All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2361 - Chapter 2370

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第2361話

唯月が自分を信頼してくれていることで、隼翔はかなり気分が良くなった。「社長はご飯を食べに来たんですよね。あなた好みにメニューを選んで、キッチンのほうには伝えてありますから、もう少ししたら召し上がってくださいね。私は家に戻って食べますから」彼女は午前中だけ仕事を処理しに来ていた。今日は家に帰って、やらなければならないことが山積みだ。唯花がやってもいいのだが、唯月が妹を休ませるために、自分がやると言い張ったのだ。今唯花はつわりがひどい。吐かなくなれば、唯月も安心できるが、今は妹に何かをさせるわけにいかない。隼翔は唯月が妹の結婚式で忙しいことを理解していて、こう言った。「俺が君を送っていって、お宅で一緒に食事してもいいかな?暫く清水さんの手料理も味わってなかったし、食べたくなった」唯月はそれを断わらなかった。「じゃあ、ちょっとここで待っていてください。戻って鞄を取ってきます」「わかった」そう言うと、唯月はレストランの中に戻った。彼女がいなくなってから、隼翔は後ろにいるボディーガードに指示を出した。「さっき言っていた谷口とかいう男を調べさせてくれ」ライバルと闘うのなら、まずは相手を知ること。それでこそ完全勝利をおさめることができる。「わかりました」ボディーガードはその場で携帯を取り出し、電話をかけて隼翔の恋敵の調査を指示した。彼らの主人である隼翔はようやく唯月との距離をここまで縮めることができた。今はまだ付き合っている段階ではないが、唯月はもう彼を拒むことはなくなっている。しかし、この重要なタイミングに、誰かに二人の邪魔をする隙を与えてはならない。ボディーガードは主人には勝算があると思っているが、今はまだ隼翔が歩けず、車椅子生活を送る必要があるから、その点少し劣勢になってしまう。ボディーガードが電話を終えると、ある一台の車がレストランの前に停車した。隼翔とボディーガードはその車に視線を向けた。車から降りてきたのは、唯月が最も会いたくない元夫だ。俊介は体がだいぶ回復している。確かにまだ完全に治っているわけではないが、医者に健康状態を診てもらい、退院許可がおりて、今は家でゆっくり療養しているのだ。彼は長い時間入院していたので、彼の両親の貯金をかなり使っていた。引き続き入院していては、両親の貯金は本当
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第2362話

歩けるようになった俊介は見た感じ、まだ体が弱っていて、車椅子の隼翔よりも元気がなさそうだった。「東社長、こんにちは」俊介は遠慮気味に挨拶した。隼翔は会釈して尋ねた。「佐々木さんはいつ退院したんですか?」「昨日です」隼翔はそれを聞いてひとこと「へえ」と答えた。俊介が退院するのも良いことだろう。今後、週末には唯月が陽を連れて病院まで見舞いに行く必要がなくなるからだ。「東社長は唯月さんに会いに来たんですよね。どうして中に入らないんですか?」英子が尋ねた。「彼女なら中に取りに行く物があると言って入っていったんですよ。鞄を取ってきたら一緒に家に帰るんで」このクズ姉弟の前で、隼翔は二人を嫉妬させようと思い、わざとそのように話した。すでに離婚してからだいぶ経っている。それなのに、唯月の暮らしがどんどん良くなっているのを見て、佐々木家のこのクズ一家は後悔しだして、唯月に付きまとっている。夢でも見ていろ。人は恥を捨ててしまえば、この世に怖いものなどないらしい。隼翔もまさかこのような人間がいるとは、初めて知った。佐々木家は全員揃いも揃って、この世に怖いものなし集団である。隼翔が唯月と一緒に家に帰ると言うのを聞いて、俊介は顔を暗くさせたが何も言わなかった。そもそも彼が、何かを言える立場ではない。英子はもともと弟が隼翔に対抗することを期待していたのに、弟がただ顔を暗くさせて黙っているのを見て、彼女は不満をつのらせた。英子は何か言ってやりたかったが、家に帰って両親からまた厳しく言われると思い、余計な事を言えなかった。両親と弟は今、陽が幸せに過ごしているならそれでいい、というスタンスだ。唯月の生活がどんどん良くなっていき、稼ぎも多くなっている。将来、その金はもちろん陽の手に渡るだろう。そして、陽はいつまでも、彼ら佐々木家の血筋には変わりないのだ。唯月が全てを陽に渡せば、それはつまり佐々木家のものと同じことだ。そのように考えるようになって、佐々木母の気分はかなり良くなった。唯月と隼翔が結婚して二人の間に子供ができなければ、隼翔の財産も陽が継ぐことになる、とまで考えていた。そして陽が大企業の社長になったら、金も権力も手に入れられるだろう。その時、陽が父親の俊介と実の祖父母を認めないはずがないだろう?だから、
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第2363話

幸運を持つ人が、運の欠片もない家に居続けることはない。彼ら佐々木家は運とは無縁の家。だから、結局幸運を持つ唯月という素晴らしい嫁を失うことになったのだろう。「医者がもう退院して家で療養していいって許可を出したから、退院したんだ。入院し続けたら、金がかかるし」俊介が答えた。「この一件で、家の貯金はほとんど使ってしまったからな」彼は退院してから、両親のいる実家で療養するつもりだ。市内の家は、売る予定にしている。そうしないと、彼ら一家の生活は困難を極める。不動産権利書には莉奈の名前もあるので、家を売るなら、彼女に一言頼む必要がある。莉奈は二つの罪から、十年以上の刑が下った。莉奈が一番、昔あんなことをするんじゃなかったと後悔している。唯月は頷いて言った。「じゃ、仕事に復帰するのはまだ考えずに、家でしっかり療養されてください。来年分の陽の養育費は、仕事復帰して稼ぎ始めてから振り込んでくれたらいいので」英子は弟が今こんな苦しい状況なのだからと言いたかったが、唯月はそれでも養育費を払えと言ってきたので、残酷だと英子は感じた。それでも俊介は英子が口を開く前に言った。「安心しろ、陽は俺の息子なんだから。離婚する時、離婚協議書にもしっかりサインして、子供は共同扶養にしてあるんだから、それは俺の責任だ。絶対払うからさ」これでは英子も何も言えまい?今現在、英子は実家から何ひとつメリットを得られなくなった。逆に実家から頼りにされてしまいそうだ。英子は心の中で、今後はあまり実家に戻らないようにしようと決めた。もし、俊介が姉はこのように考えていると知ったら、どう思うだろうか。少しして、俊介はポケットからご祝儀袋と、小さな箱を取り出した。その箱には18kのブレスレットが入っていて、俊介が両親と相談して、唯花の結婚祝いに贈ることに決めたものだ。俊介はそれを唯月に差し出して、言った。「内海さん、これは妹さんへの結婚のお祝いだ。式には俺たち参加しないからさ、俺と両親で気持ちだけでもと思って用意したんだ。悪いけど、内海さんから妹さんに渡してもらえないか」実際、彼らは唯花の結婚式に参加したかったが、参加できる資格などない。唯花が佐々木家を結婚式に招待するはずもない。唯月はそれを受け取らず、淡々とした口調で言った。「気持ちなら代わ
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第2364話

佐々木家の姉弟は去っていった。それから、俊介は莉奈の同意を得て、彼が当初購入した家を売りに出した。売った金が入って、彼は莉奈に分けるつもりだったが、彼女はそれを拒否した。家は俊介が結婚する前に購入したものだった。唯月と離婚する時、その財産を唯月は分けてもらっていない。それなら、莉奈もその資格はないはずだ。莉奈は俊介が自分に分けようとしたお金を唯月親子に渡すようにと言った。彼女がこの世で最も申し訳ないと思っている相手はあの親子だからだ。それを唯月が受け取らなかったとしても、莉奈はこの行動で、彼女への贖罪としたのだ。そして俊介は実家に戻り療養生活を送った。決まった日に息子に会う以外、彼と佐々木家はもう唯月の前に現れることはなくなった。こうして、自ら唯月たちの世界から姿を消したと言っていいだろう。……柴尾家にて。流星が黒い旅行鞄を背負って、柴尾邸の門の前に立っていた。でも、彼は長い間そこに立っているばかりで、インターフォンを鳴らそうとしなかった。ここは彼の家なのに。いや、厳密に言えば、ここは長女である咲の家だ。なぜかというと、この邸宅はそもそも祖父母が彼の叔父に残したものだからだ。流星の両親が叔父を殺害し、柴尾家の財産を独占して、長女の咲を長年苦しめてきた。そして今、姉の名義にこの邸宅が戻っただけだ。暫く経ってから、ようやく流星はインターフォンを押した。するとすぐに使用人が出てきて門を開けた。そこに流星の姿があり、使用人はとても喜んでいた。「坊ちゃま、お嬢様が知ったら、きっとお喜びになりますよ」流星は中に歩いていきながら尋ねた。「姉さんはいる?」「ええ、ここ最近、お嬢様は家にいらっしゃいます。今は目の治療途中ですから、婚約者の結城様が仕事をさせないようにしているのです。仕事はすべて来栖さんに任せられています」使用人がそう答えた。流星は慌てて尋ねた。「あの先生からもらった薬の効果はどうなの?見えるようになってきた?」すると使用人はすぐに、依茉の医術の高さと薬の効果を褒め称えた。彼女は言った。「お嬢様は先生からいただいた薬を使って、かなり効果が出てきています。今、じっと目を凝らせば目の前にある物がだいたい見えるようになってきました。結城様はよく彼女の目の前までやって来ては、彼の顔が見えるかと尋
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第2365話

「なるほど」流星は何か思うところがあるようだった。両親が過去に犯した罪を知ってから、流星は、当初、姉の治療をしてくれていた医者は策略にはまり死亡したのではないかと疑っていた。それももしかすると、両親の仕業かもしれない。「坊ちゃま、今日はどうしてまた急にお戻りに?」この時、使用人は変だと思った。坊ちゃんは今、大学生活で学業に専念しているのではないのか?別に長期休みでもあるまいし。夏休みだってとっくに終わってしまったではないか。「姉さんのことが心配で、大学には数日休みを取って帰ってきたんだ」流星は隠すことなく、休んできたと伝えた。「姉さんは部屋にいるんだよね。ちょっと会ってくる」流星は早く姉に会いたくてたまらなかった。目が前よりも良くなっているか自分でも確かめてみたいと思った。「お嬢様も結城様もいらっしゃいますよ」流星には使用人が最後に言った言葉が聞こえていないようだった。彼は颯爽と部屋の中に入っていった。部屋に入ると、婚約者の辰巳がちょうど咲の腰を片手で抱き寄せ、もう片方の手を彼女の後頭部にあてて、熱いキスをしているところだった。その瞬間、流星は衝撃を受けた。彼の顔はりんごのように真っ赤になり、急いで後ろを向いた。あの結婚予定の夫婦が熱烈なキスをしているところを目撃してしまって、申し訳ない気持ちだった。流星はそれと同時に心の中で、辰巳は自由すぎるだろうと文句をもらした。彼の家でもこのような無遠慮な行為をするなんて、もし人に見られては、姉の面子はどうする。このシーンを柴尾家の使用人たちはすっかり見慣れていて、もう驚くこともないと、流星は知らない。辰巳は隙を見つけては、咲といちゃつこうとする。二人は正式な婚約者同士であり、婚約パーティーも済ませている。そんな二人がキスをしたり抱き合ったりするのは普通のことだろう。ベッドでいちゃついたとしても、誰も文句は言えまい。辰巳はキスまではするが、まだ一線は越えていない。二人は最も幸せなそのひと時を、新婚の夜まで待ちたいのだ。キスを終えると、辰巳は愛する婚約者からそっと離れた。すると咲は顔を彼の胸にあずけて、呼吸を整えた。そしてすぐに、辰巳は義弟になる予定の流星が背を向けてそこに立っているのに気づき、俯いて懐に埋もれる咲に言った。「
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第2366話

流星が近づいてきて、辰巳をちらりと睨みつけた。辰巳は流星に笑いかけた。「流星君、なんで急に帰ってきたんだい?」流星は家で姉に好き勝手やっている辰巳にイラっとしているから、恥ずかしさで顔は赤くさせているものの、遠慮なく辰巳に冷たく言った。「ここは僕の家なんで、いつ帰ってきたっていいでしょう。あなたにとやかく言われる筋合いはないです」辰巳はそんなことを言われても、怒ることはなく気にしなかった。さっき咲と熱烈にキスをしているのを未来の義弟に見られてしまった。きっと嫌がる咲に無理やり迫ったとでも思っているのだろう。「姉さん、俺だよ」流星は辰巳を押しのけ、姉の前にやって来た。姉が一番見える位置を占領したのだ。この距離なら、姉にぼんやりとでも彼の顔が見えるはずだ。十七年間姉と弟でいるが、姉は十年前の弟の姿しか知らない。咲が失明した時、彼はまだ七歳で、小学校二年生になったばかりだった。それが今ではもう大学生だ。辰巳は流星に押しのけられても、相変わらず怒ることはなかった。しかもケラケラと楽しそうにしていた。「流星君、お姉さんは今、目の前にあるものならぼんやりとだけど見えるようになっているよ。先生が今お姉さんの視力は近視がひどい人が眼鏡を外した時と同じくらいの状況だって言ってた。見えるには見えるけど、はっきりとはしない感じだね。もうちょっと近づいたら、お姉さんも君の顔が見えるよ。そうだ。昼は何を食べたい?キッチンに言って君の好きな料理も作ってもらうからさ」もう正午だから、昼食の時間だ。流星は辰巳の話などまるで聞こえていないかのようにスルーし、緊張した面持ちで、姉の瞳をじっと見つめて尋ねた。「姉さん、俺を見て、はっきり顔がわかる?」そして自分の目を触ってまた尋ねた。「姉さん、今俺が触ったのは目?それとも鼻?」咲もじっと静かに弟を見つめた。流星は両親から良いところばかりを受け継いで、端正な顔をしている。咲も母親に似ているので、流星とは幾分か顔が似ている。暫くして、咲は手を伸ばし、流星の顔に少しずつ触れていった。彼の顔、目、鼻、そして最後に額に手をあてた。彼女は喜びに笑いたかったが、目は赤くなり、涙が溢れてきた。「流星……」彼女は嗚咽をもらした。「お姉ちゃん、またあなたに会う
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第2367話

咲は気持ちを整えてから、弟を抱きしめた。すると流星は辰巳がヤキモチを焼くのではないかと気になり、ぎこちなくちらりと彼を見た。聞くところによると、この義兄予定の結城辰巳はかなり俺様タイプらしい。しかし、彼は咲の弟なのだから、義兄もそんなに心が狭いことを思わないだろう。小さい頃、姉は流星に対してとても冷たく、無視するような態度をとっていた。それでも、彼が転んだりすると、姉は心配そうな顔をしてすぐに起き上がらせ、抱きしめて優しく泣くんじゃないとなだめてくれた。流星は記憶の中で長女の咲のことが最も好きだった。自分が転んだ時にだけ、普段は冷たい姉がやっと優しさを見せてくれると気づいた。それで彼は転ぶのが好きになった。そうすれば、姉が心配し、抱きしめてなぐさめてくれるからだ。それは記憶にはうっすらと残っているくらいだが、思い出すと優しい気持ちで満たされる。小さい頃の流星は、どうして母親が長女に対してあんなにひどい態度をとるのか、また、姉がいつも自分を無視しようとするのはなぜか理解できなかった。そして大きくなっていくうちに、長女の父親は自分とは違う人なのだということを知った。同じ母親から生まれてきたが、母親はずっと長女を嫌っていた。姉が母親から侮辱されたり、時には暴力をふるわれる時、流星は飛び出していって姉を守ろうとした。母親が姉にひどいことをするのを見るのが耐えられなかったし、姉がいじめられる姿も見たくなかった。次女の鈴は意地悪な性格をしていた。母親に流星を全寮制の学校に転校させ、家から追い出すようアドバイスをしたのだ。そうすれば、家で咲を守る人間はいなくなる。流星は両親にとって唯一の息子だから、もちろん彼を大事に可愛がっていた。しかし、そんな彼が咲を庇おうとするのをやめさせるために、本当に全寮制の学校に通わせるように手配してしまった。流星は毎回家に帰った時に、咲には慎重に慎重を重ねて気をつけるようにと注意していた。しかし結局、姉は陥れられて光を奪われ、危うくその命まで失ってしまうところだった。一番下の叔母が実家に帰ってきて、気づき、すぐに病院に連れていってくれたおかげで、なんとか一命はとりとめた。過去のことを思い出し、流星は罪悪感と自責の念に駆られた。それに、姉に抱きしめてもらうのがとても懐かしく感じた。
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第2368話

「わかった」咲は弟の手を引いて座らせてから尋ねた。「どうして突然帰ってきたの?別に祝日でもなんでもないのに、授業はいいの?」「この前姉さんと電話して、すごく心配だったんだ。だから、目の治療の効果はどうなのか気になって、数日大学には休みをもらったよ。それで姉さんに会いに帰ってきたんだ」咲は彼に厳しく言った。「電話でもいいじゃないの、どうしてわざわざ大学を休むの。明日すぐに学校に戻りなさいね」この時、辰巳が口を開いた。「咲、流星君もわざわざ休みを取って帰ってきたんだ。理仁兄さんの結婚式に一緒に参加して、終わってから帰ったらどう?」それで咲は弟に何日休みをもらったのか尋ねた。「一週間だよ」理仁と唯花の結婚式は三日後だ。咲が言った。「じゃ、結婚式が終わってから大学に戻りなさいね。今後は何か特別なことがない限り、休みをもらっちゃダメよ。しっかり勉強して、長期休みの時だけ帰ってきなさいね。お姉ちゃん、その時会社のインターンシップを利用して、あなたを鍛えてあげるから」咲は柴尾グループを継いで、一人で会社を独占するつもりはない。ずっと弟のことを考えてあげていた。「姉さん、俺、会社経営とかそういうのあんまり興味ないんだ」流星は遠慮して、柴尾家のビジネスに自分も手を出しそうとは思っていなかった。彼は、会社というものは二人仲良く管理するものではないと考えていた。もし、彼が柴尾グループに入れば、長年父親のもとに仕えていた社員はもちろん彼のほうに肩入れするだろう。姉は自分の腹心を育てている。そして、彼らには会社の利権争いなどする気がなくても、二人の腹心たちそれぞれが争い始めるに決まっている。それは会社の未来に悪影響を及ぼすだけでなく、姉と弟の間にも溝ができてしまうだろう。それに、流星は本気で会社経営などに興味を持っていなかった。咲は暫くの間黙っていてから、弟に尋ねた。「じゃ、あなたは大学を卒業したら何をするつもり?」「俺は絵を描いたり、撮影したりするのが好きなんだ。だから、イラストレーターとか、写真家とかになりたいな」咲は弟を応援するとも、反対するとも言わず、ただこう言った。「冬休みにはうちの会社でちょっとアルバイトしてみて。給料ももちろん出すから。将来のことはまたその時に話しましょう」流
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第2369話

柴尾家の門の前で、以前この家ではお嬢様だった二人は、すでに昔の威勢と高貴さを完全に失っていた。この時、朱美と樹里は普通の服を着て、高価なジュエリーなど一切身につけていなかった。エルメスの高級バッグもこの時消えていた。彼女たちが使っていた車ですらもうなく、二人は公共交通機関を利用してここまで来た。まだ債務の返済に追われ、家にあるもので売れるものは全て売り払った。今ではアパートを借りて暮らすしかなくなった。この二人の姉妹が生まれた時、柴尾家は今のように財産がある家ではなかった。それでも裕福な家庭のうちで、彼女たちは苦労したことも、貧乏な思いをしたこともなかった。そして結婚する時には、実家が金持ちだったので、二人とも両親から手厚い支援を受けたし、嫁ぎ先も同じく金持ちの家だった。そして嫁ぎ先では嫁の立場から家を取り仕切る立場に代わたっというのに、突然こんな悲惨な目に遭い、すべてを失い、今まで一度も経験したことのない貧しい生活を送ることになるとは思ってもいなかった。年も取っているし、金持ちだった尊厳が邪魔をし、二人が仕事を探そうとしても、清掃員の仕事が見つかる程度だった。清掃員の一カ月の給料は、以前数日で使っていた程度の金額にしかならない。贅沢な暮らしになるのは簡単だが、節約生活を送るのは難しい。それを彼女たちがまさに体現している。貧しい生活に耐えかね、二人は図々しくも実家まで足を運び、姪にすがりついてきたわけだ。彼女たち自身も、柴尾家でもっとも残酷なのは彼女たちの兄ではなく、この柴尾咲という盲目の女だとようやくわかった。咲は運良く、目が不自由でありながら、あの結城家に嫁ぐことになった。二十数年間、シンデレラとして過ごした咲は、これからはプリンセスのような生活を送ることになるわけだ。神様は咲の残りの人生に幸福を与えたのだろう。「咲さん、門を開けてちょうだい。私は親戚のおばさんなのよ」「咲さん、私たちが間違っていたわ。もう柴尾家の財産を狙ったりしないから、許してちょうだい」樹里も大きな声で訴えた。柴尾家の隣人も早い段階で、この姉妹が実家に戻り財産を奪おうとしていることは知っていた。もし、柴尾家の財産が彼女達両親の名義であって、それを寄越せと言うのであれば、まだ説得力がある。しかし、彼女たちの
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第2370話

依茉という医者が名医直々の教え子だからといって何だというのだ?名医と呼ばれていても、所詮は人間。そんな医者でも治療できない難しい病気はあるはずだ。「流星、流星じゃないの」咲の後ろから流星が来たのを見て、二人のおばはまるで救世主でも見たかのような反応をした。甥は姪よりも話が通じやすい。以前、彼女たちは兄やその嫁が咲にひどい真似をし、危うく咲が死にかけるところもずっと傍観していた。咲が死ぬのを望んでいたのだ。だから咲がそれを恨み、彼女達に復讐しようと考えても、それは当然のことだろう。しかし、甥に関しては、朱美も樹里もとても可愛がってやっていた。彼女たちの兄には流星という息子しかいない。柴尾家の財産を狙おうと企む前、姉妹二人は実家がもっと実力をつけることを期待していた。そうすれば、彼女たちが嫁ぎ先で地位を確立させ、誰からもバカにされないからだ。「流星を呼ばなくていいわよ。彼に何か言っても同じことだから」咲はおばたちの前までやって来て、門を隔てて対峙した。辰巳は一緒に出てこなかった。咲が自分で解決できるから、彼を頼る必要はないと言ったのだ。それで辰巳はキッチンのほうを手伝いに行った。彼自ら婚約者のために愛のこもった昼食を作るつもりだ。二人のおばは、咲の目がまだ見えないと思い込んでいて、恨みがましい鋭い眼差しで、ギロリと咲を睨みつけていた。もし、人が目つきで誰かを殺すことができるとしたら、咲はこの時何度もその視線に貫かれていただろう。「そんな恨みのこもった悪意のある眼差しで私を睨みつけないでよ」咲は淡々とした口調で言った。「視線では人を殺すことはできないわよ。そうやって睨みつけて、疲れたりしないわけ?」朱美「……」朱美は門の隙間から手を伸ばして、咲の目の前で左右に揺らしてみた。「おばさん、私は見えているから、そうやって手を振る必要はないわよ。かなり太ったみたいね。記憶の中では、今みたいに背が低く太ってなかったわ。おばさんはもっとスタイルが良かったのに」朱美はそんなに背が高くない。一メートル五十センチで、兄弟たちの中で一番背が低かった。今彼女の体型は横に伸びていて、まるでジャガイモか何かのようだ。朱美は咲の皮肉など無視し、驚いて尋ねた。「咲さん、あなた目が見えるようになったの?」
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