All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 741 - Chapter 750

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第741話

息子と唯月がまだ離婚していなかった頃、佐々木母は成瀬莉奈に会って、息子の目は肥えていると思った。息子が唯月を裏切る行為をしてもそれは正しく、息子には魅力がとてもあると思っていたのだった。夫や父親となっても、成瀬莉奈のように若くて綺麗な女の子に好かれるのを誇りに思っていた。そして、彼女が莉奈と同居するようになってから、ようやく気づき、唯月のほうが良かったと思っているのだった。莉奈のほうなら綺麗な飾りものとして傍に置き、お茶汲み程度ならできるだろう。一緒に生活するのは佐々木母もどうも気に入らないらしい。しかし、飾り物としては莉奈はあまりにも自分の主張が強くて甘えるのが上手だった。彼女と娘の英子は手を組んで莉奈に対峙したが、二人をもってしても莉奈には口で敵わなかった。あの女狐は息子の前で甘えて、つらそうな表情をして見せ、それを見た息子は毎回心を痛めるのだ。佐々木母はその情景を頭に思い浮かべて、あまりの怒りで心臓が締め付けられる思いだった。「あんたの可愛い娘はどうしたのよ?あんた達親子は一緒にいて話し合うのが好きでしょう。娘に話しなさいよ」佐々木母は少し黙ってから言った。「英子たち夫婦は今日会社から電話がかかってきて、業績が悪いから、年が明けたらもう会社に来なくていいって言われたらしいわ……だからあの二人は私よりも鬱憤が溜まってるから話そうにも話せなくて」あの夫婦は二人仲良く同時に失業したのだった。たとえ柏木輝夫には仕事を辞めて起業しようという気持ちがあったとしても、年越し前に会社側に先にクビにされて、さすがにショックを受けていた。「あなたのお義兄さんはね……」「今、私には義兄なんかいないんだけど」唯花は容赦なく佐々木母の言葉を訂正した。「唯花さん、そんな冷たいこと言わないでちょうだいよ。あなたのお姉さんと義兄さんはもう十二年という長い付き合いなのよ。夫婦になって三年も一緒に過ごしたんだし、陽ちゃんだって変わらず俊介の息子でしょう。あの子たち離婚してまだそんなに日は経っていないでしょ、どうしてそんなに態度をガラリと変えて冷たくするのよ。前、お義兄さんだって、あなた達姉妹のことちゃんと面倒見ていたでしょ。確かに俊介が間違いを犯して、あなたのお姉さんを裏切ったわ。あれは……」佐々木母は唯月の悪口を言うのに慣れてしまって
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第742話

「あたしったら、本当にこの年になって新しい発見をしたわ、あの一家は娘を嫁がせるんじゃなくて、娘を売ってんだよ。こっちにあんなに高額な結納金を出させようってんなら、あっちだって数百万は出すべきだろう。あいつら、新しいシーツセットと、電動バイクをプレゼントするって言ってきやがった。電動バイクよ!あなたのお姉さんはよっぽど偉かったわ。自分で何百万円も家の内装費を出してくれてさ。当時、まだ社会人になってそんなに経っていなかったのに、お姉さんが俊介と結婚する時にはあなただってお金を出してお姉さんのために家電やら生活に必要な物を買ってくれたでしょ、それはお姉さんの家族として当然だって。なのに、あの成瀬莉奈ときたら、一円たりとも出そうとしない、ただ俊介の金を食いつくすだけだよ」唯花はそれを聞いていて、心の中で冷ややかに笑っていた。姉のほうがもちろん成瀬莉奈よりずっと立派だが、佐々木俊介はそれでも不倫したじゃないか。佐々木家のような人間には、成瀬莉奈のような女がお似合いだ。人として最低な佐々木一家が、彼らを上回るほどの自分勝手でクズな性質を持つ成瀬家と出会ったのだ。ははは、これから両家の生活はそれはそれは美しいものになるだろう。唯花は彼らの家の近くに引っ越してきて、毎日両家の争いをポップコーン片手に見ていたいと思った。「成瀬家は、豪華な披露宴まで要求してきたんだ。式当日には新婦側の親戚が参加するって。佐々木家のほうはそいつらのために高級ホテルを予約し、全員の交通費まで支払ってくれって」佐々木母はどんどん怒りを増していった。「何がお嫁さんをもらうだよ。一家で一番位が高い偉そうな女王様をもらうってことじゃないか!唯花さん、おばさんは本気で間違いに気づいたんだ。陽ちゃんのためにもお姉さんを説得して、俊介と復縁させてくれないかい?」この言葉を言う時には佐々木母は声のボリュームを抑えて、唯月に聞かれないようにした。唯花は皮肉交じりにこう言った。「今のあんたね、まだ息子のことを勝手に決められる?決められないでしょ?成瀬って女に家の権限を取られてるんじゃないの?今あんたの息子は彼女のことしか聞かないんだから、あんた、黙った方がいいわよ。また何か言って彼女に知られたら、今後家にも入れてもらえなくなるかもよ。復縁させてくれって?私にお姉ちゃんを説得してあの
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第743話

佐々木母を脅かして帰らせると、唯花は姉に言った。「お姉ちゃん、今後あの人が来ても家に入れさせないで。玄関に椅子でも置いて、お茶とおつまみも準備して、あなたがそこに座ってお菓子を楽しんでよ。あの人の愚痴を赤の他人として聞いてやればいいのよ」理仁も言っていたが、佐々木母が陽をまた誘拐しに来たのでなければ、あまり構う必要はない。ただ彼女の愚痴を聞いて、あのクズ男と最低女の続きを聞くだけだ。「私は一切関わりたくないけど」唯月の行動から、彼女が本気で元姑を相手にしたくないのがわかる。いつもいつも彼女のところに訴えに来て、佐々木母は一体何を考えてるのか理解できなかった。普通であれば、佐々木母は唯月に彼ら佐々木家の今の騒動を聞かれたくないはずだ。しかし彼女は自ら息子と莉奈のその後をわざわざ教えに来るのだ。そうすれば唯月の心に変化があるとでも考えているのだろうか?全く笑ってしまう。「唯花、何を作ってるの?なんだか焦げ臭いけど」「あ!忘れてた!」唯花が急いでキッチンに戻った頃には、鍋の中は真っ黒焦げになっていた。あの佐々木母のせいだ!唯花はもう一度作り直すしかなかった。姉のところに遅くまでいて、唯花はトキワ・フラワーガーデンに帰り、理仁の帰りを待った。このような日を数日過ごして、結城グループの年末パーティーの日になった。理仁は唯花に招待状を持って帰ってきた。パーティーの開始時刻は夜七時半だった。実際は開始時刻は夜の七時なのだ。七時から七時半の間は、理仁は社長として挨拶をしなければならない。理仁は今自分の正体を隠すために、妻に知られないように小細工しているのだ。七時になって、明凛と涼太はトキワ・フラワーガーデンに到着した。「私はてっきり、あなたは九条さんのお誘いを断ると思ってたけど」唯花は玄関を開け、親友とその弟を部屋に入れた。明凛も彼女と同じように綺麗なドレスを身にまとい、手にはキラキラしたパーティーバッグを持ち足下には高いヒールを履いているのを見て、唯花は明凛をからかうように言った。明凛のほうは笑って「だってパートナーになってくれたらお金くれるって言うんだもの。彼のイケメンっぷりに負けちゃうことはないけど、お金の誘惑にはさすがに勝てなくて」と言った。悟は明凛を女性パートナーとして誘った。二人
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第744話

涼太と明凛はとてもよく似ている。姉弟の二人はどちらも美男美女で、涼太はまだ若いから見た目ではまるで高校生くらいだった。「それはまずないでしょ。最初みんなが結城社長は男が好きなんじゃないかって噂してたけど、結局そうじゃなくて彼には奥さんがいることが判明したじゃないの」明凛は小声で言った。「だけど、九条さんってうちの弟に良くしすぎてるのよ。なんていうかまさに溺愛?彼が心から愛しているスポーツカーまであの子に貸してあげるくらいよ。あなただって知ってるでしょ、男が他人に貸したくないものといったら、第一に車、それに奥さんよ。だから私九条さんが弟に、うん、何か気持ちがあるんじゃないかって思ってるの。だから、ちょっと探りを入れてみてもらえない?もし彼が本当に男のほうが好きなら、今後は弟に近づけさせないようにしなくちゃ」唯花「……彼の意図は別のところにあるとは考えないの?彼の本当の目的はあなたよ」先に弟である涼太を味方につけておいて、明凛を攻略するのを手伝ってもらおうという魂胆だろう。たとえば、涼太を食事に誘ったら、明凛は自分が弟に裏切られるのではと考え一緒についていっているだろう?明凛「……」唯花は笑って言った。「あなたいつもあんなに男が妻を溺愛する系の小説ばかり読み漁ってるのに、何もわかってないのね」明凛は口を開いて、それに反論したかったが、親友が言うことにも一理あると思った。「プルプルプル……」唯花と明凛の電話が同時に鳴り響いた。唯花のほうが先に出た。「理仁さん、今から出発するわ。だいたい十数分で会社に到着するから、後で会社の前で待っていてね」明凛も電話の相手である悟に言った。「お金を受け取ったからにはしっかり役目を果たしますよ、九条さん、安心してくださいね。お金をもらって逃げるような真似なんかしませんから。今夜はこの牧野明凛がいるかぎり、お宅の会社の女性社員たちにはあなたに指一本触れさせませんから!」悟は笑って言った。「カッコイイ!」さすが大金をはたいて頼んだ女性パートナーなだけはある。「そちらに迎えをよこします」悟は優しく言った。「結構ですよ、弟に私と唯花を送ってもらいますから。パーティーが終わったら、またこいつに迎えに来させますので」悟は笑って言った。「牧野さんはいつも俺にチャンスをくれませ
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第745話

「星城に住んでる人なら誰だってこの噂を気にしてるわよ絶対。みんな結城社長と奥さんの正体を知りたがってるんだから。それに、奥さんが一体結城社長をどうやって落としたのか気になって仕方ないのよ」明凛は笑って言った。「みんなきっとその奥さんから男の落とし方を学びたいと思っているはずよ。だって結城社長って難攻不落で有名だったじゃないの。それが彼女は見事彼のハートを撃ち抜いたわ。彼女は私たち女性にとって憧れの的で模範したい人ナンバーワンよ。私たちは彼女からハイスペック男子の落とし方を学ぶの。唯花、特にあなたはもう旦那さんがいて、その旦那さんはものすごいイケメン。絶対多くの女の子たちが彼のことを狙ってたはずよ。もし彼が一日中あんなふうに顔をこわばらせて難しい顔なんかしてなけりゃ、日替わりにライバルたちがあなたに挑戦状を叩きつけにきていたはずよ。だから、あなたは結城社長夫人から学んでおかないと。旦那さんには一生あなただけを愛して、絶対に浮気なんかさせちゃダメよ」唯花「……確かにそれは一理あるかも。夫は自分の手でしっかり捕まえていないと。だけど、その社長夫人に会えるかどうかなんてわからないじゃない」「私たちが早めに会場に到着できれば、きっと見られるはずよ。九条さんの地位からして、彼のコネでも使えば、社長夫人に会って話せる可能性も高いわ」唯花はちょっと心が動いた。彼に対して全く感情を持っていなかった頃、理仁が浮気しようがしまいが、彼女はどうだってよかった。彼が浮気でもすれば、二人はさっさと夫婦という関係を解消すれば済む話だったからだ。しかし、今は愛が芽生えて、しかも夫婦としての務めも果たした後だし、唯花は理仁のことが気になってしかたないのだ。社長夫人がどのような方法で結城社長を落としたのか、彼女がその方法を教えてくれるのなら、唯花もしっかりそれを学んで、理仁を一生メロメロにさせてやるのだ。「じゃ、涼太君、もう少しだけスピード出せるかしら。もしちょっとでも遅れちゃったら、こんな絶好のチャンス、次いつ訪れるかわからないもの」その気になった唯花は我慢できず涼太を急かした。今運転手を務めている涼太は言葉を失い黙ってしまった。彼は男だ。確かにまだ年齢的には幼く彼女すらいないが、二人の姉が男の落とし方についてわちゃわちゃしているのを聞いて、涼太は
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第746話

理仁は唯花の手を引いて、低く落ち着いた声で言った。「唯花さん、今夜は本当に綺麗だ。さあ、一緒に入ろう」唯花は悟に会釈して挨拶を済ませると、理仁と一緒に会社の中へと入っていった。悟は明凛の弟も一緒に連れて行こうとしたが、涼太はそれを断って言った。「九条さん、今日はそちらの会社のパーティーで俺はここで働いてもないし、女性でもないし、パートナーになることもできないんで、遠慮しておきます。パーティーが終わってから、また姉を迎えに来ます」悟は心の中では涼太が来るのは期待していなかったが、それを表には出さず、建前で何度も彼を誘い、涼太の手を引っ張ろうと手を伸ばそうとした。「九条さん、涼太は行きたいとは思ってないから、無理に来させなくていいです。涼太、あなた友達でも誘って遊びに行ってらっしゃい。後でお姉ちゃんが連絡するから、その時また来て」唯花は悟の涼太への態度は他に意図があって、実際は明凛に近づくためだと言っていた。しかし、今悟が涼太を熱烈に誘っているので、明凛は思わず悟が同性好きなのではないか、それとも両刀使いなのではないかと疑ってしまった。それで弟と悟があまり仲良くなるのはぜひとも阻止したいと思っていた。「姉ちゃん、九条さん、俺はこれで」涼太はそそくさと車を運転してその場を離れた。彼の車が見えなくなってから、悟は明凛を連れて中へと入っていった。「牧野さん」悟は明凛と横並びになって歩きながら、低い声で「俺の腕に手を添えてもらえませんか」と求めてきた。明凛「……私たち、今この状態でも結構仲良さげだと思いますけど、あなたの手を掴む必要がありますかね?」「理仁と内海さんみたいに親し気にしてこそ女性パートナーって感じじゃないですか。そうしないと女性社員たちを阻害できないと思いません?」悟はまた小声で言った。「追加でお支払いしますから」明凛は口をすぼめた。「なんだか、私がお金に困ってて恵んでもらいたいみたいじゃないですか」まあ、実際彼女は悟からお金をもらって喜んでいるのだ。本当に相当な金額だった。彼女はそこらへんにいるような普通の人間と同じで、人生で最も好きなものはお金だ。「ウィッグを買って涼太君にパートナーになってもらってもいいって言ったのに牧野さんはそれを拒否したでしょう。あなた自身が本物の女性だから、俺に
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第747話

明凛は彼にそう言われてぐうの音も出なかった。暫くして、彼女は口を開いた。「お見合いの時、私そんなこと尋ねましたか?覚えてません。ただ、あの日あなたがバラを口にくわえて自転車でやって来たことしか覚えてないです。しかもくわえてたバラを私にプレゼントしようとしたでしょう。私がくわえていたのを見ていたから良かったものの、もしそれを受け取っていたら。それに、九条さんも誠意の欠片のない人ですよね。あなたに誠意があれば、お見合いのあの日にあなたが九条家のお坊ちゃんだって教えてくれたはずでしょう」彼女がもし悟はあの星城でも謎の多い一族である九条家の人間だと知っていれば、絶対にお見合いなんてしなかったのだ。悟は心の中で不満を漏らした。彼は直に上司が身分を隠してスピード結婚したのを見ているのだ。社長夫人は周りから見事に騙されているが、唯花の人柄を見れば、彼女が理仁を愛したのであれば、絶対に理仁自身を好きになったからで、彼の身分や地位が欲しくてそうなったわけではないとわかる。だから、彼も理仁を真似て、自分も最初は正体を隠したのだった。それから理仁がだんだん自分の正体を明かして、唯花に怒られて捨てられるのではないかと不安に思うようになっていった。悟は理仁と同じ道を歩かないように、明凛に正直に明かしたかったが、それが明凛のほうが先にそれを知ってしまうとは思ってもいなかった。明凛はやはり彼から距離を置いてしまい、恋人になろうともしなかったのだ。それで彼は仕方なく、彼女の弟を攻略するルートに切り替えたというわけだ。結果、明凛の想像力はかなり豊かで、なんと彼が涼太に気があるのかと勘違いしてしまったのだ。彼がもしあっちの気があれば、理仁は早い段階でまるで洪水をせき止めるかのように高い高い堤防を築き上げていたことだろう。「内海さんから牧野さんは名家に嫁ぎたくないと聞きましたからね。一度もあなたに会えないかもしれないと思って、お見合いの時には隠していたんです。牧野さん、俺があの日あなたとお見合いしたいと思ったのは、心からあなたに会いたいと思ったからです。本気であなたと恋愛してみたいと思っているんですよ」明凛「それは、また今度話しましょう。今日はお金をもらってきちんと自分の役目を果たすだけです。九条さんが弟に何も気がないってわかればそれで十分です」彼
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第748話

悟「……」彼らの前を行っていた理仁夫妻はずっとイチャイチャしていた。悟と明凛の二人がついて来ていないことに気づき、唯花は後ろを振り返って、二人が何やら騒いでいるのを見て言った。「理仁さん、なんだか九条さんと明凛の二人、不協和音を奏でてるみたいだけど」理仁は親友をちらりと見て淡々とした口調で言った。「いや、悟は穏やかなやつだから、そんなことはないだろう」悟にしてやられた人間がそんなことを聞けば、押し黙ってしまう。九条悟の性格が穏やかだと言うのであれば、この世に生きる人には性格の悪い人間なんて存在しないだろう。「彼らのことは放っておいて、俺たちは先に行こう」理仁は唯花の手を自分の腕に絡めさせ、夫婦二人は仲良さげにしていた。「理仁さん、社長の奥様も今日いらっしゃるの?」「どうして?」「別に何かあるわけじゃないんだけど、ちょっと会ってお話ししてみたいなって思って」先に少し交友関係を持っておけば、夫の手懐け方を教授してもらえるだろう。理仁は平然として答えた。「来るのがちょっと遅かったね。うちの社長とその奥さんは君たちが到着する前にここを離れたよ。うちの社長は毎年少し挨拶をすると帰ってしまうんだ。彼は、自分がずっといるとみんなが緊張しちゃって、ゆっくり楽しめないだろうって言ってね」これも事実だ。通年であれば、理仁は話を終えると、すぐに会社を離れるのだ。この年末のパーティーを取り仕切っているのはいつも従弟たちや悟が代わりばんこで担当していた。「私遅れたの?」唯花は残念そうにして言った。「私も明凛も涼太君にずっともっとスピード出してって言ってたの。七時半に会社に着いたっていうのに、まさか入れ違いになるなんて。あなたがくれた招待状に書いてあった時間って間違ってたの?それとも家族には社長のスピーチは聞かせられないから、家族用に配られた招待状には遅めの時間が書いてあったの?」「その通りだよ」唯花が彼の代わりに言い訳の言葉を紡いでくれて、彼はそれに便乗した。彼が招待状に書いてあった時間がどうして違うのか言い訳を考える手間が省けた。「あなた達は社長夫人を見ることができたの?」理仁は優しい声で言った。「もちろん。彼女はとても綺麗だったよ。夫人が現れた瞬間、会場で一番輝く女性になってた。うちの社長はもうメ
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第749話

理仁は低く笑った。「家に帰ったら、君が言うように狼男に変身してあげるさ」唯花は彼の手の甲を軽くつねった。それに負けず理仁は愛しそうに彼女の手を持ち上げてその手の甲にキスをした。彼女がまた怒りを発動させようとしたところで、彼はこれ以上彼女がつねることはできないようにサッと真面目な顔つきになり彼女の手を引いて前に進んだ。理仁が唯花を連れて会社の年末パーティーにやって来ても、結城グループの社員たちは特に意外には思わず、管理職クラスも彼女にとても礼儀正しく接していた。しかし、九条悟は今年、パートナーとして同じ九条家の女性ではなく、牧野明凛を連れてきたので、みんな驚いていた。あの九条悟を慕っていた女性社員たちはとても神経を尖らせており、悟が明凛を紹介した時、きっと彼の好きな人なのだろうと推測し、羨望と嫉妬の眼差しで明凛を見つめていた。九条悟にも好きな女性がいたなんて!すでに結婚してしまった結城社長に続く勢いだ。みんなは明凛のことを嫉妬に満ちた目で見つめていたが、明らかに明凛に何か仕掛けようと思う者はいなかった。主に悟を恐れているせいだ。唯花はこっそり理仁に言った。「九条さんって会社の中ではとてもモテてるみたいね。もし人が眼差しで誰かを殺す能力があれば、明凛ったら彼女たちに何回も殺されてるところよ」理仁は淡々と言った。「悟は役職も高いし、若くてイケメンの大金持ち、加えて人付き合いしやすいタイプだ。少し噂好きなところはあるが、それでもよくモテるんだよ」悟「……」今上司は一体彼を褒めているのやら、貶しているのやら。「唯花さん、早めに家に帰りたいか?」「お開きになる前に帰ってもいいの?」ここは自分とは関係ない会社のパーティーだ。彼女は理仁の家族として参加しているだけだから、ぐるりと周りを見渡してみて、場違いな感じを持ち、唯花はあまり長居はしたくないと思った。みんな彼女には丁寧に話しかけてくれるが、彼女はここにいる人たちとは知り合いではない。理仁が同僚たちと会社のことを話している時には、彼女は話を合わせることもできないし、ただ食べたり飲んだりしているだけだ。それに、みんなが自分を見つめてくるその眼差しは少し、なんというか、どう形容していいことか。恐らく彼女が大食いでよく食べているのを見て、心の中で彼女がここにあるものを
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第750話

「唯花さん、俺たぶんもう一回出張に行くことになると思うんだ」彼の懐に顔を埋めていた唯花は顔を彼のほうに向けて理解できない様子で言った。「あと数日すれば会社の正月休みに入るでしょう。どうしてまた出張なんて」「短期間の出張だよ。A市に行くんだ。二、三日で終わるよ」理仁は顔を彼女のほうへ向けて額にキスをし、キラキラと光る黒い瞳で彼女を見つめ、低くかすれた声で尋ねた。「俺が恋しい?」「いつ行くの?荷物をまとめるのを手伝うわ。空港まで送ってあげる」理仁「……」彼女は寂しがるかと思いきや、彼女はただ彼が本当に出張するのかを確認して、やる気満々で彼の荷造りを手伝い空港まで送ると言ってきた。一体どうして出張するのかなどは一切聞かないのだ。理仁はそれで悶々としていた。夫婦はもうベッドの上で何度もいちゃついたものだから、以前とは気持ちがもう違っていると思っていた。今、以前と比べて確かにお互いの気持ちは一歩近づいているようだが、彼女は彼に対してまだそこまで依存していないようだ。結城某氏はこのようにスッキリしない気持ちを抱えたままA市に赴いた。重要顧客であり会社のパートナーであるアバンダントグループの社長、桐生蒼真の結婚式に参加するためだ。結婚式で、桐生蒼真と雨宮遥は美男美女のお似合いカップルで、彼女のほうは双子を妊娠中らしい。理仁は心のうちで非常に羨ましがっていた。桐生善の紹介で、理仁は望鷹市の篠崎家当主と知り合った。聞くところによると、彼も理仁と同じで出かける時には常にボディーガードをぞろぞろと連れているらしい。自分の身を守るためと、女性たちから追いかけられるのを防ぐためだ。結婚式が終わった翌日、理仁はアバンダントグループが経営する山荘へとやって来た。彼と善が一番よく知った仲なので、理仁がそこへ行くと案内してくれたのは善だった。善は理仁が来たのを見て、何も言わず黙っていて、何か深く考えている様子だった。そして話題を見つけて話し始めた。「結城社長もなかなかここにはいらっしゃる機会が少ないですから、僕がご案内しましょうか?」理仁は前々から、アバンダントグループが経営するこの山荘を含めた一帯はまるで絵のように美しい場所だと聞いていた。結城家の邸宅もこの山荘には劣らないが、善がそう提案してきたので、理仁も特に断ることはなかった。
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