独特な足音を聞いた途端、ソファに寝転んでいた柴田南は、すぐに姿勢を正して言った。「夕子、あの、ちょっと頭がクラクラするから、先に帰るぞ」頼りになる人が帰ってきたので、当然のことに、和泉夕子は彼を引き留めた。「柴田さん、今日中に全ての設計図を描き終えなければ、うちに泊まるって言ってたんじゃない?」柴田南は手を振りながら立ち上がった。「いや、家があるのに、お前の家に泊まってどうすんの。また明日来るよ。じゃあな......」しかし、立ち上がった途端、すらっとした白い手が突然肩に置かれ、軽く押し付けられたため、元の場所に座り直させられた。「柴田先生、誰の足を折るって?」柴田南はちらっと無表情な霜村冷司を見て、慌てて引きつった口元を持ち上げ、見事に左右対称な作り笑いを浮かべた。「もちろん、自分の足ですよ!」霜村冷司の冷たい瞳に、面白がるような笑みが浮かんだ。「今、私の足を折るって聞こえたんだけど」「へへ」柴田南は間抜けな笑みを浮かべた。「冗談、冗談ですよ」霜村冷司の足を折るなんて、命知らずな真似をする奴はいないだろう?柴田南は霜村涼平と同じで、状況に合わせてうまく立ち回れるタイプだ。自分から進んでウェットティッシュを取り、霜村冷司に差し出した。「俺に触ったから、手汚れたでしょう、ほら霜村さん、手を拭いてください」和泉夕子は、こんなに気の利く柴田先生を初めて見た。思わず手を上げて頬杖をつきながら、彼の媚びへつらう様子を眺めてしまった。霜村冷司は目の前の奇妙な顔を何秒か見つめてから、やっとウェットティッシュを受け取って手を拭いて、視線を外した。「次に陰口を叩いたら、足をノコギリで切るぞ」柴田南はその言葉に一瞬ぽかんとし、その後間の抜けた様子で霜村冷司に尋ねた。「足が『3本』あるんですけど、どの足を切るつもりですか?」霜村冷司はまつげを伏せて、柴田南の股間を見下ろした。彼の視線の動きに合わせて、柴田南も無意識に自分の股間を見た。そして、素早く足を閉じた。「だめです、まだ結婚してないので、この『足』は切っちゃだめです」呆れ果てた霜村冷司は、手に持ったウェットティッシュを柴田南に投げ返し、そのままくるりと背を向けて和泉夕子の方へ歩き出した。霜村冷司は妻をしばらく見つめた後、机を回って彼女
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