息子と唯月がまだ離婚していなかった頃、佐々木母は成瀬莉奈に会って、息子の目は肥えていると思った。息子が唯月を裏切る行為をしてもそれは正しく、息子には魅力がとてもあると思っていたのだった。夫や父親となっても、成瀬莉奈のように若くて綺麗な女の子に好かれるのを誇りに思っていた。そして、彼女が莉奈と同居するようになってから、ようやく気づき、唯月のほうが良かったと思っているのだった。莉奈のほうなら綺麗な飾りものとして傍に置き、お茶汲み程度ならできるだろう。一緒に生活するのは佐々木母もどうも気に入らないらしい。しかし、飾り物としては莉奈はあまりにも自分の主張が強くて甘えるのが上手だった。彼女と娘の英子は手を組んで莉奈に対峙したが、二人をもってしても莉奈には口で敵わなかった。あの女狐は息子の前で甘えて、つらそうな表情をして見せ、それを見た息子は毎回心を痛めるのだ。佐々木母はその情景を頭に思い浮かべて、あまりの怒りで心臓が締め付けられる思いだった。「あんたの可愛い娘はどうしたのよ?あんた達親子は一緒にいて話し合うのが好きでしょう。娘に話しなさいよ」佐々木母は少し黙ってから言った。「英子たち夫婦は今日会社から電話がかかってきて、業績が悪いから、年が明けたらもう会社に来なくていいって言われたらしいわ……だからあの二人は私よりも鬱憤が溜まってるから話そうにも話せなくて」あの夫婦は二人仲良く同時に失業したのだった。たとえ柏木輝夫には仕事を辞めて起業しようという気持ちがあったとしても、年越し前に会社側に先にクビにされて、さすがにショックを受けていた。「あなたのお義兄さんはね……」「今、私には義兄なんかいないんだけど」唯花は容赦なく佐々木母の言葉を訂正した。「唯花さん、そんな冷たいこと言わないでちょうだいよ。あなたのお姉さんと義兄さんはもう十二年という長い付き合いなのよ。夫婦になって三年も一緒に過ごしたんだし、陽ちゃんだって変わらず俊介の息子でしょう。あの子たち離婚してまだそんなに日は経っていないでしょ、どうしてそんなに態度をガラリと変えて冷たくするのよ。前、お義兄さんだって、あなた達姉妹のことちゃんと面倒見ていたでしょ。確かに俊介が間違いを犯して、あなたのお姉さんを裏切ったわ。あれは……」佐々木母は唯月の悪口を言うのに慣れてしまって
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