「それでも駄目だ。祖母たちはもう年だし、あなたの体は弱っている。もしあなたが倒れたら、きっと面倒を見きれない」「確かに今私は体が弱ってるけど、ちょっとマルシェに行くくらい大丈夫だわ」それに今朝は昨日よりずっと調子が良い気がしていた。弥生は出かけても問題ないと思っていたが、どうしても瑛介は彼女を行かせようとしなかった。心配しているのだ。その一方で、弥生もまた、瑛介の傷を気にかけていた。安静にしていないと治りが遅れると思っている。毎日動いて傷口が開いてしまっては、いつまでも治らない。瑛介は弥生が栄養不足で食も細いことを心配していた。人混みの中で倒れたら、祖母や祖父では対応しきれないだろう。何より、彼女に何かあったらと思うと怖かった。お互いを思いやる気持ちが行きすぎて、二人とも一歩も譲らない。だが、自分を犠牲にすることには妙に慣れている。しばらくしても平行線のまま、言い合いは続いた。その時、外から瑛介の母の声がした。「準備できたの?」その声を聞いた弥生は、思わず答えた。「はい、私はもう準備できました。瑛介は行きません」「え?」弥生の言葉に瑛介の母は一瞬きょとんとした。理由を聞こうとした瞬間、目の前の扉が開き、息子の冷たい顔が現れた。瑛介の声は氷のように冷たく、手で扉を押さえ、まるで誰かを外に出さないようにしている。「母さん、弥生も行かない」この二人、どういうこと?お互いに「相手が行かない」って言ってるんだけど。「お母さん、私は行きます!」弥生の声が瑛介の背後から響いた。瑛介の母が彼女に話しかけようとすると、弥生は後ろから出てこようとするが、瑛介がそのたびに手で塞いでしまった。彼女が左に動けば、彼の腕も左へ。右に動けば、彼の腕も右へ。「瑛介、どきなさい!」瑛介は無表情のまま言った。「あなたが僕を行かせないなら、誰も行かない」「あなたを行かせないのは、あなたのためよ!」「うん、僕もあなたのためだ」「どうしてそんなにわからず屋なの!」弥生の声には怒気がにじんでいた。瑛介は薄い唇を引き結び、静かに言った。「そうだな、わからず屋でいい」これまでなら、弥生が怒れば、瑛介はすぐ謝って折れた。だが今回は違った。彼は引かず、徹底的に意
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