交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています의 모든 챕터: 챕터 2321 - 챕터 2330

2452 챕터

第2321話

妻の和子は洋文の実家側のほうにも便宜を図っていたが、妻の威厳が邪魔をして、外ではいつも誰かの後ろからついていくような、控えめな生活を送っている。さらに、和子の前ではさらに下手に出る態度で、使用人よりも使用人らしかった。それが洋文は面白くなかった。だから、希望の全てを次期当主となる娘に託していたのだ。「若葉、母さんもさっき言ってただろう、彼女が決めた事には私も口出しはできないよ。お前が直接母さんにもう一度訴えてみろ。父さんは本当にどうすることもできないんだ。凪の言葉を聞いていただろ、私は婿養子だ。そんな男は家庭では地位なんてないんだよ」「お父さん」洋文は諦めた様子で言った。「若葉、本当にお父さんには成す術なしだ。父さんが家でどんな立場にあるかは、お前もよく知っているだろう」若葉は唇を尖らせた。父親が言っている事は事実だ。黛家において、洋文には発言権など存在しない。二階の書斎では、和子はすでにデスクの前に座り、凪が入ってくると口を開いた。「ドアを閉めて鍵をかけて」凪は言われたとおりにした。「車が故障したというのはどういう事なの?」和子は尋ねた。「誰かに何か細工をされたみたい」和子は椅子にもたれかかり、娘に尋ねた。「疑わしい人物はいる?」「お父さん、お兄さんたちとそのお嫁さんに、お母さんがずっと可愛がっている若葉以外にいないと思うわ」和子は娘の返答に全く怒る様子はなく、ただ暫くの間黙ってから、言った。「今、私の若葉に対する気持ちはとても複雑なのよ。でも、我が黛家の規則は変わらないわ」つまり、彼女が引退したら、当主の座は凪に明け渡すから安心しろという意味だ。「あの子は自分の家に帰すべきよ」和子は笑った。「凪、実の娘でない子は永遠に実の娘にはなれないの。彼女にはまだ使いどころがある。少なくとも、あなたを鍛えることができるでしょうし、今はここに留めておくわ」和子が怒って若葉にきつく当たることもあるが、結局は彼女を黛家に留めている。自分の血を引く娘が障害を乗り越えられないようであれば、当主となる資格などない。和子は凪には自分よりも優れ、能力が高く上がってほしいと望んでいた。今のところ、凪はビジネスの才能がある。何をするのも冷静沈着で、和子の理想的な後継者だ。時に、和子はもし二十年以上前
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第2322話

玲がもし、凪の婿になってくれれば、和子は夢でも思わず笑ってしまうほど喜ぶというのに。「お母さん、私と白山社長はただの友達よ。彼から直接好きになるなと釘を刺されているの。だから私を受け入れてくれることはないよ。もし、私が若葉みたいに彼に夢中になったら、傷つくのは私自身だわ。友達なら、長い関係を築くことができるでしょ」凪は玲のことを好きになりかけたことがある。それは素敵な男性に出会えば、誰もが感じるときめきだ。玲が凪に本心を話してから、彼女は玲のことをただ単純に素晴らしい人だとしか思っていない。和子はまた黙り込み、最後には頷いて言った。「白山社長は我が一族には相応しくないし、友達関係でいたほうがいいのかもしれないわね」白山玲と友人になれるなら、将来的に凪にとってもメリットになるはずだ。「それなら、あなたには好きな人はいないの?うちに戻る前には好きな人がいなかった?」和子は娘の結婚についても関心を持っている。「もし、誰か好きな人がいるなら私に言って連れてきてちょうだい。もし、人柄が良いなら私も反対はしない。家庭条件が良すぎる人は、私たち黛家の婿養子にはなってくれないでしょう。条件がひどい相手なら、結婚する時にかなりの結納を提示して、今後の付き合いは一切断ってしまうのよ。そうすれば、結婚後しつこくお金をせがまれることもないわ。お父さんの実家側はね、条件がとても悪いのよ。今になっても私が彼ら家族にかなり金銭的な支援をしているのだから。確かにうちにはお金ならいくらでもあるけど、吸血鬼みたいにいくらでも搾り取ろうとする彼らのような相手ではだめよ。つまり、あなたが今後結婚相手を選ぶ時は、良すぎても悪すぎてもだめだということ。ちょうどいい中間くらいの家柄を探さないと」凪は笑って言った。「私には今好きな人はいないよ。ただ、白山社長のことだけ素晴らしい人だって思ってる。だけど、彼とは可能性はゼロだから」「ゆっくり探せばいいわ。私たちには選択肢はそんなに多くないもの」和子はそう言うと、またため息をついた。しかしその後すぐに、彼女はデスクの引き出しから、なにやら書類の入った袋を取り出した。彼女はそれを凪の前に差し出した。「お母さん、これは一体なに?」「自分で開けてみればわかるわ」和子はこの瞬間、表情を険しくさせたので、凪は自
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第2323話

すると和子の顔色はかなり良くなった。そして言った。「誰かがしている噂なんて気にしなくていいの。彼らはね、あなたを当主にさせたくないだけ。それに若葉はなおさら当主にさせたくないと思っているの。我が黛一族の歴史は百年にも及ぶわ。お金がなくて貧しい時期も、裕福な時期も、山あり谷ありでやってきたのよ。分家は私たち本家からはこんなに長い間抑えつけられてきた。彼らはそれはもう我慢ならないでしょうね。だから彼らが当主の座を奪える隙をいつも狙っている。ああいう噂もあいつらがでっちあげたのよ」和子は自ら姉と妹を殺害したと娘に教えるわけはなかった。そしてこの件を知っている人間は全てこの世から消した。証拠も和子が全てを抹消してしまったのだ。だから、絶対に何かがばれることはないはずだろう?それに、あれからすでに数十年という時が流れた。証拠がなければ、和子がその事実を認めることはありえない。二人いる姪は当時まだ幼かった。少し記憶にあったとしても、それはきっとぼんやりとしたものであって、あの二人が見つかることはないはずだ。それに、数十年来、和子は常にあの二人の情報がないか注意していたが、全く噂一つ出てきやしない。大きな都市である星城で、姪たちが本当にそこで暮らしていたとしても、そう簡単に見つけ出せるはずもあるまい。それに、見つかったとしても恐れる必要もない。黛家からの支援を失い、二人の姪が生きていくのは困難だったはずだ。良くて一般家庭に引き取られて一般人として生きていくくらいだろう。ビジネス界での戦いに身を置いたことのない人間に、凪と覇権争いできる力などあるわけもない。それに、姪たちも今はかなりの年になっているはずだ。娘の凪はちょうど良い年齢で、それだけをとっても優位に立つことができる。「凪、私たち黛家は他の一族とは異なるわ。一族内の争いは激しい。あなたに手配した付き人以外誰も信じては駄目よ」凪は答えた。「ええ、わかってるわ、お母さん」「それならいいの。さあ、部屋に戻ってもう休みなさい。明日は新車を買ってあげるから」「ありがとう。お母さんも早く休んでね」凪はそう言うと、あの書類の袋を持ち背を向けて書斎を出た。彼女が出ていって二分と経たずに、今度は洋文がドアをノックして入ってきた。「和子さん、凪は何を持っていたんだ?
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第2324話

和子はため息をついて言った。「私たちに似てないけど、DNA鑑定は何度もして、その結果が確かに凪が私たちの娘だと言っているのよ。あの子は私たちに顔が少し似てるわ。ただ、か弱くて、性格や行動の仕方が似ていない。黛家の血が流れているというのに、どうしてあの子はあんなに弱腰なのかしら。私もどんどん年を取るし、一体いつになったら後を任せて安心して引退できるのかしら。あなたと一緒に隠居生活して孫の世話でもしていたいのに。それに息子の嫁たちも一体いつになったら孫娘を産んでくれるのかしらね。初孫はやっぱり女の子がいいわ。孫娘が生まれたら安心ね。もし凪のほうがだめなら、私がまだ十数年、二十年生きていられるうちに、孫娘を後継者として育てることができるし」妻のその言葉に、洋文は心の中でそろばんをはじいていた。娘が当主になることは、孫娘がなるよりも良いに決まっている。しかし、凪は実の両親のもとで育っていないので、親に対する情が薄い。もし、凪が将来当主となれば、父親である洋文には居場所がなくなる。しかし、孫娘が当主となれば、洋文は祖父であり、孫世代は祖父母たちを敬うだろうから、彼には明るい未来が待ち受けるだろう。ただ、黛家は代々女性が跡取りになってきたが、娘を産むのはそう簡単なことではない。彼ら夫婦は数人息子が生まれて、その後やっと娘が誕生した。前当主は運が良く、二人産んでどちらも娘だった。そしてさらに何代か上に遡ってみると、みんなすぐに娘を産んでいた。ただ、和子と洋文の二人だけが先に息子が数人生まれてしまった。だから、息子たちもすぐに女の子ができるとは限らない。夫婦二人は下におりて、母屋を出ると庭をゆったりと散歩した。その時、洋文はまたさっきの話題を持ち出した。「まだ凪が何をやらかしたのか聞いてなかったな。リビングにいた時は機嫌が良さそうだったのに、凪と話をしてから機嫌が悪くなっただろう。私がお見合いをさせようとしたことを根に持っているのか?」「それはないわ。ただ、あの子が私に黙ってこそこそと動いていたからよ。私の付き人でも有力な証拠を見つけ出すことができなかったものだから、ちょっと悶々としてるだけ」和子は、娘が真相を調べ上げ、母娘の関係にヒビが入ることを恐れている。凪は見た目では、か弱い女に見えるが、実際それはどうなのか、和
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第2325話

凪は両親が何を話しているのかは知らなかった。彼女は自分の部屋に戻ると、携帯を取り出して秀一にメッセージを送った。彼に、母親が自分が星城に行っていたことを知っているのだと伝えると、彼はすぐに返事をしてきた。【お嬢様、申し訳ございません。僕の力不足です】凪は返事をした。【母の付き人が動けば、少しくらいばれるのは不思議なことじゃないわ。だから自分を責めないでいいのよ。それにちょっとレシートが見つかって私が星城で買い物した証拠がある程度だし、結果この程度で終わったんだから、よくできているわ】そう言われても、秀一は自責の念に駆られていた。そして彼は凪に伝えた。【お嬢様、能力不足でしたので、今月の給料とボーナスはいただかなくて結構です】秀一の性格をよく理解している彼女はそれに応えた。【今月のボーナスはなしで、給料はそのままにするわ。あなただって生活があるんだし、私が養うわけにもいかないでしょう?】秀一は凪からの返信を暫くの間見つめていてから、ようやく返事をした。【しかとお受けします】秀一はもちろん凪に養ってもらいたいとは思わない。でも、彼は彼女の頼りになる存在になりたい。この世で最も彼女が安心して信頼できる男に。このような経験を得て、秀一は以前は自分を過信していたと意識した。現当主の付き人と比べると、自分はまだまだお子様だと実感した。そして夜が静かに過ぎていった。翌日、星城の瑞雲山邸。理仁はシャツを整えて、下におりてきた。「理仁兄さん」拓真がソファから立ち上がり、理仁が二階からおりてくるのを見ると、笑顔になって尋ねた。「唯花さんはまだ起きてないの?」「まだ早い。もう少し寝かせてあげよう。唯花はやっぱり眠気がかなりあるみたいだ」よく寝るのは激しく吐くよりずっとマシな反応だ。同じ妊婦といっても、明凛のほうはつわりと呼べるような症状はほぼなかった。唯花のほうは毎朝起きると激しく吐いて、胃液まで出てくることがほとんどだ。そして朝食の後にも吐くことがある。唯花は食欲はあり、食べることができる。しかし、吐く回数が増えるにつれて、彼女はそれを怖がりここ数日は食べる量をおさえていた。理仁は彼女がお腹を空かせないかとても心配だった。毎日唯花が食べる朝食は、理仁自ら作ったものだ。彼女が食べたいものを一日前に彼に
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第2326話

理仁の手料理を食べる機会はほとんどないと結城おばあさんは言っていた。おばあさんなら理仁に料理を作れと要求することができるだろうが、彼ら兄弟、従兄弟たちはそんなことが言える度胸などない。そして唯花と結婚してから、理仁はよくキッチンに立つようになった。これも彼らにとっては、唯花さまさまだった。もし、みんな琴ヶ丘に帰っている時に、唯花が何か食べたいと言えば、極力妻を満足させようと理仁はすぐにキッチンで料理の準備をする。理仁は唯花をこの世の全ての女性が憧れる存在にすると言ったから、それを有言実行しているのだ。この時、理仁はキッチンに向かった。拓真は静かに二分ほどその場に立っていて、ようやく母屋を出て、裏庭におばあさんを探しに行った。結城おばあさんは理仁の言ったとおり、裏庭にいたが、ラジオ体操ではなく、ゲートボールの練習をしていた。拓真「……」拓真は祖母がこんな朝っぱらからよく体を動かせるものだと思った。成人して社会に出るようになってから、自分の能力に頼り、かなりの金を稼いだ彼は、ある一等地に一軒家を購入した。そこは会社から近く、出勤するのに便利な所だ。そして、その家の近くに公園があり、よくご老人たちが楽しそうにゲートボールをしているのを見かける。結城おばあさんもそうだが、ああやって公園でよく運動しているご老人たちは本当に元気だ。その地域は管理がとてもしっかりされていて、とても暮らしやすい場所だ。そして拓真はこの時、最も敬愛する祖母が一人でゲートボールの練習をしている様子を見守っていた。この時、おばあさんはかなり集中しているようだった。すると人の気配に気づいたおばあさんは、すぐに動きを止めた。振り返るとそこに拓真の姿があった。「拓真じゃないの、こんなに朝早くおばあちゃんに会いに来たの?」拓真が現れたことを、おばあさんは全く不思議がっていない様子だった。拓真は彼女のほうへ笑顔で近づいていった。「ちょっと会いたくなって、早い時間に来ちゃった。ばあちゃん、なんでまた急にゲートボールの練習なんてしてるんだ?」「ちょっとこの間、公園を通りがかった時に、みなさんがゲートボールしているのを見てね、裏庭でちょっと私もやってみようかと思ったのよ。体も鍛えられるし、理仁の家はとっても広いから」おばあさんはそう話し
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第2327話

拓真は顔を引きつらせた。結城おばあさんは絵を見た後、それを拓真に返した。「ばあちゃん」おばあさんは彼が何か言おうとしたのを手をあげて止めさせ、言った。「これはあなたが見た夢でしょう。何か疑問があるのなら、一体どういうことなのか、その原因は自分でつきとめなくちゃ。私に聞いてどうなるっていうの?私は別に神様なんかじゃないんだから、何もわからないよ」拓真は苦しげな表情で言った。「だけど、ばあちゃんが結婚相手の女性の写真はもうくれてるでしょ。俺はいつだって彼女に会いに行けるけどさ、その人と夢の中に出てくる女性は別人だ。結城家の男たる者、離婚はしない、だろう?それに外で愛人なんて絶対作らない。俺が一族初の妻に不義をはたらいた男になんてなりたくないよ」おばあさんはやはり自分には関係ないといった態度で言った。「言ったでしょ、これはあなた自身の問題なんだから、自分で原因をつきとめなさいって。そんな夢を見るのはきっと私が結婚相手の女性の候補を伝えたからでしょ。じゃ、まずは彼女に会いに行ってみなさいよ」「ばあちゃん!」拓真はおばあさんの隣に座り、甘えるように彼女の腕を組んだ。「おばあちゃん、僕のことが可哀想じゃないの?いつも『結城家四番目の坊ちゃん』ことこの俺、拓真のことが一番可愛いって言ってたじゃないか。そんな孫を結城家初、恥さらし者なんかにしていいの?」「それはあなたの聞き間違いじゃないかしらね。私が一番好きな孫はずっと『一番目の坊ちゃん』こと理仁ちゃんよ。彼こそ私が目に入れても痛くないほど可愛がっている孫なの。あなた達はねぇ、理仁に勝ちたいと思っても百年早いわ」「いや、確かにおばあちゃんはそう言っていたよ。きっと忘れてるだけだって、ね?おばあちゃん」いくら拓真が彼女に甘えても無駄で、彼はまた可哀想な顔をしてみせた。「おばあちゃん、僕、可哀想でしょう?もし、将来僕があんなモラルに反するようなことをしたら、母さんやおばさん達から許してもらえないよ」おばあさんは答えた。「安心しなさい、おばあちゃんはじっと座ってただ見ているだけってことは絶対にないから」「母さんから殴る蹴るの暴行を受けても、おばあちゃんが助けてくれる?」おばあさんは真面目に言った。「だから、座ってじっと見てることはないと言ったでしょ。そもそも、その現場は大体避け
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第2328話

結城おばあさんは拓真の言葉などものともせずに言った。「拓真、奏汰にでも聞きに行ったらどう?彼を参考にしてみなさい」拓真は言った。「……ばあちゃん、俺は本当に逃げたいがためにこんなこと言ってるんじゃないんだって。ばあちゃんが俺たちのために心から懸命に考えてくれてることはよくわかってる。逃げ出せるわけないじゃんか。俺は本当にここ最近ずっと夢の中でさっきの絵の女性と関わってるんだから」彼は自分が言っている事が真実だと、神に誓ってもいい。本当に夢を見たのだ。それに、おばあさんから見逃してもらいたいというのも本当だ。「同じことを言うけど、私は候補探しをする時には、かなり時間をかけて調査しているの。彼女はあなたにぴったりだから、彼女に決めたの。一度だって本人に会っていないし、交流したこともないのに、どうして自分には合わないと思うのよ?それならこうしましょう。もし、あなたがその夢の中で出会った女性を見つけ出せたら、私が決めた候補を諦めてもいいわ。そうすればおばあちゃんも文句言わないから」拓真は言った。「……この広い世界で、どこから探せって言うんだよ?」彼は、この「夢の件」を利用して、おばあさんの要求を退ける魂胆だった。そうすれば彼はまだ自由でいられ、結婚したいと思ったら結婚し、結婚しないなら一生独身でいる気だった。結城家には一族が多く、拓真が後継者になるわけでもない。彼一人結婚しなくても、残り八人が結婚して子供を産めば、結城家が途絶えることはないのだ。「九条弦さんも広いこの世の中から花京院さんを見つけ出せたのよ。彼はあなた達よりも条件的にもっと厳しかったでしょ。巡り合わせの縁さえあれば、あなた達は自然と相手に出会える。もし縁がなければ、彼女が目の前にいたってあなたは気づかないでしょうね」拓真はまたまた言葉を失った。そして暫くしてから、彼はぶつくさと言い出した。「九条さんにはあの占い師の先生がついていたじゃないか。俺にはないぞ」「そのほうが挑戦のし甲斐があるじゃない。事前に知ってちゃ、ドキドキ感もわくわく感も生まれないわよ?」すると拓真は口をとがらせて、黙ってしまった。どうやらおばあさんは彼を自由に泳がせる気はないらしい。なにがなんでも彼女が決めた目標の女性を追い求めろというわけだ。「奏汰のほうはもうすぐ婚約するでしょ
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第2329話

暫くして、拓真は言った。「ばあちゃん、お腹空いてない?そろそろ家に戻って朝ごはんにしようよ。理仁兄さんが作ってるんだよ。まったく奥さんには甘いなぁ。俺たちはなかなか彼が作った料理を味わう機会がないってのに、唯花さんは毎日食べられるんだもん」拓真は口を開けば唯花を羨ましがっている。彼は理仁が妻に本当に身を削って尽くしていると思っている。結城おばあさんは拓真に体を支えられながら立ち上がり、さっき使っていたゲートボールの道具を家に持って行けと目配せした。そしてこう言った。「理仁と唯花さんがとっても仲睦まじい夫婦だって羨ましいんでしょ?あなただって、周りから羨ましがられる対象になれるんだから頑張りなさい」拓真はおばあさんのゲートボール用品を抱え、彼女と一緒に屋敷に戻っていった。「俺はまだばあちゃんが選んだ女性本人には会ってないんだから、彼女と合うかどうかなんてわからないだろ。それに、夢の中では俺は別の女性とずっと一緒にいるんだぞ。今はまだ一体自分が誰と結婚するのかわかんないよ。ばあちゃんの意思に従ってその相手と結婚したら、もしかすると裏切ることになるかもしれないぞ。夢の中では俺と彼女はもう離れたくても離れられないほど絡んでいるんだ。彼女はばあちゃんが選んだ女性じゃないし。はぁ、ばあちゃん、俺、本当にどうすりゃいいんだ」おばあさんが言った。「案ずるより産むがやすしと言うでしょう?その時になれば、どうすればいいか自分でわかるわ。今頭だけでごちゃごちゃ考えてどうするのよ。理仁と唯花さんの結婚式が終わったら、あなたは行動を開始しなさい。どのみち、私の孫には一年間時間をあげるから」拓真は言った。「……ばあちゃん、俺は特別扱いしてくれない?」「理仁でさえも例外はなかったのよ。さっきも言ったけど理仁は私が一番可愛がっている孫なんだから、それでも駄目よ。ほら、あの二人はちょうど一年後に挙式することになったわ」おばあさんが最も満足しているのは理仁、唯花夫婦と、それから辰巳、咲の二人だ。今、咲は依茉に目の治療をしてもらっている途中だ。毎日薬を使っていれば、すぐに目は光を取り戻すと依茉は言っていた。咲は光を感じ取ることはできているが、まだ毒が抜けきれていないため、ぼんやりとした輪郭程度にしか物が見えない。そして咲の目が見えるようにな
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第2330話

しかし、他の名家のご老人たちで、結城おばあさんほど元気が有り余っている人はそういないはずだ。おばあさんは結構な年だというのに、孫たちの結婚相手選びのために、よく飛行機に乗ってあちこち回っている。まったく、老体を酷使させるとは、手のかかる孫たちだ。もし、おばあさんからこのような任務を与えられなければ、拓真は結婚するなら三十五歳を過ぎてからゆっくりとしようと思っていた。まさか二十八で結婚させられる羽目になるとは、と彼は心の中で文句たらたらだった。確かに理仁と唯花は結婚してとても幸せそうにしているので、それを羨ましく思わないわけではない。ただ、彼は一人で何事にも束縛されずに自由でいるほうがもっと幸せだと思っているのだ。きっとおばあさんはそんな彼の心を見抜いているのだろう。孫たち自身に決めさせれば、絶対に三十歳過ぎてからしか結婚しないとわかっていて、このような任務を与えるのだった。「ばあちゃんがゲートボールで体を動かすのも健康に良いじゃないか。家の庭でいくらでもかっ飛ばしたって誰の迷惑にもならないしな」理仁はおばあさんが出かけて公園でゲートボールをしているご老人たちから習っていたことを以前から知っていた。おばあさんは自分の気持ちが赴くままに、その人生を楽しんでいる。身分や地位などにとらわれることなどない。彼ら孫たちも祖母には楽しく生きてほしいと願っている。おばあさんが喜ぶことや、やりたいことは、全て応援している。「ところで、お前はばあちゃんに何の用だったんだ?」拓真はキッチンの中に入ってきた。彼は声を抑えて話し始めた。「ばあちゃんから見逃してもらおうと思ってさ。だって、本当にこんなに早く結婚なんてしたくないんだよ。本当は三十五になってから結婚するつもりでいたんだ。それなのに、ばあちゃんが奥さん候補を見つけてきて、一年の期限をつけられたよ。その時には二十九歳だろ、計画よりも何年も早いじゃないか」それを聞いて理仁はケラケラ笑った。「お前だって、ばあちゃんとは二十八年の付き合いだろう?彼女の性格ならお前だってよく理解しているはずだ。そんな無駄足掻きなんてよせ」理仁は奏汰という反面教師がいるから、拓真と朔久はおとなしくおばあさんの決定に従って、目標の女性を口説きに行くものだと思っていた。それがまさか拓真はどうにか逃げる方法を考えて
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