そもそも、彼が唯月に関心を寄せるようになったその原因はもとはと言えば、理仁のせいなのだ。理仁と唯花がスピード結婚したことにより、唯月が理仁の義姉になった。隼翔も親友がそのような状況になっていなければ、それを考慮することなく、唯月が彼の車に傷をつけた時点で修理代を全額請求していたはずだ。隼翔は親友たちが、彼が唯月に気があるとまだ誤解しているのがわかっていた。その誤解を解くのも面倒だし、下手に言い訳のようなものをしたら変な方向にいってしまって、墓穴にはまっていくだけのような気がした。男たちが食事に加わってから、理仁はビールを二本注文した。隼翔は後で車の運転をするので、お酒を飲まなかったが、悟と理仁は二人ともお酒を飲んだ。しかし、酔ってしまうほどは飲まなかった。食べて飲んで満足した後、みんなは立ち上がり帰ろうとした。その時、悟が突然口を開いた。「理仁、隼翔、俺どうやって帰るんだ?さっきビールを飲んだから、運転できないぞ」隼翔のように鈍感なやつでも、悟がわざとこうしたことはすぐにわかった。明凛に送ってもらおうという計画だ。「俺は用事があるから、お先に失礼する」隼翔はそうひとこと吐き捨てて、そそくさとその場を去っていった。理仁はそこでこう言った。「俺も酒を飲んだから、悟のことは送ってやれないな。牧野さん、申し訳ないんだが、悟のやつを送ってもらえませんか」唯花は悟に代行を呼びましょうかと言おうとしていたその言葉を呑み込んでしまった。彼女は恋のキューピットになるべく、悟にチャンスを与えてあげなければならない。そして結局、やはり明凛が悟を家まで送っていったのだった。唯花夫妻はトキワ・フラワーガーデンに帰ってくると、清水が家にいないことに気づき、彼女が清水に電話をしようとしたところに理仁が言った。「俺が清水さんに今夜は休んでくれと言っておいたんだ。俺たち二人きりの世界を満喫できるだろう」彼はそう言いながら、唯花に近づき、とても自然な流れで彼女の腰に手を回し、自分の懐に抱き寄せた。顔を下に向け、彼女の首元に埋まり、低くかすれた声で言った。「唯花さん、また『理仁』って呼び捨てで俺を呼んでくれないか。そうやって呼ばれるのが好きなんだ」唯花は首元が少しじんじんとむず痒くなり、彼を押しのけようと思ったが、彼のほうがどうしても離そう
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