Semua Bab 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Bab 2371 - Bab 2380

2444 Bab

第2371話

朱美は今のようなアパート暮らしの日々を、自分たちがずっと続けていくのかと心配していた。それに、手元にはもう金がほとんど残っていない。子供たちが仕事を探そうとしても、結城家を敵に回したことを理由に、どの会社も彼らを雇おうとしてくれない。彼らを雇ってしまうと、その会社がトラブルに巻き込まれてしまうからだ。「流星、流星、おばさんに代わって説得してちょうだい。昔からあなたには良くしてあげていたでしょ。それなのに、おばさんたちがお姉さんのせいで、ひどい暮らしを送るのを黙って見ていられる?」流星はこの二人のおばのこのような様子を見て、とても驚いていた。姉のほうは、ずっと険しい表情で全く許す気はないらしい。自分が星城にいない間に、おばたちは姉に何かとんでもないことをしてしまったのだろうと、流星は思った。「朱美おばさんに樹里おばさん、今、柴尾家は姉が取り仕切っています。姉がどうしてお二人にここまで厳しい態度をとるのか、僕にはわかりませんが、姉は何もないのに人を苦しめるような人間じゃありません。彼女は恩を受ければお返しするし、ひどい目に遭えば許さない。そんな人なんです。だから、おばさん、二人は姉を怒らせるようなことをしたのではないですか?」流星は咲のことを信じている。二人がやり過ぎない限り、姉がここまでおばを苦境に立たせるはずがない。今のおばたちの様子を見るからに、確かにかなり苦しい生活をしているのだろう。「おばさんたちが私に何をしたのか、あなたたちがよくわかっているでしょう。私のことをひどいと言える立場かしら?ひどいのは明らかにあなたたちのほうでしょ?私の命まで狙ったくせに!何もされてないのにこちらから何かひどい事をするなんて、私はそんな人間じゃない。でも、相手が手を出してくるのなら、こちらだって容赦しないわ!それに、あなたたちがやったことを考えれば、私はまだ手加減しているほうよ。少なくとも、一族を滅ぼすまではやってないんだから。少しくらい貧乏だからって、なに?健康な体を持っているのだから、働けばいいじゃないの」尾崎家と黒川家が今のように没落したのには、辰巳だけでなく咲自身の手も加わっている。さっき、咲が命まで狙われたと言っていたから、それなら彼女が復讐しないわけがない。咲は目には目を、の考え方なのだ。「咲、あ
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第2372話

流星は不機嫌そうに顔を暗くさせた。以前、彼はこの二人のおばの口車に乗せられて、危うく姉と対立するところだった。しかし、彼の正義の心が悪に勝ち、彼女たちの思惑は失敗に終わったのだ。そしておばたちは今、咲の許しが得られないとわかると、今度は咲と流星の仲を引き裂こうとしてきた。「誰を憎むべきか、私には、はっきりわかっているわ。あなたたちがこうなったのも自業自得でしょ。誰にも文句言える立場じゃないのよ。もちろん、私を恨む気なら別に構わないわよ。私は今地獄に落ちたあんたたちを見ていると気分がいいもの。本来、自分のものではないのに、図々しくも他人から奪おうとするんだから、こうなって当然でしょ」咲はこれ以上この二人と言い争っていても時間の無駄だと思った。それにもうこの二人がどうなったか確認できた。これで満足だ!「流星、中に入りましょう」すると咲は弟の手をとって、彼女たちに背を向けた。「あんた!絶対にひどい死に方するよ!絶対に後悔するからね!」朱美が咲たちの背中に向かって怒鳴り散らした。咲は玄関前まで来ると、執事に言いつけた。「裏庭で飼っている犬たちを放って。今度あの人たちが騒ぎに来たら、犬を放しておけばいいわ、遠慮なんてしてあげる必要ないから。それに、今日から私と流星はあの二人と絶縁するわ」執事はその言葉に恭しく応えた。咲は今ではもう、かなり堂々とした気迫を持つようになっている。彼ら使用人たちも、彼女がいかに容赦ないのかを目の当たりにした。家に戻ると、咲は流星に言った。「二十数年前、私のお父さんが殺害された後、あの二人はそれを知りながら警察に通報はしなかった。つまり犯罪に加担した罪があるわ。当時、私はまだたったの二歳で何もわからなかった。だからあの二人を訴えることはできなかったし、今はもうあれから二十年以上経っているから、起訴するのも難しいわ。そうじゃなかったら、あの二人がまたこうやって私を不快にさせるのを黙ってはいなかったわよ。流星、あなたのお父さんとお母さんが犯した罪は、二十年前に私の父を殺害したことだけではなく、暴力団とも関わって、誘拐したり人を傷つけたり、他にも多くあるの。それに関して、今まで私達二人できちんと話したことがなかったよね。今日あなたに全てを打ち明けるわ」咲は自分の母親のことを
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第2373話

「あの二人が言ったことだって、気にしちゃダメだし、真面目に聞いてもいけないわ。実際姉弟同士でも信じられないようなことがあるのに、あの二人ならなおさらでしょ?」流星はまた力強く頷いた。姉を信じると彼は決意した。「姉さん、これからは二度とあんな人たちに騙されたりしないよ」咲は頷いて言った。「あなたはうちで一番善良で、正義の心を持った人よ。あの両親に悪影響を受けずに、自分をしっかり持ってる」彼の母親はよく、鈴と彼こそ本当の姉弟だから、流星には鈴ともっと仲良くするようにと教えていた。その言葉を流星は聞かなかった。彼は小さい頃から長女である咲のことが大好きだった。誰が何を言おうとも、彼はそれを変えなかった。「姉さん、俺が家にいない間に、一体何があったの?」流星は咲が意外と残酷な一面を持っていることはわかっていたが、何もないのに、ひどいことをする人ではないともわかっている。あの二人のおばに関して、姉は最初二人をここまで追いつめようとはしていなかった。おばたちが実家の財産を狙おうとしなければ、姉もあんな二人に構っていなかったはずだ。尾崎家と黒川家の従兄たちも、姉が柴尾グループから追い出してしまった。姉は、あの両家の従兄たちは会社では横柄な態度をとり、不当な利益を得ていたと言っていた。どのみち、柴尾家の会社から多くの金をこっそりと奪っていたのだ。以前、父親が会社の管理をしている時には、従兄たちも父親の前では威張ることはできず、父親もそんな甥たちを寛容に許していた。そして、咲が社長になってからは、状況はガラリと変わってしまった。会社にとって使い物にならない社員を、その後ろ盾が誰なのかも構わずに全て切り捨ててしまった。それでも、ただクビにしただけで、責任追究などはしなかった。しかし、今回帰ってきて、あのおば二人が懇願してきたのを見るからに、流星はあの両家が姉に何かをしてしまったのだろうと予想した。それで怒りを爆発させた姉が復讐のために、尾崎家と黒川家を破産にまで追い込んだのだ。さっきのあの二人の格好はだらしなく、化粧すらもしていなかった。こんなこと、あの二人は今までになかった。つまり本当に金がないということなのだろう。咲は淡々とした口調で言った。「もう過ぎたことよ。どうせ私は大丈夫だから。あの人
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第2374話

鈴が柴尾家の令嬢であるということなど、世間からすでに忘れ去られている。彼女が刑務所から出てきても、再起するのは困難だろう。いつも自分を罠にかけて、殺そうとまで思っていた異父妹のことを咲も許す気はなかった。以前、鈴にされたことを同じように仕返してやるつもりだ。倍返しにはしない分、自分は人が良いだろうと咲は思った。姉と弟二人が話している間に、辰巳はキッチンで料理をしていた。流星は美味しそうな匂いが漂ってくると、姉に言った。「姉さん、辰巳さんって料理もプロ並みなんじゃないの?いい匂いがしてきて、お腹空いた。ご飯食べたくなったよ」咲はにっこりと微笑んだ。「彼が作ったのはとっても美味しいわよ。結城おばあ様は他の名家のご夫人たちとは全く違ってるわ。彼女の教育方法も他とは全然違う。辰巳さん含めて兄弟、従兄弟、全部で九人いるけど、みんな料理が上手らしい。それもおばあ様がそうさせたんだって。彼女はとても食にはうるさいから、孫たちを料理ができるよう育てて、彼女の食欲を満たしてもらうんだとか。実際は自立させる目的なんでしょうけどね。だって、今裕福だったとしても、これからどうなるかなんて誰にもわからないじゃない?自立能力が高く、多才であれば、将来飢えることなんてないし、この社会で生きていけるでしょ。聞くところによると、料理の腕が一番良いのは六番目の律さんらしいよ。理仁さんの弟さんね」律は九人の中でも、もっとも控えめな性格をしているらしい。咲も彼とはまだ挨拶をしたことはない。咲と辰巳の婚約パーティーでは、律は他の都市に料理の腕を競う大会に出ていたらしく、実際にまだ会えていない。しかし、あと二日もすれば理仁と唯花の結婚式が行われるから、律は必ず出席するはずだ。辰巳の婚約者である咲だけでなく、理仁の妻である唯花でさも、律と接触する機会が少ない。唯月が離婚する前、陽が佐々木家によって田舎に連れ去られた時、理仁たち若い世代で星城にいる者はみんな助けに向かった。あの時は律も星城にいたので、もちろん一緒に田舎まで来てくれた。しかし、あの時、唯花の意識は完全に甥のほうに向けられていて、理仁の兄弟や従兄弟たちに関心を向ける余裕はなかった。流星は笑って言った。「結城家のおばあ様なら星城で一番聡明な人だって言われてるよね。旦那さんはそんな良
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第2375話

流星は言った。「……なんだか、僕に食べられるものなら、なんだって良いみたいに聞こえるんですが」「そんなことないさ。だって、流星君が自分で言っただろう、好き嫌いはないんだって。まさか、本当は好き嫌いがあるのかな?」流星は言葉を詰まらせた。確かに好き嫌いはない。そうだったとしても、好きな食べ物くらい聞いてくれたっていいじゃないか。「辰巳さん、時間がある時、料理を教えてくださいよ」「俺はいつだっていいから、流星君が時間がある時じゃないとね。君は大学生なんだから、あっちで勉強しないと」辰巳は流星に料理を学びたくても、時間を作らないと、と注意した。それで流星はこう言った。「……冬休みになったら、教えてください」「いいよ。どんな料理を作りたい?俺ができる料理なら、なんだって惜しみなく伝授しよう」心を開いて接してくるようになった未来の義弟に、辰巳は穏やかな気持ちになって、彼に料理を教えてあげる気になった。料理を学ぶといっても一日や二日でマスターできるものではない。長い時間かけて何度も練習したり、工夫し、コツを掴む必要がある。そうしてようやく美味しいものが作れるようになる。辰巳たちはみんな小さい頃からおばあさんに叩きこまれてきたのだ。だから、もう二十年以上もの料理歴がある。流星は冬休みになってやっと時間ができる。それだけでは何年かかっても、辰巳ほどの腕にはならないだろう。「辰巳さん、ありがとうございます。姉さんは美味しいものをいつでも食べられて、本当に幸せ者ですね」辰巳は笑った。「それはもちろん」「辰巳さん、これから先、姉さんのことを頼みます」「彼女は俺の妻だよ、それはもちろんのことだ。安心して、俺は奥さんのことをこれでもかって可愛がるタイプだから」流星はその言葉に少し口角をひきつらせた。「まだ結婚してないじゃないですか」「咲が目が見えるようになってから結婚式をしていいって言ったんだよ。今はまだ回復途中だろう。先生も年末あたりにはかなり回復するだろうって言ってた。その頃に結婚式ができる。年末か、新年明けてからでもいいんだ」どのみち、二人は婚約してしまったから、彼女ももう逃げられない。結城おばあさんから与えられた任務を彼は見事完遂し、美しい妻を手に入れたのだ。辰巳はこれに関して
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第2376話

辰巳はずっと咲を気遣い優しく接していた。以前、彼女が全く目が見えなかった時、二人で食事をする際にはいつも彼女の面倒を見てあげていた。咲は魚が好きだが、骨がある。それで彼は咲が安心して食べられるように骨を全部とってあげていた。誰かを世話するようになると、もう癖になってしまう。辰巳は咲におかずを取り分けてあげ、咲のほうは流星に取り分け、こう言った。「さあ、辰巳さんが作った料理を食べてみて、とても美味しいわよ。五つ星ホテルに入ってるレストランにも負けないんだから」今回の食事で、流星は苦しくなるほどたらふく食べた。食べ過ぎて壁に手をついて支えにしそうなくらいだ。そして流星はソファに座ると、常に自分のふくれた腹を撫でていた。食卓を片付け、食器を洗い終わってキッチンから出てきた辰巳は、流星がお腹を抱えている様子を目にした。流星の傍まで寄ってくると笑って言った。「別に飢えてたわけでもあるまいし、あんなにお腹に詰めて、ほら、お腹がまんまるになってるよ」「辰巳さん、だって姉さんがあれもこれもって食べさせるんですから。それに、辰巳さんが作った料理は本当に美味しくて、手が止められなかったんです」流星はいつも家にいて自分がお邪魔虫にならなくて良かったと思った。もし毎日一緒にいれば、きっと食べ過ぎて太ってしまうだろうし、何よりも二人の邪魔になってしまう。「暫く座って休憩してから、外に散歩にでも行って消化したらいいよ」咲もとても可笑しくなった。「もう立派な大人なのに、どれくらい食べられるか自分でよくわかってるでしょ?」「だって、姉さんがずっともっと食べろって、俺の皿にのっけてきたんじゃないか。それにどれも美味しいしさ、もう我慢できずにどんどん食べちゃったんだよ」「ちょっと、私のせいにしないでよ。ただ、それぞれちょっとずつあなたのお皿に取り分けてあげただけでしょ。あなたがひたすら箸を休めないからよ」流星は丸くなったお腹をさすって言った。「わかったよ。自分のせいだ。ちょっと休憩したら散歩してくる」食後に適度な運動をすれば健康でいられる。……これと同時刻の柏浜。辰巳の話では、彼と婚約者は今ラブラブで、奏汰のほうは玲を追いかけるのに苦労しているということだったが……玲は一度女性の服を着て奏汰に見せてくれた。
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第2377話

個室には奏汰と玲だけが残された。玲は手を引っ込めようとしてみたが、くっつき虫がしっかりと掴んで離さないので諦めた。「結城さん、一体いつまで酔っぱらったふりをしているつもりです?」奏汰はテーブルの上に伏せて、片手でしっかりと玲を掴んでいた。「酒、持ってこーい、酒……もう一杯!」玲は不機嫌そうに彼を睨んだ。暫くして、彼女は穏やかな顔に戻った。この男が本当に酔っぱらっているかどうかはともかく、向かい側にあるホテルまでこのくっつき虫を送り届けなければならない。玲は覚悟を決めたかのように立ち上がり、酔っぱらった奏汰の体を支えて個室を出た。奏汰を向かいのラグジュリゾートに送るつもりだ。それから十数分後。玲は奏汰をベッドの傍まで支えて連れていくと、彼をベッドに横たわらせた。ずっと繋いでいた玲の手を、奏汰はこの時スッと離した。彼が横になってすぐに眠りについてしまったのを見て、玲は彼が本当に酔っていたのだと思った。彼女は屈んで彼の靴下を脱がせ、寝るのに楽な姿勢に変えてあげてから、薄い布団を被せ、ベッドの端に座って彼を見つめた。見ていると、思わず彼の頬をつねって言った。「彼女として一緒に結婚式に参加するのを断わっただけでしょう。そこまで拗ねる必要がありますか?まるで水みたいにお酒を飲んで酔っぱらって。今までこの姿で生きてきて、やったことなんて一度もないから、唯花さんのブライズメイドなんて務まりませんよ」玲は唯花からブライズメイドの一人になってくれないかと誘いを受けていた。しかし、玲はそれをやんわりと断わった。玲はまだ、奏汰のために自分が女だという事実を公表するか迷っている。それに、過去にブライズメイドをした経験はないから、唯花からの誘いを断わった。新郎側のサポートであれば、過去何度か務めたことがある。柏浜で、ビジネス界の大物の息子が結婚する時に、相手がその息子のグルームズマンになってくれないかと頼まれたのだ。両家の会社は深い付き合いがあるので、玲は断わらなかった。だからグルームズマンをした経験はあるが、ブライズメイドなどやったことがない。唯花も玲のことを理解し、断わられても責めるようなことはなかったが、奏汰のほうはこうして数日ずっと悶々とした様子でいる。あの日、玲はワンピースを着て奏汰に
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第2378話

今、玲の両親と弟は、みんなで奏汰の応援をしている。玲は初めは奏汰を嫌っていたが、今はすでに受け入れてしまった。手強い女性でも、しつこく攻めれば負けてしまうのか。「女性の格好をしてもしなくても、あなたは私が女だと知っているから、付き合うのは問題ないでしょう。もし、周りの目を気にするようなら、あなたもこうやってしつこく私を口説いてこなかったはず。誰かが何を言っても気にしないで、私たちが楽しくやっていけばそれでいいことです。あなたに約束できることは、もし将来私たちが本当に結婚することになった場合、ウェディングドレスを着て見せてあげることくらいです。その日、私は完全な形で女性に戻ります。その時になれば世間もあなたが普通に女性に興味がある人なんだってわかるでしょ」少し考えて、玲はふいに笑った。「その時、もしかして、私があなたに女性の格好をさせられているとみんなに思われるんじゃないかな」夢の世界にいる奏汰は答えをくれなかったが、確かにその可能性はゼロではない。世間は奏汰が「攻め」で、玲が「受け」だと思っている。この間、奏汰が玲に女性用の贈り物をしたのをある社長に見られてしまい、彼が二人を見つめる眼差しは本当に言葉では言い表すことができなかった。玲は前屈みになり、奏汰の頬にキスをした。奏汰が深く寝ていたので、彼女は彼の唇に何度かこっそりキスをした。「しっかり休んでください。私は会社に戻ります。夜、目が覚めたら一緒に食事をしましょう。もし、夜も寝ているのなら、私は顧客と会食してきます」そう言うと、玲はベッドの端から立ち上がり、ポケットから飛行機チケットを数枚取り出してベッドサイドテーブルに置いた。それは事前に予約しておいた星城へ行くチケットだ。明日の朝八時二十分発のフライトで、昼には星城に到着する。琴ヶ丘に戻って昼食をとるのに十分な時間だ。奏汰はプライベートジェットで行こうと言っていた。しかし、玲は結婚式に参加するなら時間は十分あるから、それではなく普通の旅客機で行こうと思った。結城家が持つ個人の小さな飛行場は、ここ数日恐らくプライベートジェットで溢れるだろう。白山家は駐機する場所がないかもしれないので、プライベートジェットで行くのはやめておいた。理仁と唯花の結婚式なら、悟と明凛の時よりもさらに盛大なものに
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第2379話

玲は冷ややかな瞳で若葉を一瞥し、去ろうとした。ボディーガードたちは二手に分かれた。片方は若葉が近づかないように、彼女を阻止する役割。もう片方は、玲の周りをかためて離れない。この光景は周りの人の注目を集め、みんなホテルの入り口に野次馬となって集まった。ホテルのスタッフは何度もこのような様子を見ているが、それでも飽きることはなく興味津々のようだった。ラグジュリゾートホテル側は、かなり得意になっていた。彼ら結城社長は多くの名家の令嬢に勝ってきたのだ。白山社長は、ほぼ結城社長の「受け」になること間違いなし!こちらの勝ちだ。「社長、白山社長、ちょっと待ってください。少しだけお話させてもらいたいんです」若葉は必死になって白山家のボディーガードを振りほどき、玲に追いつこうとしたが、彼女では彼らに敵うはずもない。すると彼女の顔から笑みが消えた。玲がどんどん遠ざかっていくのを見て、若葉は玲の背中に向かって叫んだ。「白山社長、私はただ、あなたと一緒に星城の結城理仁社長の結婚式に参加したいんです!」玲がその結婚式に参加するのに、女性のパートナーを連れて行かない。だから若葉は思考を変えて、玲のパートナーになり、理仁夫妻の晴れの姿を一目見たいと思ったのだ。理仁はライバルである奏汰の従兄にあたるが、彼の結婚式には、大物たちが集まってくる。自分が行けば普段考えることもできないような相手に会って、人脈が作れるかもしれない。若葉は自分の将来のために計画をしないといけない。しかし、玲はまるで若葉の叫び声など聞こえていないかのように完全にスルーしていた。ボディーガードたちを従えて、彼女は向こう側へ渡り、グラン・エデンに戻るとすぐに自分のマイバッハに乗り込んだ。白山家のボディーガードはここで若葉から離れた。彼女は狂ったように走って向こう側に渡ろうとした。突然飛び出してきた彼女に驚いた車が急ブレーキをかけて、その瞬間、クラクションが怒りの組曲のように鳴り響いた。若葉はそんなものに構っていられない。彼女はグラン・エデンの入り口まで駆けていったが、玲のボディーガードの車すらこの時確認できなかった。玲の乗る車ならなおさらだ。「また逃げられちゃった」若葉は苛立ってその場で地団太を踏んでいた。こんなに綺麗に化粧をしてき
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第2380話

和子の秘書が電話で凪に伝えた。「副社長、社長がお探しです。手元の仕事はおいて、すぐに来るようにとのことです」「ええ、わかったわ」凪は受話器を置いて立ち上がり、副社長オフィスから出ていった。そう、今凪は黛グループの副社長になっている。周りがそれに納得するかどうかに関わらず、凪は黛家の後継者だ。これは紛れもない事実だから、黛グループと黛一族は将来凪が指揮を執ることになる。表面上ではそうなっている。裏では、凪は黛グループを、本来継ぐはずだった伯母の後代に譲るつもりでいた。凪の従姉であると判明した詩乃は、未だに動きはない。唯月のほうもさっぱりだ。凪は星城のほうでは、近日中に結城家の御曹司である理仁と唯花の結婚式が行われるから、それが終わってから動きを見せるのだろうと予想していた。嵐の前の静けさ、とはこのことだろう。最後には、詩乃とは穏やかな従姉妹関係におさまり、唯月姉妹とも親族としてその仲を続けていければと凪は思っている。凪はすぐに母親のいる社長オフィスにやって来た。彼女はドアをノックした。和子の返事が聞こえてから中に入っていった。「社長、お呼びでしょうか」会社で、凪が和子を「お母さん」と呼ぶことはなかった。公私混同しない主義なのだ。「ええ」和子はデスクの前に座っていて、その目の前には招待状が置かれていた。それは今送られてきたものではなく、早い段階で送られてきたものだった。「座りなさい」和子は淡々とした口調でそう言った。凪は母親の向かい側に座り、その招待状に目を向けて尋ねた。「これは、星城の結城家から送られてきたもの?」和子は頷いた。「もうすぐ結城社長の結婚式が行われるわ。招待状を受け取った星城以外の都市から来る人はみんな事前に動いている。私たちも幸いなことに、あちらから招待状が送られてきたの」和子はまさか理仁のほうから結婚式の招待状が送られてくるとは思ってもいなかった。結城家と黛家には関りなどない。若葉は玲のことが好きで、今では結城奏汰とライバル関係にある。それなのに、突然理仁から招待状が送られてきたので、和子は星城に行くべきなのかずっと考えていた。彼の結婚式に呼ばれた彼女にしてみれば、何か裏があるのではないかと疑ってしまうのも当然だった。和子は
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