悩みに落ちているのは、弥生だけではなかった。由奈と浩史の二人も、いま深夜になってなお沈んだ気持ちのままでいた。二人はホテルで別々の部屋を予約していたが、弥生の件について話し合うため、由奈はとても眠れる状態ではなく、シャワーを浴びたあとすぐに浩史の部屋へ向かった。彼女が部屋に着いたとき、浩史はちょうどバスルームから出てきたところで、腰にタオルを巻いただけの、上半身裸の姿だった。何か言おうとした浩史より先に、由奈が勢いよく部屋に入り込んできた。彼の姿に何の反応も見せず、気に留める様子もなかった。部屋に入るや否や、由奈は弥生のことを話し始めた。「ねえ、弥生はどこに連れていかれたと思う?」そう言いながら、彼女は部屋の奥へと進んでいった。「惜しいのは、この五年間、私と弘次の関係がそれほど深くなかったこと。もっと彼のことを知っていれば、性格から推測できたかもしれないのに」浩史はまだドアの前に立っていた。彼女が自分の裸の上半身にまったく気づいていない様子を見て、何とも言えない気持ちで彼女を見つめた。......無神経なのか、それとも自分のことを男として全然見ていないのか?浩史は笑いながらドアを閉めた。そして玄関脇の戸棚からバスローブを取り出し、静かに羽織った。あとで気づいて騒がれたらたまったもんじゃない。変態扱いされかねない。バスローブを着て帯を締め、胸元がわずかに見える程度に整えたところで、ようやく彼女の言葉に耳を傾けた。その頃、ようやく由奈も気がついた。「ねえ、さっきからなんでずっと反応してくれないの?」浩史はソファに座り、静かに答えた。「推測じゃ無理だ。ここは広すぎる」その言葉に、由奈は一気に肩を落とした。......そうだ。ここは首都だ。人も多すぎて、当てずっぽうでは何も見つからない。沈黙の中で、浩史はコップに注いだ白湯を一口飲んだ。「今でも......通報しないつもりか?」その問いに、由奈は唇を噛んだ。顔には明らかに迷いの色が浮かんでいる。本来は、弥生の言葉に従って警察には頼らないつもりだった。でも、いくら探しても行方がつかめない今、このまま黙って見過ごすことができるのか?「瑛介には、もう一度連絡したのか?」不意に、浩史がそう問いかけた。「......そうね!
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