあ、ああいうチンピラたちなら余裕だけど。それも相手が油断して、その不意を突かないと勝てないんだ。本気で真正面から戦えば勝てるわけないわよ」彼女が不良たちに囲まれた時、唯花のほうが先手をとり、相手の不意を突いて、こてんぱんにやっつけてしまうことができたのだ。そうでなければ、数の多さで負けてしまっていただろう。「姫華、あなたと桐生さんの婚約や結婚の予定はもう決まってるの?」唯花は話題を姫華と善に戻した。姫華こそ、彼女が最も関心のある人の一人なのだから。「まずは
Read more
PREV
1
...
233234235236237
...
245
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status