All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2351 - Chapter 2360

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第2351話

唯花は姫華を説得することもできないし、姫華の言葉にとても感動していた。まだ彼女たちが従姉妹同士だということが判明する前から、姫華は唯花にとても良くしてくれていた。姫華は心を開いて付き合うに値する人だ。彼女は相手を本当の友人だと認めると、誠心誠意尽くしてくれる。ただ、姫華の目にかない、彼女が心から親友になりたいと思える人間はそうそういない。姫華の昔からいる親友と、唯花、それに明凛くらいだ。「それならしっかりと桐生さんと相談してよ。彼の意見だってちゃんと聞いておかないと。彼がもし消極的なら、私のために喧嘩なんてしないでよね、姫華、わかった?」唯花は姫華の手をとり、言った。「私はあなたには幸せに楽しく生きてもらいたいのよ。ただ私のせいで彼との結婚に何か影響するのは嫌だわ」姫華は唯花の手をぎゅっと握り、笑って言った。「唯花、心配しないで。それはわかってるから。善君は私の決定を理解してくれると思うの。それに、彼とはまず婚約して、結婚式は焦らずやろうって、そもそも話していたんだし」善は焦ってはいたが、それを口に出していなかった。彼は姫華の意見を尊重したいのだ。星城で善だけが姫華のことを必死に追いかけていた。他の男は、ふつう姫華に恋心を抱いたりしない。それは、姫華がわがままな性格をしているから、結婚すると厄介だと思っているからだ。それに、彼らの身分が神崎家とは釣り合わないことも原因だ。星城の上流社会で、姫華が神崎家ではかなり溺愛されて育っていることを知らない人はいない。それに、母親である詩乃はかなり手強い相手だ。人によっては、詩乃と親戚関係になれば、うまく関係を持てず、両家の関係が悪化してしまうのでは、と考える人もいる。それに、昔、姫華は結城理仁のことが好きだった。それは星城人は誰もが知っている。彼らは誰も理仁には勝てない。そもそも姫華のお目にかなうわけはないと思っているのだ。もし、詩乃が邪魔をしていなければ、善も姫華が誰かに横取りされる心配をする必要はなかった。善は姫華が結婚したい時に、自ら合わせることができる。母親から反対され、また九条弦が出現したことで、善は焦り始めた。彼は姫華と正式に結婚しなければ、安心することができない。「唯花、私がいつ結婚するかは今はおいておきましょ。今日私が来たのは、善君との
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第2352話

善が本気で恋敵だと警戒していた相手は、ただ白鳥一颯だけだ。弦はただ演技をしているだけだと善もわかっていた。しかもあの演技は誰の目にも明らかだった。「若奥様」この時、清水がやって来て、笑顔で唯花に伝えた。「桐生夫人と、桐生家の若奥様がお子様を連れておいでです」蒼真一家は、みんな琴ヶ丘に泊まっている。理仁夫妻自ら桐生家一家を招待した。結婚式の日が近づいて、唯花は結婚式当日は姉に見送られて家を出たいと思い、姉のいる家に一度戻っている。姉がいる家が、唯花にとっては実家代わりだからだ。以前、唯月がまだ佐々木俊介と婚姻関係にあった時であれば、唯花もあの二人の家から結婚式に行こうとは考えなかったはずだ。しかし、今は状況が違う。姉はもう離婚し、自分の家を持っている。だからここは佐々木家ではなく、内海家なのだ。内海家は唯月が大黒柱であり、姉の言うことがすべて。姉のこの家こそが、唯花にとっての実家だ。「中にお通ししてください」唯花が暫定的に唯月の家にいるので、遥とその姑は子供二人を連れて一緒にここに訪問してきた。遥にとって星城はあまり馴染みがない。彼女はただ唯花と知り合いなだけだ。姫華とは将来的に親戚関係になるが、二人は今まだ交流したことがほとんどない。唯花のところに来る以外、遥は他に誰も誘えるような人が星城にはいないのだ。蒼真は違う。彼はアバンダントグループを率いるトップであり、会社は星城でもビジネスを展開している。彼が星城に来れば、星城のビジネス界における大物と仲良く食事をしたり商談したりすることがよくある。遥は子供たちのことが気になるので、夫の傍で彼の知り合いと一緒に過ごすことはしなかった。唯花と姫華が一緒に外に出ると、遥が悠を、姑の菫が芽衣を抱っこして来るのが見えた。孫ができた菫は、いつでも孫娘の芽衣のほうを抱くほど、女の子のほうを贔屓している。菫は、芽衣はきっと彼ら桐生家で唯一の孫娘になるだろうと口癖のように言っている。この世でたった一人の孫娘なのだから、もちろんとても可愛がっているのだ。男の子の孫はたくさんいれば、別に珍しいものでもなんでもないが、実は、菫にはまだ男の子の孫自体も一人しかいない。悠はなぜか、母親に抱かれていても泣いてばかりだ。そして芽衣はそんな片割れの兄をじっと見つめてい
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第2353話

唯花は可笑しくなって言った。「芽衣ちゃんはきっと無意識よ、だってわざとお兄ちゃんを叩くわけないもの」遥も笑った。「この子ったらよく泣くわ、本当に。依茉さんところの泰晟君といい勝負よ。この二人はうちでは泣き虫二人組ね」泰晟が同じく泣いてばかりいることは唯花も知っていた。依茉は息子に泣かれるのが一番嫌いだ。泰晟が泣き出すと、彼女は逃げて隠れたくなる。だから彼女は咲の目を診察するために星城に来てから、ずっと音濱岳に帰っていない。彼女は唯花と理仁の結婚式に参加してから帰ると言っている。どのみち、彼女の師匠であるあの名医が息子の面倒を見てくれている。彼が子供の世話をするほうが、依茉よりも経験があり上手だ。そもそも彼が依茉を小さい頃から育ててきた。彼女が瀧という門弟を受け入れてからも、名医が世話係兼、医学の教育も行っている。彼女は師匠に世話を任せ、たまに瀧に試験でも出して、最近ちゃんと勉強しているのかを見るくらいだった。瀧は陽とほぼ同じ年齢だが、彼は記憶力が良く、物事を理解する能力が陽と比べるとかなり高い。そうでなければ、依茉が気に入り、自分の教え子にするわけがない。依茉は陽に会ったことがあるが、陽はビジネス界で活躍するのが合っていると唯花に言った。理仁という親戚のおじさんがいれば、陽の未来の可能性は無限大に広がっていると。「子供は小さい頃はみんなこんな感じで泣いてばかりでしょう。昔、陽ちゃんがまだまだ赤ちゃんだった頃も同じように一日中泣いてばかりいたよ」「あの、ちょっと芽衣ちゃんを抱かせてもらってもいいですか?」この時、姫華がのちに義母になる菫に探るように尋ねた。菫は快く、孫娘を姫華に抱かせてあげて、笑って言った。「芽衣はとてもおとなしくてお利口さんなの」姫華はこんなに小さな赤ちゃんを抱いたことはほぼないので、緊張して動けなかった。そしてすぐに、芽衣を菫に返し、笑った。「おば様、やっぱりお返しします。私はここまで小さな赤ちゃんを抱っこしたことがないので、落とすのが怖くて動けません」菫は笑って言った。「大丈夫よ、何度か抱っこしてたら慣れていくものだから」唯花は桐生家の二人に中に入ってもらった。あの泣き虫悠は、部屋に入ってようやく泣き止んだ。「唯月さんはいらっしゃらないの?」遥が尋ねた。「今出てる
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第2354話

この時、清水が遥と菫にお茶を入れて、果物とお菓子を持ってやって来た。姫華はソファに座ると、やっと子供を抱っこできると思い、再び菫から芽衣をもらって抱き上げた。芽衣は黒いキラキラした大きな瞳で姫華をじっと見つめ、すぐにニコニコと笑いだした。「芽衣ちゃんが私に笑ってくれたわ」芽衣が自分に笑いかけてくれたので、姫華はとても嬉しくなり、思わず芽衣の小さな顔に何度もキスをしてしまった。菫はもうすぐ嫁になる姫華のことをとても気に入っていた。もちろん長男の嫁である遥のこともとても好きだが、姫華のほうが菫と性格が似ていて、似た者同士気が合うのだ。菫は笑って言った。「芽衣はあまり笑わないのよ。どうやら、善のお嫁さんのことがとても気に入ったみたいね」遥も言った。「芽衣の性格は絶対父親似よ。今はまだ数カ月だからはっきりしないけど、あと何年かしたらわかるわ。彼女は普段あまり泣かないし、おとなしいけど、あまり笑うこともないの」ただ数回程度しか会ったことのない人に対して、芽衣は笑顔を見せることはなかった。姫華は善の愛する人だ。この日まで姫華は二回しか芽衣に会ったことはないが、笑顔を見せてくれたので、確かにとても気に入られているようだ。「父親似でもいいじゃないの。お父さんはとても優秀な人なんだから」唯花が身を乗り出して芽衣をからかい、そして菫に笑いかけた。「お二人が双子ちゃんを連れてきてくれたので、結城家のおばあ様もきっと喜びます」「そうですね。おばあ様は芽衣を抱っこすると離そうとしなかったわ。私がこの子の祖母じゃなかったら、きっと抱っこする機会はなかったはずですよ」唯花は自分のお腹を触った。「この子が男の子か女の子かわからないですけど、みんな女の子を期待してるんです。でも、私の勘だと、この子はきっと理仁ジュニアですね」結城家はみんな次の世代ができることを期待していた。あの占い師の話だと、彼女と理仁の間には息子も娘も生まれるという。「男の子でも女の子でもいいですよ」菫は人生の先輩として唯花に言った。「息子でも娘でも、きちんと教育して立派な人に育て上げれば、親としてこれ以上にない幸せですからね。私だって娘は一人もいないですよ。二人とも息子。だから私も残念に思ったことはありますけど、可愛いお嫁さんがいるから。お嫁さんのことは自分
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第2355話

菫は穏やかな眼差しで姫華を見つめ、笑顔で言った。「私に姫華さんと遥さん、二人の娘ができて、本当に幸せですよ」姫華はそれを聞いて、むず痒くなった。まだ善とは結婚していないが、今の姫華にとって、これから何があっても、彼以外の男はもうありえないほどだった。みんな楽しそうに笑っていた。少しして、善もここにやって来た。愛する女性と、母親に義姉がここにいるので、もちろん彼は駆けつけてきた。善が来たと聞いて、姫華はつぶやいた。「まだ仕事の時間なのに、善君ったらなんで来たのよ」またさぼりか。遥は笑ってからかった。「姫華さんが唯花さんのところにいて、彼も落ち着いて仕事はできませんよ。会社にいても心はきっとあなたのところに飛んでいってますからね。それならいっそ来てしまったほうが、余計なことを考えずに済むから」「また私をからかっていますね」唯花は笑って言った。「私は桐生さんとはもう顔見知りで長い付き合いだし、お出迎えをする必要はないだろうから、姫華、あなたが行ってきて」姫華は立ち上がった。「私はあなたの従姉だから、代わりにお客様のお出迎えをしたって構わないわよ」明らかにすぐにでも彼を出迎えに行きたくてソワソワしていたくせに、正当な理由でもつけようとするので、みんな可笑しくなって笑いだした。大人が何に笑っているのかわからないが、双子まで一緒に笑いだした。すると、大人たちの意識は、また笑っているこの兄妹の二人に集中した。姫華が外に出ると、善が大きな花束を抱えて車から降りてきたところだった。姫華の姿を見ると、善は目をキラキラと輝かせ、あのイケメン顔をデレデレさせながら笑った。彼が手に持っている花束よりも綺麗な笑みだった。「善君ったら、まだお仕事中でしょ、どうしてこんな時間に来たの?」姫華は彼のほうへ歩いていきながら言った。「まだ十時を過ぎたところよ」昼休憩まであと二時間ほどある。善の仕事は忙しく、十二時の昼休憩に入った時でも忙しくしていることがある。善は笑って言った。「今日は数日の休みに入る前にいろいろと処理や手配しに行っただけです。結城社長の結婚式が終わってから、会社に戻っても大丈夫ですから」両親と兄、その嫁まで来ているから、彼はできるだけ両親の傍にいたいと思っていた。彼は社会人になってから、すぐに兄
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第2356話

「ありがと」姫華は花束を受け取ってお礼を言うと、すぐにこう言った。「唯花のところにいるって知ってるくせに、花束まで買ってきたの?持って中に入るのはちょっと恥ずかしいじゃないの」「なんで恥ずかしいんですか。僕たちのことなら、唯花さんは見守ってくれてきたでしょう。僕たちがこんなに仲良いのを見れば、すごく喜んでくれるに決まっています。笑ったりしないでしょ」善は彼女の手を繋ぎ、肩を並べて家に入っていった。「そりゃあね、唯花は私が幸せになるのをずっと望んでくれていたんだし。あの子ったら、自分の存在が私と結城社長の邪魔をしちゃったみたいに思ってるって、私もわかってるのよ。まるで彼女が私の幸せを奪っていったみたいに感じてるの。言わなくたって、なんとなくわかるわ」姫華は言った。「唯花は考えすぎなのよ。今まで一度だってあの子のことを恨んだことなんてないよ。彼女を責めたことだってないのに。だって私は結城社長とは縁がなかったもの。彼は一度だって私のことを好きだったこともないし、曖昧な態度をとられたことだってなかった。実際の話、もし私が唯花の従姉でなかったら、彼は私のことをちらりとも見ることはなかったでしょうね」善は理解を示した。「彼女がそのように思うのは普通のことですよ。これから僕たち二人の幸せそうな姿を見れば、彼女もその心の引っかかりが取れて、自分を責めることはなくなりますよ」唯花と理仁がスピード結婚する前から、姫華は理仁を追いかけていた。だからこそ、唯花はどうしても姫華から幸せを奪ってしまったような感覚にとらわれているのだ。唯花の目には、理仁と姫華は家柄が釣り合った美男美女のお似合いのカップルだった。姫華も唯花に何度も本音を話して、唯花のことを一切責めていないと伝えたから、唯花は表面上は納得したように見えた。しかし、心の中ではやはり姫華が幸せになってくれないと、どうもスッキリせずに、いつまでも自分を責め続けていた。「でも、僕としては結城社長が姫華さんのことを好きにならなくて良かったですけどね。そうじゃなかったら、僕に出番が回ってこなかったので。姫華さん、周りがどうあなたのことを見ようとも、僕の中であなたは永遠に素敵な女性です。あなたに好きになってもらえて、一緒に残りの人生を歩んでいけることになって、本当に幸せです」そう言うと、善は姫
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第2357話

「僕の親戚だって飛行機で来ればあっという間に着きますから、問題ないです」善が結婚するというだけで、家族親戚全員が興奮している。だから婚約パーティーをどちらの都市で行うかなど、小さな問題だった。最も大切なのは、幸せで、楽しいこと。「うちが良い日を選んで、そのリストを送ってきます。それをあなたのご両親に見てもらって、問題がなければ、その日に決めましょう。僕たちは星城でパーティーをします。これはもう決定です」そして善はまた話し始めた。「姫華さん、これは僕たちの結婚です。幸せかどうかなんて僕たち自身が知っていることだから、周りが言うことなんて気にしちゃダメですよ。姫華さんも昔から噂なんか気にしなかったでしょう」「私が気にしているのはあなたのことだけよ、それにとても愛してるわ。だから誰かにあなたが何か言われるのが気になるの。私がどう言われてもどうってことないわよ。私のこの顔の皮は超分厚いから、誰も通さない、鉄壁よ。崩れたりしないもの」善は笑い、彼女をぎゅっと懐に抱きしめた。その時あの花束が押さえつけられないように気をつけていた。彼は言った。「その言葉を聞いたら、もし針の山や火の海に放り出されたって、平気な気がします。誰かが僕は婿養子だと言ってきても、それも望むところですよ。だって、おば様は二人息子さんがいるから、これ以上男はいらないって、婿養子もお断りだと言ったでしょう?」詩乃は将来親戚となる桐生家に会った後、娘が幸せならそれでいいと、完全に気持ちを変化させてしまった。桐生家は絶対に彼女を失望させたりしない。だから、桐生家のほうから善が神崎家の婿養子になってもいいと態度を示した瞬間、詩乃は善にそんなことをさせたくなくなった。姫華は結婚して、桐生家の善の妻になる。しかし、彼女と善の仕事の関係で、結婚した後、夫婦は星城で長期的に生活することになる。善も早々に神崎家の隣の家を購入した。夫婦二人は一分で姫華の実家に帰って食事をすることもできるから、とても便利だ。姫華は軽く善を押しのけて笑って言った。「お花、つぶさないでね」「ちゃんとつぶさないように花は避けて力加減も注意しましたよ。一時間おきに、花束をプレゼントしたっていいんですからね」「そんなにたくさんもらってどうするのよ。食べることもできないのに、数日置いておいたら枯
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第2358話

当初、東夫人は極度に内海社長と東社長が一緒になることに反対していたらしい。内海社長はバツ一で、子供を持っているからだ。そして東社長が交通事故に遭ってから、東夫人は態度をガラリと変えて、内海社長に東社長を受け入れてほしいと言い始めたそうだ。あの二人は今、付き合っているわけではないが、星城ではあの二人をもうカップルとしてみんな見ている。誰も東社長から彼女を奪おうなどという度胸のある者はいない。内海社長の元夫の家族が息子と彼女が復縁して再婚することをずっと望んでいるらしいが、内海社長はもちろん、一度捨てたものを拾うなどということはしないのだ。「私は谷口敦(たにぐち あつし)と言います」この男、実はあの南山住宅地の失恋で毎日酒に浸っていた男だ。酔ってはあちこちで寝てしまい、若い女性を見ると、じろじろと見つめてきたあいつだ。彼は唯月を見てから、数日ずっと観察していた。そして唯月が南山から引っ越してしまってから、あのマンションで二度と会うことはなくなってしまった。彼はもう酒に溺れるのはやめて、もう一度自分をしっかりと立て直し、唯月を口説くことに決めた。今日、彼はわざわざ新しい服を来て、髪も髭もきれいに整えてから、完全に別人になっていた。彼は花束を買い、大胆にもビストロピエナにまで追いかけてきた。唯月親子が南山住宅地に長い時間住んでいて、彼は彼女の事情を聞くのは簡単だった。それに、唯月の妹が星城一の大富豪家である結城家の若奥様であることも了解済みだ。敦は唯月から甘い汁がすすれると思ったわけではなく、単純に唯月に見惚れてしまい、好きになり追いかけ始めた。彼は唯月が離婚した子持ちであることなど気にしなかった。もし、唯月がチャンスをくれれば、陽のことも自分の子供として見るつもりだ。スタッフは再び敦が抱えている花束を見て、彼に言った。「谷口様ですね、少々お待ちください。今社長に尋ねてみます。でも、今社長はとてもお忙しいので、会えるとは限りませんよ」敦はそれに理解を示した。「大丈夫です。ここで待っています。社長が会ってくれるか聞いてみてもらってもいいですか、どうもすみません」するとスタッフは唯月のオフィスに向かった。ドアをノックし、唯月から返事があってから、スタッフはドアを開けて中に入っていった。そして二分と経たず
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第2359話

「今日は内海さんに謝罪しに来たんです。本当に、本当に申し訳ありませんでした。他にも怖がらせてしまった女性には、一人一人会って謝罪して回ります」敦は唯月を口説こうと決めたのだが、会っていきなり正直にそんな本音が言えるわけない。謝罪はただの口実で、他の女性たちのことを話題にしたのは、唯月に警戒されて謝罪を受け取ってくれないかもしれないと思ったからだ。唯月は敦に温かいお茶を入れて持ってきた。「谷口さんの謝罪は確かに受け取りました。きちんと過ちを認めて、心の傷からは立ち直ったんですね。それは良かったです。世の中には、他にも女性はたくさんいますからね」敦は笑って言った。「そうですね、他にたくさんいるのだから、振り向いてもらえない人にいつまでも固執していてはいけませんね」唯月は花束は受け取らず、言った。「谷口さんの謝罪ならもう受け取りました。この花束は結構です、どうかお持ち帰りください」敦も無理に受け取ってもらおうとせず、その手を戻して、花束をデスクの上に置いた。彼は唯月を見つめ、少しためらってから口を開いた。「内海さん、今日こうやって来たのは謝罪もそうなんですが、もう一つお願いがあって……」「なんでしょうか」唯月は願いを聞くとも、断わるとも言わずに、ただどのような用件なのかだけ尋ねた。「実は、彼女は社長の息子と一緒になってしまって、私は彼女を失っただけじゃなく、仕事まで失ってしまったんです。今は失業中で、貯金もあまりなくなってしまい、あと二か月もしたら、家賃すら払えなくなるような状況で……だから急いで仕事を見つけないといけないんですが、社長の息子からは、星城では仕事が見つからないようにしてやると言われているんです。それで今とても焦っています。まるでこれじゃホームレスみたいなものですよ、これじゃあいつに仕返しすることすらできやしない。あの二人に復讐なんかやるつもりはありません。彼女の浮気を知ってから、とてもつらくて、絶対二人に復讐してやるって思ったんです。でも、後々考えてみると、相手は金持ちで、私はただの下っ端。あんな金持ちには敵いっこないです。だからもう復讐なんて考えなくなりました。でも、あいつら私を脅して実際の行動をとってきたんです。本気で私に星城では仕事が探せなくさせてきた。もう本当に踏んだり蹴ったりで、あの日は酒を
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第2360話

敦が持ってきた花束はまだ唯月のオフィスのデスクに置かれたままだった。唯月は急いでそれを手に取り、立ち上がって、彼に返そうと思い、追いかけた。しかし、彼はとても早く、唯月が出た時には彼の姿はもうなかった。唯月はどうしようもなくなり、花束を抱えてそれをどうしたものか困ってしまった。そこへタイミング悪く、隼翔がやって来た。唯月が花束を持ってレストランの前に立っていたものだから、彼は自分に用意してくれたものだと勘違いし、ボディーガードに押されて来た時には嬉しそうに満面の笑みになっていた。「唯月さん」隼翔は彼女の名前を呼んだ。「東社長、いらっしゃい」唯月は花束を抱えたまま、入り口にある段差をおりた。隼翔は彼女に近寄り、両手を広げて花束を受け取ろうとし、言った。「今日はどうして花束なんて?俺の誕生日はもう過ぎてるんだけど」唯月は気まずそうに言った。「社長、これはあなたに用意したものではなくて、谷口さんという方が、私に謝罪しに持ってきたものなんです。でも、私は受け取らなかったんですが、彼が置いてそのまま帰ってしまって、それで入り口まで追いかけたんです。もう帰ってしまったみたいで」それを聞いて、隼翔も気まずくなり、伸ばした手を空中で止め、すぐに何事もなかったかのように花束を受け取った。「さっきの表情からして、これをどう処理しようか困っていたのだろう。俺が代わりに処理しておくよ」そう言うと、彼はボディーガードに道端にあるゴミ箱に、この谷口という男が持ってきた花束を捨てるように合図した。謝罪に、こんな大きな薔薇の花束を持って来るか?唯月のほうは余計なことは考えなかったが、隼翔のほうはいろいろ考えを巡らせて、谷口という男が何か企んでいるのだと疑った。今の唯月はまるで磁石のように、多くの男たちの視線を引き寄せてしまう。隼翔は非常に警戒していた。この東隼翔の想い人を奪おうなどと、百万年早い!彼はこんなに長い間彼女の周りを警戒し、待ち続けてきたのだ。今、少し希望が見えてきたのに、絶対にここでいきなり出てきた野郎などに奪われてたまるものか。隼翔はすぐに唯月の前に戻って来て、彼女に言った。「そいつの謝意だけ受け取っておけばいいよ。あの薔薇の花束は残しておくべきじゃない。俺が君に花束を持ってきた時に置く場所が占領され
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