交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 721 - チャプター 730

760 チャプター

第721話

「結城さんが出張から帰ったから、時間があったら、彼を連れて詩乃おばさんに会わせてあげて」唯月が話題を変えた。理仁が富豪の結城家と関係があるかどうか、彼女には判断する方法はないが、彼女たちの伯母である神崎夫人なら、きっと結城家の坊ちゃんたちに会ったことがあるので、妹が理仁を伯母に会わせてみればいい。そうすれば、きっと理仁が妹を騙しているかどうかはっきりするだろう。隣にいる清水はそれを聞きながら、夜帰ったらこっそり若旦那様に注意しなければならないと思っていた。やはりできるだけ早めに若奥様に真実を打ち明けるべきなのだ。「理仁さんは年が明けてから時間が取れるって言ってたのよ。最近はずっと忙しいみたい。もうすぐ会社の年末パーティーがあるって」「会社のパーティーに家族同伴できるの?結城さんはあなたを連れて行くって言わなかった?」唯花が会社で働いたことがないのは、唯月が誰よりもわかっている。もし理仁が妹を結城グループのパーティーに連れて行くなら、すべては彼女の考えすぎかもしれない。それなら理仁は本当に名家の結城家と何の関係もないのだ。「ええ、招待状を持ってくるから、その時私を連れて会社のパーティーに参加するって言ったよ」妹の返事を聞いて、唯月はようやく安心した。やはり彼女は考えすぎなのだ。会社のそのような集まりには、社長は絶対顔を出すものだ。今結城グループを仕切っているのは結城家の御曹司で、つまり、姫華が長年愛していたあの男性だ。結城社長が姿を見せれば、唯花はきっと理仁が結城家の人間かどうか判断できるはずだ。唯花は理仁の弟たちにも面識がある。前に陽が佐々木家に連れて行かれた時、彼らは総出で助けに来てくれたのだ。唯月は理仁が妹を会社のパーティーに参加させるということは、せめて身分に関しては妹を騙してはいないのだと心の中で考えた。唯花は時間を確認してから、姉に言った。「お姉ちゃん、お昼はここで食べるよ。今から結城グループへ理仁さんを迎えに行くわ」今は店を開く必要がないから、理仁とイチャイチャする時間がたっぷりあるのだ。唯月は笑った。「わかった、いってらっしゃい。あなた達が好きな料理の材料はもう買っておいたから」唯花は車の鍵を持ち、甥に聞いた。「陽ちゃん、おばさんと一緒におじさんを迎えに行かない?」「いく」
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第722話

唯花は姫華がすぐ結城社長への恋心を捨てるのが非常に難しいことを理解していた。姫華はもう長い間、結城社長を追いかけていないのだ。今日ここに来たのは、たぶん、密かに結城社長を一目でも見てみたいからなのだろう。叶わぬ恋に落ちるというのは、さぞつらかろう。「前にここで何度もミルクティーを頼んだの。この店のミルクティーとお菓子が美味しかったから、また食べに来たけど、今考えると、結構普通ね」姫華は何もないようにそう話した。まるで本当にミルクティーを飲むために来たようだった。彼女は確かに以前ここで何度もミルクティーを飲んだことがある。以前美味しく感じたのは、ここで待つ価値があったからかもしれない。今そう感じないのは、もう待つ人がいなくなったからだ。「旦那さんを迎えに来たの?もう出張から帰ってきたでしょ?いつ旦那さんを連れてうちに来るの?」「たぶん年を越してからかな。彼は今とても忙しいの。時間がなかなか取れないわ」姫華は理解したように頷き、また提案した。「じゃ、一緒に店でミルクティー飲む?」「やめとこうかな。ミルクティーを飲んだら、昼ご飯が食べられなくなるよ。お姉ちゃんにまた食べ物を無駄にしたって怒られちゃう」姫華は笑った。「唯月さんは今どう?お母さんはあなた達の助けになりたいって言ってたけど、断られちゃって、あなた達をただ見守るしかできないみたいよ」姉妹二人は確かにそこまで裕福というわけではないが、ちゃんとした目標を持っていて、自力で日々を過ごしている。「私もお姉ちゃんもまだまだ若いし、体も健康で丈夫だし、ちゃんと自分で働いて生きていけるわ。詩乃おばさんに心配しないでって伝えてあげて。それに、本当に何かしたいなら、昴さんと姫華の結婚相手のことを考えてって」姫華は笑いながら言った。「昴兄さんはいつもドジョウみたいにぬるりとあちこち逃げ回ってるの。絶対こんなに早く結婚したくないのよ。誰も彼に指図なんかできないよ。私なら、唯花も知ってるでしょ、何を言ったって、やっぱりすぐには立ち直れないわ」「姫華ならきっともっといい人に出会えるよ」姫華は自信たっぷりに言った。「私もそう思うわ」二人は笑い合った。玲凰は唯花に姫華の前では理仁の苗字すら口にしないように頼んでいた。姫華を刺激しないためにだ。今、姫華がまた結城グループの向
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第723話

姫華はアクセルを踏み込むと、かなりのスピードを出して、善の乗った車の後ろから一気に追い越した。ところが、二分も経たないうちに、スピードがどんどん落ちてきた。どうやら、タイヤがパンクしたようだ。仕方なく、彼女は車を道端に止めて、車を降りてタイヤの状態を確認した。どうして突然パンクしたのだろう?彼女が車を降りると、追い越された善はすぐに彼女が誰なのか思い出した。善の運転手も姫華に気づいた。前に彼は姫華に道を譲って先に行かせたから、かなり印象に残っていたからだ。「少し止めて」善はそう運転手に言った。運転手はすぐ停車した。ちょうど姫華の車の傍にピッタリ止まった。善は運転手に指示を出した。「神崎さんに何かあったか聞いてくれる?」姫華がここにいるのは、おそらく理仁のためだ。善は長い間星城で過ごしていたので、姫華が理仁を追いかけていたことを知っていた。今理仁は彼がもう結婚したことを公表したから、確かに姫華が理仁に付き纏う姿を暫く見ることはなかったのだ。それがまさか今日また彼女と会った。善は理仁のことを自分の兄のようだと思っていた。既婚者なのに、相変わらず女性にモテているのだ。運転手は善の指示通りに車を降りて、姫華に近づき尋ねた。「車の調子が悪いのでしょうか」「パンクしたわ。何か尖った物が刺さっちゃったのかも」姫華はパンクしたタイヤの前にしゃがんで、慎重に調べてみると、本当にタイヤに刺さった鋭い何かを見つけた。「かなり空気抜けてそうですか?」「そうね。タイヤがどんどんしぼんでいくから、もうダメみたいだわ」姫華はその刺さった物を抜かず、立ち上がってまず携帯を取り出しレッカー車を呼んだ。電話してから、彼女は善の車の前に来て、コンコンと車の窓をノックした。善は車の窓のカーテンを開けた。姫華を見て、彼は車を降りることにした。予想外に見知らぬ顔を見て、姫華は一瞬戸惑った。まさか彼女の知る星城の上流社会の人間じゃないとは思っていなかったのだ。どうりで誰の車なのかわからなかったはずだ。「神崎さん、何かお手伝いできることはありますか」善は優しそうな声で姫華に尋ねた。「ありがとうございます。タイヤがパンクしてしまったけど、もうレッカー車を呼びましたから、大丈夫です。失礼ですが、お名前を聞いても
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第724話

アバンダントグループと結城グループは長い間提携しており、アバンダントグループの星城にある支社は善が担当していると聞いていた。だから善がさっき結城グループから出てきたのだ。「桐生善さん」姫華は神崎グループのお嬢様として、以前からA市のアバンダントグループのことを耳にしていたのだ。お互いともに大手企業で、それぞれの都市でもトップクラスの富豪である。一番羨ましいことに、桐生家も結城家と同じく、家族の間の仲は非常に穏やかで和やかだった。その仲の良さがあったからこそ、商売もうまくいっているというものだ。母親はよく、結城家が長くトップクラスの富豪の座に居座っているのは、家風がよく、後代に対する教育が行き届いているからだと言っていた。だから、ちょっとした利益で兄弟がひどく争うこともなく、兄弟はお互いに思い合い、助け合い、家業の後継者の座を奪う者さえもいないほどだ。理仁は結城家の長男で、生まれた時から後継者として育てられてきた。彼には選択の余地がなく、仕方なくその重責を担ったのだ。彼の弟たちで、ビジネス界に入る者は大体理仁を補佐するためだった。それ以外の者は好きな道に進み、それぞれの分野でも成功を収めている。「神崎さん、お送りしましょうか」善は優しく尋ねた。彼の姫華を見つめる表情も微笑みに満ちていて、彼以外に温厚篤実という言葉に相応しい男性はきっといないだろう。姫華の口調も思わず柔らかくなった。「ありがとうございます、桐生さん。でも大丈夫ですよ。うちの運転手が迎えに来ますから」彼女がここまでついてきたのは、一体誰がこんなに大袈裟に外出するのか知りたかったからだ。答えをもらった今は、もうついて行くつもりはない。それについて行こうにもタイヤがパンクしていては行くことはできない。「では、先に失礼しますね」姫華は「ええ」と返事した。「お忙しいところ止めてしまって、すみませんね。私はここで待ちますから。運転手ならもうすぐ来るはずです」善は笑って丁寧に別れの挨拶をしてから、車に戻った。座った後また姫華に手を振って別れを告げて、窓のカーテンを閉めた。車がすぐ動き出し、数分も経たないうちに、もう彼の車は見えなくなった。一方、唯花はまだ結城グループの前で理仁を待っていた。姫華が去った後、彼女もカフェに入り、適当に座って理仁にメッセージを送った。
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第725話

唯花が彼の顔を二回つねってからすぐ手を引っ込めたのを見て、理仁はじっと彼女を見つめて、低い声で尋ねた。「こうやって俯いたんだから、キスしてくれないのか?」唯花は素早く周りを確認してから、恥ずかしそうに小声で言った。「今は外でしょ、人がたくさんいるから」カフェの中にもたくさんのお客がいる。唯花は口では何でも言えるが、実際はそれほど大胆な行動ができないタイプだ。理仁は目を細めて笑った。「じゃ、俺からキスしよっか?」唯花が返事する前に、彼は両手で彼女の顔をおさえ、近づいてその赤い唇にキスをした。しかし、彼はそのキスは軽く触れただけですぐ離れた。そして、彼女を甘やかすように言った。「さあ、帰ろう。義姉さんが待ってるでしょ」彼は唯花の手を取り、彼女の車に近づきながら、彼女から鍵を受け取った。「俺が運転しよう」唯花は頷いた。二人とも運転ができるから、誰が運転しても同じだ。車に乗ると、唯花は聞いた。「まだ社長夫人がどんな人なのかわからないの?」理仁は彼女をちらりと見て、淡々と運転しながら聞き返した。「なに?社長夫人に興味があるの?」「興味ないけど、さっき着いた時、姫華に会ったのよ。彼女はカフェに座っていて、あなたの会社のビルをぼうっと見つめていたの。たぶん、まだ結城社長のことが忘れられないんでしょう。それから、何台かの車が会社から出てきたのを見て、彼女は急いで行っちゃったの。あれが社長さんの専用車かどうか知らないけど、その結城社長は毎回ボティーガードを何人もつれていて、派手に登場していたでしょ?お宅の社長さん以外、あんな登場シーンをみせてくれる人なんか思い浮かばないわよ」理仁は彼女の話を聞いて冷や汗をかいた。もし彼が早く出てきていたら、危うく姫華に彼が唯花と一緒にいるところを見られたかもしれない。幸い、善がA市に戻る前にまた会いに来てくれてよかった。善は彼と同じように大勢のボティーガードを連れているから、姫華の注意を引いてくれたおかげで、彼の正体がばれずに済んだのだ。いや、どこかおかしい。理仁はすぐ違和感に気づいた。彼が普段乗っている車はロールスロイスだった。姫華は以前いつも彼を追いかけていたから、彼がどんな車に乗っているのかちゃんと知っているはずだ。善がよく使うのはマイバッハとポルシェだった。姫華が善を
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第726話

唯花はおかしそうに言った。「……姫華ったら人を間違えたのかしら?」理仁は笑って言った。「間違えたんじゃないかもしれないぞ。神崎さんは叶わぬ恋をようやく諦めて、桐生さんのことが気になりだしたのかも」唯花も姫華が長年結城社長に恋焦がれていたから、間違えるはずがないと考え言った。「まだ好きになるまでいってないと思うけど、たぶん桐生さんのどこかが姫華の心をちょっと動かしたんでしょうね。桐生さんは本当にいい人なの?姫華はすごくいい子だから。もし桐生さんと仲良くなれて恋人になれば、みんな安心できるよ。結城社長を好きになって結ばれなくて苦しんだ姫華を見てると、心が痛むわ」彼女は姫華に恋のアドバイスを一時的にしていたからだ。結城社長を落とすことはできず役に立てなかったが、姫華が善と結びつくなら、それもよさそうだ。だた、善の実家はA市にあるのだ。少々遠いが、伯母が許してくれるだろうか?姫華は彼女の一人娘なのだ。「見守ってあげればいいさ。もし神崎さんが桐生さんとうまくいきそうなら、俺たちは後ろからひそかに応援してあげればいい。結ばれる縁があるかどうかは、あの二人次第だよ」前は、理仁は姫華が好きではなく、欠点だらけだと思っていた。今では、彼女は家族に甘やかされて育ち、わがままで、高飛車な女だが、ちゃんとした価値観の持ち主だと思っていた。それに、唯花にもよくしてくれている。唯花に優しくしてくれる人なら、理仁はちゃんと尊重するつもりだ。姫華が唯花によくするのは、二人が従姉妹という血縁関係があるからではなく、本当に気が合うからだ。「そうね」唯花も焦ってはいけないとわかっていた。まずは二人をよく観察してみよう。もし姫華と善が本当にうまくやっていけそうなら、玲凰にも話してみていいだろう。神崎グループがアバンダントグループと提携さえすれば、自然に善と姫華も接するチャンスが多くなるのだ。理仁はあるスーパーの前に車を止め、唯花に言った。「ちょっと陽君に果物を買ってくるね」「おもちゃは買わないでね」唯花も一緒に車を降りた。「姫華がいつも陽ちゃんにおもちゃを買ってあげてるから、陽ちゃんのおもちゃはもうお店が開けるほどたくさんあるのよ」理仁は微笑んだ。「陽君がみんなに愛されるのは別に悪いことじゃないだろう?確かに両親が離婚して、父
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第727話

唯花は自然に彼の腕を組んで店に入りながら笑った。「そうだよね。あの人が愚痴を言いに来なかったら、佐々木家が成瀬莉奈を嫌い始めたことなんか知らなかったよね」夫婦二人はスーパーで何種類かの果物を買って、大きな袋を二つぶら下げて出てきた。唯月のところに帰ると、また彼女に説教された。もちろん、彼女は義弟には何も言わないが、妹に注意した。「結城さんはまだ家のローンを返しているでしょ。いくら収入が高いからって、節約しないと。子供が出来たら、今よりもっといろんなところにお金を使うわ。私には何もいらないから、結城さんに何も買わせないように言っておいてね」「お姉ちゃん、これは理仁さんがお姉ちゃんのためにわざわざ買ってきたものだから、受け取ってあげて。それに、もし彼のローンのことが心配なら、後でフルーツ代を彼に返せばいいのよ。こうすれば、私が出したお金でお姉ちゃんに買ったことになるでしょ。お姉ちゃんったら、ますます理仁さんを贔屓するようになったわね。私が実の妹なのに」唯月は軽く彼女の額を突いた。「結城家のみんなはあなたにとてもよくしてくれてるでしょ。だから、私はあなたの家族として、当然結城さんにもよくしないとね」結城家の人間が妹にしてくれたように、彼女も理仁に同じ態度で接したいのだ。確かに一見、彼女は妹の実家側の者なのに、義弟を贔屓しているように見えるが、実は、義弟に妹をもっと大切にしてほしいから、そうしているのだ。唯花は悪戯っぽく「べえ」と舌を出した。昼ご飯を食べた後。唯花はまた理仁を会社まで送っていった。妻に送り迎えしてもらった結城社長は、午後からずっとにやにやしていて、上機嫌だった。そして、非常に珍しく、自ら隼翔と悟を誘い、鍋を食べに行くことにした。妻が今晩彼をおいて、明凛と鍋を食べに行くからだ。妻が親友と一緒に行くなら、彼も親友を誘ってご飯を食べに行く。偶然でも装って同じ場所で会ったら、自然に妻と一緒に晩ごはんを食べられるという寸法だ。二人は本当の夫婦になった後、理仁はまるで金魚の糞にでもなったかのように、毎日唯花にくっつきまわっていた。唯花が明凛と鍋を食べに行ったとはいえ、愛する夫を置いて行くなんて、考えるだけで理仁はヤキモチを焼き始めた。「秘書から聞いたぞ。午後ずっとニヤニヤしてたって。理仁、君そんなに
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第728話

「東夫人は隼翔に財閥の名家のお嬢様と結婚してほしいと思ってるらしいぞ。しかも、億万長者の家系じゃなければ、隼翔に相応しくないって」隼翔自身はすでに億万長者である。東夫人は自分の一番下の息子が顔の傷以外はすべて完璧で優秀だから、当然同じく優秀な女性じゃないと息子に相応しくないと思っているのだ。悟は表は穏やかで優しそうな東夫人が、実は人を軽んじて見るきらいがあることを思いだした。パーティーに出る東夫人は、大体自分と同等の地位のあるご夫人方としか話さず、他の人を全く相手にしないのだ。おそらく、隼翔も母親の性格をよく理解していて、母親が満足できる恋人を見つけるのが難しいとわかっているから、恋人を探すのをやめたのではないか。しかし実は、隼翔はただ今まで本気で好きになる女性に出会っていないから、恋愛していないだけだった。「ところで、お前、今牧野さんを狙ってるのか、それとも彼女の弟さんを狙ってるんだよ?出張から戻って聞いた話では、お前は彼女の弟の涼太君をしょっちゅう誘って食事に行ってるとか、たまにカーレースにも付き合って、お気にいりのスポーツカーまで貸してあげたそうじゃないか」理仁は彼に少し近づき、黒い瞳に悪戯っぽい笑みをひそめて言った。「悟、お前に関する面白い噂を聞いたんだぞ、知りたいか?」悟は少しむっとした様子で言った。「噂の収集に関して、俺の右に出るやつはいないだろう。とっくに知ってるわ。俺がよく涼太君を食事に誘うのを見て、俺が若くてイケメンな男が好きなんじゃないかって疑う奴らが出てきたんだろ?」毎回涼太を食事を誘う時、明凛も一緒にいるのに、あの連中は見ていないのか。これは義弟を先に味方にするという策なだけだ!「牧野さんは俺のことが嫌いではないけど、俺の出身が気に入らないようだな。でもこれは俺が選べることじゃないだろう。多くの人は俺の家柄を羨ましがっているというのに、彼女は俺が裕福な家庭の出身で、本人も大金持ちというところが気に入らなくて、俺と付き合いたくないって。普通だったら、金がない男こそ彼女に嫌われるんじゃないのか?どうして俺の好きな女の子は俺が金持ちであることを嫌っているんだ?だから、仕方なく先に涼太君を味方にするしかないだろう。今涼太君は結構俺に憧れていて懐いているんだ。俺が誘ったら、いつでも来てくれるよ。それで
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第729話

会社を出ると、理仁は悟の車に乗りこんだ。悟は思わず彼に言った。「自分の高級車に乗らないのはともかく、奥さんを騙すために買ったホンダ車も使わないのか」理仁はシートベルトを締めながら言った。「お前の車で行けば、うちの唯花さんは俺が失業するかもしれないと心配しなくていいだろ」「お前が?仕事を失くす?奥さんはそれを心配しているって?」悟は笑いそうになった。社長夫人がまさか理仁が失業者になるのを心配することなんてあるだろうか。理仁が結城グループの経営を手放したら、下の八人が泣き喚くだろう。理仁は一人で結城家の九人分の負担を背負っているのだから。「そうは言ってないが、最近俺の財布を心配し始めたんだ。無駄使いしないようにときつく言われたよ。俺がお前とよく一緒にいるのを見たら、ちゃんとお前を味方につけてるから、安心できるだろ」悟は思わず言った。「今彼女を味方につけた人間こそ安泰だと知らないのか?」唯花の話になると、理仁の目は優しさに満ちた。悟の言葉にも頷いて、確かにそうだと思っていた。「プルプルプル……」「妻からの電話だ」理仁はそう言うと、悟は気を利かせ、車内で流す音楽の音量を下げた。「唯花さん」電話に出た理仁は相変わらずまじめな口調だったが、親しい人だけがわかる。その口調は普段よりずいぶん柔らかくなっている。「理仁さん、もうご飯食べた?」「食事に誘ってる?」理仁は反射的にそう聞いたが、すぐ彼女が明凛と一緒に食事に行く約束をしたことを思い出した。彼とは全く関係ないのだ。すると、思わず妬いて一言付け加えた。「そうだ、君は牧野さんと一緒にご飯を食べに行くんだよね。俺を連れて行かないから、食事に誘うわけはないね」「あのね、またヤキモチ?明凛は私の大事な親友よ。彼女と比べてどうするの?比べられないよ。一人は私の一番の親友で、もう一人は一生を共にする夫なんだから。立場が全然違って、比べる必要もないわよ。今晩は接待があるんだよね?あまり飲み過ぎないようにね。お酒を飲むなら、何かを食べてから飲んでね。迎えが必要なら、メッセージを送って」明凛に妬いていた理仁はそれを聞いて、気分が少し良くなった。明凛が唯花にとってどんなに大切な存在だとしても、彼女と一生を共にするのはこの結城理仁なのだ。彼女の言った通り、明凛と比べる必要はな
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第730話

唯花は意外そうに聞きながら、後ろにいる悟と隼翔を見て、また口を開いた。「九条さんと一緒に接待する顧客って、東さんだったの?」「そうだよ」理仁は振り向いて二人の親友に無言で合図をした。二人はそれを見て、一緒に近づいてきた。「九条さん、どうも」唯花は立ち上がり、微笑んで悟に挨拶して、また隣の隼翔にも声をかけた。明凛も一緒に立ち上がった。簡単な挨拶が終わると、唯花は気軽に提案した。「よかったら、一緒に食べますか」「もちろん、いいよ」理仁はすぐ返事をした。悟は明凛を見つめ、笑いながら言った。「牧野さんは大丈夫ですか」明凛はこの二人は肝心の顧客である隼翔の意思を無視しているんじゃないかと思って、隼翔のほうへ視線を向けた。「東さんがよければ、ご一緒しましょうか」東社長こそ主役なのに、この二人は彼を蚊帳の外に置いてどうするのだ。隼翔の方がすごし憂鬱になった。彼は別にお邪魔虫になるためにここへ来たのではないのだ!二人の親友にはもうパートナーがいるのに、彼を食事に誘う必要があるのか。彼は何も食べなくても、こいつらを見るだけでお腹いっぱいになれる。「お言葉に甘えて、ご一緒させてもらいます」隼翔は返事した。すると、この三人の男組みは堂々と席に着き、またたくさん注文した。隼翔は座ると、何気もなく自然に唯花に聞いた。「内海さん、お姉さんと陽君は一緒に来てないんですか」全員はすっと彼に注目した。隼翔は何回も瞬きして、自分が何か間違ったことを言ったかと疑った。唯花がすごく姉想いで、陽のこともすごく可愛がっているので、鍋を食べにくるなら、あの二人を連れてこないのは不自然だと思い、聞いてみただけなのに、どうしてみんなが彼を見つめるのだ?唯花はハッとして、急いで答えた。「姉はダイエット中で、外食しないと言っていました。来てもあまり食べられなくて、逆に私たちの食欲にも影響するって心配してるんです。それに、陽ちゃんは夜になると姉にべったりで、姉が来ないなら、彼も来られないんですよ」隼翔は理解したように頷いた。「子供ってそういうもんですよね。陽君はいつも俺を怖がってるんですが、俺はあの子が大好きですよ。会うたびに抱っこしたくなるんです。残念ながら、一度も触らせてくれないんですがね。お姉さんのダイエットは結構効果が
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