Alle Kapitel von 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Kapitel 2311 – Kapitel 2320

2448 Kapitel

第2311話

「わかりました、俺がプランを考えます。今夜は絶対に楽しめますよ」玲がデートに乗り気でいてくれるだけで十分だ。玲は奏汰をちらりと見て笑って言った。「結城さんと一緒なら楽しいに決まっています。人を楽しませるのが得意な人ですからね」奏汰はそれを聞いて嬉しそうに笑った。奏汰の結婚相手の候補になっているのは、とても落ち着いていて冷静な性格の白山玲だ。彼もそんな彼女から愛の囁きが聞けると、そこまで期待することはできない。玲の口から出るのは確かに、彼を甘くのろけさせるような言葉ではない。それでも奏汰の耳を通せば、それは全て愛の言葉に変換されている。そして彼の心を甘く満たしてくれる。食事の時間になると、奏汰の玲への尽くしっぷりは、それはもう行き過ぎとも言えるほどで、彼女に食べさせようとまでしてきた。玲はおかしくなって、自分の目の前の皿に高く積まれた料理を見つめた。「私には手があるんですから、自分で食事くらいできます。別にそこまでしてもらう必要はないですよ。ほら、このお皿の上に山になったおかずを見てください。これじゃ、ご飯一口も食べられませんよ」彼女がそう言うと、奏汰はすぐに茶碗いっぱいにご飯を盛ってきた。さらにスープもだ。玲「……」彼女は取り箸をつかみ、奏汰のほうにもたっぷり料理を入れた。奏汰は楽しげにケラケラ笑い、彼女を見つめながら、自分の皿に山となったおかずを食べていた。「食事中にそうやって私を見てばかりで、何やってるんですか」「だって、俺は玲さんのことを見ているのが好きなんです。この皿にたくさんあるおかずの中で、玲さんが俺の大好物なんです」玲は言った。「……『私』という『おかず』以外にも、その皿にある料理みたいに他にも好きな『おかず』がたくさんあるんでしょう?」「ないです、そんなのあるわけないでしょう。俺は『玲さん』というおかずが好きなんです。他のおかずなんて全く興味ありませんね。結城家の男たるもの、その『おかず』は自分だけのものなんです。誰にもあげません」「自分だけの『おかず』と、その『おかず』しか食べない、のでは全く違いますよね。ほら、さっき取ってあげた、たくさんある『おかず』を、どれも美味しそうに食べているじゃありませんか」奏汰「……」そう言われた瞬間、奏汰の動きはピタリと止まり、引き続
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第2312話

「もちろん、苦しいですよ。でも、俺の勝ちです。きっちりあなたの人生を賭けてもらいますからね」玲は彼の様子を見て心配しているようだった。「ええ、二言はありません。言った事は必ず実行します。私の一生をあなたに賭けましょう」無事、彼女から誓いをもらい、奏汰はすぐに立ち上がって彼女に言った。「ちょっとお手洗いへ」彼はお腹を抱えて急いでトイレに駆け込んだ。玲はそれに思わず笑いをもらした。しかし、奏汰が自分に本気なのだということがよくわかった。そして暫く経ってから奏汰はトイレから出てきた。「病院に行きますか?」玲は彼を心配して尋ねた。奏汰は姿勢を正して言った。「いいえ、大丈夫です。消化が進むように一緒に少し散歩してから出かけましょう」彼はこの年齢で、今までこんな大食いをしたことはない。本当に腹が満杯で重い。しかし、勝ったのだから結果オーライだ。彼女がその一生を賭けてくれるチャンスを見事手に入れた。彼女が一生を彼に賭けるのと同じく、彼も自分の一生を彼女に賭ける。玲はソファから立ち上がり、その言葉に従った。「行きましょう。散歩に付き合います」そして二人は家を出た。玲は奏汰と一緒に、庭の中をゆったりと回った。彼女の実家の庭は広大で、二周もすると奏汰はだいぶお腹が落ち着いてきた。「いくら勝ちたいからといって、そんなに苦しくなるまで食べないでください。さっきお手洗いに行く前、冷や汗がにじんでいましたよ」「俺たち二人の幸せな人生のためなら、いくらだって必死になりますよ」奏汰は玲の手を繋いだ。玲はその手を振り払うことはなく、おとなしく繋いだ。このように二人が手を繋いで庭を散歩している光景を、執事が目撃した。執事はその瞬間、イケメンの実力派坊ちゃんが、結城奏汰に攻め落とされた、と心の中で悲痛な叫び声をあげていた。しかし、玲の両親はどちらも結城奏汰のことを気に入っていて、まるで白山家の婿同然に扱っている。それか、嫁としてかもしれない。男バージョンの嫁だ!執事は心の中で仕える家の坊ちゃんが結城奏汰のせいで男色好みに目覚めてしまい、嘆いたが、それを口に出すことなどできない。彼はただの執事だ。白山家の全員が彼によくしてくれていても、余計な口を挟むわけにはいかない。「今、お腹はどうですか?
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第2313話

玲は言った。「……あなただっておばあ様のおかげでしょう。私が女だという事実を調べたのは彼女であって、あなたではないというのに」奏汰はまだヘラヘラと笑っていた。「ええ、まったくその通りです。俺はばあちゃんのおかげで今こうしていられるんです。もし彼女の存在がなかったら、玲さんが女性だと一生気づくことなく、こうやって口説きにも来ていなかったでしょう。ばあちゃんからあなたの写真をもらって、あなたを口説き、結婚しろと言われた時には、ばあちゃんは俺に何か不満でもあるのかと思ってしまいましたよ。だって、その写真には男性が写っていたんですからね。まさか俺に男を口説いて結婚しろと言うのかと思って。ばあちゃんはあなたが女性だと言っていましたが、俺は信じられませんでした。写真にはあきらかに、イケメンしか写ってなかったんですからね。だから、最初の頃はかなり拒絶していたんです。誰かから俺が男のほうが好みだと言われるんじゃないかと思って、玲さんを口説きに行きたくなかったんです。ほら、初めの頃は俺も玲さんが女性だと暴こうとしていたでしょう?でも、玲さんはまったく隙がなく、女性である証拠を見つけられる力は俺にはなかったですね。きっとばあちゃんも、あなたの調査をして女性であるという証拠を見つけるのにかなりの時間をかけたはずです」玲はそれを聞いてハッとした。「なるほど、それで最初の頃、結城さんが私のことを女だと疑っているような気もしたし、それはありえないとも思ったんです。だって、私たちはほとんど交流したことがなかったですから。で、それからは?」玲はとても興味を持って尋ねた。玲は奏汰のことが今気になっているし、一生を彼に賭けてもいいと思っている。それで奏汰の心境にどのような変化がどこで生まれて、どうやって自分を好きになっていったのかとても知りたいと思った。玲と会う人は、必ず彼女のことを男だと疑わない。だから、男が玲のことを好きになるはずなどないのだ。それに同性愛者でさえ、玲が好きだから口説こうと思っても、普通できるものではない。奏汰は正直に言った。「恋のアドバイザーが俺に何も構わず直接口説きに行けと言ったんです。このままあなたが女性だという証拠を探そうとしても、一生かけても見つけられないだろうって、それで時間を無駄にせず、そのまま追いかけろと」「結
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第2314話

玲も理解して言った。「まあ、上の世代の人はこんなものでしょう。うちの両親だって同じです。特に私に対して、とても心配しているようです。そして結城さんに会うと、金を掘り当てた時よりもずっと大喜びするんですからね。やっと私に結婚するという未来が見えた、って感じの喜びようで」奏汰は得意げに言った。「それは俺がハイスぺだからですよ」玲は笑った。「ええ、ええ、そうですね。あなたはとっても優秀な方で、スパダリに分類されるでしょうね」二人は楽しくおしゃべりし、すぐにラグジュリゾートに到着した。奏汰は前回と同様に、玲と一緒に裏口から入った。そして誰にも気づかれないまま、屋上にあるプールへ行った。玲が奏汰に心の扉を開いている頃、凪のほうはやっと商談がまとまっていた。彼女は顧客が車に乗ってホテルを離れるまで入り口で見送り、ようやくホッと一息ついていた。ホテルの入り口で暫くの間立っていてから、彼女は以前、唯月の店の開店祝いに自分の代わりにお祝いを持っていかせた天野に電話をして迎えに来てもらった。彼女の車は今店で修理中だ。「ホテルの中に入って待っていてください。十月になるとはいえ、まだまだ暑いから」彼は凪にそう伝えた。「わかりました。ホテルの一階にあるロビーのソファで待っています」天野秀一(あまの しゅういち)はそう言うと、すぐに電話を切った。彼は、凪が黛家に戻ってきてから、和子が凪の世話係として手配した付き人のようなものだ。秀一はかなり大人で落ち着いた雰囲気の男だ。仕事もてきぱきと確実にこなす。凪は彼にいろいろと頼むのは最初嫌だったが、実際に彼の行動を見て、実力がある人間だとわかってから、凪は彼に任せるようになった。それから今までずっとそうしてきている。そして、秀一が彼女の傍で仕えるようになってから、彼女に対し、彼が生きている限り現当主である和子の命令には従わず、凪に忠誠を誓うとはっきり示した。彼が今までやってきた事を凪はその目で直に見てきた。一年あまりの付き合いから、秀一は言ったことを必ず守る人だとわかり、信頼を寄せるようになった。凪が黛家に戻ってきて、母親から秀一を生活上での世話役として手配すると、若葉がかなり羨ましがり、嫉妬していたのを凪は今でも覚えている。そこからも秀一がとてもできる人間だということがわかる。
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第2315話

秀一は大きな歩幅でホテルに入ってきた。彼はロビーに着いて辺りを見渡し、凪を見つけた。そして足の向きを変え、また颯爽と流星のごとく彼女のほうへと歩いていった。「天野さん」凪は秀一の姿を確認すると、携帯をなおして、ソファから立ち上がった。「車にトラブルがあったことをどうして僕に知らせてくれなかったのですか?すぐに別の車を手配させたのに」凪が車の故障を彼に伝えなかったと、秀一は低い声で凪に問いかけた。凪は小さな声で言った。「車に乗ってから話すわ」秀一は周りを警戒するように見渡してから、凪について急いでホテルを離れた。数分後、秀一は車に凪を乗せてグラン・エデンを離れた。「お嬢様の車は、ひょっとして誰かの仕業でしょうか?」車の中で話すほうが誰かに聞かれる心配はない。この車は秀一が凪専用で送迎するためのものだ。そして毎回車を使う時には、秀一自ら何度も車を点検している。そして車に何も細工されていないことを確認し、誰かがペンタイプなど、小さいボイスレコーダーを隠していないかまでしっかり見てから、使っている。それにこの車は防弾仕様になっている。だから、安全性が非常に高い。「そうみたいね」凪が答えた。「途中で白山社長に偶然会ったの。彼の車の運転手さんが修理もできる方で、車を点検してくれた時に、誰かが途中で故障するように小細工したんだろうって教えてくれたのよ。天野さん、今回の件、一体誰の仕業なのか、はっきり調べてもらえないかしら。それから、この件を知っている人はどのくらいいるのかも調べて。車に何かされていることを知っていながら口に出さないような人も、私の車に仕掛けた人物と同じで、私のことを嫌っているはずよ」秀一は運転しながら言った。「お嬢様、ご安心ください。僕が隅々までしっかりと調べ上げます。ところで、さっき白山社長に遭遇したとおっしゃいましたね?」秀一は玲には警戒心を持っている。「ええ、彼はちょうど仕事帰りだったようで、途中で出会ったの。彼が車に乗せてホテルまで連れて行ってくれたのよ。もし、彼に会わなかったらきっと遅刻していたでしょうね。そうなれば、私が時間にルーズな人間だと思われて印象が悪くなるところだったわ。今夜の商談は失敗し、明日はひどく母に叱られていたことでしょう。私の車に細工して途中で動け
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第2316話

数十年前に起きた事を調査するのは非常に難しい。凪は、ただ秀一に頼むしかなかった。彼が凪の傍にいる人間で最も能力が高く優秀だからだ。秀一は凪のために、また何人かの部下を鍛えあげた。みんな優秀な人材だ。秀一は申し訳なさそうに言った。「それは、僕の能力不足です。今になっても、まだお嬢様にご満足いただける結果が出せていませんね」「別にあなたの能力が足りないわけじゃないわ。この件はもう数十年も前のことよ。たとえ、昔は証拠が残っていたとしても、すでに母がきれいにそれを消しているはず。そして当時、この件を知っている人はきっとみんな亡くなっているでしょう。調査してはっきりさせたいと思っても、証拠をつかむのは並大抵の努力じゃできないはず。星城のほうにも何も証拠がない。あちらのほうが勢力からして大きいし、人脈もかなり広いはずなのに」従姉である詩乃は星城にいる。「星城のほうでは、今になっても何も動きがないのですか?」秀一は、向こうが真実を知っても静かすぎると思い、非常に気になっていた。凪はまた少し黙ってから、話し始めた。「結城社長と奥様の結婚式がもうすぐだし、奥様のお姉さんは新しいお店をオープンしたばかり。私の従姉である神崎夫人は今のこの時期にみんなが興醒めするようなことをしたくないのでしょう」凪と詩乃の血縁関係を確認するDNA鑑定結果はすでに出ている。しかし、詩乃はまだ凪に伝えていない。そして、その結果はやはり彼女の想像していた通りだったのだろうと凪は思った。俊一は頷いた。「そうかもしれませんね。そういえば、お嬢様は結城社長の挙式には参加するのでしょうか?」「結城家からはうちに招待状が送られてはいないから」両家間に交流はないからだ。結城家から招待されていないし、凪が勝手に動けば母親と衝突することになってしまう。ただ、和子が連れていく場合は別だ。「唯花さんと唯月さんのお二人が今では幸せに暮らせていることが、せめてもの救いだわ」前当主が本当に和子によって殺害されたのだとしたら、唯花姉妹の母親は間接的に不幸な目に遭い、悲惨な最後を遂げたということになる。そしてまた唯花と唯月がその巻き添えになった形だ。今では、詩乃も唯花姉妹も幸せな生活を送っていることで、凪の心にある罪悪感は少し緩和されているのだ。秀一は何も言わず
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第2317話

凪の話を聞くと、秀一はそれ以上尋ねることはなかった。彼は今凪から厚い信頼を得ているが、それでも彼女のプライベートなことに深入りしてはいけない。凪が白山社長と恋人になりたいなどと考えていないだけで十分だ。凪を乗せた車が黛邸に到着すると、執事が家の中から出てきて凪が帰宅したのに気づき、笑顔を作って迎えに来た。「お嬢様、お帰りなさいませ」凪は車のドアを開けて降りてくると、執事にひとこと「ええ」とだけ返事した。彼女は家のほうへ向かいながら、尋ねた。「当主様はお帰りになっている?」「今夜、当主様は接待の予定がありませんので、仕事を終えて直接お帰りになっておられます」執事は凪の後ろにつき、歩きながら凪の質問に答えていた。見た感じでは凪に対して非常に恭しい態度だ。凪は執事が一番立ち回りがうまいことを知っている。和子が家にいる時、執事はとてもいい顔をしている。しかし、裏では若葉側に立つ人間だ。凪はもう何も言わず、まっすぐに家に向かった。そして玄関先で、みんなの楽しそうな笑い声を聞いた。この時、帰ってきた人が凪だとわかった瞬間、あの笑い声は突然やみ、笑顔も引きつった。凪はまったく表情を変えることはなかった。リビングには黛家の家族たちと、あと一人知らない男がいた。彼女は以前一度も会ったことはない。その男は凪を見た瞬間、じろじろと視線を彼女の体に走らせ、最後に満足そうな表情になった。凪は心の中でどういうことなのか理解した。彼女は何事もなかったかのように、両親に挨拶をした。「凪、帰ってきたのか。母さんから今日はお前が商談に言ってるって聞いたぞ。深夜までかかってやっと帰ってくるものだと思っていたぞ」まず口を開いて話したのは和子の夫の洋文だ。彼は実の娘である凪にはまったく興味を示さなかった。普段、凪を見かけても全く相手してくれないのに、今夜はとても嬉しそうにしている。凪は両親に挨拶を済ませると、席を探してそこに座った。「商談ならうまくいったわ。終わらせて帰ってきたの。お父さんはつまり、夜中過ぎまで話し合いをしていてほしかったってこと?」すると洋文は笑った。「父さんは会社のことにはノータッチだからな。ただ、普段母さんが商談や接待に行く時には、いつも夜遅くに帰ってきていたから、お前もそうかと思っ
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第2318話

彰は凪が握手をしてくれなくても、気まずいとは思わずにその手を引っ込めた。そしてまた表情ひとつ変えずに元の場所に座った。しかし、彼はずっと凪から視線を外すことはなかった。するとこの時、若葉が笑って言った。「お姉ちゃん、長谷川さんはね、お父さんが代わりに探してきた方なのよ。だから、彼と仲良くやったらいいわ。長谷川家は名家に分類されてはいないけど、家庭条件はとてもいいの、少なくても資産は何千万もあるわ。そんなことより、彼のご両親は息子さんが婿養子になってもいいって言っているらしいのよ。これってなかなか貴重な話じゃない?せっかく婿養子になってもいいっていう人がいるんだから。お父さんはまずお姉ちゃんのことを考えたのよ。ほら、お父さんもあなたのことをとっても大事にしてくれてるじゃない」若葉は人の不幸を楽しむようだった。和子と洋文は、若葉が玲にアプローチするのには賛成している。確かに今に至るまで玲から振り向いてもらえていないが、若葉には名家に嫁いでもらいたいと、家族全員がそう思っているのはあきらかだった。そして洋文が凪に見つけてきた男は名の知れない小さな一族らしい。確かに資産何千万もある家庭であれば、一般家庭よりも金持ちだろう。しかし、黛家のような財閥家と比べると、長谷川家は貧乏人に映るだろう。自分とここまで差があることに、若葉は非常に悦に浸っていた。少し前に和子から叱責された不愉快さは、この時完全に消え去った。やはり、養父母である洋文と和子は自分のことが一番可愛いのだと彼女は思った。それもそうだ。若葉は黛家で育てられたのだから。両親と兄たちからとても可愛がられて育てられ、小さい頃から後継者となる教育を受けてきた。凪が黛家に戻って来てたった一年あまり。こんな女と自分が比べられるわけがないだろう?長男の嫁である綾が若葉の話に続き、彰を絶賛した。「ねぇ、凪さん、長谷川さんはとっても素敵な男性ね。長谷川家は黛家ほど大きくはないけれど、あなたは将来この黛家の当主になるでしょ。だから、婿養子を迎えるしかないわ。それで長谷川さんはあなたにぴったりなの。私たちも、あなたが白山社長と仲が良いってことは知ってる。でも、彼はあなたが好きになっていい人じゃないわ。あんなにハイスペックな男性があなたと結婚する可能性はゼロよ。だって、うちに婿養子
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第2319話

洋文の無理やり作った笑顔はこわばっていた。彰はまさに昔の彼自身だ。彼にもし能力があれば、黛家に婿養子になり、黛当主が子供を産むための道具のように使われるようなことはなかったのだ。和子は彼の家族に対しても良い態度でいてくれたからまだましだった。少なくとも彼が犠牲になることで、彼の両親や兄弟姉妹たちにはメリットがあったのだから。彼は特に金を自由に使うことができなかった。妻は夫が外で浮気しないように、毎日渡す小遣いを一万円以上渡すことはなかった。浮気をしたいと思い、下心はあっても、それをする度胸もない。今まで長年、数えきれないほどの女性が近づいてきたが、洋文は誰も受け入れることなど怖くてできなかった。彼女たちと余計な話をする度胸もなかった。彼は自分の妻がどれほど残忍な人間なのかよく知っている。もし、妻を怒らせれば、彼一人がひどい目に遭うだけでなく、彼の家族たちも巻き添えになってしまう。特に、凪が生まれて娘ができてから、妻は後継者ができたことで夜の夫婦の営みは激減した。彼は自分の役目はそれで終わってしまい、妻から捨てられないか不安だから、浮気などできるはずがなかった。黛家に婿として来たその日から、数十年間、洋文はずっと苦しい心境で過ごしたと言える。どうして自分は何の能力もないのかと彼は自分を疑っていた。彰を見ていると、彼は若かりし頃の自分を見ているように思った。「それに結婚は人生で一番重要な事だわ。簡単に決めることなんてできない。私は長谷川さんには何も感じないわ。人の気持ちなんて強制しても、良いことなんてないでしょう。お母さん、将来婿養子を迎えるとしても、自分の夫は自分で選ぶわ。少なくとも、私の仕事を手伝えるくらいの能力がある人をね。私はお父さんみたいに中身が空っぽの男なんて嫌よ」その言葉に洋文の顔は一気に不機嫌になった。「凪、なんだその言いぐさは?私は一応お前の父親なんだぞ!和子さん、凪を見てみろ。こんなふうに私のことを貶してきたぞ?私のどこが中身空っぽだって?もしそうなら、母さんが私を選んでいたと思うか?」「はいはい、そうよね。さっきは言葉を間違えたわ。お父さんはとても素晴らしい人よ。これでいいでしょ」凪はまるで小さな子供をあやしているかのようだった。「もういい加減にしなさい」和子が厳し
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第2320話

玲は若葉には目すら合わせようとせず、田舎娘の凪のほうに良くしている。「お母さん、明日、私も凪と一緒に行きたい」若葉は凪が玲と一緒に食事をすると聞いて、和子に向かって懇願した。和子は淡々とした調子で言った。「若葉、あなたは遠慮しなさい。白山社長のあなたに対する態度がわからないの?あなたがいくら彼を追おうとも私はかまわないわ。お母さんはただ結果を見るだけ。でも、凪が彼を食事に誘ったのは、お互いの会社にとってもメリットになるのよ。あなたがそれを壊すわけにはいかないでしょ。凪、あなたが彼を食事に誘うことは特に問題はないわ。今夜はあんなに大きな契約を取ってこられて、私はとても嬉しい。明日は新しい車を買ってあげましょう。自分でディーラーに行って好きなものを選びなさい。予算はそうねぇ、一億くらいでいいわ」その言葉に、若葉の嫉妬心はさらに燃え上がった。「お母さん、私のだってそんなに高い車じゃないのよ」凪がそれに答えた。「あなたはただの養女でしょ、私はお母さんの実の娘。それなのに私と比べようっていうわけ?ねえ。人としてある程度『わきまえ』っていうものを知るべきだと思うわよ」若葉「……」若葉は可哀想な顔をして和子を見つめた。和子はそんな彼女の様子に気づかないふりをして、味方につくことはなかった。若葉はいくら養母が凪に厳しく、ひどく叱りつけたとしても、やはり二人は実の母娘同士なのだと悟った。そして彼女は、本当にどんどん凪に差をつけられていく。和子が口にする若葉への溺愛の言葉は、全く意味のないものなのだろうか。「洋文」和子は夫に向かって言った。「凪がまだ結婚したくないというのなら、この件は保留にしておきましょう。娘は大人になって自分の考えや主張があるわ。結婚は一生で最も重要な事。彼女が好きな男性を見つけてこそでしょうから。凪の結婚について、親である私たちが参考程度にアドバイスすることはいいけど、彼女に代わって決める必要はないはず。彼女が自分で結婚相手を選べばいい。まだ三十にもなっていないし、今は忙しく重要な時期だから、あと数年は結婚を考える必要はないわね」実の娘である凪が完全に黛グループと一族を掌握してから、婿養子を探せばいい。「さあ、長谷川さんのお見送りをしてちょうだい」和子が執事に向かってそう言う時、一目も彰のほう
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