All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 761 - Chapter 770

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第761話

唯月は笑って言った。「二人の仕事はうまくいってないって聞いたけど、それほどかからずに失業するかもしれないわね。給料だって中身が空っぽのカードを渡されるわけで、それのどこが自慢になるっていうの?私とあいつは離婚する前は必要な費用を夫婦二人で半々負担してたけど、離婚する時に二千万以上財産分与で私がもらったわ。あいつが失業したとしても、別に私と陽が生活に困ることなんてないのよ」莉奈「……」俊介は不機嫌になった。「誰が俺らが失業するって言った?俺らは仕事は順調だぞ」それに対して唯花が口を開いた。「あんたの母親が言ってたのよ。あの人、ほぼ毎日お姉ちゃんのところにやって来て、その女狐にあんたがたぶらかされて夢中になってるって文句言ってるのよ。その女は財産を食いつぶす貧乏神だってね。湯水のようにお金を使って、あんたが苦労して稼いだ金も全く惜しまないとか、成瀬さんの両親は娘を嫁がせるんじゃなくて、娘を売ったクズ一家だともね」莉奈の顔色が一瞬にして暗くなった。俊介は成瀬家が要求してきた結納は確かに多すぎると思い、唯花の言葉にすぐには返事はしなかった。現在の彼の財力であれば、成瀬家の要求通りにそのお金を渡すことはできる。しかし、実をいうと彼はあげたくないとも思っていた。その金額があまりにも多すぎるからだ。それに彼は自分のお金を使って、あの家をまた内装しなければならないのだ。それから、結婚式や披露宴、様々なところにお金が必要で、成瀬家に結納金を渡したくないと思っていた。俊介の母親の言葉を引用して言えば、一千万以上なら世間で一番優しく美しい仙女のような女性を嫁にできるだろう。成瀬莉奈はそれにあたるのか?さらに、莉奈は道徳観に欠けているとも言っていた。莉奈が当初、彼には妻も子供もいると知っていながら、彼を誘惑したと。莉奈にその気がなかったらできないことなのだ。莉奈が何も企んでいなければ、さっさと離職して、俊介から遠く離れていたことだろう。俊介の母親は成瀬莉奈こそアバズレ女だと罵っていた。たとえ容姿がいくら美しかったとしても、安っぽいクズ女で唯月には敵わないと言っていた。「お姉ちゃん、私、他にもまだいろいろ買わなくちゃ。またあちこち回りに行こうよ」唯花は不和の種をまくのに成功し、姉と一緒にショッピングカートを押して去っていった。俊
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第762話

「母さんは悪気があって言ってるんじゃないって。年配者にそんなカリカリしなくたっていいだろ?莉奈、結納金のことなんだけど、本音を言えば、確かに成瀬家からの要求は多すぎるよ。もし、そっちに一千万以上の結納金をあげて、そっちも全部俺らのために使ってくれるなら、喜んで結納金を渡すんだけどさ。俺が出す半分でもそっちが出してくれれば、嫌な気はしないんだけど。でも、君の両親は、ただ新しいシーツセットと、電動バイクしかくれないだろ、そんなの大した金額じゃないじゃないか。二十万もしないもんだ。君の両親が来たあの日、俺、実はこそっと聞こえちゃったんだ。結納金の一千万は二人のお兄さんに半分ずつ分けて、お兄さんたちの家をリフォームするって。それから残りの数百万は自家用車を買うのと、君の両親がもらって自由に使おうって。嫁入り道具にはたった数十万しか出さないって言ってたぞ」俊介はその日、裏でこっそりと莉奈の両親が一千万以上の結納金をどう使うか話し合っているのを聞いて、怒りで火を吹きそうだった。彼が持っていた四千万くらいの財産は半分の二千万以上を唯月に渡し、残っているのは二千万に満たないくらいだった。しかし、それにバックマージンと、サプライヤーからの報酬を合わせると、二千万以上の財産になるのだった。それでも成瀬家からのあまりにもひどい要求には耐えられなかった。実は莉奈のほうも、心の中では両親の要求はあまりにもひどいと思っていたのだ。結納金はそもそも彼女のものだ。それを二人の兄の家のリフォーム代と新車代に使って、自分の嫁入り道具にはシーツセットに電動バイクなどと、彼女はかなりショックだった。普段、両親、兄、義姉、みんな彼女をとても可愛がって愛してくれているようだった。それなのに、まさか自分が嫁いでいくことになったら、両親がずっと隠していた醜い一面が出てきたのだ。口では彼女のことを一番愛していると言っておきながら、彼女を利用して二人の兄の生活がもっと良くなるように助けてあげるらしい。しかし、俊介に文句を言われて、莉奈は本能的に自分の両親を庇った。「お父さんもお母さんも私をここまで育てて学校も行かせるのにたくさんお金を使って苦労してきたのよ。結婚するにあたって、結納金をあげるのは私を育ててくれた恩返しにも繋がるの。お金をあげたら、両親がそれをどう使お
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第763話

俊介はさらに続けた。「不動産権利書には君の名前も加えるよ。だからあの家は半分は君のものになるんだ。きれいにリフォームしたら、俺らは毎日快適に暮らせるだろ。そのお金で君の二人の兄さんとその嫁さんを快適に暮らさせるよりずっとこっちのほうがいいさ」莉奈は内心俊介の意見には賛成していたのだが、口先はこれとは違う言葉を放った。「もともと一千万以上出すって約束してたのに、それを三百万ちょっとにするなんて。俊介、結婚するのよ、私ってそんなに価値のない女なの?最初の頃は私にどこぞの財閥家の若奥様みたいな生活をさせてくれるって魅惑的な言葉で私をその気にさせたじゃないの。盛大な結婚で私を佐々木家に迎えてくれるって。それがたった三百万の結納金だなんて、盛大だって言える?」俊介はこの時、我慢できずにこう答えた。「星城の一般家庭の結婚は、条件が良い家だって、数百万だよ。結納金の相場はだいたい百万円前後だ。星城の女性が結婚する時は、本当に結婚するだけでお金の要求をしたりしないよ。娘が結婚して幸せになってくれればいいって思う家庭がほとんどさ」同じように星城の田舎出身である唯月が彼と結婚する時に、内海家は彼に六百万の結納金を要求してきた。しかし、内海家がそんな要求をする資格はないと言って、それを唯月が断った。それが今、成瀬家は一千万円以上の結納金を要求してきたのだから、本当にまるで娘を他所に売りに出しているような感じだ。「私の村では、ある家の女の子が結婚した時に、何も言わずに男側のほうが数百万円の結納金を用意してくれたわよ。それに家や、二千万くらいする高級車だってプレゼントしてくれたんだから」おそらくその家の娘が相当な金持ちと結婚したのを見て、羨ましいと思ったのだろう。俊介が高給取りで、市内に家も持っているし、彼の両親は年金も退職金もたくさんあるから、佐々木家の経済状況はかなり良いと知って成瀬家は結納金を多くもらいたいのだ。それに娘が盛大に結婚すれば、村に戻った時にも鼻高々だと思っているのだ。俊介は言った。「その女の子が結婚した相手は成金二世か何かだろ?俺はそんなんじゃないよ。もし、そういう男と結婚した女が羨ましいなら、成金二世でも探しにいけばいいだろ」そう言い終わると、自分を引っ張る莉奈の手を振りほどいて、ショッピングカートを押して歩き出した。「俊介、
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第764話

唯月は笑って言った。「結城さんは元から良い人でしょ。彼とあのクソ男を比べることなんかできないわ」カートを見て唯月は言った。「これくらいでいいでしょ、まだ買うの?先に家に持って帰って、何が足りないか確認してから、もう一回来る?」たくさん買いすぎても、彼女たち二人で家まで運ぶのも疲れるのだ。清水は今家にはいない。唯花が彼女に正月休みとして家に帰ってもらったのだ。清水に働きに来てもらってからというもの、彼女たちはたくさんお世話になったのだ。唯花が彼女にボーナスを渡した以外に、唯月のほうも年越しだからと言って、清水にお礼としてお金を包んで渡したのだった。加えて清水は理仁のほうからもボーナスや報酬をもらえるから、上機嫌で家に帰って正月を迎えられる。若旦那様のために働くからには、絶対に損などしないのだ。若奥様とお姉さんの唯月も、とても良心のある人たちだ。結構な額のボーナスと臨時収入をもらった清水の他に、今、理仁に仕えている七瀬のほうもボーナスが何倍にもなり、年末のボーナスももらえるのだった。彼もまた若旦那様が重宝しているボディーガードなのだ。それに、若奥様からも信頼され、味方につけている人間である。「それもいいわね」唯花は選んだお菓子をカートに入れ、姉と一緒にカートを押して会計の列に並んだ。またタイミング悪く、姉妹が会計に並んでいる時に、またあのクズ男と女狐と一緒になってしまった。しかし、姉妹は前のほうに並んでいて、あの二人は後ろだった。俊介はやはり莉奈のことが好きなので、彼女から別れると脅かされると、すぐに彼女の元へ戻ってなだめたのだった。それに、カートの中に正月祝いの商品も満タンにした。俊介の佐々木家へあげる分と、莉奈の両親や兄二人にあげる分だ。莉奈は怒りを鎮めて彼と喧嘩はせず、二人はまた仲直りしていちゃついていた。この時、唯花姉妹がカートの中の商品を一つ一つ取り出してレジに置いていき、その金額がどんどん増えていっているのを見て、唯月がお金を払うわけでなくても、俊介は元義妹は浪費家だと思った。こんなにたくさんの物を買っている。以前、まだ彼の家に住んでいた頃、たしかに彼女が家事のほとんどを担当してたが、それは全部姉を手伝うためだった。毎月五、六万の生活費を渡してきていたが、あれっぽっちで一体何ができる?
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第765話

俊介は十五キロ痩せても、やはりまだ太っている唯月を見て、急いで我に返り、昔のことを考えるのはやめた。唯花は結構な量を買ったので、姉妹二人では持てなかった。それで店員に話した後、カートを借りて、それを押して外に出て行った。「お姉ちゃん、ここで陽ちゃんと一緒に待ってて。車をここにつけるから」唯花は車をデパートの駐車場に止めていたから、駐車場に車を取りに行って、デパートの入り口まで来てようやく荷物を運ぶことができるのだ。「わかったわ」唯月は特に意見はなかった。陽は叔母が一人で行ってしまうのを見て、少し焦ったように「おばたん、おばたん」と呼んだ。唯月は急いで陽に言った。「陽、おばさんはね、車を取りに行っただけよ。すぐに車で迎えに来てくれるわ」それを聞いて陽はやっと安心した。彼は叔母が彼と母親をここに置いて行ってしまうのだと勘違いしたのだ。その後すぐに俊介と莉奈がデパートから出てきた。彼らが買った物も多く、同じようにカートを借りて外まで押してきたのだった。「莉奈、ここで待ってて、車運転してくるから」莉奈は甘えた声で言った。「うん、わかったわ。早くね、こんなところで一人でいたら怖いもん」それを聞いて唯月は吐き気をもよおした。彼女がいる前でわざわざいちゃついてみせる必要があるのか?「パパ」陽がまた俊介を呼んだ。俊介は今度は陽を抱き上げて二分ほど遊んだ後、陽をまたカートのチャイルド席に戻して、地下駐車場へと向かった。そこに残っている莉奈が横目で唯月を睨んでいたが、彼女はそれに構いたくなかった。「内海さん、陽君」その時、聞き慣れた声が聞こえてきた。唯月は自分のほうへ向かって来る隼翔のほうを見て、とても意外だった。隼翔が目の前に来て彼女は尋ねた。「東社長、どうしてここにいらっしゃるんですか?」彼女の中では、東隼翔という大企業の社長が、このようなところに現れるとは思っていなかったのだ。彼の立場なら、何か必要なものがあれば、誰かに指示して代わりに買ってきてもらえばいいのだ。自らデパートまで来て買い物をする必要などないだろう。莉奈は隼翔と知り合いではないが、唯月が彼を東社長と呼んでいたのを聞き、彼がポルシェの鍵を持っているのを見て、この人間が金持ちだということがわかった。それで、彼女は思わず聞
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第766話

しかし、それは理仁自身のことだ。彼がそのようにするとしたのなら、隼翔も何も言うことはない。彼はただ理仁の親友であるだけなのだから。「そういうことか」隼翔はカートに積まれている物を見て、理仁の奥さんは彼の実家で年越しするのをとても重要視しているのだと思った。買ったものはどれも良い商品ばかりだった。「陽君」隼翔はいつもと同じく陽と遊ぼうとした。陽は頭を傾けて隼翔から伸びてきた手を躱し、唯月のほうへ顔を向けて抱っこのサインを出した。唯月は息子が隼翔を怖がっているのがわかっているので、息子を抱き上げた。「陽、東おじちゃんがこの前風車をあなたにあげたでしょ。どうしてまだ怖がっているの」陽は両手を母親の首に巻きつけ、頭を唯月の肩に置いて隼翔を見ないようにしていた。ただ風車をプレゼントしただけですぐ懐くだって?東おじさんは僕を簡単に落とせるとでも思ってるの?だったら、僕を甘く見過ぎだぞ。「陽君、おいでよ。おじちゃんが抱っこしてもっといろんな風車を買いに行ってあげるよ」隼翔は唯月から陽を自分のほうへ抱き寄せようと試みた。陽は必死になって叫んだ。「やだ、ママがいい。おじたんはいらない、ふうしゃもいらない」この東おじさんが彼にあげた風車はすぐに彼が遊んでいるうちに壊してしまい床に捨てられていた。母親が掃除をしている時に、その壊れた風車も掃除してしまった。一度風車で遊んでしまったら、それは陽にとってもう魅力的なおもちゃではなくなったのだ。唯月は気まずくなって、隼翔に言った。「東社長、すみません。陽ったらまだあなたを怖がってるみたいで」隼翔は毎回この親子にたまたま会った時、はじめて彼の車をうっかり傷つけてしまった時であろうと、いつも彼は悪意など向けてこなかった。それなのに、陽はいつも隼翔のことを怖がってしまう。だから彼から抱っこされるのは嫌なのだ。隼翔はたまらず自分の顔にある傷を触り、唯月に尋ねた。「この傷を怖がっているのかな?母さんからもこの傷があったら、外で子供に泣かれるぞと言われたんだ」彼はその言葉を信じていなかったが、陽からこのような反応をされるので、ショックだった。この傷が本当に小さな子供を怖がらせるのか。傷をつけてからもうだいぶ時間が経っているので、彼の顔にあるその切り傷は当初ほどはっき
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第767話

隼翔に手伝ってもらい、唯花が買った年末年始用の荷物を全部車に積み込んだ。彼女の車の中はそれで満タンになってしまった。「東社長、ありがとうございました」唯花は丁寧にお礼を言った。隼翔は豪快に笑って言った。「俺と理仁はビジネス上の付き合いがあるだけじゃなく、プライベートでも友人として仲良くさせてもらってるんですよ。あなたは彼の奥さんだから、俺が手伝って当然です」そして彼はまた陽のほうを見て付け加えた。「陽君は俺のことが好きじゃなくて怖がられますが、毎回彼に会うと、どうしても彼と仲良くなって一緒に遊びたくなるんですよね」陽を驚かせて泣かせてしまい、彼が母親の懐にサッと飛び込んで行ったとしても隼翔はそれをおかしいと面白がっているのだ。東おじさんは僕をサルかなんかと同じようにからかって遊んでいるのだろうか?「それでは東社長、私たちはこれで失礼します」唯月は息子を抱っこしたまま妹の車に乗り込み、隼翔に別れの挨拶をした。隼翔はそれにひとこと「ええ」と返事して、唯花が車を運転して行ってから、彼も自分の車を止めている路肩に向かっていった。彼らがそこを去ってから、莉奈は暗闇のように顔を暗くして不機嫌そうにしている俊介に手で突いた。彼のその表情を見て、彼女は我慢できずに言った。「どうしたの、元奥さんが他の男と仲良さそうにしているから、不機嫌になったの?俊介、あなたはもう唯月と離婚したでしょ!あの女はもうあなたの妻にはならないのよ、なのになんでそんな不機嫌そうにするのよ?」俊介はその時我に返り、言い訳しようとしたが、さっきムッとしていたことは事実なので、うまく説明ができないと思い、結局こう言うしかなかった。「莉奈、これはたぶん男の悪いところなんだろうな。離婚した後、新しい恋人ができるのは当然のことだろうけど、自分じゃなくて相手にも同じようにそういう存在ができてたらなんだかプライドが傷つけられた気になるんだよ。正直に言って。ただ相手が自分より幸せそうなのを見るのが嫌なんだ」莉奈はそれでやっと表情を和らげ、言った。「あの男の人ってかなりのお金持ちでしょ。ポルシェに乗ってたわ」「東社長だ。東グループのトップで、東家の四男坊。彼は家には頼らず、自分の力で東グループを創立し、億万長者になった人だ。金を持ってて当然だよ。この間母さんと姉さんが
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第768話

俊介は嫌そうな顔をして言った。「これ以上痩せたところで、どのみちデブババアには変わらねぇよ。あいつの姿見てると吐き気がするぜ」彼は片手で莉奈の太ももをさすった。「莉奈、やっぱり君が一番だよ。俺が愛してるのは莉奈だけだ」莉奈は得意そうに笑った。唯月なんか彼女の足下にも及ばない!姉と一緒に帰っている唯花は、黙っていられず姉の前で隼翔の話題を出した。「お姉ちゃん、私、お姉ちゃんと東社長ってすごく縁があると思うの。いつも町の中で彼に偶然会うでしょ。しかも、東社長が車で通りかかった時だってお姉ちゃんと陽ちゃんに気づくのよ」唯月は失笑した。「唯花、あれはただの偶然よ。それに東社長は陽のことをとっても気に入ってるの。実は、私はあまり東社長には出会いたくないのよ」「東社長がすごく陽ちゃんを気に入ってるのは本当のことだね。この間明凛と鍋に行った時、理仁さんと九条さんが東社長を誘って食事に行ってて、彼ら三人もちょうど同じ鍋料理屋に来たのよ。それで私たち一緒に食べることになったの。その時、東社長から、どうしてお姉ちゃんと陽ちゃんも一緒にいないのかって聞かれたわ」唯月は言った。「東社長は、荒っぽい人に見えるけど繊細なところもあって、見た目は怖いけど優しい人なのよね」だから、陽のことを気に入ってくれたのだろう。「プルプルプル……」唯花の携帯が鳴りだした。彼女は理仁からの電話だとわかると、姉に言った。「お姉ちゃん、あなたの妹の素晴らしい旦那様から電話がかかってきたわよ。二、三日出張に行ってて、これがはじめての電話よ」「あなたから電話はしたの?彼は出張で会社の仕事をこなしているでしょ、それは重要なことだわ。あなたは今休みだから家で時間があって、毎日のように陽を連れて明凛ちゃんとショッピングしたり、食べ歩きしたり、あちこちドライブしたりしているでしょ。陽に毎日遊ぶことばかり考えさせてて、教育に悪いのよ。そんなふうに毎日暇しているのに、あなたったら結城さんが今どうしてるか気にかけて電話をかけることもしないなんて。彼に年越し前に間に合うか聞いてみなさいよ」「年越し前には戻るって言うに決まってるわよ」唯花は電話をイヤホンで出た。「唯花さん、今どこにいるんだ?」電話が繋がるとすぐ、理仁は車の音が聞こえたから唯花が外にいるのがわかっ
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第769話

唯花は「わかった」と言って話を続けた。「私たちいつあなたのご実家に行くの?今日買った手土産はあなたのご実家の方たちに準備したの、もし午後か明日帰るんだったら、荷物は車の中に置いたままでいいわ。家に運んでまた車まで持って行くのも面倒でしょ」理仁は少し考えてから言った。「明日の朝帰ろうか。俺もさっき帰ってきたばかりでちょっと疲れたよ。半日休みたい」夫婦は数日離れ離れだったので、彼は彼女のことが恋しかったのだ。まずは半日ほど二人っきりの世界を満喫してから、実家に帰ろう。「だったら、荷物は車に置いておきましょう」「それでいいよ」理仁はそれに関して特に意見はなかったが、やはり彼女にこう言った。「マンション前まで来たら連絡してよ」「わかったわ」唯花はそれに応えてまた彼に尋ねた。「他になにかある?何もないなら先に電話を切るわね、今運転中だから」理仁は彼女が家に帰る途中なことを思い出し、もうすぐ会えることを考えるとこう言った。「何もないよ、運転気をつけて」唯花は「うん」とひとこと言って電話を切った。「お姉ちゃん、理仁さんが明日彼の実家に帰るって。お姉ちゃんと陽ちゃんも私たちと一緒に行きましょうよ。おばあちゃんや他のご家族も特に気にしないと思うわ。お姉ちゃんたち二人だけここで年越しするのは私もちょっと心配だし」唯月は笑って言った。「何も心配するようなことはないわ。お姉ちゃんだって三歳の子供じゃないのよ。あなたはご主人のご実家で年越しするんだから、お姉ちゃんも一緒に行くのは気が引けるわ」「別に気が引けるってこともないじゃない。私は理仁さんと結婚して、理仁さんの実家は私たちの親戚よ。親戚のお家に行って年越しする人だっているんじゃない?前、私もお姉ちゃんのマンションにいる時はそこで年越ししてたでしょ、それだけじゃなくて毎日一緒に住んでたんだし」「やっぱりやめておくわ。お姉ちゃんと陽にゆっくり静かに年越しさせてちょうだい。今は、以前みたいに夫の家族たちにいろいろ準備したりしなくてよくなったんだもの。手厚くもてなしても、私に金遣いが荒いって言ってくるし、冷たくしたら親戚を軽く見てるなんて言われて、何をやっても何か批判されてきたんだから」唯花は姉の説得ができないので、ただこう言うしかなかった。「だったら、お姉ちゃんが暇だと思ったら、伯母
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第770話

「今運転中ですよ。何か彼女に伝えることがありますか?彼女に電話を渡します」それで唯月は携帯を妹に渡そうとしたが、詩乃はこう言った。「いいの、唯花ちゃんが運転中なら気をつけなくちゃ。もし、旦那さんの実家でお正月を過ごすときに何か嫌な思いをしたら、我慢しないで。あちらがどのようなご家庭かはわからないけど、あなた達は私の姪なのだから、自信を持ってちょうだい」姪の夫が結城理仁であることを知ってから、詩乃は数日間複雑な思いで過ごしていた。それに、息子に伝えてから、息子が前からこのことを知っていて、姫華だけには黙っていたのだと知ったのだった。詩乃ももちろん娘には隠していた。娘には結城理仁の今一切情報のないあの妻が唯花だと知らせる勇気はなかった。多くの人が、結城家の若奥様の正体を知りたがっていた。しかし、みんなは実はその人を知っているというのを知らないのだった。結城家の若奥様と非常に近しい仲の人ですら、その正体を知らない。例えば明凛のように前から結城社長のゴシップに興味津々で、その結城家の若奥様は一体どのような人なのか一番知りたがっている人でさえもだ。しかも彼女は唯花に向かって社長夫人と知り合い、夫を手懐ける方法を教えてもらおうなどと言っていたのだ。それがまさか、彼女の親友こそが結城家の若奥様だとは思ってもいないことだろう。神崎一家が正月に旅行をすることを選んだのは、実際は姫華に唯花の夫が理仁であることを知られないようにするためだったのだ。唯花が正月には夫を紹介するために、彼を連れて神崎家に挨拶に来ると言っていたからだ。詩乃は一家で正月は旅行に行ってしまえば、唯花が理仁を連れてくることはできないと思い、そうしたのだ。一月の中旬に帰ってこれば、理仁はもう仕事が始まって忙しくしている時期だ。きっと神崎家に訪問するような時間を作ることなどできない。つまり、隠せる間はとりあえず隠しておこうということだ。唯花は伯母の話を聞いて、笑って言った。「伯母さん、安心してください。私は何かされて我慢しているようなタイプじゃないので。それに、結城家のおばあさんはとても良い人なんです。ご両親も弟さんたちとも仲良くやっていて、打ち解けていますから。理仁さんがいるので、私にそんな思いをさせたりしませんよ」詩乃は笑って言った。「あなたがとても強い女性で理不尽
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