Semua Bab 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Bab 2611 - Bab 2620

2636 Bab

第2611話

辰巳は何も言わず、ただ即座に上着を脱いで、そのままキッチンにあるゴミ箱に放り込もうとした。「辰巳」咲はさっき彼がゴミ箱に捨てようとしたあの上着を取りあげ、心配そうに尋ねた。「何か言ってよ。一体さっき何があったの?鈴が何かした?ねえ、言ってくれれば、あの子を厳しくしつけるわ。あなたに手を出そうとした?」辰巳は怒りに顔を真っ赤にして言った。「あの女、こそこそとキッチンに入ってきて、後ろから抱きついて、もぞもぞと体を触ってきやがった。俺は最初君だと思った。後ろを振り返ってみるとあいつがいて、頭にきたんだよ。押しのけて蹴りを入れてやった。それからここにあるものを投げつけたんだ」「……」咲はまさか鈴が本気で自分の夫に手を出してくるとはまったく思っていなかった。それに、後ろから抱きつき、体を触りまくっただと?辰巳もまさか鈴がここまで大胆な行動に出るとは思ってもいなかっただろう。それで咲だと思い込み、鈴であることがわかった瞬間に、怒りが爆発した。「咲、その服はさっきあのクソ女に触られたから、捨ててくれ!それはゴミだ。君を除いて他の女が俺に触るだと?俺の服に触ることも許せない。汚いやつに触れられた服などいらん!」そう言いながら、辰巳は咲の手からあの服を取りあげ、再びゴミ箱の中に投げ捨てようとした。「私が外に捨ててくるわ。ここに捨てたら、出たり入ったりするたびに思い出して気分が悪くなるでしょ。何度も気持ち悪い思いをするわよ」咲はそう言うと、彼から服を取りあげて、外に出ていった。玄関を出ると、咲は本当にその服を家の外に置いてある大きなゴミ箱に捨てて蓋をした。その時、流星が屋敷の門のほうから歩いてくるのが見えた。咲は立ち止まり、弟が目の前に来てから尋ねた。「鈴は帰った?」「鈴姉さんは必死に逃げていったよ。それより姉さん、一体何があったの?辰巳さんが突然あんなふうに怒り出すなんて、一体何が原因?辰巳さんが鈴姉さんの後ろから食器とか投げつけてるのを見たけど、あれにあたって背中がすごく腫れてたみたいだよ」流星はまさか鈴が辰巳を誘惑しようと思ってやったことだとは思いもしないようだ。「あのバカな子、もう少し逃げるのが遅かったら、辰巳がきっと殺していたわよ。良い事は学ぼうとしないで、母親と同じ人としてどうかと思うような恥
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第2612話

鈴は辰巳のことを恐れているはずなのに、どうしてこそこそと彼を誘惑しに行ったのか。辰巳は見た目は穏やかで優しい紳士だ。ただ、それは表面上そう見えるだけであって、結城家の男たちの中に本当の意味で、そのような人はいない。彼らは時に残酷な手段で相手を苦しめる。辰巳は咲のことを深く愛しているから、彼女にだけ特別に接しているだけだ。そして咲が大事にする人のことを同じように大切にする。だから、流星も辰巳から良くしてもらえているのだ。しかし、鈴に対して、辰巳は一切容赦することはない。辰巳が鈴に本気を出していないのは、恐らく咲がそれを阻止しているからだ。咲は自分の家のことは自分で解決できると思っている。もし咲が止めていなければ、鈴などとっくの昔にその行方はわからなくなり、咲のところにこうやって騒ぎに来るなど絶対にありえなかっただろう。咲が今とても幸せに暮らしているのを見て、鈴は憧れと嫉妬で狂いそうなはずだ。流星は顔をあげた。苦し気に咲に謝罪をしようと思った時には、一体いつ家に戻ったのか、目の前から姿を消していた。彼は暫く自分の思考の世界に浸っていて、咲が離れたことにまったく気付かなかった。その場に立ったまま、流星は足がまるで鉛になったかのように重くて一歩も踏み出せなかった。彼は自分の甘さのせいで、今回の事が起きてしまったことに、責任を感じ、咲に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。辰巳をあそこまで怒らせてしまって、姉はきっと自分にがっかりしただろうと流星は思っていた。そして、鈴のほうはここまで来て何も得られず、辰巳の怒りにすっかり怯えてしまったうえに背中に怪我までしてしまった。見るまでもなく、鈴がどれほどの傷を負ったのか彼にはよくわかった。この時、咲は弟に失望するような暇もなく、夫の気持ちをなだめにいった。咲が家に戻ると、辰巳はすでにキッチンにはいなかった。出来上がった朝食は食卓に並べられていたが、床に散らばる食器の破片はそのままだった。咲は清掃担当の使用人に電話をかけて、そこを片付けるよう指示を出した。電話を切ると、彼女は二階にあがっていった。部屋のドアは閉められていたが、中から内鍵はかけられていなかったので、彼女は入ることができた。すると浴室から水の流れる音が聞こえてくる。辰巳は今シャワーを浴びているら
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第2613話

キスの後、咲は辰巳の胸に寄りかかり、暫くしてからやっと離れた。そして彼の顔に触れ、言った。「これから二度と彼女に指一本触れさせたりしないんだから!私の夫よ。私以外の女なんかに触らせてたまるもんですか!」「咲、その言葉、絶対に守ってね」辰巳の怒りはこの時ほとんど消えていた。鈴にただ後ろから腰に手を回され、そこから胸元をスッと触られただけだ。彼は自分の妻ではないことに気づくと、急いで鈴を押しのけた。「あの女、二度と俺の前に現れないようにしてほしい。そうじゃないと、視界に入るたびに蹴りを入れてやる。今まで女性を攻撃するようなことはしたことはなかったけど、あんな下心の塊の女に対しては、遠慮なくきつく教訓を与えてやる」咲は約束した。「今後は絶対にあなたの視界に入らないようにするから。また来たらあなたが手を出すまでもなく、私が叩き出してやるわ。本当に恥ずかしい子、良い事はまったく学ぼうとしない。モラルの欠片もないことしか学ばないのよ」咲はまた彼の顔を触って言った。「私の旦那さんはとってもカッコいいし、実力がある素敵な人だから、まるで磁石みたいに周りの目を引いちゃうのよね。みんながどうにかしてあなたを手に入れたいと思うんだよ。周りは私があなたには相応しくないって思ってる。私は目が見えないし、柴尾家からも嫌われてるって。私が柴尾グループを継いでから、あなたと来栖さんに頼ってるなんて言われるし」咲は辰巳の告白を受け入れて一緒になると決めた時、このような噂をされることはわかっていた。彼女は小さい頃から育ってきた環境が悪かった。周りからいくら自分のことをどう言われようとも、辰巳が気にせず、嫌うことがなければそれでよかった。「君のことをそんなふうに言っている輩の舌を全部切り落としてやる!」辰巳はまるで毒を吐くかのようにこう続けた。「相応しいだの相応しくないだの、そんなことを赤の他人に言われる筋合いがあるか?俺が君に恋をしたから、結婚して夫婦になりたいと思ったんだ。周りの女には心ゆくまで嫉妬させておけばいいさ。咲、俺は君を唯花さんみたいに、周りから羨ましがられる幸せな女性にしてみせるからな」咲は辰巳のシャツを整えると、幸せそうににっこりと笑って言った。「今、もうそうなってるよ。結城家と婚姻関係を結んだ女性はみ
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第2614話

朝食の後、辰巳はすでに準備していた果物を運んできて、流星の目の前に置き、彼に言った。「これを持ってお姉さんと一緒に食べておいで」流星は慌てて「はい」とひとこと返事した。それから二分後。咲はソファに座り、流星は姉の向かい側に立ち、ぎこちない様子で彼女を見ていた。「自分の家なんだから、何をそんなぎくしゃくしてるの?座ったらどう?」咲はため息をついて、弟に言った。「姉さん、俺は立ったままでいいよ。俺、本当に鈴姉さんがまさかあんな事をするなんて思ってもみなかったんだ。ごめん、姉さん、俺を叱ってくれ」姉が叱ってくれないと、彼は居心地が悪くてしかたなかった。姉が叱ってくれれば、少しは気が楽になれる。「叱るってどうして?あなただって、まさか鈴がこんなことするなんて思っていなかったって言ったでしょ?私だって、あの子がまさかこんな堂々と私の夫に手を出してくるとは思ってもいなかったわ。何も恐れるものがないと言えばいいのか、ただ脳みそが空っぽだと言うべきか。あれはあなたのお姉さんだからね、赤の他人と思えとあなたに言うわけにもいかないでしょう。辰巳はもう私から話して、今彼はだいぶ怒りは静まったから、もうこれで終わりにしましょう。あなたも自分を責めるのはここまで。今日どうしてわざわざ大学を休んで帰ってきたのか、それだけを考えていればいいわよ。鈴の銀行口座を凍結したのは私。だから、彼女がこんな朝早くから私に文句を言いに来たんでしょ。でも、辰巳もいることがわかって、それができなかったのよ。あの人あなたになんて言ってた?彼女は外に置いといて、あなただけ入ってきたんでしょ?お金を要求された?」鈴は銀行カードが使えなくなり、自由にお金を散財することができなくなった。鈴は数十万の現金を持っていったが、鈴の金遣いの荒さと、尾崎家と黒川家が彼女側についていることを考えれば、それは二日と持たず、なくなったころだろう。流星が帰っているのを見て、お金をもらおうと考えたに違いない。流星は咲のほうと親しいが、鈴は彼と同じ両親を持つ姉だ。だから彼がそんな姉を無視することはできないだろう。「鈴姉さんは、今部屋を借りて生活してて、仕事もしてないし、いろいろとお金がかかるって。姉さんに銀行口座を凍結されて、お金がなくなったから、俺にちょうだいって言ってきたん
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第2615話

流星はこの時もまだ後からきた怖さでドキドキしながら約束した。「辰巳さんがいる時に、絶対鈴姉さんを中に入れたりしないよ。ここは姉さんの家なんだから彼女はあまり来るべきじゃないし。姉さん、一緒に父さんたちの面会、ついてきてくれる?」「もちろん」流星はやっと安堵した。咲が怒っていないのなら、彼はそれでよかった。三十分後。咲と流星は車で出かけた。その後ろには一台、ボディーガードの車がついている。辰巳は屋敷の門の前に立ち、二人が遠ざかっていくのを見送ってから、自分の車のほうへ歩いていった。彼は二人と一緒には行かなかった。本来ついていく予定だったが、鈴が来て不愉快な思いをさせられたおかげで、彼は柴尾夫婦には会いたくなくなった。どのみちあの性根の腐った夫婦の中で、辰巳は婿として思われていないだろう。結城グループ本社。今まで一度も見たことのない女性が本社ビルのゲート前をうろうろし、何度も中に入ろうとして、また足を止めていた。警備員はその彼女のことを長い間、警戒するように見張っていた。辰巳が会社のゲート前まで来た時、その女性は勇気を出した様子で、突然彼の車の前に立ちはだかった。警備員が暫く警戒していた女性が、なんと副社長の車両を邪魔したものだから、彼は驚き、急いで警備室から飛び出して、その女性を追い払おうとした。辰巳が車の窓を開けて、その女性を見てみると、まったく知らない女性だった。それなら、車を止めて何をしたいのだろうか。ここに咲がいなくてよかった。もし一緒にいたら、咲はきっと辰巳が他の女性に目をつけられて追いかけ回されていると勘違いしていたところだろう。「何かご用でしょうか?」辰巳は低い声で尋ねた。「あの、すみません、ちょっとお尋ねしたいことがあって、ある人がここで働いていないか知りたいのです」「誰でしょう?」警備員「……」この女性は人を探しに来たわけか。それならどうして警備室に来て尋ねないのか。わざわざ副社長の車を止める必要があると?まさかそれを口実に副社長に言い寄るつもりなのでは?彼はあの結城家の御曹司だというのに。「その……結城拓真さんという方はこちらにいるでしょうか?彼を探しているのですが、連絡先がないんです。ただ、彼の名前は知っているんです。聞いた話だと、結城さんとい
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第2616話

女性は明らかに辰巳の話を信じていないようだ。辰巳は笑って言った。「確かにここは結城グループだし、結城という名字の人間はここでたくさん働いています。でも、グループには多くの会社があって、様々な業界、業種があるんです。だから、全ての結城家の人間がここで働いているわけではないんですよ。彼らは他の会社で働いているんです。それに、結城という名前だからといって、グループで働けるとは限りません」結城家出身でも、能力がなかったり、もしくは結城グループ内で働きたくない人は、それぞれどこかへ行き、他の会社で働いている。「そうだったんですね。じゃ、私ったらかなり単純な考えを持っていたようです。すみません、お邪魔してしまって」その女性は、辰巳の言うように、結城という名字だからといって結城グループで必ず働くわけじゃないと確かに思った。だから結城拓真は本当にここでは働いていないのだろう。彼女は一体どこに彼を探しに行けばいいのかわからなかった。あのバカ野郎、逃げられると思うなよ。見つけたら目にものを見せてやる!と頭の中で思い、女性はすぐにその場を去っていった。警備員は急いで会社のゲートを開き、辰巳の車を通した。辰巳は車を駐車場にとめて、車をおりた。それから携帯を取り出して、オフィスビルのほうへ歩きながら拓真に電話をかけた。弟が出ると辰巳は尋ねた。「拓真、お前何か悪いことでもしたのか?」「兄さん、今会議中なんだよ。何か用なら十分後にまたかけなおしてもいい?」この時拓真は確かに会議中だった。彼は理仁と同じく、会議の最中は全員に携帯をマナーモードにするよう指示をしている。会議の間は電話に出てはいけない。彼自身が電話に出ても、一言二言ですぐに電話を切ってしまう。「わかった。十分後、俺からまたかけるよ」辰巳は電話を切った。そしてビルに入っていった。その時、悟が中からちょうど出てきて、二人は会社のロビーでばったり会った。悟の後ろには数人の管理職たちがついていた。彼ら一行はこれからスカイロイヤルホテルで商談をする予定だった。辰巳を見ると、管理職たちは次々挨拶をし、辰巳は軽く頷いてから、悟に尋ねた。「ホテルに行くんですか?」「ええ、辰巳君が来たのなら、十時からの会議はお任せします。俺は間に合うかわからないんで」悟
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第2617話

「拓真、お前一体彼女になにをしでかしたんだ?向こうはお前を探しに直接会社まで来たんだぞ」拓真は尋ねた。「……女性って、なんて名前?」「教えてくれなかった。お前、まさか彼女の物でも盗んだのか、それとも彼女に何かつけこむような真似でもしたのか?彼女、お前の話をしている時、どうも悔しそうにしてたぞ。仕返しに来たんじゃないのか?」その女性が自分を探しに来た理由を言わなかったと聞き、拓真は言った。「兄さん、俺がそんな男に見える?うちは裕福で何も不自由してないよ。それなのに誰かから何か盗む必要なんてある?それは逆だろ、誰かがうちに盗みに入るのが妥当だ。それに、その誰かにつけこむような事するわけないだろ?彼女はきっと人を間違えてるんだ。俺だって若い女の子なんて知り合いに数人いるかいないかだよ。普段も関わる人はもっと年上の女性ばっかりだ」その女性とは結城家の御曹司である拓真とビジネスで競争できるほどの手強い女性で、年齢はだいたい四十を超えている。辰巳は言った。「もしかして、ばあちゃんがお前に決めた結婚相手候補とか?」拓真はそわそわした様子で言った。「いや、絶対に違うよ。だって、俺はまだ行動し始めてないんだ。ばあちゃんが選んだのは富豪家のご令嬢で、名家の淑女だ。でも、俺がいつも夢で会うあの女性は、ばあちゃんが選んだ人とは別の女性だ。俺、将来結城家初、バツ一男になるんじゃないか怖いんだよ。だから、まだ動いてないの。ばあちゃんにも、その結婚相手候補を変えてくれって頼みに行ったけど、断わられた。自分で解決しろっていうんだけど、じゃ、一体どうやって解決しろってんだ?どのみち、もう一年後の正月は実家に帰れないって覚悟は決めたよ。ばあちゃんは口ではああやって頑固に言うけど、実際年越しの時に俺の姿がなかったら、可哀想になって実家に帰ってこいって言うはずだ」拓真は自信満々で続けた。「ばあちゃんは年を重ねるほどに、子供や孫に囲まれるのが幸せだって気持ちを強めてるだろ。孫が一人欠けてるだけで、年越しそば食べる時には味が感じられないよ、きっと」辰巳は余裕そうに笑った。「拓真、お前奏汰みたいに半年もグダグダしてやっと行動し始めるなんてやめておけよ。あいつ、今になっても白山さんの正式な彼氏になれてないんだ。ただ、噂の中での彼氏だよ。彼女も
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第2618話

拓真は夢の中でいつまでも自分と絡んでくる女性に実際に出会っただけだ。そしてちょっとだけ相手を怒らせることをしてしまった。実際、彼はその相手の名前すらも知らないというのに、相手はまさか彼の名前を知っていて、星城にある会社まで探し出したらしい。悪い事をした後は、やはり心がそわそわして落ち着かない。悪い事と表現したが、拓真は自分がしたことは別にひどい事のうちに入らないと思っている。それでも、とても心が重くなり、兄から何か聞かれてしまうのではないかと不安になっていた。……理仁は唯花と一緒に病院に来ていた。唯花は綺麗な花束を抱きかかえ、理仁はいくつか袋を提げていた。夫婦はボディーガードたちは連れずに、目立たないようにしていた。それに、わざと黒のサングラスにマスク姿で、誰なのか周りにはわからない格好だった。二人はエレベーターで病室フロアまで上がり、エレベーターをおりると唯花は足早に歩いていった。理仁はそんな彼女の後に続き、小声で注意した。「唯花、そんなに早く歩かないで。近いんだから、そんなに焦ってどうするんだ」「理紗さんが今日退院するんだもの」理仁は微かに笑った。「退院するんだから、俺たちだって直接お宅にお邪魔してお子さんに会わせてもらえばいいだろう」唯花は子供がとても好きだ。彼女はもとから子供好きな人間で、妊娠してからは母性でも出てきたのか、今まで以上に好きになってしまった。「私は会えるけど、あなたは一カ月のお祝いにしか会えないわね」唯花は速度を落とし、振り返って夫に笑いかけた。「私は毎日でも会いにいけるわ」「あの子は神崎社長の息子だ。俺の子供じゃないんだから、一カ月会えなくたってどうでもいいさ。もし俺の息子だったら、毎日会いたいと思うけどね。君が来年出産したら、俺も一カ月以上育休をとって、家で君のお世話をするよ。俺たちの子供の成長を毎日一緒に楽しもう」唯花は言った。「……あなたが出産するんじゃないんだから、別にそんなに長く休む必要ないわよ。だって家にはたくさん他にも人がいるんだし、育休をとって、妻と子供のお世話をする必要はないわ」「俺は君の傍に付き添っていたいんだよ。君は俺のために子供を産んで育ててくれるんだから、大変だろう。俺はただ仕事を休んで君たちのお世話をするだけで、君がしてくれること
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第2619話

「理紗さんが今日退院できるって聞いて、花束をって思ったんです」唯花は部屋の中を見渡して笑って言った。「まさか、みんなも私とまったく同じこと考えてたなんて。もう荷物はまとめてしまいました?何か手伝うことがないなら、代わりに花束を持ちますよ」唯花はそう言いながら思わず笑ってしまった。理紗が出産して退院する様子はかなり大袈裟な光景だった。理仁と唯花はみんなと一緒にそれぞれに花束を抱きかかえていた。二人は歩きながら常に相手と目を会わせて笑い合い、甘く幸せな気持ちだった。一行は病院を出て、駐車場に向かう予定だ。駐車場は病院の入り口の目の前にあって、彼らが外に出る時には受付の前を通り過ぎる。その時、理仁と唯花はその受付付近でちょうど前から来る鈴とすれ違うことになった。二人はまったく鈴には気付かず、みんなもサングラスにマスク姿だった。鈴は長い間刑務所に入っていたし、唯花もすぐには鈴だとわからなかった。鈴と通り過ぎる時に全員が気付いていなかった。そして理仁と唯花と通り過ぎる時に、鈴は唯花の話し声が聞こえ、急にその場に立ち止まった。彼女は振り返り、唯花のほうへ視線を追った。憎き仇に遭遇し、鈴は怒りに目を真っ赤にさせた。鈴はこの時、即座に唯花のほうへ駆けていき、ナイフで刺し殺してしまいたい衝動に駆られた。彼女は数歩前方に進んでからまた足を止めた。だめだ、衝動に駆られてはいけない。鈴はこの時何も用意などしていなかった。そもそもナイフどころか、ペンですら持っていない。それに、後先考えずに人を殺すなら、彼女もその命で償う必要が出てくるかもしれない。一度自由を失った鈴にとって、外に出て自由に行動できることはとても貴重なことになっていた。復讐のために、またその身を地獄に落としたくなかった。鈴はぎろりと唯花の背中を睨みつけた。唯花は理仁に体を支えられて車に乗り、すぐに理仁も続いて車に乗り込んでいった。そして二人の乗った車のエンジンがかかり、ゆっくりと遠ざかっていった。「クソ女!」鈴は悔しそうに歯ぎしりをして、声を絞り出した。「いつか必ず、生き地獄を味わわせてやる!」彼女は唯花が去っていった方角へ拳を上げて怒りを発散させるように下に勢いよく振り下ろした。そのせいで背中の傷に影響し、痛みで顔を歪めた。今朝早く、柴尾
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第2620話

辰巳は凶悪な顔つきで、鈴に向かって失せろと怒鳴り散らした。そして周りにある手に取れるものを何もかも投げつけてしまった。彼女はかなり驚いて、反射的に床から這い上がりすぐに逃げ出した。彼女の動作が機敏であんなに早く逃げたというのに、辰巳が投げた食器が背中にあたって割れて、かなりの怪我を負ってしまった。彼女は命かながら逃げ出し、かなり遠くまで来て、やっと立ち止まった。その場でまた暫くの間待って、車まで戻り、今借りて住んでいる部屋に戻っていった。背中の傷には自分で薬を塗ろうと思ったが、かなりの激痛だったため、病院に行き医者に診てもらって、薬をつけてもらうしかなかった。病院は今日人が多く、しばらくかかってから今ようやく出てきた。そこでまさか理仁夫妻に出くわすとは思ってもいなかった。理仁と唯花はボディーガードたちを連れず、二人ともサングラスにマスク姿だったが、鈴は唯花の声に反応した。鈴にとって最も憎むべき存在は唯花だ。だから彼女の声は脳裏にしっかりと残っている。「クソ女にめくら、待ってなさい、私が受けた苦しみを一つ残らず返してやる。それに倍返しにしてやるから!」唯花が妊娠したことを鈴は聞いていた。結城家は公に発表してはいないが、二人の結婚式では唯花はお酒を飲もうとしなかったので、周りがきっと妊娠したのだろうと予想したのだ。あのクソ女、本当に運が良い!鈴は嫉妬で発狂しそうだった。刑務所から出てきて、鈴も二人のおばから聞かされていた。唯花は結婚した後、いつまで経っても妊娠せず、みんなは彼女が不妊なのだと噂していた。それが今では妊娠してしまっている。唯花にとって、今回の妊娠にはかなり苦労したはずだ。鈴はどうにかして唯花を流産させれば、それはそれはスカッとするだろうと考えた。それからあのめくらだ。もし、あいつが一生子供ができなかったら、夫からいくら愛されていたとしても、子供一人産めないような妻を一生愛することができるだろうか?夫の親やその周りが咲と彼が一生子供を持たないことを受け入れられるか?鈴は突然、復讐の目標ができた。まずは唯花のお腹の子供を流産させること。それと、咲に一生子供が産めなくさせること。「あはははは!!」二人の結末を想像し、鈴は大笑いした。まるですでに復讐が成功したかのような喜びようだ。
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