All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 731 - Chapter 740

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第731話

そもそも、彼が唯月に関心を寄せるようになったその原因はもとはと言えば、理仁のせいなのだ。理仁と唯花がスピード結婚したことにより、唯月が理仁の義姉になった。隼翔も親友がそのような状況になっていなければ、それを考慮することなく、唯月が彼の車に傷をつけた時点で修理代を全額請求していたはずだ。隼翔は親友たちが、彼が唯月に気があるとまだ誤解しているのがわかっていた。その誤解を解くのも面倒だし、下手に言い訳のようなものをしたら変な方向にいってしまって、墓穴にはまっていくだけのような気がした。男たちが食事に加わってから、理仁はビールを二本注文した。隼翔は後で車の運転をするので、お酒を飲まなかったが、悟と理仁は二人ともお酒を飲んだ。しかし、酔ってしまうほどは飲まなかった。食べて飲んで満足した後、みんなは立ち上がり帰ろうとした。その時、悟が突然口を開いた。「理仁、隼翔、俺どうやって帰るんだ?さっきビールを飲んだから、運転できないぞ」隼翔のように鈍感なやつでも、悟がわざとこうしたことはすぐにわかった。明凛に送ってもらおうという計画だ。「俺は用事があるから、お先に失礼する」隼翔はそうひとこと吐き捨てて、そそくさとその場を去っていった。理仁はそこでこう言った。「俺も酒を飲んだから、悟のことは送ってやれないな。牧野さん、申し訳ないんだが、悟のやつを送ってもらえませんか」唯花は悟に代行を呼びましょうかと言おうとしていたその言葉を呑み込んでしまった。彼女は恋のキューピットになるべく、悟にチャンスを与えてあげなければならない。そして結局、やはり明凛が悟を家まで送っていったのだった。唯花夫妻はトキワ・フラワーガーデンに帰ってくると、清水が家にいないことに気づき、彼女が清水に電話をしようとしたところに理仁が言った。「俺が清水さんに今夜は休んでくれと言っておいたんだ。俺たち二人きりの世界を満喫できるだろう」彼はそう言いながら、唯花に近づき、とても自然な流れで彼女の腰に手を回し、自分の懐に抱き寄せた。顔を下に向け、彼女の首元に埋まり、低くかすれた声で言った。「唯花さん、また『理仁』って呼び捨てで俺を呼んでくれないか。そうやって呼ばれるのが好きなんだ」唯花は首元が少しじんじんとむず痒くなり、彼を押しのけようと思ったが、彼のほうがどうしても離そう
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第732話

「たぶん、俺の母さんだろう」理仁は起き上がりながら言った。「昨日の夜、君が寝てしまってから、俺が母さんに電話をしたんだ。今日、君と一緒に会社のパーティーで着るためのドレスを選びに行ってくれって」それを聞くと、唯花はすぐに目を見開き、ベッドに座って言った。「あなたはそのまま寝てて、私が開けてくる」彼女はそう言いながら同時に素早い動作で服を着替えて、髪を整えた。理仁は彼女が驚異的な速さで整えるさまを見て言った。「ドア開ける時、キッチンに行ってエプロンをつけて出て行ったほうがいいかも」「どうして?」「俺の言うとおりにして」理仁は笑って言った。「ささ、早く玄関を開けにいって、母さんをあまり待たせないようにね」唯花はくるりと身を翻し、部屋を出ると理仁が言ったとおりにキッチンまでエプロンを取りに行き、それを身に着け「今出ます」と言いながら小走りに玄関を開けに行った。玄関の前に立っていたのは本当に彼女の姑である麗華だった。「お義母さん、おはようございます」唯花はキラキラした笑顔で、義母に挨拶した。麗華は両手に袋を持っていた。唯花はそれを見ると、急いで義母からその袋を受け取り尋ねた。「お義母さん、これはなんですか?すごく重たいみたいですけど」唯花が玄関を開けて、しかもエプロンをつけていたので、朝食の準備に取りかかるところだということが一目でわかった。可愛らしい笑顔で自分が両手に下げていた荷物をすぐ持ってくれたので、麗華の表情はかなり柔らかくなっていた。中へと進みながら、言った。「あなた達にちょっと食べ物を持ってきたのよ。一つは海鮮ね、理仁があなたは海鮮がとても好きだって言ってたから。来る途中の朝市でついでに新鮮な魚介類を買って来たの。それからこっちは卵よ。おばあさんがどうしても持って行けと言ったの。田舎のほうで放し飼いで育てた卵だから、あなた達が普段外で買ってくる卵より美味しいだろうってね」実際はその卵も買ったものだった。しかし、結城家の果樹園担当者から買ったものだ。彼らは主人一家の同意のもと、鶏を果樹園の中で飼っているのだ。だから、田舎で放し飼いで買っている鶏の卵だといっても嘘ではない。おばあさんがこのようにするのも、孫が自分の正体を隠すのに協力するためだ。唯花に理仁は一般家庭の出身だと信じさせるために。麗華
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第733話

「あの子ったら一体今何時だと思ってるのかしら、まだ起きてないって?」「理仁さんは仕事が忙しくて、夜も残業や接待やらでなるべく休息を取ってもらいたいんです」麗華は言った。「理仁は普段遅くまで働いて夜中に帰ってきて、翌日は相変わらず朝のジョギングをしているでしょう。あなたができてから、あの子ったら怠け者に変わったんじゃないの。唯花さん、そんなに理仁を甘やかしたら駄目よ。男だろうが女だろうが、甘やかしすぎたら自分が痛い目に遭うことになるわ」「母さん、裏で俺の悪口か」この時、理仁が部屋からピシッとスーツに身を包んで出てきた。この時の彼はオーラを放ってエネルギーに満ち溢れていた。ただスーツのジャケットはまだ羽織っておらず、ネクタイも締めていなかった。それらは彼が手に持っていた。麗華は立ち上がり、彼のほうへとやって来た。「お母さんはただひとことあなたが怠け者になったって言っただけ。そしたら、あなたが出てきたのよ。よかったわ、まだあなたの悪口を言う前で。ここ二日の気温はまた少し暖かくなったけど、朝はやっぱりすごく冷えるのよ。早く上着を着なさい。また風邪を引いて唯花さんに看病させないようにね」母親が自分のジャケットを取って羽織らせようとしているのに気づいた。これは母親が父親にやっていた習慣なのだ。それで理仁はさっさと自分で上着を着た。彼は本来、唯花に着させてもらおうと思っていたのだ。そしてこの時、ネクタイも自分で締めてしまった。すると、唯花の声がキッチンから聞こえてきた。「お義母さん、彼がまた風邪を引いたら、毎日大きな水筒に漢方薬を入れて飲ませてあげますから」理仁はそれを聞いて端正な顔を歪めた。麗華は笑って言った。「理仁は漢方薬が一番苦手なのよ」「母さんは知らないだろうけど、彼女が俺の世話をしてくれている時、俺が西洋薬は副作用が大きいって言ったら、彼女が医者に漢方薬に変えてくれないか聞いたんだよ。毎日俺に大きな水筒いっぱいの漢方薬を飲ませるもんだから、あまりの苦さに吐き出しそうだったんだぞ」麗華は瞳をキラリと光らせたが、表情はまったく変えずに言った。「良薬口に苦しって言うでしょう。唯花さんもあなたが早く良くなるようそうしてくれたのよ。それに、自分から西洋薬の副作用が大きいだの文句を言ったのだから、それを漢方薬に変え
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第734話

理仁のこのひとことが母親の怒りを買ってしまった。「どこの誰が奥さんが早起きてあなたのために朝食をつくるべきだなんて言ったのよ?それに掃除もしろですって?これは奥さんの義務ではないのよ。彼女も別にあなたに何か借りを作るようなことをしたわけじゃないでしょうもん。それなのに、あなたをまるで王様であるかのようにお世話しろって?理仁、あなたはお父さんをお手本にしてるとか言ってたわよね、そんな考え方なら、お父さんの足下にも遠く及ばないわよ。さっさとその間違った考え方を改めなさい。一体何を学んできたわけ?うちに嫁に来た女性は、みんな大事にされてしかるべきなのよ。あなたって人は唯花さんを使用人かなにかと思ってるの?しかも家事をして当然ですって?今日ここに来たのがお母さんでよかったわね。もし、おばあさんだったら、あなたのさっきの言葉を聞いて、杖でこっぴどく叩かれていたことでしょうね。今頃あなたは床の上でもがき苦しんでるわよ」唯花さん、唯花さん」麗華は息子を一通り怒鳴り散らすと、キッチンで忙しくしていた唯花を呼んだ。唯花はキッチンから出て来て「お義母さん、どうしたんですか?」と聞いた。「ちょっといらっしゃい」麗華は息子の嫁を傍に呼んで、自らの手で唯花のエプロンを外し、息子に向かって言った。「あんたはさっさとそのスーツを脱ぎなさい。あと、ネクタイも。後でまた締め直せばいいから」理仁は大人しく言われたとおりにした。そして、彼の母親は息子にそのエプロンをつけ、キッチンのほうへとぐいっと押してこう言った。「さっさと朝食を作ってらっしゃい、唯花さんには休んでてもらうわ。そのまるで自分が王様になったみたいな偉そうな腐った態度を改めてもらうわよ」唯花は焦って言った。「お義母さん、大丈夫です、私がやりますから」「唯花さん、こいつをそんなふうに甘やかせては駄目よ。この子は私が産んだの。だから、どんな性格の持ち主なのかよくわかっているわ。もう有り得ないほどの俺様気質だわ。全ての人間が彼の周りに畏まるものだと思い込んでる。あなた、彼と数カ月一緒に過ごしてきて、何か嫌な思いはしなかったでしょうね?」この時、唯花は心の中で呟いた。母親が一番息子のことを理解している。理仁は以前、本当に全ての人間が自分を囲んで畏まるものだと考えていた。彼を中心に世界が回っていて、
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第735話

息子にしてやられたと思った麗華は、朝食を取る時、わざと唯花に優しくしていた。そうやって息子を嫉妬させようと思ったのだ。そして息子のほうはそれに妬いたような様子で「母さん、俺は拾われてきた子なんだろ」と言った。麗華は彼を横目で睨みつけ言った。「これが私の娘と息子に対する態度の違いよ」このクソ息子めが、これでもまだ母親をはめる勇気があるのか。理仁「……」お腹いっぱいになってから、唯花はまず理仁を階下まで見送りにいった。「私もドレスは一着持っているの。わざわざ新しく買う必要なんてないわよ」唯花は夫に言った。「ドレスは少し高いでしょ。一年に一回着るか着ないかじゃない。買ってもどこに直しておくの。もし、私が太っちゃったら、着られなくなるし、もったいないわ。一着あれば十分だと思うの、新しく買わなくていいって。もうすぐ年越しでしょ、正月の準備にいろいろ買い出ししないといけないから、出費も増えるのよ。それにひとことも私に言ってくれなかったじゃない。お義母さんまでもう来ちゃったし」理仁は妻がぶつくさと不満を漏らすの聞きながら、車に乗る前に唯花の鼻をつんと突いて言った。「唯花さん、言っただろう。お金に余裕があるからこうしてるんだよ。もし、経済的に逼迫してるなら、こんなことなんかしないさ。俺がこうするってことは、お金にはまだまだ余裕があるってことだよ。安心して、自分の奥さんに新しく二着くらいドレスを買ってあげるくらいのお金はあるんだから。年越しは正月用品を買って、父さんたちには少しお金をあげるだけでいい。それでも俺らは実家からたくさんもらえるんだからさ。特に君は今年初めてうちで正月を迎えるから、父さんたちも君にお年玉をくれるはずだよ」彼はわざとこう言った。「君がお年玉をもらったら、俺に半分わけてくれよ。だって、俺がいてこそ、君も結城家の一員になったんだからね」唯花は失笑して言った。「わかったわよ。お正月にもらったお年玉は私たちで半々よ」「ドレスを買うお金はもう母さんに渡してあるんだ。母さんの交友関係には名門出身の女性もいるから、詳しいはずだ。母さんに君に似合うドレスを選んでもらって。それにどの生地が良いか悪いかはすぐわかる人だから、騙されるようなこともないしね」理仁は唯花が彼のお金を使おうとしないと思ったので、先に母親のほうに送金してお
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第736話

麗華は息子の嫁には会社のパーティーで最も輝く女性であってほしいと思い、唯花に店で一番綺麗なドレスを選んだ。唯花はもともと素材が良いので、そのドレスを試着してみると、そのドレスとの相乗効果でお互いがさらに引き立って見えた。麗華はドレスに着替えてまるで別人のようになった唯花を見て言った。「唯花さん、あなたって本当にオーラがあるわね。だけど、礼儀作法をしっかり学んだら、きっと社交界のレディになれるわ」「お義母さん、私はお金を稼いで家を買えればそれでいいんです。社交界にはあまり興味はありません。私もそんなお嬢様みたいになれるわけありませんよ。彼女たちの家柄はとても素晴らしいでしょう。私はただの小さな本屋を営む店長です。高校の近くにもあることだし、そこそこ稼げいで生きていければ十分なんです。そんな現実離れしたようなことは考えられませんよ」「理仁には家が二つあるじゃないの……」麗華は息子はいろんなものを持っているわけではないが、お金と家ならたくさんあると言いたかった。「私はできるだけ早く学校が近くにあるような良い場所に家を買いたいんです」麗華は唯花を見て笑って言った。「それもいいわね。早めに学校の近くに家を買っておけば、理仁との間に子供ができた時、通学に便利だし」唯花のそのひとことで、麗華はこの夫婦がもうすでに本物の夫婦になったのだと悟った。麗華は笑って見せてはいたが、内心ため息をついていた。どうやら長男の妻は唯花で決まりで、将来他の女性になることはなさそうだ。だから今後は、彼女を根気よく教育していくしかない。結城家の長男の妻という立場になるのは非常に厳しいものなのだ。唯花が完璧な長男の妻になるだけではなく、結城家一族の次の代における結城夫人とならなければいけないのだ。結城家の理仁たち世代の若者は全部で九人いる。理仁以外の子供たちも彼と同じように一般家庭出身の女性を妻にするわけにはいかない。今後は唯花は多くの名家出身女性と親戚関係になることになるのだ。そんな身分の違う子たちとうまくやっていけるか、長男の妻として彼女たちを統率できるかは全て彼女自身にかかっているのだ。麗華もおばあさんの選択を信じていた。唯花はきっと結城家にこれから嫁いで来る他の八人の嫁たちをまとめ上げる度量があるだろうと思った。もちろん、彼女は唯花はまだまだ
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第737話

麗華と唯花の二人はたくさんの荷物を持って車に戻った。そしてすぐ、唯花は義母を連れて家に帰っていった。その時、ある一台の高級車が止まり、車の中の人が車の窓を開けて唯花の車が遠ざかるのを見つめ、隣にいる息子の嫁に尋ねた。「理紗さん、さっきの二人、一人は唯花ちゃんだったわよね?」理紗ははっきりと頷いた。「そうですね」「唯花ちゃんと一緒にいたのって結城家のご夫人だったわよね?結城理仁のお母様の」詩乃の目は確かだった。結城家と神崎家は犬猿の仲だ。彼女は結城夫人と会うたびに、二人の間はいつも火花を散らすような空気になる。だから、結城夫人なら一目見ただけですぐわかるのだ。さっき彼女は遠くから姪と結城夫人が一緒に車に乗っていくのを見かけ、急いで理紗に車を止めるよう言い、はっきりとその目で確認したのだ。姪がどうして結城麗華と一緒にいたのだろうか。「お義母さん、あの人は結城夫人みたいでしたけど、本当に彼女かどうかははっきり顔を見たわけじゃないので確かじゃないです。距離がちょっと遠かったですし」理紗ははっきり肯定することはできなかった。「彼女よ、絶対そう。長年ライバルとして張り合っていたんだから、彼女が灰になって跡形もなくなったとしても、私にはわかるわ。唯花ちゃんと結城麗華が一緒にいたわ。あの二人、なんだから仲が良さそうだったけど、唯花ちゃんの夫の苗字も結城だし……」詩乃はこの瞬間、姪の夫のことを完全に忘れていたことに気づいた。確かずっと姪に夫の名前を聞いていなかっただろう。「理紗、唯花ちゃんの旦那さんってもしかして結城理仁じゃないかしら?それか、彼の弟たちの一人とか?いえ、結城理仁の実の弟は結城グループでは働いていないはず。従兄弟の弟だけだわ。唯花ちゃんの旦那さんは結城グループで働いているって言ってたから、つまりそれは結城理仁のことよ」理紗はこの時、どきまぎする気持ちをなんとか抑え、自分と夫は少し前から唯花のスピード結婚の相手が結城理仁だとわかっていたなどとは口が裂けても言えなかった。詩乃は理紗の反応には気づかず、まだ自分で分析していた。「もし、結城理仁が唯花ちゃんの旦那さんだとしたら、多くのことが繋がるわね。だから唯花ちゃんと血縁関係が証明されたと思ったら、旦那さんがすぐ出張していなくなったんだわ。結城理仁は怖く
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第738話

結城夫人は普段、あまり自ら出かけて買い物をすることはない。彼女は必要な物があれば、いつもブランド店に電話をかけて直接家まで届けてもらっているのだ。そんな彼女が今日たまたま出かけただけなのに、それを神崎詩乃に目撃されてしまうとは。結城理仁が唯花に隠し通せたとしても、玲凰の母親を騙すことはできない。この時、唯花はそんなことは全く知らず、詩乃の話を聞いた後、笑って言った。「伯母さん、ちょっと待っててもらえますか?今義母と一緒にいるんです。彼女を家に送り届けてきますので」詩乃は言った。「あなたのお義母さんも一緒にいらっしゃいよ。私たち両家はまだ親同士挨拶していないでしょう。ちょうどあなたのお義母さんがいらっしゃるなら、今日会って一緒に食事でもどうかしら」「伯母さん、ちょっと義母に聞いてみます」唯花も伯母と義母が会うのにちょうど良い機会だと思った。彼女たち姉妹にとって、一番気の許せる年長者はこの伯母だからだ。麗華は注意深く唯花たちの話を聞いていて、唯花に聞かれる前にこう言った。「唯花さん、私、ずっと買い物なんかに出かけてなかったから、今日歩き回ってちょっと疲れたの。足もちょっと痛いし、もう歩き回りたくないわ。伯母さんに丁重にお断りしておいてちょうだい。また日を改めて一緒に食事する席を設けましょう」義母がこれ以上は動きたくないとわかり、唯花は申し訳なさそうに言った。「伯母さん、お義母さんはちょっと今日疲れてるみたいなので、やめておくそうです。また別の日に一緒に食事しましょう。伯母さん、姫華と理紗さんは一緒じゃないんですか?」あの二人が時間がなくとも、伯母の夫は退職して家にいるから時間があるはずだ。だから、伯母に付き合って買い物にいけるだろうに。「わかったわ、じゃあ、日を改めてお約束しましょう。あなたは先にお義母様をお家まで送ってさしあげて。あなたの旦那さんは今夜時間があるかしら?唯月さんと陽ちゃんも誘ってうちでご飯を食べない?あなたの旦那さんにまだお会いしてなかったでしょ。そうだわ、旦那さんのお名前は何て言うのかしら?」「結城理仁です。彼はたぶん時間がないと思います。前にちょっと聞いたんですけど、もうすぐ正月休みに入るから、年が明けてから伯母さんのお家に訪問すると言っていましたよ」詩乃は「そう、わかったわ」とひとこと返事し、唯花に安全
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第739話

会社に行くまでの間、詩乃はひとこともしゃべらず、何を考えているのかもわからなかった。理紗は義母が娘の姫華のために、唯花に何かするのではないかと少し心配していた。唯花という姪は今の詩乃にとっては、そこまで情が深い相手ではない。彼女は当然、実の娘である姫華のほうが大事で味方になるに決まっている。神崎グループに到着すると、詩乃はまっすぐオフィスビルに入っていった。理紗はわざとゆっくり歩き、玲凰に電話をかけた。「玲凰、お義母さんが来てるわ。すぐにあなたのオフィスに到着するはずよ」玲凰は少し黙ってから言った。「わかった。心配しないで、母さんは確かに怒るだろうね、だからって別に何かしでかすことはないからさ」母親は恐らく、結城理仁は見る目がないと思うだろう。彼の妹はあらゆる面において結城理仁に相応しい相手だというのに、彼のほうはそんな妹を愛することはなく、唯花のほうを愛してしまったのだから。しかも唯花は今や彼らのいとこである。もしこの関係もなければ……玲凰も彼らが一体どうするのか想像できなかった。おおかた唯花に不利になるような状況を作りだしていたかもしれない。やはり唯花という存在が姫華の恋を邪魔する形になったのだからだ。「私はそっちに行かないわ。お義母さん、今すごく機嫌が悪そうなの。私は一階にある待合室で待っているわね。あなたがお義母さんをなだめて」「わかった」理紗は電話を切ると、上にはあがらずビルの一階にある待合室で待つことにした。彼ら二人が一体何を話し合ったのかはわからないが、夕方の退勤時刻になってようやく詩乃が上からおりてきた。「お義母さん」理紗は急いで待合室から出てきた。この時、義母はやはり不機嫌そうにはしていたが、怒りはそんなに感じられなかったので、理紗は少し安心した。「理紗さん、車の鍵をちょうだい。私自分で運転して帰るわ。あなたはちょっと待って玲凰と一緒に帰ってらっしゃい」「あ、わかりました」理紗は車の鍵を義母に渡した。詩乃はその鍵を受け取ると、こわばった表情で行ってしまった。一方、こんなことになっているとは唯花は全く知らなかった。唯花が義母と一緒にトキワ・フラワーガーデンに戻った後、義父から妻に早く帰ってくるよう急かす電話がかかってきた。唯花は義母に夕飯を一緒に食べようと
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第740話

「まだよ。先にタレを作ってから、その後漬物を作るわ」唯花は室内を見まわし、清水と陽がいないことに気づいて尋ねた。「清水さんは陽ちゃんを連れてお出かけしてるの?」「ええ、部屋中ちょっと匂うから、清水さんにお願いしてあの子を連れて散歩に行ってもらってるの。もうちょっとしたら帰ってご飯を食べるのよ。唯花、こんな時間に来て、結城さんにご飯作ってあげなくていいの?確かドレスを選びに行くって言ってたわよね、もう買った?」唯花はキッチンに入り、食材を見てから姉に聞いて、野菜を洗って夕食の手伝いを始めた。「何着か買ったの。お義母さんが見立ててくれたんだ。お義母さんのセンスはとても良いわ、どれも綺麗なものばかり」ただ高すぎる。彼女はこっそりと店員に尋ねていた。義母が買ってくれたあの数着の綺麗なドレスは彼女の貯金だと二、三着しか買えないくらい高価なものだった。これは理仁が出したお金だが、唯花はやっぱりもったいないと感じた。あの男、本当に金遣いが荒い。高収入だから、消費額も大きいのだ。彼はこれまでよくもあれだけ貯金できたものだ、別荘を買ってそれからトキワ・フラワーガーデンにも家を買うなど相当なものだろう。唯月はひとこと「そうなんだ」と言った。「ピンポーン……」家のインターホンが鳴った。「唯花、誰が来たか見てきて、私今手が離せないから」唯月は唯花に玄関を開けに行くよう頼んだ。唯花はキッチンを出て、玄関のドアを開けた。「きっと清水さんが陽ちゃんを連れて帰って来たんでしょう。清水さんは……なんであなたがここにいるの?」玄関の前にいたのは清水と陽ではなく、佐々木母だった。「唯花さん、お姉さんは家にいる?えっと、私ね、ちょっとお姉さんにお話があるんだよ。陽ちゃんは?陽ちゃんにも会いたいし」佐々木母は今、唯花のことを少し怖がっていた。「こんな時間にお姉ちゃんと話したいだなんて、夜ごはんにもついでにありつこうって魂胆ね。なによ、あの新しい息子の嫁はご飯を作ってくれないわけ?あんたのために豪華な海鮮料理を作ってくれないって?」佐々木母を目の前にして、唯花は我慢できず皮肉を漏らした。以前、この佐々木母は娘一家も連れて、姉にご飯を作らせていた。佐々木一家は海鮮料理が好物だから、毎回来るたびに姉にたくさんの魚介類を買えと言
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