All Chapters of 契約終了、霜村様に手放して欲しい: Chapter 1191 - Chapter 1200

酒席の場で、霜村涼平は最初は誰と結婚するのかわざと秘密にして、皆を焦らしていた。皆はしきりに彼に酒を勧めて酔わせ、それからようやく、白石沙耶香と結婚するつもりだと聞き出した......友人たちは白石沙耶香のことを知っていたので、霜村涼平が彼女と結婚すると聞いて、皆が騒然となった。霜村涼平は気が狂ったに違いない、まさかバツ一の、しかも年上で、彼を陥れたことのある女と結婚するなんて、皆は彼に考え直すよう忠告した。彼と結婚したい女なんていくらでもいる、一旦考え直せと。酔っ払った霜村涼平は、意識が朦朧としていたが、それでも忠告の内容は理解できた。途端に機嫌が悪くなり、椅子を蹴飛ばし、忠告した友人たちを一人ずつ罵倒した。手が出る寸前だった。唐沢白夜が止めなければ、この時、霜村涼平は酒の勢いで、白石沙耶香の悪口を言った友人たちを皆、倒していただろう。霜村涼平は皆を罵倒した後、この場が急につまらなくなり、コートを手に取って、よろめきながら出て行った。気分の落ち込んだ唐沢白夜は、彼にはついて行かず、ただ隅に座って、孤独に、遊び仲間の友人たちと、酒を飲んで憂さ晴らしを続けた......目眩のする霜村涼平は、よろよろと個室から出てきたところで、岸野ゆきなと出くわした。相手はまるで彼を待っていたかのように、彼が姿を現すと、少しも驚かず、むしろ近づいてきた。「涼平、結婚するって聞いたんだけど？」岸野ゆきなは少し寂しそうに、霜村涼平を見上げた。目の前の人物が二人に分裂し、最後には重なって一つになった。霜村涼平は彼女が誰なのかわからず、ただ女の人だということだけはわかった。もう結婚する身だから、他の女とは距離を置かなければならない。そう思って岸野ゆきなを避け、隣の通路へとよろよろと歩いて行った。足元がふらついて、もう少しで転びそうになったところを、岸野ゆきなは慌てて彼を支えた......「は、離してくれ」他の女に触れてはいけない、白石沙耶香が不機嫌になる。頭の中が白石沙耶香でいっぱいの霜村涼平は、岸野ゆきなを強く突き放した。脇に追いやられた岸野ゆきなは、霜村涼平のよろめく後ろ姿を見ながら、念入りに化粧をした顔を、徐々に曇らせた。以前、霜村涼平に連絡先を削除されたので、彼のインスタを見ることができないが、彼の友人のことは知っていた。

不安で胸が締め付けられる中、白石沙耶香からメッセージが届いた。霜村涼平は慌ててメッセージを開いた。表示された文字を見た瞬間、長身で逞しい彼の体は硬直した。我に返った霜村涼平はすぐさま白石沙耶香に電話をかけたが、相手は出ずに切られてしまった。もう一度かけ直そうと思ったが、既にブロックされていて、電話は繋がらなかった。電話が繋がらないとなると、霜村涼平はチャット画面に戻り、ダメ元で急いでメッセージを打ち込んだ。【沙耶香、どうしたんだ？なぜプロポーズを断るんだ？】メッセージを送信したが、いつまで経っても既読にならない。やはり、自分はブロックされたのだった。霜村涼平は眉をひそめ、白石沙耶香から送られてきたメッセージを見つめた。【涼平、もうプロポーズはやめて。私はあなたとは結婚しない。あの夜は一夜限りの出来事として、忘れよう】つまり......白石沙耶香があのとき返事をしなかったのは、結婚を承諾すべきか迷っていたからで、今になってようやく決心がつき、はっきりとした返事を送ってきたのだろうか？敢えて皆に知らしめたのは、彼女に逃げられないようにするためだったのに、まさか白石沙耶香が相変わらずの冷酷さを見せるとは。深い仲になった後でさえ、彼女はそれを一夜限りの出来事として軽く扱い、気に留めていないのだ。苛立ちを抑えきれず、霜村涼平はスマホを放り投げた。白石沙耶香が一歩近づくたび、彼はその何十倍も近づいてきた。彼女の頑なな心をいつか溶かせると信じていたのに、彼女の心は石よりも硬く、入り込む隙など全くなかったのだ。霜村涼平は怒りに震えながらソファに腰を下ろし、しばらく呆然としていたが、再びスマホを掴むと、白石沙耶香の住まいへと走り出した。しかし、白石沙耶香は家にいなかった。由紀から白石沙耶香が昨夜帰ってきていないと聞くと、霜村涼平は彼女がまたクラブで夜通し働いていると思い、急いで車でクラブへ向かった。クラブに着くと、マネージャーからオーナーはずっと来ていないと聞かれ、白石沙耶香の居場所が分からなくなった霜村涼平は、慌てて和泉夕子に電話をかけた。デザイン画の制作に追われていた和泉夕子は、霜村涼平からの着信を見ると、ペンと定規を置いてすぐに電話を取り、ロックを解除した。「夕子さん、沙耶香の居場所を知らないか？」和泉

霜村涼平は屋敷に戻ると、本当に家を壊し始めた――家の中の物は全て壊され、百年ものの骨董品さえも彼に蹴り飛ばされた。その様子はまるで猛獣が暴れ回るように、誰にも止められず、狂ったようにあたりを壊しまわった。息子の激しい反応を見て、柳愛子は怒り心頭だった。「涼平、女ひとりのために、自分の両親にこんな仕打ちをするなんて、あなたには良心っていうものはないの？！」霜村涼平は野球のバットを振り回し、物を壊しながら冷たく言った。「沙耶香と結婚したいって分かってるくせに、余計な口出しをしてくる。お母さんたちの良心はどこにあるんだ？」骨董棚の物が全て霜村涼平に床に掃き落とされるのを見て、激怒した霜村真一はついに我慢できなくなり、駆け寄った。「涼平、一体何をするつもりだ？！」白い硯を手にした霜村涼平は、霜村真一の制止を無視して、それを高く掲げ、床に叩きつけた。「お母さんに沙耶香に謝罪させろ。さもないと、お父さんのコレクションは全部壊す。ひとつも残さない！」普段からあまり権威のない霜村真一は、その言葉を聞いて息を切らした。「お前のお母さんもお前のためにやったことだ。感謝しないどころか、どうして彼女に部外者に謝罪しろとまで言うんだ？」霜村涼平はその言葉を聞くと、またバットで骨董棚の花瓶を叩き落とした。「本当に僕のためを思うなら、結婚の準備を手伝うべきだ。僕の知らないところで、僕が結婚したい女に会いに行って、余計な嫌味を言うべきじゃない！」大切な花瓶が粉々に砕けるのを見て、霜村真一は胸が痛んだ。「これらの花瓶は百年以上の歴史がある。ひとつ数千万円もするんだぞ。おまえってやつは、本当に金をドブに捨てるようなことばっかりして......」霜村真一は怒りのあまり気を失いそうになり、使用人に支えられていなければ、倒れていたところだった。夫がひどく怒っているのを見て、柳愛子は霜村涼平を止めようと駆け寄ったが、突き飛ばされてしまった。「お母さん、沙耶香に謝罪したほうがいい。さもないと、毎日ここに来て物を壊す。お母さんが僕を苦しめるなら、僕もお母さんを苦しめる！」彼は明らかに白石沙耶香の仕返しに来たのだ。柳愛子はまさか自分の子どもたちが二人とも身内以外の味方をするとは思ってもみなかった。本当に親不孝者を育ててしまったものだ。「壊したければ壊しなさい。私は

霜村凛音が去った後、霜村冷司は書類へのサインを中断し、優雅に立ち上がり、コートを手に取ると、運転手に車を出すよう指示した。ほどなくして、霜村真一の家に到着した。長身でがっしりとした体躯の彼がリビングに足を踏み入れると、正面から皿が飛んできた。霜村冷司は素早くそれを避けた。皿は彼の横をかすめて背後の壁に激突し、大きな音を立てて粉々に砕け散った......床に散らばる破片と、荒れ果てたリビングの様子を眺め、霜村冷司は濃い眉を少しひそめた。霜村真一の家を訪れることは滅多になかったが、記憶の中では、ここはいつも清潔で整然としていたはずだ。だが、今、目に映る光景はどこにも清潔さや整然とした様子はなく、まるで穂果ちゃんが裏庭に作った犬小屋のようだった。霜村涼平と口論していた柳愛子と霜村真一は、霜村冷司が来たのに気づくと、怒りに満ちた表情を隠して、彼の方へと歩み寄った。「冷司、どうしたの？」霜村冷司は、怒りを露わにする霜村涼平をちらりと見た。「少し仕事の話があって、彼を探しにきたんだ」柳愛子は、霜村冷司が霜村涼平の味方として呼ばれたと思っていたので、彼の言葉を聞いて安堵した。自分の家のことに霜村冷司が口出しするのを避けたかったのだ。「それじゃあ、書斎で話して。コーヒーを入れるから......」霜村冷司は軽く頷くと、霜村涼平に顎で合図し、ついて来るように促した。霜村涼平は手に持っていた最後の骨董の花瓶を置き、霜村冷司の後について書斎に入った......しばらくして、柳愛子はコーヒーを運んでドアをノックした。「冷司、どんなのが好きかわからなかったから、涼平の好みに合わせて選んでみたわ。飲んでみて。もし口に合わなかったら、変えるわね」圧倒的なオーラを放つ霜村冷司に対して、柳愛子はまるで彼こそ自分の息子であるかのように、いつもよりはるかに丁寧な口調で話しかけた。霜村冷司は外ではめったに飲食物を口にしなかったが、柳愛子の厚意に添い、コーヒーを手に取り、一口すすった。彼にとって、味はひどいものだったが、それでも礼儀正しく柳愛子に頷いた。「美味しいコーヒーだ。ありがとう、愛子さん」彼の言葉を聞いて、柳愛子の沈んでいた気分は少し晴れた。「それじゃあ、コーヒーを飲みながら話して。私は食事の注文をしてくる」自分で作ったら

霜村冷司の言葉たちで徐々に冷静さを取り戻した柳愛子は、疑わしげな目で霜村冷司に尋ねた。「つまり、涼平は沙耶香を好きになったからこそ、変わり、成長したというの？」霜村冷司は冷淡に答えた。「愛子さん、涼平は白石さんのところで何度も痛い目に遭って、ようやく自分が彼女を愛していることに気づき、彼女のために変わろうとしたんだ。そうでなければ、今の彼はまだ遊び歩いているだろう」実は柳愛子も気づいていた。霜村涼平は家に帰って騒いでも、家ではきちんと仕事をしている。以前の彼なら、こんなことありえなかった。しかし、よく考えてみると、自分は息子に何度もきちんと仕事をするように、遊びまわらないようにと諭してきたのに、息子は自分の言うことを聞かなかった。白石沙耶香が現れた途端、彼はすぐに変わった。面白くない気持ちになったが、黙っていた。何を言っても、霜村冷司は白石沙耶香の味方をするに決まっているからだ。柳愛子が納得していないことを見抜いた霜村冷司の目は、冷たく、より深みを増した。「愛子さん、あなたは以前、表面的な情報だけで唐沢さんをプレイボーイだと決めつけ、彼と凛音を引き裂いた。その後、唐沢さんの成長を見て、彼と凛音をくっつけようとしたが、結果はどうだった？凛音はもはや唐沢さんを愛しておらず、他の男も受け入れない。如月さんのような男でさえ、彼女は見向きもしなかった。そのせいで、彼女は未だに結婚できていない。あなたの干渉のせいで、娘の恋愛はすでに壊れている。今、息子の生き方まで壊そうというのか？」霜村凛音と唐沢白夜の話をされると、柳愛子は必ず罪悪感を抱き、激しい口調の霜村冷司に反論できず、小さな声で答えるしかなかった。「凛音と白夜の仲を裂いたことは、本当に申し訳なく思っている。だけど、沙耶香は白夜とは違う。彼女は白夜が凛音を愛したように、涼平を心から愛してはいないし、涼平のために必死に私に取り入ってくれようともしない。ただ涼平を家に連れてきて騒がせるだけだ。涼平を大切にせず、両親の私たちを軽視するような女に、母親として私が口出しするのも当然でしょ」彼女の言葉の真意は、唐沢白夜と霜村凛音、白石沙耶香と霜村涼平は状況が違うのだから、一緒にすべきではないということだ。それに、霜村冷司の言葉はあまりにもひどい。白石沙耶香に一度会っただけで、どうして霜村涼平の人