All Chapters of 契約終了、霜村様に手放して欲しい: Chapter 1491 - Chapter 1500

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第1491話

白石沙耶香は和泉夕子の考えていることがわかり、しんみりと言った。「夕子、この半年、冷司さんはあらゆる手段を使ってあなたを昏睡状態から救おうとしていたわ。志越よりもあなたを愛していることをとても感じた。だから、これからも彼を大切にして、愛される喜びを味わわせてあげて」夫婦というのは、ただ愛し合うだけの関係じゃない。時が経つにつれて、そこには家族としての情も芽生えていく。幼い頃から愛情に飢えていた霜村冷司にとって、その家族という役割を担えるのが、今の妻である和泉夕子だった。だから、彼がこれまで得られなかった温もりを、これからは妻として、しっかりと与えてあげればいい。和泉夕子は力強く頷き、柔らかな視線を腕の中でうとうとする赤ちゃんに向けた。「今は、彼とこの子だけが私の世界なの。もちろん、彼のことを全力で大切にするつもり。ただ......」彼女は目に涙を滲ませた。胸が締め付けられるように痛む。「沙耶香、彼の頭の中にはまだチップが入っているの。いつか、彼が......」白石沙耶香は慌てて手を伸ばし、和泉夕子の肩に置いて優しく叩きながら慰めた。「夕子、先生も言ってたじゃない。チップを刺激しなければ大丈夫だって。それに、涼平をはじめとした、兄弟姉妹みんながお医者さんを探しているんだから、きっと大丈夫よ」和泉夕子は返事をしたが、苦しげな涙が頬を伝った。「早くお医者さんを見つけて、あのチップを取り出してほしい。そうすれば、あんなに苦しまなくて済むのに......」周りの人は霜村冷司の命が危険に晒されることを心配していたが、和泉夕子だけは彼の痛みを心配していた。白石沙耶香は思った。妻という立場だからこそ、夫の痛みを我が事のように感じているのだ。「あなたがそばにいてあげれば、彼は痛みなんか感じないわ」霜村冷司にとっては、肉体的な痛みなんて精神的な苦痛に比べたら大したことなかった。和泉夕子に捨てられることこそ、彼にとって最大の苦しみなのだから。そう考えていると、白石沙耶香は桐生志越のことを思い出した。あの青年も、和泉夕子をこんなふうに愛している。重い鬱病を患っている彼が、この出来事を一人で抱え込んでいないだろうか?少し罪悪感を覚えた白石沙耶香は、和泉夕子が子供を抱いて物思いに耽っている隙に、スマホを取り出し、桐生志越にメッセージを送った。【志越、彼女はも
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第1492話

和泉夕子は微笑んで答えた。「沙耶香が赤ちゃんに名前を付けた途端、彼が嫌がって足をバタバタさせて泣き出したの。どこか具合が悪いのかと思って、慌ててお医者を呼ぼうとしたんだけど、沙耶香が名前を変えたとたん泣き止んで......」霜村冷司は片手をベッドに付き、和泉夕子の顔の横から赤ちゃんを覗き込んだ。「どんな名前を付けたら、そんなに嫌がるんだ?」霜村冷司の質問は白石沙耶香に向けられたものだった。しかし、先ほどつけた名前を彼の前で言うのは憚られた。なぜならば、自分でもかなりネームングセンスが無いと思っていたから。しかし、霜村冷司に質問されているのだ。答えないわけにはいかない。白石沙耶香は、ぼそっと名前を告げた。その名前を聞いた途端、赤ちゃんはまた足をバタバタさせて泣き出した。余程嫌だったのだろう。きっと「金太郎」より酷い名前に聞こえたに違いない。またもや赤ちゃんを泣かせてしまった白石沙耶香は、慌てて手を伸ばし、赤ちゃんの小さなお腹をさすりながら「よしよし、もうこの名前はやめようね。後で素敵な名前を付けてあげるからね......」となだめた。白石沙耶香のネーミングセンスはなかなかだと霜村冷司は思った。あんな名前じゃ、赤ちゃんが泣くのも無理はないだろう。言いたいことがいくつかあった霜村冷司だったが、白石沙耶香が和泉夕子の姉だということで、「名前のことは、私に任せろ」とだけ言うと、当然のようにスマホを取り出し、姓名判断のアプリを開いていくつか名前を考え、和泉夕子に見せた。和泉夕子が一つずつ名前を読み上げる度に、赤ちゃんは足をバタバタさせて泣いた。しまいには、泣き疲れたのか、それとも諦めたのか、泣き止んで小さな足を突っ張り、小さな拳を振り回し始めた。全身から赤ちゃんパワーを振り絞って、意味不明な怒声を上げ、何か汚い言葉を叫んでいるようだった......和泉夕子と白石沙耶香は呆気に取られたが、霜村冷司は指を伸ばし、赤ちゃんの小さな顔を軽く弾いた。「どうやら......大きくなったら、なかなか手強い奴になりそうだな」赤ちゃんは霜村冷司に触られるのが嫌だったのか、顔を背けて彼の指を避けた。触られたくないから顔を背けるのはよくあることだが、顔を背けると同時に、なんだか「ふん」と鼻で言ったようにも聞こえた。それを聞いた霜村冷司は顔色を変えたが、和泉夕子
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第1493話

柴田南は、背が高く隆々とした筋肉を持つ霜村涼平をちらりと見ると、自分の細い腕と脚を見下ろした。そして捲り上げた袖口を下ろしながら、「次だ、次......」と呟いた。霜村涼平の希望は、霜村壮馬に託すしかなかった。彼を抱き上げ、「壮馬、歌音みたいにお金にばかり気を取られちゃダメだぞ。たくさん勉強して、知識を身につけるんだ、分かったな?」などと言い聞かせている。霜村家の人々はまだしも、如月家の三兄弟までもが、霜村涼平の言動に呆れていた。「涼平さん、まだ子供なんだから、そんなにプレッシャーをかけなくてもいいんじゃないですか?あなたの子供でいるのは大変そうですね」霜村涼平は彼らを無視して、赤ちゃんの耳元で呟き続けた。「後でおりたら、真ん中にある世界の文学全集へとまっすぐ進むんだぞ。その名著を掴んだならば、霜村家で一番の高学歴になれるはずだ。そしてパパは、お前の賢さのおかげで、冷司兄さんをからかうことができるんだからな」そう言うと、霜村涼平は赤ちゃんを下ろして、拳を握り胸の前に掲げ、応援するポーズを取った。「壮馬、さあ行け!プライドを懸けて勝負だ!」霜村涼平から大きな期待を寄せられていた「鉄男」こと霜村壮馬は、霜村鉄子と同じように、床の上をしばらく這い回った後、皆の緊張と焦りが感じられる視線の中、ゆっくりと赤い絨毯の端までたどり着いた。そして、その小さな片手には世界の名著、もう片方には......小さな手の届く範囲にある金塊を見て、霜村涼平の心臓はドキッと跳ねた。「壮馬、金塊を掴んじゃダメだ、絶対ダメだぞ......」しかし、「鉄男」こと霜村壮馬はためらうことなく、その小さな金塊を掴み、楽しそうに転がしながら遊んでいる。挙げ句の果てにはそれを持ち上げて、札束を握りしめている霜村鉄子に振ってみせた。霜村鉄子もそれを見て、持っている札束を振り回した。お金を手に入れた兄妹は、嬉しいのか今にも踊り出しそうだ。霜村涼平だけが壁を殴りつけながら怒り狂っていた。「なんてことだ!家族4人のうち、2人は金好き、1人は金塊好きだと?!もう生きていけない!!!」しかし、誰も霜村涼平の嘆きを気にも留めなかった。柴田南が札束と金塊を補充し終えると、次は和泉夕子と霜村冷司の赤ちゃんの番だった。霜村冷司は子供に何の期待もしていなかったので、和泉夕子から赤ちゃんを受け取ると
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第1494話

柴田南が発表を終えると、紙の塊を赤ちゃんに返した。受け取った赤ちゃんは、片手に名前、片手にナイフを握りしめ、薄暗い光の下、黙ってうつむきながら、それをいじっていた。そんな赤ちゃんを見て、皆はその名前が、この少し陰気な子供の性格にぴったりだと思っていたが、口には出さず、社交辞令で霜村冷司と和泉夕子を祝福し、赤ちゃんが気に入る名前が見つかってよかった、と言った。二人の子供を抱いていた霜村涼平だけが、鼻で笑った。「絶対僕が考えた『霜村金太郎』の方がいい名前だよ。誰か冷司兄さんに恨みでもあるんじゃないの?こんな名前つけるなんて......」なんとかお世辞を言っていた如月家の人々は、この言葉を聞いて一斉に口をつぐんだ。如月雅也がふと玄関の方に目をやると、誰かが立っているのに気づいた。邸宅は広く、鉄の門の外に立つ人影まではかなりの距離がある。その遠くに立つ人影は、如月尭だった。黒いシルクハットをかぶり、中の和気藹々とした光景を眺めながら、一歳になったひ孫がどんな顔をしているのか、とても気になった。だが彼は、和泉夕子や霜村家の人々から自分が歓迎されないことは分かっていた。如月尭はしばらくその場に立っていたが、杖をつきながら、よろよろと車の方へと歩いて行く。以前、水原譲と銃撃戦になった時、脚に被弾し、足を引きずる様になってしまったのだ。老いには勝てないものだ。だか、特に問題があるという訳でもない、ただ歩くのが少し遅くなっただけだ。彼がゆっくりと歩いていると、霜村冷司の冷たい視線が人垣を越え、その後ろ姿を捉えた。しばらくして、如月尭はやっとのことで車までたどり着くと、名残惜しそうに車へと乗り込んだ。席につき運転手に発車する様に言った時、窓の外に白く細長い指が見えた。如月尭がその指の持ち主を見ると、冷たく感情の見えない瞳と目が合った。その瞳の持ち主は、軽く瞼を伏せ、無表情で彼を見つめていた。「先日は、世話になった」彼が言っているのは、手術室のドアを壊し、和泉夕子を救ったことだろう。だが、それだけだ。如月尭が闇の場を作り、沢田や多くのメンバーを殺したことを、霜村冷司は決して許しはしないのだから。霜村冷司は割り切った男だったので、恩と恨みを決して混同はしなかった。だから、せいぜい言えるのは、一言の感謝の言葉だけ。けれど、脳に埋め込まれたチップのせいで
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第1495話

この言葉に如月駿は何も返せなかった。しかし、如月尭は平然と続ける。「彼女にしたことは、決して褒められたものではない。むしろ残酷だったんだ。だから、彼女には俺を恨んでほしいぐらいだ。そのほうが許されるより何倍もマシだからな」如月駿は眉をひそめた。祖父は、家族の中で誰よりも自分を可愛がってくれた人だった。「お前は本当に綺麗な顔立ちだ。あの国際的なスターたちにも引けを取らないぞ」そう褒めてくれた祖父の言葉があったからこそ、芸能界に入る決心がついたのだ。その祖父が、今こうして生きたまま自分たちの前からいなくなろうとしている。そんなの、受け入れられるわけがない。如月尭は彼が思ってることを見抜いたようで、彼に微笑みかけた。「駿、俺は小さい頃から一番お前を可愛がっていた。だから、俺がいなくなることを寂しいと思うかもしれないが、生きているということは必ず別れを迎えるものなんだ。何も恐れることはないさ」如月尭は煙を吐き出した。揺らめく煙に包まれて浮かび上がるその顔には、人生の荒波をくぐり抜けた者だけが持つ静けさが漂っていた。若い頃から如月尭は、復讐の気持ちだけで長年生きてきた。恨みが晴れた今、生きる理由がなくなったのだ。如月駿は祖父との別れが名残惜しくてたまらず、背を向けて彼を見ないようにした。如月圭一もまた、頭を垂れて、別れが受け入れ難い様子だった。如月雅也だけが、祖父が去っていく現実を受け入れているようで、淡々と彼を見つめていた。如月尭は視線を如月駿から静かな顔をしている如月雅也に移した。「夕子に申し訳ないと思うとともに、お前にも申し訳ないと思っているんだ」如月尭は煙草を持つ手を床に近づけ、子供の身長ほどを示した。「お前を父親から引き取ったあの頃、お前は確かこのくらいの身長だったな」そう言って、彼は申し訳なさそうに笑った。「お前は引き取られたせいで、今までの人生は二人の兄とはかなり違う道を歩まなければならなかったな。しかし、俺がそれに気づいた時には、もう遅かった」彼は深く長いため息をついた。その目には、歳月を刻んだ哀しみとともに、悔いと、そして確かな安堵の色が浮かんでいた。「だが、そんな環境で育っても、お前は優しさを失わなかった。もしグレてでもいたら、お前の祖母に合わせる顔がなかったよ」如月雅也は特に気に留めていない様子だった。「おじい
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第1496話

如月尭の訃報が届いた時、和泉夕子は赤ちゃんを抱っこしながら、穂果ちゃんの宿題を見ていた。穂果ちゃんは勉強があまり得意ではなく、特に数学は、基本的な計算問題にも苦労する。学生時代の和泉夕子と同じだ。でも、小学校の問題くらいなら和泉夕子でもできたので、根気よく穂果ちゃんに教えていた。和泉夕子の腕の中で、霜村冬夜は穂果ちゃんが頭を抱えている様子を見て、クスクスと笑っていた。頭を掻きむしりながら悩んでいる穂果ちゃんは、最初は特に気にも留めず、赤ちゃんが変な声をあげているのだと思っていた。しかし、5回もその笑い声を聞いて、さすがに何かおかしいと感じた穂果ちゃんは、くりくりとした大きな目で霜村冬夜を観察し始めた。手に持ったペンを弄んでいた霜村冬夜は、穂果ちゃんに見られていることに気づくと、急に首を傾げ、顎を上げて穂果ちゃんを睨みつけた。「ふっ」今度ははっきり聞こえた穂果ちゃんは、肉付きの良い小さな手で、傲慢な態度の霜村冬夜を指差して、大声で訴えた。「おばさん、冬夜ちゃんが私をばかにしてくる!」数学の教科書をめくっていた和泉夕子は、その様子を見ていなかったので、「そんなことあるわけないでしょ。冬夜はまだ1歳なんだから、何もわからないわ。ばかにするなんてできるはずないじゃない......」穂果ちゃんは霜村冬夜を指差して、足を踏み鳴らして食い下がった。「おばさん、見て!あの目は完全に私をばかにしている目だから!それに、鼻で私のこと笑ったの......」和泉夕子が教科書から目を上げて彼の方を見た瞬間、霜村冬夜はすぐにばかにしていた態度を消し、何も知らないような表情をした。和泉夕子に手を持たれ見られている時でさえ、わざと手に持ったペンを掴んで、和泉夕子ににっこりと笑いかけた。穂果ちゃんはこのまだ1歳ばかりの赤ちゃんの態度の変わり身の速さに驚いた。「おばさん、この子、ちょっと怖いかも......」態度を変える瞬間を見ていなかった和泉夕子は、穂果ちゃんが変になったのだと思った。「宿題のしすぎで疲れちゃった?気分転換に、外にお散歩にでも行く?」霜村冬夜をじっと見ていた穂果ちゃんは、きっぱりと首を横に振った。「ううん、家にいる。冬夜ちゃんと一緒にいて、夜おねしょするかどうか見てる......」そう言うと、霜村冬夜はまたふっと鼻で笑った。声は出さなかった
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第1497話

帰ってきてからずっと子供と寝ていた和泉夕子は、息子と離れるのが少し寂しかったが、夫の気持ちも無視できないことを知っていたので、頷いた。「わかったわ。夜、お風呂に入れてあげたら、穂果ちゃんに寝かしつけてもらうね」霜村冷司は濃い眉を軽くあげると、上機嫌で人差し指を伸ばし、息子の顔に触れようとした。しかし、霜村冬夜は体をひねり、和泉夕子に抱きつき、そのまま彼女の胸に顔をうずめ、霜村冷司に触れさせまいとした。霜村冷司の指が宙に浮いたまま、一瞬固まった。しかし、すぐに霜村冬夜のお尻を軽く叩いた。霜村冬夜はそれが気に入らず、小さな体をくねらせ、すぐに反抗の意志を表す。霜村冷司はすぐに赤ちゃんの考えを見抜いた。まさか、こんなに小さい霜村冬夜が自分の言っていることが理解できるなんて思ってもみなかった。しかし、理解できたところで、まだ話もできないのだ、どうしたら自分から和泉夕子を奪えるというのだ?一家4人が夕食を終えた後、和泉夕子は霜村冬夜をお風呂に入れた。家にはベビーシッターがいたが、和泉夕子は自分が長い間昏睡状態にあり、子供との時間を十分に過ごせなかったため、その埋め合わせをしたいと思っていたので、出来る限り自分の手でやりたいと思っていた。霜村冷司の助けを借りて、丁寧に洗い終えた後、和泉夕子は小さなバスタオルを取り、赤ちゃんの小さな体を包んだ。そして、もう一枚の新しいタオルで赤ちゃんの髪を優しく拭く。お風呂上がりの赤ちゃんの可愛さに、和泉夕子は思わず頭を下げて、赤ちゃんの小さな頭にキスをした。「あなた、見て。冬夜、すごく可愛い。毎日抱っこしていても抱き足りない」パジャマを取りに来たばかりの霜村冷司は、浴槽の縁に座って満足そうな顔をしている霜村冬夜をちらりと見た。「夕子、最近身体が痛むんだ。今夜は長めにマッサージしてくれないか?」彼の身体が痛むというのを聞いて、和泉夕子は心配そうに振り返った。「じゃあ、早く先に寝室に戻って横になってて。冬夜を寝かしつけたら、マッサージしてあげるから」霜村冷司は彼女の言葉には耳を貸さず、そのまま霜村冬夜の前に来ると、息子を抱き上げた。「私が寝かしつける」たくましい大きな手に無理やり抱かれた霜村冬夜は、必死に体をくねらせた。しかし、小さな腕では大人の力に敵わず、すぐに霜村冷司に抱えられて穂果ちゃんの部屋に連れて行
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第1498話

彼女は思わず霜村冷司の体にすり寄った。熱い肌が、霜村冷司の逞しい胸板にぴったりと密着し、より一層二人の間には濃密な雰囲気が流れ出す。男は入念な前戯を済ませ、和泉夕子が甘く喘ぎ、自らを求めてきた時、彼女の手に用意しておいたコンドームを握らせ、「つけて」と言った。和泉夕子は潤んだ瞳で、彼の充血した目元を見つめながら、恥ずかしそうにコンドームを広げ、彼のそこへと......和泉夕子につけてもらうや否や、霜村冷司はもう我慢できない様子で、すぐに彼女を求めてきた。堂々とした体格にふさわしく、彼のそれもまた圧倒的で。和泉夕子の身体は、ほどなく限界を迎えてしまう......全身を震わせていたが、それでももっと彼を感じたいと、霜村冷司の体に絡みつく。自分は彼の下にいるはずなのに、背中がシーツに触れることすらできないほど密着していた。霜村冷司は彼女の締まり具合を感じ、さらに深く激しく求め、ついには抑えきれず吐息を漏らした。その快楽を味わうと、彼は和泉夕子の唇を噛み、「もう一度」と囁く。和泉夕子は少し疲れたので、もういいと押し返そうとした。だが霜村冷司は彼女を抑え込み、彼が何度か体を動かすと、彼女はまたしても抗えない興奮に襲われた。びしょ濡れのシーツを掴むことしかできず、彼に身を委ねるしかなかった......最初の時は焦って早く終わってしまった霜村冷司だが、2回目は意識して長くゆっくりと彼女を攻めた。和泉夕子が絶頂に達しようとしたその時、突然ドアをノックする音が響いた。「おばさん、叔父さん、冬夜ちゃんがいなくなっちゃった、早く一緒に探して!」和泉夕子は息子がいなくなったことを聞くなり、絶頂どころか天国へ行く気分すら失せてしまった。慌てて霜村冷司を押しやり、床に落ちていたパジャマを掴んで適当に羽織ると、部屋を飛び出した。「どうしたの?なんで急に居なくなっちゃったの?」「分からない。習字の練習が終わって、寝に行った時には、もうベビーベッドにいなかったの。新井さんが城館の周りを探したんだけど、それでも見つからなくて......」和泉夕子は心臓がドキドキと激しく鳴り、紅潮していた顔をみるみるうちに青ざめさせていく。激しい動揺を抑えながら、階段を駆け下りた。あと少しで最高の快楽を味わえるところだった霜村冷司も、今はそんなことよりも子供のこと
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第1499話

霜村冬夜が1歳から3歳までの間、霜村冷司は和泉夕子に触れるために、彼を寝かしつけてから、別部屋に移動させるということをしていた。しかし、和泉夕子と1回目の行為を終えると、霜村冬夜は目を覚まし、一騒ぎ起こすのだった。以前のように、思う存分7、8回和泉夕子と愛し合いたい霜村冷司は、霜村冬夜を霜村涼平の家に預けることにした。最初のうちはよかったものの、何度も預けられるうちに、霜村涼平は少し違和感を覚えた。そして、よくよく観察してみると、性欲が抑えられない霜村冷司が、息子が邪魔で子供を預けているのだと気づいた。だから、霜村冷司が息子を預けに来るたびに、霜村涼平は彼をからかうことを忘れなかった。しかし霜村冷司は図太い男で、息子を床に下ろすと、振り返りもせずに行ってしまうのだった。しかし、霜村冬夜によって攻略されてしまい、息子を預ける作戦も長くは続かなかった。霜村涼平曰く、霜村鉄男と霜村鉄子は、霜村金太郎には口喧嘩でも腕力でもかなわず、毎日霜村金太郎に泣かされていた。霜村涼平は、霜村金太郎が2人の年上の子供をいじめるくらいならまだしも、自分にまでもちょっかいを出してくるようになったと思っていた。和泉夕子は彼に、どんな風にちょっかいを出されたのか尋ねた。霜村涼平は例を挙げて説明した。「例えば、沙耶香が家にいるときは、彼はおとなしくていい子なんだけど、沙耶香が仕事に出かけると、僕を困らせてくるんだ」困らせてくる?家政婦や使用人には抱っこをせがまないくせに、霜村涼平にだけ抱っこをせがむ。小さいから抱っこするのは楽だが、一日中抱っこしていたら、いくら強靭な霜村涼平の身体でも持ちこたえられない。霜村金太郎を抱っこしながら、霜村金太郎にいじめられて泣いている2人をなだめなければならず、一日中そのことに時間を費やしていた。なんと言ったって、3人の子供たちが騒ぐから頭がガンガンするのだった。プログラミングの研究をするよりも疲れるため、霜村涼平もどうしようもなくなり、霜村冷司夫妻の夜の営みを邪魔する覚悟で、小悪魔の霜村冬夜を返しにきたのだ。話を聞いた和泉夕子は信じられなかった。彼女の目には、霜村冬夜はあまり話さないだけで、とても良い子に見えていたからだ。白石沙耶香も同じ意見だったが、霜村涼平は霜村冬夜は腹黒い子だと譲らなかった。すっかり疲弊
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第1500話

霜村家の三姉弟が幼稚園で傍若無人な振る舞いをしているという話は、すぐに園長の耳に入った。園長は自ら話をするため、「ボス」の霜村冬夜を呼び出して話を聞いた。「どこでこんなことを覚えたんだ?」霜村冬夜は間髪入れずに大野皐月と答えた。園長は和泉夕子に電話をかけ、大野皐月と霜村冬夜の関係を尋ね、なぜ子供に間違ったことを教えるのかと問い詰めた。ちょうどその日、大野皐月はブルーベイに霜村冬夜に会いに来ていた。園長に自分が間違ったことを教えていると言われているのが耳に入り、ひどく腹を立て、和泉夕子のスマホを奪い取ると、園長と言い争いを始めた。園長が霜村冬夜は今や幼稚園のボスで、他の園児たちを率いて隣の幼稚園の園児たちと喧嘩をしようとしていると言うと、大野皐月は口をつぐんだ。なぜ口をつぐんだのかというと、実は彼に少し思い当たる節があったからだった。大野佑欣が結婚した後、大野皐月は帰国し、ブルーベイの向かいの別荘に住んでいた。時々霜村冷司をからかいに訪れ、霜村冷司がいない間に霜村冬夜を連れ出して兄貴風を吹かしていた。しかし、それは外出時に子分を連れて歩く程度のことで、喧嘩を教えたことは一度もなかった。しかし、大野皐月が教えたかどうかにかかわらず、和泉夕子は彼が霜村冬夜に近づくことを禁じ、今後子供に会う権利も撤回した。そのため、大野皐月は帰宅途中の冬夜を「拉致」するしかなくなった。霜村冬夜に和泉夕子に自分が喧嘩を教えたわけではないと説明してもらいたかったのだ。道路脇に立っていた霜村冬夜は、顔を上げて大野皐月をしばらく見つめた後、一言だけ言った。「お馬のおじさん、ごめんね。幼稚園に行きたくもなかったし、いじめられたくもなかったから、あなたに教えてもらったってつい言っちゃったんだ」なぜ、「お馬のおじさん」と呼ばれているかというと、以前霜村冬夜に馬を何頭かプレゼントしていたからだった。大野皐月は彼が馬をもらったのが嬉しくて、自分のことをそう呼んでくれているのだと思っていた。しかしそうではないと気づいたのは、先日、この霜村冬夜が自分にあだ名をつけてくれていると言う話を自慢げに霜村冷司に話していた時のことだった。元々、霜村冬夜があだ名をつけるぐらいには、他の人よりも自分に懐いている思っていた。しかし、大野皐月が自分のあだ名のことを霜村冷司に自慢げに話すと、彼は
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