彼女の口の上手さは、本当に大したものだ。「こんな真似までして、沙耶香を怒らせるためでしょ?」柳愛子の指摘に、岸野ゆきなは顔色一つ変えず、眉をひそめて疑問に満ちた表情を作った。「なんでそれが沙耶香を怒らせることになるのよ?意味がわかんない」柳愛子はカップを置いて、冷たく岸野ゆきなを見据えた。「あなたが涼平のマンションに入ったと思ったら、すぐに沙耶香が来た。きっと彼女が来ることを知っていて、わざと芝居を打ったんでしょ」意味を理解したように見せかけた岸野ゆきなは、少しの間目を伏せて考え、それから顔を上げて柳愛子の目を見つめた。「愛子さん、私はたまたま涼平さんと道で会って、ちょっと家まで一緒に行っただけなの。その間、沙耶香が来るとは全く知らなかった。もしかして、涼平と沙耶香は約束していたんでしょか?」その点については、霜村涼平は何も言っていなかったので、おそらく約束はしていなかったのだろう。柳愛子はあの晩、白石沙耶香と話した後、彼女が霜村涼平のマンションに行ったことを思い出した。彼女がこんなにすぐに霜村涼平の元へ行ったのは、あの時の自分の言葉が、彼女の背中を押してしまったのかもしれない。ということは、白石沙耶香が霜村涼平と岸野ゆきながそういう関係になったのは自分のせいだった。腑に落ちた柳愛子は、すぐには言い返す言葉が見つからず、それ以上何も言わなかった。「あなたの表情からすると、約束はしていなかったようね。約束もしていないのに、どうして私が沙耶香が涼平のマンションに来ることを事前に知ることができたというの?彼女が来るかどうかも知らないのに、どうして彼女を怒らせる必要があるの?もし後からこの件で沙耶香を怒らせたとしても、私が彼女に接触した痕跡が残ってしまうはず。沙耶香に直接聞いてみればいいでしょ。私が彼女に会ったかどうか。もし会っていないのなら、あなたたちは証拠を作るために、わざと私に濡れ衣を着せているの!」柳愛子はそれを聞いて、暗い表情になった。「ゆきな、あなたがどんな目的でこんなことをしているのか、私には分からない。ただ、涼平に濡れ衣を着せたことは、簡単には許さない」柳愛子が再びボディガードに顎で合図を送るのを見て、岸野ゆきなは恐怖にかられて叫んだ。「愛子さん、私は涼平に濡れ衣を着せていな
Read more